モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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怖がりなアイルー、シュカ(6)

「…こりゃあ参ったなぁ……」

 

 私たちは、目の前に乱雑に積もっている土砂を見上げた。

 

 

 私たちは、前述の通り標高の低く泥水が流れる地帯を走っていた。

 

 その最中での出来事である。

「なんだか水かさが減ってきてるね…」

 フユは下の方に視界を向けつつそう呟いた。

 フユの言った通り、シュントが走っているそばの水の流れ、明らかに泥水の勢いがなくなってきていた。つい先程までは、シュカ曰く寧ろ日頃より水かさが増して流れも速かったはずなのだが、それが打って変わって真逆の異常が起きている。

 

「はいですミャ…なんででしょうかミャ…?」

 シュカの方もシュカの方でこの変化に対し不思議に感じているようで、むむむ…と眉間に皺を寄せている。

 

「とりあえず、先の方に進んでみる…?」

 私は、その熟考に耽る2人を諭すように声をかける。まぁ、今こうしている間もシュントは着々と進んでいるわけで、引き返すなら引き返すで早めな判断が肝要になってくる。

 

「そうだね…、一旦進んでみよう」

 フユはそういう風に声をかけた。

「ですミャ、こっちから引き返すのはかなりの遠回りになってしまうミャ…」

 シュカの方もそれで意見が一致した。

 

 

 

 と、そんなそこまで気にしなくていいだろうと皆思いつつ軽めのやり取りの後少し進んだ結果がこの有様である。

 

 目の前には乱雑に積み上がった土砂があった。土砂は崖などを形成していたであろう粘土色の土と大小様々な石、その上に生えていたであろう太めの木々などによってなっており、見たところすぐ隣の崖が崩れているようだ。シュカ曰くここら辺は風が強くなかったものの雨は強く降っていたらしく、おそらく時間差で土砂崩れが起きたのだろう。

 私たちの目の前に積み上がっている土砂の下の方から私たちの足元へ、そして私たちの後ろの方へと、先程と同様の勢いの弱い水が出ている。ここが本来通常の泥水の通り道なんだろうが、この土砂によって天然のダムが出来上がっており、そこで多くの泥水が堰き止められているようだ。

 

「すみませんミャ…」

 ここに向かって進むように指示してしまったと、私の隣でその惨状を眺めるシュカはすっかり責任を背負い込んでしまい意気消沈である。

「いやいや、シュカのせいじゃないよ」

 私の一言で気分が立ち直るとは思えないが、一先ず私はシュカに声をかける。

 

「うん、シュカだけが悪いわけではないよ」

 私たちとは少し離れて天然のダムの方に近づいて観察をしているフユもそれに続いてシュカに返事した。

「ただ……これは少し急いでこの場を離れたほうがいいかもなぁ…」

 フユはそうやって顎に手をやり考える。

「なんで?」

 私はフユに聞き返す。フユはその土砂の方を見上げながらうーん…と唸っている。

「これは崩れてきた土砂によって形成された天然ダムだろう、となると…」

 そう言ってフユはその土砂の天然ダムの奥の方に指を指す。

「この向こうに日ごろ流れてくる結構な量の水が溜まっていくことになる」

 そして、その指を下ろして私の方に再度視線を戻す。

「方や即席で出来上がった天然ダム、こっちは言ってしまえばかなり貧弱。そして方や時間と量を重ねるほど破壊力の増す水だからね……」

 多分崩れるのも時間の問題かなぁ……などとこうやってのんびり口調でこの状況の末恐ろしさを淡々と述べられるフユは、相当肝が座っている。

「なるほど…さっさと逃げたほうがいいね…」

 私の方はフユのこの口調に反する緊迫とした内容に肝が冷えていた。

「ほんとですかミャ!?」

 シュカの方に至っては私よりも困惑や焦りが隠せていない。

 

「じゃあ急いで行こう!」

 私は声をかけて、近くのシュントに跨がろうと進んだ。

 

 

 

 と、その時。

 

 

 シュントはギロリと私を睨め付けるようにこちらに視線を向けて、猛スピードで走ってきていた。

 

「ミャミャミャ!?」

 シュカは飛び上がって驚いて、四足歩行になり逃げるようにフユの方に走っていく。

「シュント!?」

 急にシュントが私に明らかな力を持って攻撃しようとしていると見た私は、あまりに突然の出来事に足が固まる。シュントは確実にこちらに向かって突進するように突き進んでいる。

 

 そしてそのままシュントは私に跳びかかってきた。

 

「わ!」

 私はシュントの勢いに巻き込まれるように大きく吹き飛ばされた。さすが、伊達に人2人を乗せて走っているわけではない。その程度の重量を軽々と運んでみせる脚力を持ち合わせているのだから、シュントの突進の威力も並みの人間が踏ん張って耐えられるものではない。

 

「ぐへぇ!」

 私はその勢いのまま大きく吹っ飛ばされて、数メートル先のフユの足元で背中から着水する。まだ着地地点が水だったので勢いが弱まったようだが、それでも威力は威力だ。

「だ、大丈夫…!?」

「……ミャ…!?」

 フユとシュカが跳ねる水を気にせずに私を覗き込む。心配してくれるのはなんともありがたい。

「う、うん…」

 私は頭を抱えながら上半身を起こす。あの着地の衝撃によるものだろう、慣性により脳が歪むような鈍い頭痛を覚える。

 

「もう、シュントどうし…」

 私は鈍痛を伴う頭に手を当てつつ、私を吹き飛ばしたシュントがどこにいるかと確認するべく顔を上げた。

 

 

 

 瞬間。

 

 

 バシャァァン!

 

 

 目の前、つい先ほどまで私が立っていた地点の泥水が噴火するように大きく上に弾け飛ぶ。そして、それと共に、地中から大きな影が跳び出てきた。

 

 あまりの出来事に呆然として声も出ない私。これに当たらないよう私を退かすためにシュントが突進してきたのだと気付くのも、この出来事のせいでだいぶ遅れてしまった。

 

 

 体全体を泥で覆い、体をどっしり支える足、地中の潜行も容易く行えるように発達した太いヒレ付きの尾、前にもヒレを一対抱え魚のような全貌を持ちつつも、捕食ができるように大きく開けられる口を持っている。

 

「ジュラトドスだ!」

 フユが大きな声をかけて私に知らせる。

 私もその声に正気を取り戻すよう働きかけられ、なんとか尻餅の状態から体を起こし、動けるように体制を作る。

 

 ジュラトドスはその跳び上がりから着水。そのままフユの方に向けて私たち全員を巻き込むように潜行突進を仕掛けてくる。

 

 私たちはなんとか真横に跳び込んで回避し、その勢いのまま私たちそれぞれの武器に手をかけ、抜刀する。

 

 

 

「このジュラトドス私たち狙ってるの?」

「とにかく戦おう、襲われてるから自衛が先だ」

 狼狽える隙も与えられず、私たちは狩猟に入った。

 

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