糸で繋がる親子愛(1)
桜色の大剣を担いだ私は姉のハル。
白色の狩猟笛を担いだこの子は弟のフユ。
2人はガルクのシュントに乗って、ハンター稼業をしながら、とあるモンスターについて調べるために旅をしている。
「そろそろ弱るかな…?」
フユが少し疲れた様子でそんなことを言う。
「もう少しだよ、がんばろ!」
私はフユを元気付けようとそう言うふうに声をかける。
私たちは今回高い木々に覆われた密林地帯に位置するとある村に泊まることになり、その最中に気になる狩猟依頼を受けた。今回の狩猟対象は飛雷竜トビカガチ。なんとも今回発見された個体は、全身が少し黒ずんでおり傷を全身に覆っている個体で、そのせいか本来の狩猟難易度より一層難しくなっているらしい。そのためこれを受注するハンターがいなかったため、私たちが受けることにした。
というのも、私たちの研究の対象は『フラウデュゴ』という古龍なのだが、そのモンスターとの初邂逅の時に発見したドスジャグラスに、同様の変化が見られていた。結果、それと何か関係があるのかもしれないと、その狩猟依頼をより受けずにいられなかった。
とにかく私たちは、シュントも含め3人でトビカガチを狩ろうと懸命に武器を振るう。トビカガチはかなり素早いモンスターなので、私たちの武器とは相性が少し悪いこともあり、フユが思った以上に疲労している。なるべく早く仕留めたいものだ。
「攻撃強化かけ直すよ!」
そう言って、フユがメロディを刻む。ピアノのような弦を叩く音が聞こえる。少し体が軽くなるような気がする。
「ありがとう!フユ!」
私は声だけでお礼を言って、視線をトビカガチに向けたまま武器を構える。
トビカガチが皮膜で滑空しながら飛びかかってきた。私に向かって体を縦に回転させ尻尾を振り下ろす。
それを回避して、私は体勢と攻撃の向きを整えてそのまま大剣を振り下ろす。
それを軽い身のこなしでかわすトビカガチ。
トビカガチはそこで咆哮する。体を一層白く輝かせる、帯電状態になったようだ。私はさらに強く集中する。
一進一退の攻防を続けるうちに、私たちとトビカガチは少しずつ移動していた。そのせいか、少しずつ景色が変わり。高い木々が生い茂る地帯に差し掛かってきた。
「……攻撃当たらない、速すぎる……!」
私は一人で愚痴をこぼす。やはり一発の火力に力を込める大剣とは、トビカガチは相性が悪いと思われる。少し呼吸も肩を使うようになってきている。なかなかいい調子ではない。
「……ここ、別のモンスターがいる…」
そんな中、フユが辺りを見回しそんなことを言う。トビカガチがそれを見逃さず突進してくるも、うわぁ!と言いつつぎりぎり回避してみせる。
「フユ!よそ見はダメ!」
私はフユが大丈夫であることを確認しつつフユに声をかける。
しかし、私も嫌な予感がしていた。なんというか、静かなのだ。それに加えてフユがああ言う、フユのモンスターに対する研究者としてのカンは大体当たる。ということは、もしかしたら……
トビカガチが私の方に向く。私の方に飛ぶべく滑空を開始。私は回避の準備に入った。
その時だった。
トビカガチの横っ腹に、何かが蹴りを入れる。唐突に、横から飛んできたのだ。トビカガチに視点を絞っていただけあって、あまりの唐突な登場に私も動揺してしまう。
トビカガチが、私への滑空攻撃を妨げられ、蹴られた勢いのまま地面に転がる。蹴った本体もその近くにドスン、と着地する。どうやら木にぶら下がって、振り子の原理で攻撃してきたようだ。
「お姉ちゃん!ここはアレの縄張りだ!」
フユが声をあげる。少し興奮気味なのだろうか、声が上ずってるようにも聞き取れる。だが、それがあまり良くない情報であることに、若干の嫌気もさす。
トビカガチが体勢を立て直し、蹴りを入れた相手に向かって咆哮した。
蹴りを入れた方も、体の向きをトビカガチにむけて。前足を上げ体を大きくみせるように咆哮する。
赤い毛に覆われ、所々に縞模様が見える体躯、白毛を纏う四肢の中でも腕が発達しており、特に黒い爪が鋭い。顔のあたりは白い毛で、黒い顔が見える。そして、背中に同様の小さな猿を引っ付けていた。
「ゴゴモア、だ」
フユが少し落ち着いてそれを言う。私たちは、そのモンスターらに向かって、自己防衛の意味も込めて武器を握る。
相手は、跳緋獣ゴゴモア、木の上に住んでいて、糸を操って突進などの攻撃を行う、牙獣種のモンスターだ。