前回は感想とお気に入りありがとうございました!
授業時間の半分以上を経過してからやってきた、新しい非常勤講師と編入生の件から1時間ほど。
時間にして昼頃という、通常の学生生活において弁当や給食といった食事を行う時間帯のため、一学生として所属したユウトも例外ではない。
更に言えばユウトは、この学院の中でかなり珍しい編入生ということもあり、ここぞとばかりに同じクラスの生徒達から質問攻めに遭っていた。
「どんな魔法が使えるのか」や「好きなものは何か」等の当たり障りのない質問から、「ここに来る前は何処にいたのか」や「恋人はいるのか」等といったプライベートに関わるものまでとにかく多彩な質問が飛んできていたが、ユウトは全て予め用意していた答えで適当に返すことで素早くその場を凌いでいた。
そういったことがあり、現在黙々と食事をしていたユウトなのだが…
「回りくどいな。言いたいことがあるんならもっとはっきり言ったらどうだ?」
「ええ、この際だからはっきり言わせてもらいましょう!」
「ちょ、ちょっとシスティーナ…」
「はぁ……」
ユウトの座っている席の向かい側に、二組の天使と(影ながら)呼ばれている程の美しさと心優しさを持つ女子生徒ことルミア=ティンジェル、その隣に二組の優等生かつルミアの親友であるシスティーナ=フィーベル、ユウトの隣の席に現在進行形で評価大暴落中の非常勤講師グレン=レーダスが座っていた。
それもただ座っているのではなく、はっきりと怒りの表情を浮かべているシスティーナにやる気のないようなトロンとした表情のグレンという、誰もが近寄りたくないような一触即発の雰囲気を纏ってのものだった。
このような雰囲気になった原因には、少なからず今日配属された非常勤講師ことグレン先生の午前の態度が関わっていた。
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ユウトの自己紹介の直後のこと…。
「えー…この度不本意ながら非常勤講師となり、このクラスを受け持つことになったグレン=レーダスです。これから1ヶ月間、皆さんの勉学のお手伝いをさせて頂きます。特技は…」
「自己紹介はいいですから、早く授業を始めてください!」
生徒の皆が講師に少なからず抱いていた期待が大遅刻によって瓦解寸前までいったところに、その講師がクラスに入って最初の自己紹介がこれだった。
具体的に言うなれば、これに加えてグレン先生は非常に嫌そうな表情と、途中でシスティーナに止められなければ授業時間終えるまで長々と続ける気満々な
既にこの時点で他の生徒達からは疑惑の目が向けられている。
にも関わらず、グレン先生はここに更に爆弾を投下した。
「それもそうか。」
『……』
まるで予想していたと言わんばかりのあっけらかんな返事の後、チョークを手に取り大々的に何かを書き始める。
それを注視していた生徒一同だが、書き終えた内容を見た瞬間、本日2度目の驚愕を示す。
「今日の授業はぁ、自習で〜す……眠いから。」
『……はぁぁ〜〜!!?!?!』
黒板に大きく書かれていたのは「自習」という字のみ。
それを見た生徒からは、あり得ないというような声が溢れていた。
……そんな中でも、終始教科書をどこかつまらなそうに頬杖をつきながら読んでいたユウトを除いて。
そしてトドメと言わんばかりに、錬金術の授業前での着替え途中にて──きっかけは本当に故意ではないとはいえ──女子生徒の着替え中にグレンが更衣室に入室してしまうということが起こった。
それだけならまだ弁解の余地があったかもしれないが、あろうことかグレンは叫ぼうとする生徒達を抑えて突然の「常日頃からこのような展開について物申したいことがある!」から始まる弁論。
その内容は割愛するが、要は覗きを正当化させたいという下心丸見えのものだったため、当然の如く
それによって、直後の錬金術の授業が綺麗さっぱり無くなったことは想像に難くないだろう…。
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…といった経緯があったのだ。
ちなみにユウトは人と関わるのを避けるためにあえて窓側の遠い席を選んでいたのだが、その場所がかの優等生と非常勤講師の口論の場所になることを失念していたため、見事に巻き込まれたのであった。
「あ、あはは…ごめんね、せっかくの食事なのにこんなに騒がしくしちゃって」
そんな中でルミアはこの騒ぎの原因の一端が自分達にあることを理解しているため、この場で唯一話に加わらず少し顔を青ざめながら食事をしているユウトに向けて苦笑いと共に小さく手を合わせながら謝罪の言葉を述べた。
「別にいい。こうなることは
「……?」
素早く食事を終えてトレーを持ち、目線を合わせることもなくそう言って離席し片付けに向かったユウトにルミアは少し疑問を持つが、そうしている間にいつの間にか激化していた近くの親友と講師の口論を聞いて、慌てて2人を止めに入ったのだった…。
◆◇◆◇◆◇◆ ◇◆◇
午後になっても変わらず「じしゅー」と、もはや字として読めなくなるほど適当に黒板に書いては教壇で寝ているグレンに、もはや何かを言うこともせず呆れたという表情と共に生徒達各自が自習をしていた頃、ユウトは思索に耽っていた。
「『
頬杖をついて器用に羽根ペンを回しながら、ユウトはそう呟く。
そんなユウトの脳裏には、朝に学院教授のセリカから言われた一言があった。
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『その、初対面の君に聞くのも何だとは思うが…「赤い仮面の戦士」というのを知らないか?』
『……いえ、何も』
『そうか……いやすまない、君からどこかその戦士と似たようなものを感じてね、もし知っているのなら少し聞きたいことがあっただけなんだ』
『はぁ…』
『おいセリカ、気になるのはわかるが何も編入したての学生に聞くものじゃないだろ?』
『む、それもそうだな…すまないユウト』
『いえ、大丈夫です』
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学院入学の最後の手続きを終えた直後にユウトはセリカからそう言われ、その場では平静を保って答えることで凌げたが、内心では疑問が残っていた。
「(『赤い仮面の戦士』……いや、まさかな…)」
一瞬ユウトの脳裏に有り得ない可能性が浮かび上がるが、「考え過ぎか…」と判断して自身の考えを切り捨てていると、突如パン!という乾いたような音が響く。
音のした方を向くと、そこには涙目で頬を叩いたと思われるシスティーナと、叩かれた頬を手で抑えながらどこか後ろめたそうな表情をしているグレンがいた。
「(そうか、もう
直後に退室した2人を尻目にそう考えて帰宅の準備を整えていると、ポンポンと小さく肩を叩かれる。
何かと思いユウトが後ろを見ると、そこには少し不安気な様子でユウトを見上げるルミアがいた。
「ユウトくん、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「この後時間あったらちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど、いいかな…?」
「えっ」
ルミアからそう言われ、ユウトは予想外の出来事に思わず気の抜けた返事を返してしまう。
「(…ん?マスターから聞いていた
「…?もしかして、今忙しかった?」
「い、いやそういうわけじゃない。わかった、行こう」
「ありがとう…!」
ユウトの反応と直後の様子を聞いて更に悲しい表情まで浮かべ始めたルミアを見て、遅れて気づき慌てたユウトは勢いのままに承諾をする。
「(…まあそこまでこの世界の歴史に影響はしないだろうし、行動に気を付けさえすればいいか)」
先程までの様子から一転して嬉しそうな表情と反応を見せるルミアを脇目に、ユウトはそう考えてからルミアに同行することになったのだった…。
書き方自分でもわからなくなりかけてるのでまた感想などいただけたら嬉しいです!