お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
作者、凄い良い笑顔してます。
相澤先生の10分は絶対だ。
遅れただけで除籍、なんて事も有り得る。
だって除籍147回だもの。
早く行かないと駄目だよねぇ、と頷いて体操着を手に椅子から飛び降りる。
ここ大事。
私の身長だと座っても床に足がつかないので、これはしょうがない事なのだ。
そう自分に言い聞かせて、飯田さんの誘導の下私達は更衣室へと足を向ける。
なんか凄い微笑ましい視線を感じたが、あまり気にしない事にした。
更衣室、広い(驚愕)。
雄英ってここまで全部が広いってことあったっけ?(困惑)
いやあるか、だって雄英だもん(察し)。
「ロッカーも割と高い位置に……ふんっ」
「あ、踏み台あるよ?」
ロッカーでさえかなり高い位置にある事に少々の苛立ちを感じながらも格闘していると、横から踏み台が渡される。
「ふぇ?わ、ありがとうです〜♪えと、あなたは……」
渡してくれた彼女―――白目が黒く染まり、肌が桃色で角の生えた同級生に礼を言う。
確か彼女は―――
「アタシは
「私は渡我反榴って言うのです、よろしくですよ〜……ぷはっ」
「うん!お互い宜し―――え?」
お互いにYシャツを脱ぎながら軽い自己紹介……おっと。
「あ、シャツも脱げちゃいましたね」
「いやいやいやいや!待って待ってなにその傷跡!?」
芦戸さんのその一言で、女子の興味が一瞬で私に集まる。
正確に言えば、私の身体に付いている夥しい数の傷跡だが。
「ふぇ?あ、これですか」
「アタシは良く解んないけどっ、なんでそんなに絆創膏が……?」
ぺたぺたと腕やお腹、終いには足元を見てこんな所にも……!と息を呑む彼女を見て、そういえばこれは誤解されちゃうよなぁと内心苦笑いを浮かべる。
「ねぇ、私蛙吹梅雨っていうの。梅雨ちゃんって呼んで」
「あ、はい梅雨ちゃん。どうしたのですか?」
そんな私に次いで話しかけたのは、猫背のままでこちらを見る少女。
彼女は先程も言ったように蛙吹梅雨。
確か個性は……蛙っぽい事が出来るとか言ってたっけ?
「私、思った事を正直に言ってしまうの。……渡我ちゃん、虐待とかされてないかしら?」
「あぁ、そう見えちゃいますよね」
そんな彼女が申し訳無さそうに言った事に、私はまぁそうだよねと返す。
でも。
「私、お姉ちゃんが大好きなのです。お姉ちゃんも、私が大好き。だけど、お姉ちゃんの愛情表現は皆さんから見たら"変わっている"のですから、皆さんには誤解されてしまうかもです……でも、これは私とお姉ちゃんの愛の証……だから、これはなんの問題も無いですよ?ただ、表現方法が
淀みなくそう言い切った私は、無意識に肩を撫でていた。
そこはガーゼで隠れてはいるが、毎日姉が私を一番愛してくれる
着替えは、既に終わっていた。
「まぁこの学校にはリカバリーガールという凄い治癒師さんがいらっしゃるということで、もし治癒されたらこの傷跡は殆ど無くなってしまうかもですけど……私とお姉ちゃんは相思相愛なので、明日にはまたこうなってますよ?断言できるのです」
「わーお……」
そう言った私に返ってきたのは、服だけが浮いた透明な娘。
この娘は葉隠透だった筈。
自身が透明になる個性で、そのせいか声音と動きによる表現が大きい。
それでもまだ皆の不安は拭えない……―――あ、それなら。
「もし信じられないのでしたら、少々過激ですけど今夜の
「「「「駄目駄目駄目駄目!!」」」」
「ぅにゃん」
止められた、っていうか被せられた。
叫んだのは芦戸さんと葉隠さん、そして……麗日さんと耳郎さんだ。
八百万さんはそんな破廉恥な事を……!とプンスコ怒って(怖くない)いて、梅雨ちゃんは仲がよろしいのね、良かったわと冷静に理解してくれた。
「解り易いと思ったんですがねぇ……」
「いやいやそれって絶対アレな展開入っちゃうやつでしょ!?」
「いやそれは……」
羞恥心から再起動した芦戸さんに捲し立てられ、思わず考え込む。
吸血だけで終わった日って多分あったよね……?
きっとあった……いや、あった、か…………?
……………………―――うん、無い!
「……そうですね、毎晩
「「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「ぴゃふん」
また被せられた、しかも今度は先程よりも大声で。
あぁ、皆が皆混乱してるよ、梅雨ちゃんだけ凄い冷静だけど。
「まさかのほほんとした渡我ちゃんが一番大人だったなんて……」
「そこまでって??まさかそういうこと……??」
「あわわ、あわわわわわわわわわわ」
「ふぉー……やっば、すっご」
「反榴ちゃんはお姉ちゃん想いなのね、凄く良いと思うわ」
「えへ、そうですか?嬉しいです♪」
傍から見たらこんなの地獄絵図とも見紛うのだろう。
葉隠さんは解らないけど、叫び声を上げたもれなく全員(それに加えて八百万さんも)が顔を真っ赤にして慌て、ぶつぶつと独り言を零し続けている。
その隅で梅雨ちゃんとのほほんと会話をした私は、頭の片隅でそれとなく皆に向けて合掌をしておいた。
「……あのぅ、そろそろ行かないと遅れるですよ?」
だが、いつまでもそんな惨状を続ける訳にもいかない。
この騒動の発端である私が言うのもどうかとは思うが、そう口を出す。
イレイザーヘッド……もとい相澤先生はかなり合理主義だ。
1分でも遅れたらその日のテンションはきっと、いや確実に下がる。
「そっ、そうだね!取り敢えず反榴ちゃんは大丈夫だって言うし、早く運動場行こっか!」
その意図を察したのかただただこの変な雰囲気から脱したいだけなのか、芦戸さんが声をかなり張り上げて全員の移動を促した。
その間、梅雨ちゃんと私以外の女子は例に漏れず顔が真っ赤だった事をここに残しておく。
※この作品は全年齢対象です。R-18版の作品は別に存在しております。※
かなりヤベェ事を口にしてますが、渡我姉妹にとっては普通の事だという認識です。
ヒミコちゃんの吸血衝動が彼女にとっての普通である様に、ハルちゃんの傷身思考が彼女にとっての普通であるという事です。
なお、この話で出てきた微笑ましい視線については後のお話で。