お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
ハルちゃんの恍惚とした表情を想像するのだいすきです(末期)
10分の休憩を挟んでいる間。
「なぁ」
木陰に座って休んでいる私に向かって、声が掛かる。
「はい、なんですか〜?えっと……」
「……轟焦凍」
赤色と白色の髪が真ん中できっちり別れ、左目の周囲を火傷痕でいっぱいにした物静かな少年。
かなりの闇を抱えた結構な曲者がなぜ突然私に……?と思うが、まずは自己紹介。
「轟さんですね、私は渡我反榴です!」
「渡我か」
「……」
「……」
そうして訪れる居心地の悪い沈黙。
お願い早く喋って、この空気耐えられないの。
「……その、なんだ。
「―――はぇ?……あー」
そう言って、轟さんと自分の間で視線をうろうろ移動させて、そういう事かと思い至る。
確か彼は個性婚によって産まれた子で、父であるエンデヴァーに強い憎悪を持ち。
母からは「お前の左側が醜い」と煮え湯を浴びせられてしまうという過去を持っている。
その過去と私のこの傷跡を見て、どこかシンパシーを持ったのだろうか。
「うーん……お前も、というと轟さんにも何かが?」
「………まぁ、な」
その言葉に、私は驚かない。
「……深くは聞かねぇんだな」
「いえ……どうせ他人が介入してどうこうとなる話題ではないと思うですもん。かと言って何も言わない訳でもないですが……」
そこではぁ、と一息置いて。
「……私のお姉ちゃん、重度の
隣で、小さい呼吸の音が聞こえた。
「以前まで両親はお姉ちゃんを非難して私を溺愛してましたけど、私が
「……お前、それ」
轟さんの短い言葉にあははと笑いながら頷く。
「育児放棄、ってやつですね。11年間、私とお姉ちゃんは親の顔を写真でしか見てないです」
その言葉を発した一瞬だけ、風が強くなった気がした。
「轟さん。そうして家に帰らなくなった親を見て、果たして私はどう思ったか……解るですか?」
と、ここで休憩時間の終わりが差し迫っている事に気付いて立ち上がる。
よいしょっと、と短く呟いて、轟さんの方を向く。
「―――『
きっと私の顔は、恍惚としたものとなっているだろう。
しかし轟さんは何も言わず、私の話に耳を傾ける。
「私は私の事を愛してくれているお姉ちゃんの為に、お姉ちゃんにだけ向ける愛と本音をお姉ちゃんにだけ曝け出して、私の大好きなお姉ちゃんの為だけにヒーローになるのです。とても不純で、自己中心的でしょう?―――でも、それが私の『なりたいもの』なのです」
みんなが集まって来ているから、この話もそろそろ終わりにしようかな。
「轟さんは、
「……あぁ」
「ほら、集まってますし私は行くですよ〜?」
さっさと話を終わらせてつったかたーとその場から離れる。
「………」
その後ろで、轟は小さく歩きながら思案した。
個性婚へ対する
そんな頭の中をリセットするようにため息をつくと。
「………―――なりてぇもん、か」
誰にも聞こえない声量で、そう呟いた。
―――とまぁ、若干のイベントはあったが、気を取り直して個性把握テストだ。
反復横跳びと上体起こしは正直な所特筆すべき所も無いのでカット。
……あ、記録?
反復横跳びが17回、上体起こしが18回だった。
うん、平凡。
そしてその後のボール投げも、一部を除いて普通な感じではあった。
緑谷さんが個性を抹消されて二回目の投げで人差し指をバキバキにしながらも爆豪さんの記録と並んだり、麗日さんが二人目の∞を記録したり。
いやでも八百万さん、大砲は流石に。
まぁ個性で創ってるから駄目なわけではないけどもさ、なんか一人だけ違う事してるのよそれはもう。
流石推薦入学者と言うべきか、笑うしかねぇと言うべきか。
あぁでも良かった持久走は皆思い思いに走って―――
「「「バイクだぁぁ!!?」」」
「え、免許は……????」
―――いや一人だけ別の事してる人居たよ。
いやまぁ酸で滑ったりエンジンで速度上げたりしてる人も居るけども、流石にそんな文明の利器が突然出ると思う?
出てきたんだよねぇ……
緑谷さんがぼやいていたけど、ほんとに免許は大丈夫なの??
あっ、一応原付の免許持ち?家に保管してある原付バイクを模した?
それなら大丈夫だね!(思考停止)
「―――じゃなくて、です」
「はっ、はい!?」
グリンッ、とホラーゲームさながらの回転速度で前の八百万さんから緑谷さんへと顔を向けた。
突然話題を振られた彼が固まったまま走るという奇妙な芸当を見せたところで、話を続ける。
「緑谷さんは大丈夫なのです?その指、中身がボロボロなんですよね?」
「ゔ、それは……その……はい……」
真っ向から指摘された彼が萎びた風船みたい(イメージ)に縮んでいく。
私と指を負傷している緑谷さん、そして峰田さん等最下位組はかなり先発と離されている。
だからこの中でも必死に最下位争いが起こっているのだが、何をどうしようと峰田さんは私と緑谷さんの後ろ―――つまり最下位に居る。
どうしてだよぉぉぉ、と後ろで叫んでいるが考えないことにした。
ここで私が緑谷さんの
だからこういう場合は―――
「増強型……それもかなりの自傷デメリットですか?」
「うっ、うん……上手く行けばその自傷もなくせるんだけど、まだ使いこなせてなくて……」
「ほぉー……でしたらやはり、地の強化と制御イメージの確立が最優先ですね」
こうして、それとなくアドバイスをする。
「うんっ……トレーニングは毎日欠かさずやってるけど、イメージの方はまだ全然……」
イメージ……電子レンジの中の卵、だったっけ?
「……参考程度に、どんなイメージですか?」
「…………電子レンジの中の卵が、爆発しな」
「その人教えるのに向いてないですね」
「ゔッッッ」
おっと、本音が。
―――ちなみに、除籍はちゃんと嘘だった。
順位は私が5位で残りは原作とそう変わらなかったのと、合理的虚偽って言う時の先生のしてやったり的な顔が印象的だった事を残しておく。
原作との違いは
・轟君がヒーローになろうとした理由について考え始めるのが早い(普通は体育祭の1v1の途中位から)
という点です。
元々身体に傷だらけだったハルちゃんに、どこかシンパシーを感じた轟君が話しかけそうだったので、ここにブチ込ませて頂きました。
ですけどこの会話を介してもそんなに大きく変わる訳ではないです。
ジャンプですから、殴り合わないと解らない事だってあるんですよねきっと。
ちなみに二人が峰田君よりも前を走り続けられたのはハルちゃんがこっそりと『峰田さんは私と緑谷さんよりも走る速度が速い』を反転していたからです。
正直ここで峰田君が持久走最下位になろうが緑谷君の総合最下位はほぼ確定なので、それならちょっと位ちょっかいかけてもいいよねーというハルちゃんの悪戯思考ですかわいい。