お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
相澤先生のおはなし。
放課後、1-A担任である相澤消太は書類を纏めた後に小さく息を吐いた。
生半可な覚悟でヒーローになられても良くない、"最高峰"から一度でも落とされる経験を糧に二度とブレない意志を持って這い上がってきて欲しい。
そんな思いを(口には出していないが)ぶつけ、校長から除籍の権限をもぎ取り、去年度はクラス全員を除籍処分にした。
今日のテストだってそうだ。
彼は本気で除籍処分にするつもりだった。
だが、ソフトボール投げの時の彼―――緑谷出久。
オールマイトから受け継いだワン・フォー・オールという、彼にとっては
全力でやれば腕や指を確実に使い物にならなくさせるような個性を、彼は贔屓しなかった。
だから、だ。
『先生……まだ、やれます……!!』
『――――――
「…………ガキか、俺は……―――いや」
あの時の
洗練されていた理解速度と発展思考力、そして活用能力。
オールマイトからまとめノートとやらを聞いたときは若干引いたが、これが良く出来ている。
幼馴染と言われる爆豪の個性でさえ極限まで解析されていた。
俺のもあったのは流石に引いたが。
いや中身の事はどうでもいいのだが、無個性だった彼が
……まぁ、途中聞こえてきた「電子レンジの中の卵が爆発しないイメージ」とかいう素人感満載なアドバイスはどうせオールマイト案だろうが。
―――兎に角。
あの瞬間、彼は俺の考えの向こうに行ったのだ。
そう、
そんな瞬間を見た奴の誰が彼を除籍にできる?
居るわけ無いだろう。
あのとき芽生えた可能性を摘むなど、プロヒーローの風上にも置けない。
―――そこまで思案して、大きく溜息をつく。
首をぐるぐると回し、ゼリー飲料の蓋を開けた。
……と、そういえば。
ヂューと勢いよくゼリー飲料を飲みながら、とある資料を探す。
引き出しの中にファイリングされた、今年のクラスの名簿。
しかしその中には、
その中をペラペラと捲り、ある地点で止める。
そこは彼女―――『渡我反榴』のページ。
身長が124cmとかなり小柄で、それに合わない制服のサイズは姉の指定。
理由は将来の成長の為だが……来るのか不安になる所。
そして、その下の欄……入試成績を見、再三溜息をつく。
「(……なんなんだ、
国100点数150点英150点理100点社100点の600点、それを上限きっかり。
そんなの見た事が無い。
何度間違いかと思ったか。
何度模範解答と筆記解答を見比べたか。
何度校長に確認を取ったか。
しかし、信じるしかないのだ。
彼女が推薦入試を抜きにしても国内最難関の高校入試を首席合格したことを。
……というか、なんだあの腕の夥しい傷跡。
俺でさえ二度見したぞあれ。
顔と雰囲気からして虐待とかそういう類のものではないとは思われるし、女子の反応もそれとは違いそうだ。
むしろなんであんな赤面してたんだ女子は。
そしてその中心であろう渡我本人は何故そんなに平然としてられるのか。
しかしそれを本人に聞き出すのも教師としてどうかとなる為、聞けないのが現状。
爆豪緑谷轟とやべぇやつらをA組に組み込んでしまったが。
―――お前もか、渡我。
ついた溜息の数はもう、数えないようにした。
―――そんな、『NEW A組のやべぇやつ』と先生から断定された渡我本人は。
「おねぇちゃぁ〜〜ん♥」
「はるちゃぁ〜〜ん♥」
自宅で姉とこれでもかという程にいちゃつき始めていた。
帰ってきて早々お帰りのキスを何回かし、その後欲が爆発しないように程々にしながら姉と抱き合う形でリビングへドナドナされる。
「ハルちゃんは今日何をしてたんです?」
よっこいしょ、と姉の膝の上に座って向かい合い、適切な距離(個人差)を保った私は今日あったことを思い出す。
「うんと……個性をつかって体力テストをしましたね」
「個性を使って!成績は、どうだったの!?」
目をキラキラさせながら顔を近付けてくる姉にドヤ顔を崩さず―――いやちょっと崩して、
「5位でした……やはりみんな凄かったですよ〜」
そこからは、クラスメイトの個性の話題になった。
八百万さんが創り出す個性で万力を作って握力計を壊したり、峰田さんが葡萄みたいな個性で反復横跳び一位だったり。
それで、一番の話題が。
「ボール投げの時、お姉ちゃんが好きそうな人居たですねぇ」
「なにそれ誰!?」
勿論緑谷さんのことなのだが。
この話をした途端に姉の顔はさらに近付き、鼻が触れるほどにもなる。
これは見えてないなぁ、と即座に理解した私は姉の唇をちゅっ、と塞ぎ、
「お姉ちゃん、まずは落ち着くですよ〜?」
そうすれば、姉は顔を真っ赤にして適切な距離(個人差)に顔を戻す。
「ぅ、はい……」
はーーーーーーー可愛い。
可愛すぎて心がきゅんきゅんしてぴょんぴょんしてます。
今すぐちゅっちゅしてもっといちゃいちゃしたい。
―――じゃなくって。
「えっとですねー、その人の個性は増強型なんですけど―――」
「……ハルちゃんは、トガの好みを良く解ってるのです」
そんな子にはデザートにプリンがありますよ、という続きに、やったぁ〜と両腕を上げる。
「……あ、そうでした」
「?」
と、プリンに現を抜かすのも良いのだが。
「お姉ちゃぁん……私の制服、とってもおっきかったんですけどぉ……?」
珍しく目を開いてジト目を作り、薄笑いで姉を見る。
「……えっとー……」
「ぶかぶかだったんですよ〜?なんでか教えて欲しいですね〜?」
目を逸らした方向に身体を向けながら袖をばっさばっさと振り、左を向いた姉に追従し。
ねー?と問い掛けながらあっちにうろうろ、こっちにうろうろ。
「……ハルちゃんのぶかぶかな制服、カァイイじゃないですか」
「許します」
「やたー!!」
そして口を割った瞬間に手の平コペルニクス的転回。
原作の緑谷さんさながらだな、これは。
「えへへ、ぶかぶかハルちゃんカァイイよぅ♪」
「んみゅぅ、むふふ」
―――しかしまぁ、ほんとに勝てないものだ。
頬紅くして恥ずかしがりながら言われたらそりゃ許さざるを得ないでしょ。
にまにまと笑みを浮かべる姉に両頬を弄ばれながら、私はうんうんとその話を自己完結させた。
さて、今日の夜ご飯は……あっ、シチューだ〜♪
相澤先生の気苦労(主にA組のやべーやつら)と、そのほぼ中心にいるであろうクソレズ合法ロリオリ主のお話でした。
たぶん相澤先生が考えるシーンとかは作者様によって個人差が出るんではなかろうかと思われるこの頃。
ハルちゃんは前世の知識チートがあるので筆記など軽々ですね、本人は間違いがあると勘違いしてるようですが。
ところでもちもちのほっぺっていいですよね。