お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
片方を詰めると片方が風に乗って何処かへ征く、私の悪いところです。
ツンツン頭に腰履きのズボン、そして苛立ちを隠そうともしない目付きの彼―――爆豪勝己。
ぶつかったのは、教室まであと数分もないところ。
そして爆豪さんの身体は教室に向いている。
ここから導き出される答えは……
「爆豪さんも反省会に」
「るっせぇな殺すぞチビ女ァ!!」
「ぴょえん」
なんでそんなに当たり強いの。
しかも被せられたし。
「うぅ……別に悪いなんて言ってないじゃないですか……」
ぶつくさ呟いたのが気に食わないのかなんなのか、すっごい形相で睨まれるんですけど?
「……チッ、オイチビ女」
そうしょぼんと凹んでると、不意に声が掛かる。
「……渡我ってちゃんと呼んでください」
「黙れ殺すぞチビ!」
「チビ言わないでください!!」
ねぇなんで毎回チビって言うの爆豪さんは??
マイク先生にもミニガール呼ばれてるのに更に追い打ちでも掛けるの??
と、思ってたら。
「……癪だが、お前は俺よりも強ぇ」
「ふぇ?」
え??
あの爆豪さん本人が、私を強い?
「アァ?何か文句でもあんのかよ」
いや、文句というか。
「……私って、爆豪さんよりも強いんです?」
「…………は?」
「…………」
「…………」
沈黙。
なんともいえない空気が、教室からちょっと逸れた廊下の辺りを包み込む。
「…………俺が強ェっつってんだから強ェんだよこのチビ!」
「にゃっ、だからチビって言わないでくださいって!」
「ハッ、どうだかな!本気なんか出してもねぇお前なんかチビで充分だろうが!!」
そう鼻で笑われてムカァッとなり―――ふと止まる。
「私ってそんなに本気出してないんですか?」
「お前自身の事なのに知らねぇのかよ殺すぞ!?」
「ぴゃう!?」
更にキレられた。
右手から小刻みに爆破を起こしているその姿はまさしくヴィラン……じゃなくって。
怒りで釣り上がりまくった目は直角に見え………でもなくって。
あぁもう、なんか爆豪さんの逆鱗に触れるようなことしか思い浮かばない。
「俺は!!……お前
そうして半ギレ(多分九割ギレ)の彼が一言大声を出し、その後落ち着き払ったトーンで私に向かって宣戦布告をした。
それを見て、あぁ、彼はちゃんと決意したんだな、と不意に納得する。
「……分かりました、それなら追いつかれないようにしないとですね」
「すぐにブチ抜いてやるよ」
方や満面の笑みで、方や獰猛な笑みで。
二つの有精卵は、教室の扉を開いた。
「ただいまですよおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「おっかえりなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」
いつもより遅い、午後7時に家の扉を開いた。
多分ずっと待っていたのであろう愛しい姉からの接吻をされるがままに受け、そのまま抱き上げられてリビングへドナドナ。
今日は鯖の塩焼きのようで、電話をした後に温めてくれていたのだろう、ほかほかと湯気が立っていた。
「戦闘訓練、とても有意義だったのですよ」
「よかったねぇ、ハルちゃん……んっ」
「ん、〜〜♪―――?」
姉の細められた瞼から覗く怪しい光。
その瞳に吸い寄せられるように再び、今度は深い口付けで互いの唾液を堪能する。
これは今夜も長いな、と察したところで、今日は玄関から鍵の開く音が聞こえた。
「今日は
「うぅん、知らなーい」
突然来た来訪者にお互い首を傾げながらも、一旦と姉の膝から降りる。
リビングの扉を開いたのは、案の定父だった。
「…………居たのか」
「それはそうですよ?私とてご飯を食べなければ死ぬんですもの」
短く、無頓着そうにボソリと呟く父に律儀にそう返したら、背を向けられてリビングを出ていこうとする。
「食べないのです?」
「飲みだ」
「ですか……」
三文字。
先程のも含めれば七文字しか、実の父と言葉を交わしていない。
そんなことを考えている間にも、父はリビングから消えていく。
その時チラリと、「お前らみたいな異常者が俺達と同じ食事をしているだけで気持ちが悪くなる」みたいなことを目線で言われた気がした。
「―――ッ」
いや、きっと口に出していたのだろう。
そうでないと、姉の手からギリリなんて音が聞こえる筈がない。
そして、父が帰ってくるということは、同じ職場で働いている母もそろそろ帰ってくるということ。
「……冷める前に、食べちゃいましょうか」
「…………ん」
この後にも続くだろう出来事に、私は内心で深い溜息を吐いた。
―――結局のところ。
二度目の扉の音が聞こえたのは、深夜の三時頃だった。
その時個性で強化した耳に入った音は、はふぅという満足そうな溜息。
少し遅く聞こえる足音。
多分足が震えているのだろう、足音が聞こえる直前に薄い擦れるような音が聞こえる。
冷蔵庫の扉を開け、水を一杯。
『ふぅ……やっぱり
そして、久しく聞いていなかった母の声だった。
その声も、何処か弾んでいる。
彼、とは誰だろうかと、考える間もなく察した。
―――浮気、又は不倫相手。
あんな声も、遠い昔に私達の名前を呼んだ時くらいだろうか、もっと前だっただろうか。
それとも、言われてなかっただろうか。
これは今度二人で
然るべき時に備え、然るべき武器を揃える為に。
二人で―――私達だけで、生きる為に。
そう思いながら、私は包まれている姉の体温と混ざるように目を閉じた。
渡我家の仕事やらなんやらについては全てオリジナル設定です。
二人の日々が砂糖よりも甘くなるには、まだ足りないから。
そういう意味も込めて、後半のエピソードとさせていただきます。
確認?後々すぐに解りますよきっと。