お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です 作:珱瑠 耀
どうぞよしなに。
数えてみても、制限時間は残り30秒もない。
なのでさっさと頭の中でルートを構築し、ニタリと笑った。
「はいっと!」
早速一歩踏み出したロボットから逃げるように跳び、『自分のジャンプ力が低い』をベースに"反転"させる。
するとあらびっくり、普通じゃ1mも飛べなさそうなちんちくりんが0Pと同じくらいにまで跳び上がったではないか。
飛ぶときに勢い余って一回転したが、パフォーマンスと思えばそんなに悪くもないかなぁなんて。
「えい……やっ!」
そんな事を思いながら、私は背中から取り出した鉄パイプと竹刀を0Pに向かってぶん投げた。
勿論個性は使っており、今回は『投げた2つがロボットの首元を跳ね飛ばさない』と『投げた2つのスピードが遅い』の2つを反転。
すると今度は、2つの棒がなまじ私の腕から振るわれたと思えない速度で真っ直ぐにロボットへ向かい、一切の減速も無しにそれの首を挟み込む様に壊す。
飛んでいく途中に風の音がしっかり聞こえてきたのでかなりの威力だろう。
「ふむ……4つ、ですか。まぁ妥当ですね」
そう呟きながら自由落下する自分自身に『落下速度が上がっていく』を反転させて着地したと同時に、ガギャンという耳を劈く音を聞いた。
「……っとと。処理を忘れる所でしたね〜」
ホッとするのは一瞬。
首と胴体の落下に備えてもう一度跳躍した私はさっさと0Pに触れ、『下に掛かる重力が弱い』を反転。
「ぴゃっ」
瞬間、地面へと向かう圧力が限り無く高まった0Pが地面にヒビを作りながらも潰れ、めり込んだ。
すっごい拷問でも出なさそうな音が出たので軽く変な声が出てしまったが、誰も聞いてないから良しとしよう。
『終ーーー了ーーー!!!!』
あ、終わった。
ちょっとふらつく頭に手を添えて、ため息を一つ。
個性の頻発で精神力が削られているのだ。
まぁ実際移動+攻撃+強化でほぼフルバーストだったから、当然っちゃあ当然というか。
気を張ってないと目眩を起こして倒れそうだけど、家に帰るまでぐっと我慢。
家でお姉ちゃんにどろどろになるまで愛してもらいたい、と私の本能が叫んでいる。
……いやしかし、そうしてもらうのは合格が決まったらでも良いのではないか?
私は雄英高校に受かったのとお姉ちゃんに愛されるので嬉しい、お姉ちゃんは私がヒーローになれる道に立てたのと私を愛せるので嬉しい。
これはまさかWin-Winの関係!?
「……―――オイ」
と、そこまで思考を巡らせて再び個性で飛ぼうと思った私の背中に、低くて男らしい声が掛かった。
「―――ほぇ?なんですか?」
その声の方に振り向くと、爆発したようなツンツンの髪を持った男子生徒。
彼は確か、爆豪勝己。
緑谷さんの幼馴染で開いた口が塞がらない位の戦闘センスを持っている、いわゆる問題児。
そんな彼が、一体どうして私に?
「お前、どうして
そうして顎で指す先は、先程壊した0P。
その質問に、あぁと少し納得した。
殆どの受験生は討伐ポイントのみを稼ぐ為に1P〜3Pを壊していく。
だが私が最後にやった0Pはただのガラクタ、壊すメリットもポイントも何もないだけ。
なのにどうしてわざわざコレを手を向けたのか、彼は一番気になるだろう。
「う〜ん……強いて言えば、
口元に指を添えて逡巡した答えをそのまま言うと、彼はそうかよ、と短く返してそのまま飛んでいってしまった。
そういえば彼も爆破で飛べたなぁ、なんて思いながら私はちょっと小走りで負傷者の集まっていた区間へと向かった。
あの後戻ると翼の生えた女の子からは泣かれて怒られた、ごめん。
流石に単身凸は無謀すぎだよばかばかばか、と抱き締められたまま胸元を殴られた、ほんとごめんね。
まぁ心配させたのは本当なので、謝って優しく頭を撫でたらすぐに立ち直ってくれたが。
その後すぐにリカバリーガールが来て、負傷者の傷が処置されていた事に驚いていたのは余談だ。
――――――――――――――――――――――――――
鍵を開けて家に入ると同時にリボンを外す。
個性の反動と電車の揺れで眠気が酷く、何回寝落ちたことかとため息を吐いた。
「ただいまですよー」
「おかえりなさい〜!」
そんな私に満点の笑顔で包丁を片手に抱き着いて来る姉。
危ないけど扉は閉めているしちゃんと誤爆しないように配慮してるから秒で許す。
「試験どうでした?」
至近距離で微笑みながら聞く彼女に、私は。
「―――きっと、上手く行きましたよ」
唇を優しく奪ってそう言うのであった。
途中でしっかりいちゃいちゃ宣言してます。
このセリフ、覚えといてくださいね(黒い笑顔)。