梅雨嫌い。雨嫌い。
6月下旬。
「う、うぅぅぅ...」
梅雨はほんとに嫌い。昔から雨が降るから嫌だったけど、今はまじで嫌い。何故かと言うと、この体になってからは髪が長くて雨に濡れるとウザイし、ゴワゴワするし、痛むし。男の時はそんなに気にしてなかったんだけどなぁ。なんでこんなにめんどくさいのだろう。いっそバッサリ切った方がいいかもな。
そんなことを考える授業中。窓の外は今日も雨が降っている。おじいちゃんの先生がひたすら黒板に書いたことを説明している。何言ってるんだか分からない。頭に入ってこない。今日は偏頭痛が酷い。女子ってこうも不便なのか。調べたことがあるが、気圧の変化が主だが、ストレスやホルモンバランスの乱れでも起きるらしい。配信しすぎで疲れたのかな?
しかも、今日はそれにプラスでアレの日である。つらい。辛すぎる。女子になってから約3ヶ月。この日もこれで3度目だが、慣れるなんて無理だ。一生慣れないだろう。しかも、私は結構重い感じみたい。お腹が痛い。なんでなの?なんで今日なの?ああ〜ムカつく。
今朝はさすがに学校を休もうかと考えたが、学校に電話する時に知らない怖い先生が出たらやだなとか思って(コミュ障)、休むに休めずに今日も登校した。今朝は頭痛がなくてまだ何とかなると思っていたが、授業中になると頭が重くなってきた。ガンガンする。
キンコーンカーンコーン
チャイムがなってようやく昼休みの時間になった。私は机に突っ伏した。クラスの人達は違うところや食堂へ行ったり、机をくっつけてワイワイしながら弁当を食べ始めた。
私は食べる気力すらないので、自席で寝ているといつも一緒にご飯を食べているらんちゃんとさきちゃん、そして間宮さんが私の席までやって来た。
「お〜い、なぎちゃ〜ん?」
「なぎちゃん大丈夫?」
「あ、ありがとう。大丈夫だよ。」
「授業中から辛そうだけど?」
「見てたの?」
「そりゃ隣の席だもん。」
そっか。隣だな。喋ると頭がガンガンする。
「で、どうしたの?」
「ちょっと頭痛が。あと、ちょっと今日は、ね?」
頼む。これで伝われ。頭ガンガンするし、お腹痛いし、何故かとムカつくし。伝わってくれないと困る。女の子なら分かるだろ?この辛さ。
「ちょっと?ちょっとって何?なんかあったの?」
ああ。伝わらなかった。この世の終わりだ。死にたい。だけど、心配させたままはダメだな。どうすれば伝わるんだろ?まあ、めんどくさいからいいや。
「なんでもない。」
「ほんと?」
「大丈夫だから。」
「そ、そう?辛かったら言ってね?」
「うん。」
間宮さんはなにか納得したような顔で「邪魔しないようにこっちで食べよ」って間宮さんの席で弁当を広げた。なんか、V関係の話とか思ったのかな?離れて食べてもらいたいものだが伝わっていないのだから仕方ない。
らんちゃんとさきちゃんは不思議そうな顔をしたが、何も聞いて来なかった。
私は寝ることにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後は体育の授業がある。あー!ムカつく!移動とか着替えとかしたくない。無理無理無理。私は行きたくないので机に伏せたままだ。
「ねぇ、大丈夫?」
間宮さんが話しかけてきた。心配しなくていいのに。ほっといてくれよ。イライラする。
「ねぇ!次体育だよ?」
「あ、うん。」
「なんか感じ悪いけど、ホントになんかあった?」
別になんもないって!今辛いだけだって!
「いいよ、ちょっとほっといて。間宮さんは関係ないから。」
「関係ないからは酷くない?あなたの事知ってるの私だけでしょ?関係あるよ!」
「関係ないから!体育だろ!僕はここで休む!これでいいだろ?早く行けよ!」
「...っ!?」
顔を上げると間宮さんは驚いた感情と泣き出しそうな感情が混ざったようなよくわかんない顔してた。やばい。流石に言いすぎたかも。
「あ、ごめ、...」
私が謝ろうとした時にはもう間宮さんは教室を走って出ていってしまった。
「う、うぅぅ...」
怒ったせいか分からないけど体調が悪化してきた。さすがにやばいかもと思い、立ち上がる。保健室はどっちだっけ?わかんねーや。なんとかなるだろ。そう思い、私は歩き出した。
「う、きっつ...」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「し、失礼します。」
なんとか保健室に辿り着いた。が、先生はどこ行ったか分からないが不在だった。仕方なく私は勝手にベッドに潜り込んで直ぐに目を閉じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どれだけ経っただろうか。
私はまどろみの中でゆっくりと瞼を持ち上げる。知らない天井と蛍光灯が見える。あ、そうか。保健室で寝てたんだった。カーテンの隙間から漏れる夕日が眩しい。雨は上がったようだ。
「おはよう。」
声が聞こえた。振り向くとそこには保健室の先生...ではなく間宮さんがいた。
「お、おはよう。」
「体調は大丈夫?」
そう言われて確認してみる。頭痛はない。お腹は痛いがさっきほどではないようだ。
「さっきよりはマシ。」
「そう、よかった。」
「...」
「...」
そして無言の時間。
間宮さんもさっきのことを気にしているようだ。
こういう時私はどうすれば良いのだろう。いつも配信のときはコメント相手で、自分の思ったこととかを口にすれば、楽しくなる。でも、それは相手の顔が見えないからだ。相手が見えている今。適当なことを口にすればさらに仲が悪くなってしまうかもしれない!ましてや、コミュ障の私に何かいい言葉が思い浮かぶ訳でもない。間宮さん!何か言ってよ!これ以上間が空くと死んじゃう!!
「...ねぇ、さっきはごめんね。」
ようやく切り出してくれた。
「こ、こっちこそごめんね。急に怒ったりして。」
「ううん。なぎちゃんがこんなに体調悪かったのに気づかなかったし、勝手にV活動のことを持ち出そうとしてた。」
「うん。」
「今度からはもっと気をつけるから、許してくれる?」
「いいよ。許す。」
「良かった。でもね、本当に身体のことでもそっちのことでも何かあったら言ってね!相談乗るよ!」
「うん。」
なんかお母さんみたいだ。いや、これが本当の委員長ということか。クラスのお母さん。
「で、何があったの?言えないならごめんだけど。」
あ、それは聞くのね。
「なんもないよ。ただちょっとね、その、今日はアレの日なんだ。」
「...え!?」
間宮さんは驚いてこっちを見た。
「なかなか言い出せなくてごめん。」
「いやいや、こっちこそ配慮できなくてごめん!ほんとマジで!」
「いいって。私だって気づかないと思うし。」
「ほんと?怒ってない?」
「うん。あの時はイライラしてただけだから。」
「私てっきりV関係の話かと思ってた!最近毎日ずっと配信してるから、それで何かあったのかと思ってた。悩んでなんてないんだね?それならよかった。」
やっぱり今まで気づいてなかったらしく、ペコペコ謝ってきた。私が先に言っておけば何もなかったかもしれないのになんかとても申し訳ない気持ちになった。
「今日一緒に帰ろ?家まで送ってってあげる。」
「ありがとう。」
間宮さんが家まで送ってくれることになった。マジでありがたい。正直家までたどり着けるかどうか不安だったのだ。
雨上がり、2人だけの帰り道。なんか恋人みたいだ。空に虹とか出てたら最高だがさすがに探しても出なかった。
てか、もうそろそろ夕日が落ちかけてきて空はオレンジ色だ。今何時なんだ?
「あの、さ、ひとつ聞いてもいい?」
「ん?」
「今何時?」
「18時のちょっと前だよ?」
「は!?こんな時間まで残って何してたの!?」
「え?美海の切り抜き見てた。この前の同期コラボのやつ。面白かったよ。」
どの配信だろう。まさかASMR配信じゃないよな!?あんな恥ずかしいの聞かれたら今度こそ死んでしまう!
「ASMR配信のやつはえっちすぎるから見ないで?」
「ううん?ちょうどいいよ!」
え、これがちょうどいいって?間宮さん、あなたも結構そっち系が好きな方ですか?てかやっぱり見てたんですね〜。
「私からも聞いていい?」
「うん?」
「なぎちゃんってなんで僕って言うの?初配信の時は何かキャラを作ろうとしてたのかなって思ったけど、さっき怒った時も僕って言ってたよ?」
「そ、それは...私が男の子好きじゃないから...?」
これは意味不だ。即興で考えた嘘でも酷すぎない?何言ってんだ私。
「そ、そうなんだ。そうだよね。うん。」
なんか納得された。一体なにを納得したんだ?
まあ、そんなこんなで私の家にたどり着いた。
「そうだ、今度コラボ配信しない?」
「え?間宮さんと?」
「え?だめ?」
「ん〜、とりあえずマネージャーに確認してみる。」
「うん。それがいいよ。良かったらまた連絡お願いね?」
「うん。」
「楽しみにしてる!」
「うい。」
「またあした!」
「バイバイ!」
やっぱり凄いな。間宮さんは。クラス委員長としても配信者としても。
なんか今日は色んなことがあった一日だったな。本当に友達って難しい。コミュ障にはハードルが高い。次はコラボ配信か〜。ソラカラ人としか配信したことがないが、正直楽しみ。仲のいい人と配信なんて楽しいに決まってる。
てか、アレの日さっさと終われよ!はよ夏来い!梅雨終わってくれ!
会話のテンポが悪いのは私と渚がコミュ障だからです。
挿絵っていります?実現するとは限りません
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別にいらない
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あった方がいい、いる
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絵を描け
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小説書くのに集中しろ