何も無い分、余計に美味しい。
私は次の日の朝11時目を覚ました。
今日は学校を休んだ。
今は何も考えたくない。
私は配信部屋で電源がオフのパソコンの私の顔が映る真っ黒な画面を眺めてぼーっとする。
何時間こうしていたのだろうか。
私のメンタルはボロボロで、悲しい感情、苦しい感情が混ざったような気持ち悪い感情があった。
生理の前後は感情が不安定になるって言うし、多分それに違いない。
私はまた寝ることにした。
明日には治っているだろう、と。
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目を開ける。
今何時だろう。ぼんやりとした頭でそう思う。
スマホで時刻を確認する。
あれ、電源がつかない。あ、電池が切れたのか。
私はスマホに 充電ケーブルを挿し、仕方なくだるい体を起こし、リビングの掛け時計を見に行く。5時半。もう朝だろうか。1日寝るなんて初めてだ。でも、そこまで長時間寝た気がしない。
気分もあまり変わらない。まだ、沈んだまま。
ぐ〜。
腹の虫が鳴く。1日何も食べてないのだから当たり前か。体は正直なようだ。
私は冷蔵庫の中を覗く。あいにく、冷蔵庫の中身はほぼ空っぽ。
「腹減った...」
窓を覗くと外は明るい。ん?太陽が西にある?ってことは夕方?ああ、だからそこまで寝た気がしなかったのか。
私は外に出たくないが、腹が減って仕方ないので海の近くのコンビニに買いに行くことにした。駅前のコンビニの方が近いのだが、できるだけ人に会いたくない。
5分ぐらい歩いてコンビニに着いた。腹が減った、と言っても食欲はそこまでない。私はおにぎり1つとお茶を買った。
コンビニを出たところで堤防が目に入る。私は堤防に腰かけた。なつかしいな。レン先輩とここで遊んだの。
風が涼しい。
下を見るとこの前配信した時と同じ服装。上は白のTシャツ、下はジャージ。なんともダサい格好。しかも、そのまま寝たのでくしゃくしゃだ。
「ダサいな、私。」
右のポケットに財布があって座りづらかったので外に出す。左足の違和感に気づく。ん?なんだこれ。左のポケットになにか入っている。
ポケットから取り出すとそれはスマホだった。VTuberになった時に会社から支給されたスマホ。ツイートした後、そのままポケットに入れたままみたい。
まだ充電が残っていた。12%。
見ると色んな通知が溜まっている。
たくさんの人からのメッセージやリプ。
ほとんどが私のことを心配してくれているものばかり。
ソラカラの人達からも「大丈夫?」とか「元気だして」という言葉が送られてきていた。
また泣きたくなる。どれだけ泣いたら気が済むのだろう。でも、今はグッとこらえる。
私はまた昨日のことを思い出す。
みんなの期待に応えられない私。
そもそも私はここにいなかった存在。いてはいけない存在なのかもしれない。女子にならなかったらここにはいない。女子にならなかったら、田舎で今まで通り1人で好きなことをして何も無い日々を過ごしていただろう。
でも、今はそんな生活は考えられない。私の周りには同期がいて、先輩がいて、友達もいる。そして何より、私を見ている視聴者がいる。私は今まで配信してきた中でどれだけのことをやらかしただろう。方々に迷惑をかけ、自分でも苦しんだ。そんな私は、私を見てくれている人の期待に応えられていない気がしてならないのだ。
そんな私は、人にお金を貰うなんてしちゃいけない。できない。したくない。
今回もまた泣き出して途中で配信を終わってしまった。
あー、確かに配信でお金もらって突然泣き出してたりする奴がいたら『きもい』わな。ははっ。
もう、VTuberやめよかな──────
──────みうちゃん!
あれ?誰かに呼ばれた気がする。
「───みうちゃん!!」
ん?誰だ?
「やっぱりここにいた!」
振り向くとレン先輩が立っていた。
「みうちゃん!」
「レン、先輩...!」
私は目をそらす。
「何してるの?ここで。」
「な、なんでもないです!」
「嘘でしょ。」
「嘘じゃない、ですよ。」
「嘘。だって、泣いてるじゃん。」
「あっ...」
私は泣いていることに今言われて初めて気づいた。
我慢してたはずなのに。
泣いていることに気づいたからか、先輩の顔を見たからか分からないが、涙が湧き出る。
先輩は私をギュッと抱きしめた。
「せ、先輩...!」
私は先輩に泣きつく。
「どうしたの?」
「私...!私!」
喉の奥で言葉が詰まってなかなか出てこない。
「大丈夫だよ。大丈夫。」
先輩は私の頭を撫でながら、泣き止むのを待ってくれた。
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「レン先輩。VTuber、私には無理かもしれない。」
「...どうしてそう思ったの?」
「えっとね、視聴者さん達の期待に応えられてないなって思った。だから、お金なんて受け取っちゃいけないって。だから、向いてないのかもって。」
「...」
「『私』は本当はここにいない存在。いてはいけない存在なんだって思っちゃった。」
「みうちゃん、今何言ってるかわかってる...?」
「わかってますよ。」
「わかってないよ!」
先輩が叫んだ。
「先輩...?」
「あ、ごめん...。でも、みうちゃんはここにいなきゃいけない。少なくとも私にとってはね。」
「え...?」
「私はいつもみうちゃんに元気もらってる。通話で話す時もそうだし、配信だってそう。いつも楽しい。辛いなって思った時でも、みうちゃんの声で癒される。」
「うん...」
「みうちゃんのやらかしの切り抜きとか、かわいい声の切り抜きとか、この前のASMR配信の切り抜きなんて何回も、何十回も聞いてるんだから!」
「う、ん...?」
あれを何十回も...?それってやばくない?
「あ...!と、とにかく、みうちゃんは私にとって必要な人。多分みうちゃんを見てる人たちもそう。みうちゃんが好きでみうちゃんに会いたいとすら思ってる、と思う。」
「じゃあ、みんなの期待に応えられないのはどうすればいいんですか?」
「応える必要なんてないよ。」
「え...?」
「だって、みんな今のみうちゃんが好きなんだもん。」
「え、そうなの?」
「そうだよ!完璧なんてつまんないよ。完璧じゃないからこそ応援したくなるってもんでしょ!今はみんなポンコツなみうちゃんが好き!」
「ポンコツって...。フフっ」
「あ、やっと笑った。」
「へ?」
「ううん?なんでもない。今日もみうちゃん可愛いなって、思っただけ。」
「なんですかそれ。」
「まあ、とにかく収益とかスパチャとかはみうちゃんにもっと頑張って欲しいから、みんながみうちゃんのこと好きだからあれだけ投げてくれるの。だから、自分がどうだとか思い詰めちゃダメ。みんなのお金、ありがたく受け取っておきなさい?それで、みうちゃんはみうちゃんらしく頑張ればいいのよ。」
そうか。そうだったのか。
私はようやく気づけた気がする。私にみんながお金を出す意味。単純に読んで欲しいとかそういうのはあるだろうが、それ以上に何かがある。私はそう思った。
「うん...。ねぇ、先輩?」
「何?」
「私、先輩みたいなVTuberになれますか?」
「ん〜。ダメよ。私みたいになっちゃダメ。」
「な、なんでですか?」
「私みたいないろいろやっちゃいけないことをやる人にはなっちゃダメ。それに、みうちゃんはみうちゃんらしくなりなさい。」
「...私らしく?」
「そう。みんなを笑顔にするんでしょ?」
「...!」
「そういう事ね。わかった?」
「はい。」
「家に帰りましょ。」
「はい!」
赤色の空は深い青の海を明るく照らしている。
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私は私らしく。僕は僕らしく。
挿絵っていります?実現するとは限りません
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別にいらない
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あった方がいい、いる
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絵を描け
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小説書くのに集中しろ