「ではまず、イベント当日の大まかな流れについて説明します。」
色々あったが、ようやく打ち合わせらしいことが始まった。私たちは配られたプリントに書かれたことが説明されていく。
「最初にトークイベントがあります。まあ、これは普段の配信でのコラボと変わらないです。リアルに観客が目の前にいるというだけで。台本はこちらで準備するのでそれに沿ってあとは自由にやってもらっていいです。」
トークイベントか...これはまだ大丈夫....かな?でも、普段見えない視聴者たちのリアクションがガチで目の前で見えるというのは少々怖い。滑ったりやらかしたりしちゃったらヤジが飛んできそう。
「次はファンの方と1対1でトークできるイベントをやろうと思っています。」
「い、1対1!?」
「みうちゃん....」
みんなが心配そうな顔で見てくる。私が何かやらかさないかの心配か、それとも私が1対1で知らない人とお喋りなんてできるのかという心配なのかはこの際考えないようにしよう。
「午後はライブの予定です。各自2曲ずつ歌ってもらって最後に5人で歌ってもらおうと思っております。これからダンスや歌のレッスンがあると思いますが、頑張ってくださいね!」
「質問〜!みうちゃんはLIVE2Dしかないけど、どうするんですか〜」
ないす!よくぞ聞いてくれたレン先輩!そこは正直1番聞きたかったところだ。
「美海さんの3Dライブ衣装は現在プロジェクト進行中です。が、夏のイベントには残念ながら間に合わないそうです。」
「そっか...」
「残念だね、みうちゃん...」
「ですので、動くことは出来ませんが、画面に蒼井美海のLIVE2Dを表示して歌ってもらうことになります。」
まだデビューして間もないし仕方ないっちゃ仕方ないんだけどさ...なんかこう、コレジャナイ感ってあるよね。
「とりあえず、大まかな説明としてはこんな感じです。時間などはこちらで調整してからお渡しするので把握お願いします。」
「はい。」
「では、これからライブで何を歌いたいかみなさんで決めてください。デュエットしても構わないですが、1曲はソロでお願いします。」
「分かりました。」
「私は今日ちょっと用事があるので決まったら私のところに連絡ください。詳細な事が決まったらまた連絡しますので。」
と言って阿部ちゃんは一礼して部屋を出ていった。阿部ちゃんはちょっと硬すぎるなぁ。もうちょっとリラックスして笑ってくれればいいのに...美人さんが勿体ないなぁ。
「じゃあ、私たちも帰るね。」
みかん先輩とレン先輩が立ち上がった。
「え、なんで!?これから決めるんじゃねーのかよ。」
「ごめんね、プライベートの用事が...」
「あ、それなら仕方ないな。」
「じゃあ、VCで決めないか?そっちの方が早そうだし。」
「そうだね、今夜10時ならみんな大丈夫?」
「はい。」
「けってーい!そういうことだからよろしく〜。」
と言って2人は走って部屋を出て言ってしまった。
私も「今夜かぁ、」と思いながら家に帰るのであった...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま〜」
「おかえり〜」
家に帰るといつもは無いはずの返事が帰ってきた。そう、今日はお母さんが仕事が休みで家にいる。つまり、あまり騒げない。だから、今日は配信はなし。
お母さんはリビングでたくさんの資料とパソコンを使って仕事をしていた。
「お疲れ様。」
「そっちこそ。家で休みの日なのに仕事してるじゃん。」
「いいのよ楽しいから。」
「そっか。」
「私もこれから作業するから。」
「 あ、ちょっと待って。この前のテストどうだった?赤点とかない?」
「あ、う、う〜んと?な、ないよ?まあまあ?」
「ふーん?ならいいよ。」
ふぅ、危ない危ない。これはヤバい。次回のテストは赤点無しにしないとな。
私は部屋に行って作業を始めた。明日の配信のための準備。明日は前からやってた古いノベルゲームの配信続きをする予定。前回は女主人公が幼なじみとの恋愛イチャラブシーンに行く雰囲気の直前で終わった。なので配信タイトルはこんな感じ。
♯3【こめはや】私をあなたの彼女にして?【蒼井美海】
彼女にして?って言うのはなんか抵抗あるが、この方が視聴者が来てくれそうなのでこれにする。
あとはサムネ作り。これがまたいいものにしたくて結構悩んでしまう。画面にいい感じの蒼井美海の絵と文字を打ち込んでいく。
よし、できた。
「渚〜、ご飯できたわよ〜。」
お母さんが呼ぶ声がしたので私は食卓へ向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「渚、今日は何してたの?」
「ん〜?打ち合わせしてた。」
「打ち合わせ?何かあるの?」
「あー、8月にイベントやるんだってー」
「へぇ、いいわね。私も行っちゃおうかしら。」
「え〜だめだめ!来るな来るな!」
「冗談よ、冗談。」
うちのお母さんはこのVTuber活動に理解がある。私がVTuberをやることになった時も私はやりたくなかったのだが、『何事もチャレンジ!!』とか何とか言って進めてきたほど。父が音楽家だったので私が世間一般に見られるようなそっち系の世界に足を踏み入れることも、私が将来そういう風になることも、少しは想像していたかもしれない。
だからといって、お母さんの仕事も楽しんでやっているみたいなので、邪魔はしたくない。なので、お互い、やっていることについてはあまり突っ込まないようにしている。
カシュッ
「今日飲むの?」
お母さんは普段はあまり飲まないのに缶の蓋を開けた。しかもでかいヤツ。ストロングなヤツ。
「だめ?たまにはいいじゃない、休みの日くらい。」
「まあ、うん、そうだね。でも、程々にしてよ?後々めんどくさいのこっちなんだから。」
「はいはい。分かってますよーだ。」
お母さんは酔っ払うと息子の私にもだる絡みしてくる。それでお母さんが寝るまで私が付き合わされることになる。それは嫌だ。酒臭いし。めんどくさいし。
「あ、そうだ。この後通話するから部屋入ってこないでね。」
「わかったよ。」
「くれぐれも、飲みすぎないでね?」
「はいはい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ライブだー!やったー!」
通話を繋げた途端、みかん先輩が叫ぶ。
「何歌おうかな〜!」
レン先輩はとてもわくわくしてる。
「つい来たか...」
「ですね...」
男どもはなんか戦慄している。なんで?ライブだぞ!?楽しいに決まってる!なんでそんな浮かない感じなんだ?と思ったので聞いてみる。
「どうしたんですか?」
「そうか、みうちゃんは知らないよな、そうだよな。」
「....、?」
「この真夏のイベント...練習の時から当日までの地獄...」
「ん?どういうことですか?」
「あのな?このくそ暑い中、ダンスと歌の練習をしなくちゃならんのよ。」
「あ....」
「ようやく気づいたか。しかもそれでダンスの先生がかなりきついんだよ。去年はまじで死ぬかと思ったよ。」
「そんなになんですか?」
私の質問にみかん先輩が答える。
「ん?そんなことないよ?あの先生優しいし、私たちのペースに合わせてやってくれるよね?」
「そうですよね!」
あれ?男勢と女勢で反応が違うようだ。これはどうやら女の方が楽っぽい?
「それにイケメンなんだよ!みうちゃんみたいな美少女の男バージョンって感じのさっ!」
「わかるわかる!!」
どうやら女子ウケのいい先生っぽい。よかったぁ。女子になってよかったぁ。
「みうちゃんも多分好きになっちゃうよ、あの先生のこと。」
「あー、そうだよね。みうちゃんチョロそうだもんね。変な男に引っ掛からないようにしてよ?」
「え、えぇ...」
私チョロくない!!そんなホイホイついてったりしないから!!てか、男無理だし?
「みんな本題覚えてる?曲決めるのよ?」
脱線しかけた話をみかん先輩が戻す。こういうところはさすがって感じ。
そして、先輩たちは歌いたい歌をすでに何曲か候補があったみたいでスラスラと決めていった。みんなそれぞれオリジナル曲を持っていて、それとカバー曲を歌うっていう感じになった。
「私は何歌えばいいんでしょうか...?」
「ん〜、みうちゃんは最初のライブだし、歌いやすいのがいいんじゃない?普段歌枠とかもしてないでしょ?」
「はい。」
「ん〜、本当はみうちゃんが歌いたい曲がいいんだけどねぇ。あれとかどうかな。みこみこ。さんのボカロ曲。」
「み、みこみこ。さん!?」
「あれなら歌いやすいよ。みこみこ。さん本人も歌ってるし、ボカロ曲にしては歌やすい曲ばっかりだから。」
「そ、そうですね。ありがとうございます。」
みこみこ。さんの曲か...。それは大丈夫かな。色んな意味で。まあ、確かに歌いやすいのはそうなんだけど、ね?友達の作った歌か〜。そう考えるとなんか変な感じだな。
「でさ、5人で歌う曲は?どうする?」
「あ、それなら男子たちにちょっと提案があるんだけど。」
「ん?何だ?」
「さっきみんなが通話に入ってくる前にレンちゃんと話してたんだけど、バンドやらない?」
ばんど!?まじ?たしかにやりたいとは言ったが...やった!やりたすぎる!
「バンド!?」
「そう、バンド。」
「あ〜、あれか、レンとみうちゃんがやりたいって配信で言ってたヤツか。」
「そうそう。」
「俺はいいですよ!」
「僕もいいよ。」
「それじゃ決定!!」
「みうちゃんもそれでいい?」
「いいですけど...」
「けど?」
「皆さん楽器出来ますか?」
「「「「全然」」」」
この人たち正気か。
「残り2ヶ月弱でダンスと歌と楽器を覚えなきゃいけないですよ?」
「みうちゃん、ソラカラを舐めてもらっちゃぁ困るぜ!」
みかん先輩は自信満々にそう言った。ほんとに大丈夫なのだろうか。なんか不安になってきた。
ガチャ
急に部屋のドアが開いた。
「え?」
「渚〜。ここにいたのぉぉぉ〜?」
お母さんだ。ベッロベロに酔っている。
「なにごと!?」
「お、お母さんです。」
「お母様!?」
「お母さんあっちいってて!大事な通話中だから!うわっ、お酒臭っ!」
「いいじゃない〜。は〜いみんな〜。こんみう〜。ソラカラ3期生の蒼井美海の母でぇ〜す〜!ちゃんと配信してるぅ!?」
「配信はしてないから!先輩方に恥ずかしいの見せないでよ!」
「ん〜?何これぇ?サムネかしらぁ?私をあなたの彼女にして?あら〜、渚ももう
「ちがうから!これ配信タイトルだから!あっちいってて!」
「ぶぅ〜、しょうがないなぁ!」
「はいはい。行った行った。」
「じゃあ、みんなばいばい〜!おつみう〜!」
「ふぅ、...お恥ずかしいところをお見せしました。」
「いいよ〜、お母さんいつも家にいないのに今日はいるんだ?」
「はい...、今日はたまたま休みなんです。」
「娘思いのお母さんだな。」
「なんかほっこりした。」
てか、お母さんこんみうとかおつみうとか言ってたな。もしかして私の配信見たことある?
「んんん...ふぁぁ〜...」
なんだかとっても疲れた。今日打ち合わせだけでも疲れたのに、それよりも今の一瞬で疲れた気がする。
私は大きなあくびをしてしまった。
「あれ?みうちゃん眠い?」
「....うん」
「今日はもう終わりにしとく?」
「...いや、もうちょっといけます。」
「あ、そう?」
「ねぇねぇ、このチームでやるからにはもっと仲深めたいよね〜?」
「うん?」
「ねえ!バンドでやる曲は楽器とか色々あるからまた今度決めて今からゲーム配信しない!?」
「みかん先輩!?」
「まーた始まったよ、みかんの突発的なゲーム配信欲。まあ、いいけどさ!」
え、これよくあることなの?今日配信しない予定でいたのに、まあ、いいか防音室だし。お母さんももう寝るだろうし(酔ってるし)。
「よし!スマ○ラやろ!配信は私のところで枠とるからさ。」
げ、スマ○ラか...
またやばい事になりそう...
一応TSなんで、女の子になったすぐの頃のあれこれいろいろの番外編みたいなのいると思います?
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いる
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いらない