日曜日、事務所に行ってきた。
大人はみんなスーツ着て固い感じなのかと思ったら、全然そんなことなく、結構フリーな感じだった。
事務所に着くと早々に僕のマネージャーになるという阿部さんに会った。
本当に自分であっているのかなどをと問いつめたいが、そんな勇気などあるはずもない。
契約とか機材とか配信の仕方とか色々教えてもらった。自分が持ってない機材はなんと会社が用意してくれていた。
阿部さんは「一緒に頑張って行きましょう!」っとあまり乗り気ではない僕に明るく話しかけてきた。コミュ強やん。
普段そんなに話すことの無い僕は、VTuberなんてやってけるのか不安だった。すぐにクビになるに違いない。デビューは2週間後と言われた。
ちょっと早すぎやしないか?とは思っていたがこれまた言える訳もなく。
次の週、同期となる3期生の自分を含めた5人とマネージャーさんとで通話で打ち合わせをすることとなった。自己紹介だけをし、あとは流れが説明された。僕はなんとトリを任されてしまった。
なんでこんな陰キャを最後にしますかねぇ?え、無理無理無理。とは言えない。
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時の流れ早すぎ。初配信の日。僕は心の準備なんてできていなかった。機材などはマネージャーさんから説明を受け、何とか設置できた。編集ソフトなどは元々触ったことはあったので何となくわかった。今は、同期達が順番に初配信をしている。なんかみんなとっても自由ですごい。チャット欄はとても大盛り上がり。
ちょっと前に公式ホームページのプロフィールを見た。僕がなるのは蒼井美海。「高校2年生の女子高生。おちゃめな性格と可愛いのが好き。」である。
え、僕と真逆じゃん。
同期のことを見てみると一応、みんな学年はバラバラだが、高校生という設定だった。
中でも、気になったのが
なにこれ、僕と真逆じゃん。
そして、ついに自分の前の順番の鈴音奏が配信を始めた。僕はそれどころではなく、緊張しまくりです。
あぁ...お腹痛くなってきた。また今度にしません?
鈴音奏はどうしてVTuberになったのか語っていた。見た感じとっても元気なJKだった。
「私、みんなからは頼りにされてると思うの。」
コメント:うん
コメント:へぇ〜!
コメント:自分で言うかw
コメント:俺と真逆やん
コメント:委員長だしね
陽キャだ。
「みんなから頼られて動いてるだけで、自分から動いたことがあまりないなと思ったの。」
「私は自分の能力が活かせる場所を探していたの。だから、私をみんなに見てもらいたくて、VTuberになりました!」
コメント:すごいやん!
コメント:かっこいい!
コメント:行動力のバケモン
コメント:かっこいい!
コメント:さすが委員長
え、それだったら僕だったら満足ですよ?
僕はいちいち悪態をつく。
「いつまで待っていても仕方ないから自分から行こうってね!」
急にドキッとした。
キラキラしたその声に。
本人は「本当はバイトがクビになったから、お金が欲しかったんだけどねぇ!あはっ!」と流してコメントで色々ツッコまれてたけど。
文句しか言っていなかった僕にその言葉がとても心に刺さった。
今までは、なんでこんなことになったのか、どうすればいいのかなんて分からず、ただただ逃げていた。
でも、こうやって自ら進もうとしている人だっている。この時は自分もそうでありたい、と思った。
まるでVTuberを初めて見た時や、誕生日ライブを見た時と同じ気持ちだった。
でも、少し違う。これからは自分もVTuberになるんだ。うだうだしてたって何も変わらないし、いつ男に戻れるかなんて分からない。だったら自分もみんなに認めてもらえる、キラキラした存在になりたい。
そして決意した。
いつか、ここでこの世界で頑張って頑張って認められるように。
ダメなことなんてないんだから!!
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私の心は落ち着いていた。
次回ようやく初配信です。