甘いりんご飴としょっぱい渦巻くポテトと柔らかいわたあめと。
覚えているだろうか。今日がなんの日か。女の子たちが浴衣を着て、男子はラフな格好で来るイベント。人混みの中、離れないように手を繋いじゃったり、打ち上げ花火を見ながら告白したり付き合ってるリア充はキスなどをするあのイベント。
そうつまり陽キャ達のためのイベント。
そう、それは夏祭りだ!!
はい。
私は今家の玄関の前にいる。そして、らんちゃん、さきちゃん、間宮さんもいる。今日はいつかの約束、夏祭りに行く日であるんだけど....
「行けないじゃ〜ん!!」
「まじぃ?なんで怪我してるの!?」
「あ....言ってなかったわ。」
「ほんっとうにごめんなさい!」
私は思いっきり頭を下げる。
ごめんよみんな。足のせいで....
「てか、ななちゃん知ってたんだ。」
「なんでななちゃんだけ知ってるの?」
にやにやしながら私と間宮さんを見てくる2人。この2人は私たちのことをどうやって思っているんだ?
「ごめんね?私たち、そういう仲だから....ね?」
「ね?じゃないでしょ。違うから。断じて違うから!」
「そんな否定しなくてもいいじゃん。悲しいよ。」
「ごめん。ねぇごめんって。」
「で、そんなことよりなぎちゃん、神社まで行ける?」
「えぇ....唐突に終わるのかい!」
「んー、車椅子があればなぁ。」
「えー、それだと車とか人混みとか危なくない?そもそも車椅子無いし。」
「無視!?」
「そうね〜、誰かがおんぶしてく?」
え、おぶられるの?女子に?女子におんぶされるってことは密着するってことじゃん!まじ?
「でも、流石に私たちじゃ神社まで運べないよなぁ。ん〜....あ、いい所に。おーい!」
間宮さんが道の反対側を歩く男性に声をかける。誰だろう。
その男性が車が来ないのを確認しながら私の家の前まで歩いてきた。何やら間宮さんがその男性に話しかけると、男性は私の方を向いてこちらの顔をじっと見てくる。
「だ、だ、誰ですか?」
最近は知らない男性と面と向かって喋ってなかったから妙に恐く感じる。先輩方とのコラボで鍛えられてるはずなんだけどなぁ。やっぱりリアルでは怖い。
そんな私の考えは一瞬で取り払われた。男性の柔らかな声が私に届いた。
「やぁ、こんにちは。僕は陽太っていいます。いつも君の話はななこから聞いてるよ。実は僕もこれから祭りに行こうと思っててね、ななこから頼まれたんだけど、君をおんぶしていくよ。」
「あ、ありがとうございます。」
予想以上のイケボで近くで見たら顔がすごくカッコイイ。私でも惚れちゃいそう。
そこでふと、疑問が頭に浮かぶ。ななこって言ったよな?間宮さんのことを名前で呼び捨てするなんて。よっぽどの関係のはずだ。仲のいい友達、親友、又は彼氏?
そうだよな、間宮さんも彼氏の1人や2人くらいいるよね....
ってか、これじゃあ女子の背中堪能できないじゃん!!まあ、祭りに行くなら仕方がない。男子の背中なんて全く興味無いし?
「じゃあ、お願いします。」
「はい。」
と言って陽太さんは私をおぶろうと私に背を向けた。その時!!!
「「ちょっとまったぁぁぁ!!!」」
「!?」
らんちゃんとさきちゃんが突然大声を出した。私はその声に驚いて尻もちを着く。一体なんなんだと言うのか。
「何?」
「まさかなぎちゃん、その格好で行くつもり!?」
「え、ダメ?」
私の格好は別になんの変哲もない、Tシャツにショートパンツ。夏は暑いのでなるべく肌を覆う布面積が狭い方が涼しい。
「ダメだよ?私たちとおそろいにしてもらうから。」
「え〜?」
「え〜?じゃない!」
ちなみにらんちゃんさきちゃん、そして間宮さんの格好は浴衣。みんなとっても似合ってるし、可愛い。とか、思ってる場合じゃない!多分この流れは....
「陽太さんごめんなさいね?ちょっと着替えてきますんで。」
ああ、めんどくさいのが始まってしまった気がする。私は足のせいで動けないから行かないつもりだったのに〜。家でゲームする予定だったのに〜。←嘘
私は家の奥まで連れていかれ、何故かさきちゃんが持ってきていた浴衣に着替えさせられるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
は、恥ずかしい....いや、苦しい。
私の浴衣姿、可愛いとは思うが普通に恥ずかしい。男の人におんぶされてるのが余計に。普通、慣れない格好でお祭り行って靴擦れとかしちゃって、帰りにおんぶされるもんじゃないの?そういうシチュエーション1度は人生でしてみたかったなぁ。まさか、祭りの前から
「重くないですか?」
「お、重くない、よ?」
あ、これ重いヤツだな....そうだよな最近運動してないもんな。レッスンの時も阿部ちゃんに車で迎えに来てもらっちゃってるし。
怪我治ったら、ダイエットしなきゃだな。うぅ....
てかさっきから胸を陽太さんに押し付けてる気がする。大丈夫かな....
「大丈夫ですか....?」
「だ、大丈夫だよ?」
「そうですか...」
後ろからじゃ顔はよく見えないけど、耳が赤くなっている....これは私じゃなくて暑いせいだといいのだけど....
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「着いたよ」
「おー、やってるやってるー」
神社に着くとたくさんの人が屋台の食べ物や出し物を楽しんでいた。このお祭りは屋台が沢山並んでいて、それを楽しむ祭りである。そして、午後8時になると花火が上がるらしい。
「なぎちゃんこれからどうする?」
「私はあそこのベンチで座ってるよ。この雰囲気だけでも楽しいし。陽太さんに迷惑だろうし。」
「じゃあ、私たちが食べ物買ってくるね!えーっと、何食べたい?」
「うーん...みんなが食べるものと一緒がいいな。」
「おっけー!分かった!」
そういうと3人は人混みの中に消えていった。
私と陽太さんだけが残る。
「あれ?陽太さんは行かないんですか?誰かと一緒に回ったりしないんですか?」
「あ、いやぁ、それがね?あんまり人に言いたくないんだけど、この前彼女にフラれちゃってね....この祭りも一緒に来る予定だったんだけど、ね、ははは。諦めきれないんだ....どうせ彼女は来ないけど、もしかしたらって思っちゃって、ね。屋台とかが目的では無いんだよ。」
「あ、そうだったんですか....なんかすいません。ちなみに、なんで別れたのか聞いてもいいですか?」
「いいよ。えっと、VTuberってわかる?」
「んっ、わかります。」
「VTuberのソラカラっていう箱があるんだけど....」
「っ!?」
「どうかした?」
「い、いえっなんでもないです!」
び、びっくりしたー!思わず反応しちゃいそうだったよ。急にそういう話題を出されるとマジで心臓に悪い。
「そのイベントが今度、あと二週間後くらいに開催されるんだけど、そのイベントの日が彼女の誕生日でね。そのことをすっかり忘れて予定を入れちゃったんだ。それで、イベントに行くことを彼女に伝えたら、信じられないっ!!って言ってどっか行っちゃってね...。」
「う、うわぁ....」
私たちのせいで彼女さんと別れたなんて、なんか気持ち悪いな。ん?私たちのせい?違うな。誕生日を忘れていた陽太さんのせいだろ!!これ!
「あー、それは....あなたのせいですね。」
「そうだよ。そんなことわかってるよ。でも、彼女も好きだし、同じくらいソラカラも好きなんだよ!ソラカラ
「それ、言い訳になってないですよ。」
ソラカラを好いてくれているのは嬉しいけどさぁ、もうちょっと考えることあるよね。恋愛経験なしの私でもさすがにやばいと思うよ。こんなやばい人の近くにいたらこっちまでやばいかも。こういう時こそ逃げだよね。
「あ、ちょっとトイレ行ってきます。」
「大丈夫?一人で行ける?連れてってあげるぞ。」
あ?煽りか?そのイケメン顔とイケボで言われるとどうしても光くんが頭に浮かぶなぁ。ってか、女子トイレまで着いてくんな!
「この距離ぐらいなら行けますよ。」
私はベンチから10メートル位離れたところにある、神社のトイレに向かう。
「おっとっと」
人がいるところでなれない服装での片足移動は難しいな。
「うわぁ!やべ!」
私が転けそうになるところで、後ろから誰かに支えられる。
後ろを振り向くと間宮さんが支えてくれていた。
「大丈夫?一人で動くと危ないよ。」
「ごめん。この距離なら行けるかなって....」
「お兄ちゃんに頼めばよかったのに。」
は?お兄ちゃん?そんな人いた?
「お兄ちゃんって?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃん。あれだよアレ。」
間宮さんが指を差した方向を見るとそこには陽太さんがベンチに座っている....
もしかして、いや、もしかしなくても、間宮さんのお兄さんなの!?え!?美男美女の兄妹ってか!?でも、顔は似てないよ!男女の差はあるかもだけど全然似てない!
「えぇ...まじか」
「ん?どうかした?」
「あ、えっと、全然似てないなって。」
「そうなの、よく言われるー。」
「美男美女だね。」
間宮さんはわざとらしく照れる。
「そ、そんなこともぉ、あるけどぉ?」
「認めるんかい!」
「....なぎちゃんなんか変わった?」
「え?」
「なんか前はそんなツッコミとかしなかったなぁって思ってさ。」
「そうかな?」
たしかに、最近は先輩方とのコラボで先輩たちが私よりやばい行動をする人が多いので最近はツッコミが多くなったかもしれないな。
ひゅーるるるるドーン!!✺⋆*
花火が上がった。
「花火だ花火!」
「綺麗だねー!」
ドンドンドン!
たくさんの色の美しい花火たちが打ち上がる。その光が私たちの顔を照らし出す。横を見ると浴衣姿のかわいい女の子が花火に夢中になっている。私はその子に話しかける。
「ねぇ、間宮さん....いや、ななちゃん。」
「ん?何?」
「ななちゃんってソラカラのこと好き?」
「もっちろん!ソラカラのみんなは大好きだし、みうちゃんはもっと
「そっか...よかった。」
嬉しいなぁ。こんな子も私のファンでいてくれるなんて....最後の大好きー!!って言うところなんて、陽太さんに似てたな。やっぱり兄妹...か。兄妹でソラカラファンなんて、そうそういないかもな。
「ねぇ、なぎちゃんに私も言いたいことがあるんだけど。いい?」
エモい気持ちになってきた。なんだろう。愛の告白かな?それだったら是非OKするよ。
「私、VTuberになりたい!!」
「へ???」
一応TSなんで、女の子になったすぐの頃のあれこれいろいろの番外編みたいなのいると思います?
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いる
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いらない