今回はイベント前編です。
『ソラカライベント「Colorful Sky Day3」スタートです!!』
イベント会場が開場された。人がぞろぞろと入ってくる。
今日の予定は先に5人で運営が用意した企画をして、その後に1対1トーク、そしてライブだ。
でもまあ、最初はほぼ雑談みたいな感じ。運営さんが出したお題、質問についてNGなしで答えてなんやかんやワイワイする。
アナウンスが流れると会場が静かになる。お客さんたちが注目する場所、イベント会場の大画面が真っ暗になる。いよいよ本番だ。
私はもちろん、とっても緊張している。コミュ障and陰キャなのでこんな大勢の前で話すなんてカチカチになるに決まってる!
会場内にBGMが流れ始める。お客さんたちはその曲に合わせて手拍子をする。
「いえ〜い!みんな〜!盛り上がってるか〜!??みんなのアイドル!!みかんちゃんだよ〜!」
みかん先輩が弾けるような笑顔で大画面に登場した。お客さんたちが大きな声で反応する。さっきまでのしんと静まり返っていた場所とは思えないほどの盛り上がり。私はモニターを見ながらでも、その熱気を感じる。
「今日はみんなと会えて嬉しいよ!今日は楽しんでいってね!」
観客がそれに応える。
「今日のメンバーを紹介します!!」
みかん先輩による紹介で先輩たちがお客さん達の前に出ていき、挨拶をしていく。みんな緊張している様子は全くなく、とってもキラキラしている。
....最後に私の番だ。気にしないようにしていても心臓がバクバクするのがわかる。やばいやばい。
私のLive2Dが画面に表示される。観客がわっと湧く。な、なんか喋らなきゃ!
「え、えぇっと?こんみう〜!ソラカラ3期生蒼井美海だよ〜!」
私の挨拶に観客が反応する。す、すごい...。私の呼び掛けにみんなが応えてくれる。なにこれ楽しい!!
この一瞬で、緊張なんてどっかに行ってしまった気がするよ。これなら行けるかも!
「みうちゃん!何か一言言って?」
みかん先輩に求められる。何を言おう。先輩たちはほとんどネタに振り切ってたけど、私もなんかそういうの言った方がいいのだろうか。
いや、なんか私がそれやったら絶対会場がシーンとしちゃいそう。私ってそういうタイプじゃないし?うぅ、えっとぉ...
「ん〜と、最近は晴ればっかりで暑いね〜。今日も晴れだし〜。」
「「え?」」
メンバーは微妙な顔をする。そして、会場がシーンとした。私がお天気デッキを使ったことで微妙な空気が流れてしまった。レン先輩だけはくすくす笑ってた。
「あ、あぅ...」
「え、それだけ?」
弱気な声を出してしまった。どうしてこんなところでひよっちゃうんだよ私っ!?
「えっとぉ....こんみう〜!」
「えぇ...それ聞いたよ。みうちゃん、ここは思いっきり言っちゃいなよ。」
レン先輩がこちらを向いてガッツポーズをしている。
「....よし!」
私は思いっきり気合を入れる。
「今日は私がみんなを笑顔にするぞ〜!」
最っ高の大声を出した。
「おおぉぉぉ!!!」
会場が再び熱気に包まれる。
レン先輩が満足気にこっちを向いて親指を立てていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さっきのステージで運営さんが用意したトーク内容で何故かゲームが始まり、負けた私が罰ゲームでデビューしてからの1番のやらかしを大声で言われた。ああ、恥ずかしかった。
私はモニターとマイクの前に座っている。
『これからトークイベントを開始しまーす。』
担当のスタッフさんの声がイヤホンから聞こえてきた。
ついにこの時が来てしまった。そう、ファンの人と1対1で会話しなくちゃいけないのだ。1分間ではあるが、コミュ障の私にとってこれが今日の1番の難関かもしれない。
『1人目の方ー。どうぞ。1分間です。』
このイベントは相手の映像が見える。つまり、本当に対人である。せ、せめて顔が見えなくして欲しかった。
「こ、こんにちは。」
「こ、こ、こ、こんにちは。」
最初の相手は男の人で、ちょっと緊張している様子。最近、男の人とあまり話してないせいで、どうすればいいか分からない。でも、こういうのはリスナーからなにか話すもんじゃない?少し相手の出方を見てみることにする。
「....」
「....」
「いや、何も喋らないんかい!」
「あ、いや、すいません。緊張で何を話したかったのか忘れてしまいました。」
「あ、あぁ...」
よく分かるよ。それ。私もよくなる。
「あ、あの....。たっくんって呼んで貰えますか?」
「え、あ、はい。」
こ、これは名前呼び要求か。こういうのは、先輩から求められて今までも何回かやっている気がするので、何となく躊躇いがない。
「たっくん、すk『時間でーす。』」
あぁ、時間切れか〜。たっくんごめん、最後まで言えなくて。
『次の方〜』
入ってきたのは女性....というかななちゃん!?えぇ!?
「なんでいるの!?」
「いや〜、1番目に並んでやろうと思ったんだけどね、さっきの男の人に先越されちゃった。」
「でも、2番目じゃん。」
「へへ〜、すごいでしょ!」
「へへ〜って....」
「あ、そうだ!なんか要求していい?みうちゃんのファンとして!」
「いいよ〜」
「大好きって言って?」
「う、またか....しょうがないなぁ。ななちゃん、大好k『時間でーす。』」
「ええ!?」
「バイバイ。」
「そんな〜。」
いいじゃないあなたは。後でいくらでも言ってあげるけらさ。ちょっとだけ待っててね。
『次の方〜』
次は....男の人か....ってえぇ!?今度は陽太さんかよ!?
「こ、こんにちは。」
「こんにちは!みうちゃん!!」
「は、はい!」
「語っていいです!?」
え?語るって何を?
「語りますね!まず、みうちゃんの好きなところは、やっぱり、いつもイヤイヤとか言ってるのに、最終的にはちゃんとやりきるところですね!本当に僕たち視聴者のために頑張ってくれてるんだなって感じてます!それ以外にも、色々言いたいことはあるんですけど、全部含めてかわいいんですよ!ほんとにこれだけ伝えれば十分です!ありがとうございました!」
『時間でーす。』
「えぇ...」
時間ピッタリで言いたいことだけ言って、自分で出ていってしまった。陽太さん、あなたそれでいいんですか?って感じ。
『次の方〜』
その後も色んな人が来た。色々とキツかった。うん。
『時間でーす。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今は午前中の予定が一通り終わって、今はみんなでお昼を食べている。
疲れた〜。午前中だけでほんと死にそう。もう喉がカラカラだよ。お昼ご飯をいっぱい食べたいところだけど、次はライブなので控えめにする。私だってステージでやらかしたくはない。
「いや〜、初っ端からドキドキしたよ〜。緊張ももちろんだけど、みうちゃんがお天気の話をしだした時はマジで焦ったね。」
司会進行のみかん先輩は私のことをすごく心配させていたようだ。
「レンちゃんナイスフォローだったな。」
「みうちゃんの扱いは任せてください!」
「扱いって、私をなんだと思ってるの!私はJKだぞ!!子供じゃない!」
「はいはい、まだJKだね〜。かわいいよ〜その髪型。」
「むぅ〜!!」
私の頭は先程、先輩方に好きなだけ弄り回され、来た時とかなり違う見た目になっていた。髪の毛は全て下ろしていたのだが、私には出来ない(出来るわけない)ようなかわいい髪型になっている。今まで、髪が長くなってもあまり触ってこなかったので違和感ありまくり。
「ほらほら、食べないとライブの時間に間に合わないよ。ほら、あーん。」
「もぐもぐおいしぃ。なでちゃんありがとう。」
「大丈夫よ。まだ、一時間半弱もある。ほら、こっちもあーん。」
なでちゃんとレン先輩があーんしてくる。この2人からあーんされるなんて幸せぇ。
....というか、さっきからレン先輩となでちゃんが睨み合っている気がする....2人とも怖い怖い。漫画やアニメみたいに目線の交差点でバチバチが見えそう。
なんでそんなに睨み合ってるんだ?前は2人で私に内緒で私について語ってたのに....
今朝、私がおんぶされてこの控室に来た時からこの2人が睨み合ってた気がするんだよな....なんでだ?
でも、私には関係ないよね。あーんされてるだけで他のことはどうでもいいよぉ。はぁ、幸せ〜。
「はい、ふたりとも〜?みうちゃんを取り合いしない!!」
みかん先輩が2人に静止をかける。
「だってみうちゃんは私のもnうぐっ!?」
みかん先輩の口に2人の箸で私の弁当の卵焼きが突っ込まれた。あ〜ん、私の卵焼きぃ...
みかん先輩は口を封じられた。
「ふいあへんえした;;」
もごもごと何か言っていた。