私たちはおすすめの料理を2人の元へ届けた。
反応は....まぁ、言わなくてもいいでしょって感じ。
「美味しくなーれ、萌え萌えキュン♡」
う、うわぁ....やりたくなかったぁ....
写真いっぱい撮られたし....あんだけ沢山とってどうするんだろう。変なことに使わないよね!?
今日は私は何かを失ってしまった気がするんだよなぁ。まあ、今更か....。
私が2人から離れてもニヤニヤしながらこっち見てくるし、正直めっちゃ仕事がやりにくかった。
....2人はしばらく席に居座っていた。(やめてくれ)
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「次の人達と交代だよー!」
ようやく終わりの時が来たー!よっしゃー!このメイドの仕事ともおさらばだっ!
いやー、いい経験だったよ。ほんと。いつかの配信で役立つかもしれないし。でも、自らやることは無いだろうな....
私が教室の隅で緊張と恥ずかしさと疲労で溶けていると、仕事を終えてもなおまだまだやり足りないというような感じのいつもの3人が私の近くに寄ってきた。
「なぎちゃん!早く行かないと!」
「....?」
「ライブだよ、ライブ!早く行かないと始まっちゃうよ!!」
「あっ、やっべ!そういえばそうだった...!」
ライブがまだあるじゃん!と思って教室の時計を見る。もうそろそろ私たちの前の人たちのステージが始まる頃だ。
私は急がなくちゃと立ち上がる。
「ほら、走って走って!」
ななちゃんに背中を押されながら教室を出た。
「体育館遠い〜!!」
私たちは急いで会場の体育館に向かう。メイド服のまま。人はまだまだ沢山居て正直危険だけど、人混みの中、隙間を縫うように小走りで向かう。メイド服のスカートは少し走りにくかった。
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ステージ横に着くと、やっぱり前の人達のステージが既に始まっていて、会場はそこそこ盛りあがっていた──────ダンスや歌を歌っているようだ。ステージ袖からステージを覗くと、見覚えのある人たちの姿が....というかVTuber、ソラカラメンバーのコスプレをしていた人達だ。す、すごい。ダンスも完璧だし、歌もちゃんとうまい。何よりコスプレの完成度!廊下ですれ違ったみかん先輩の人なんて完璧じゃないか!
私がオタクとして勝手に盛り上がってると、
「なぎちゃん!あれ見て!」
ななちゃんがステージを指さす。いや、それはステージではなくて、その先の反対側のステージの袖。その先には....3期生ぃぃ!?しかも、蒼井美海のコスプレしてるぅぅううぅぅ!?!?
すると、今ステージで踊っていた人達が曲が終わると横にはけ、反対側にいる蒼井美海の含め3期生のコスプレをしている人達が飛び出してくる。
う、うわぁ....なんだこの気持ち。ワクワク感と気恥しい感じ....今年の夏のコミケでは、1期生や2期生のコスプレをしていた人たちのツイートは見かけたけど、まだデビューしたばかりの3期生のコスプレしている人は滅多に見なかった。でも、今。目の前にいる。しかも踊って歌ってる。私も3Dになったらあんな感じになるのかな。あと、私より先にライブするなー!
気づいたら、私たちの出番が迫っている。やるのは2曲のみだけど、4人でいっぱい練習してきた。私とななちゃんは声でバレてしまうかもしれないからボーカルはパスした。私は難しい楽器をやる!とか何とか言って回避した。(ベース)ななちゃんはドラム、らんちゃんはキーボード、さきちゃんはギターボーカル。
練習した期間は、準備もあってなかなか長い時間は取れなかったけど、人に見せられるレベルにはなったと思う。
うぅぅ....緊張する....。チラッと隙間から体育館の客席の方を見ると結構人がいる....!
でも、夏ライブよりかはさすがに少ないか?でもなぁ、今回は生身だからなぁ。が、ガワが欲しいよぅ。
3期生の人達が反対側の袖へはけていく。
私たちは15分後にライブを開始する。そのまでに楽器の準備をしなくてはいけない。各々、自分の楽器を準備をする。楽器とアンプを繋ぎ、スピーカーへ繋ぐ。そして、マイクなども繋ぎ、音を聞こえるようにする。
私は慣れているし、ベースなので直ぐに終わって、ドラムのななちゃんの所へ手伝いに行く。バスドラムなどは結構大きかったりするので他のとは一緒に運べない。私はその辺を手伝う。その時、小さい声でななちゃんに話しかけられた。
「なぎちゃん緊張してる?」
「....ん?も、も、も、もちろんしてない、よ?」
「.....隠しきれてないよ?んーじゃあ、ほらほら、あっち見てよ!さっきのステージのコスプレの子達が手振ってくれてるよ!おーい!みうちゃーん!」
ななちゃんが手を振ると、蒼井美海のコスプレの人がこっちに向かって手を振ってくれている。私は呼ばれた気がしてドキッとする。
「や、やめてよななちゃん!思わず反応しそうになっちゃったじゃん!」
「へへっ!せっかくのライブなんだからさ!楽しんでこ!」
「....う、うん。そうだね!」
準備が終わり、そのことをステージの運営の人に伝える。
私たちは顔を見合せ、楽器を構える。
幕が上がり、お客さんたちが見えてきた。視線が私たち4人に集まる。運営の人の紹介が終わると、もう一度みんなで目を合わせた。
ななちゃんがスティックを打ち鳴らし、最初の音を奏で始めた。
シーンとなった体育館に楽器の音が響き始める。それは
私たちが織り成す、私たちだけの音。お客さんたちは次第に音を聞き、それぞれの反応をし始める。それがなんだか私にとって初めての反応でみんなにとっても初めての感覚で。とてもワクワクした。
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「そろそろ解散ー!みんな自由にしていいぞー!」
教室で先生が生徒に言った。文化祭が終わったのだ。なんだかさみしいような。
結局ライブは私も失敗することなく終わった。なんなら今までで1番の演奏ができたと思う。お客さんたちもすごい盛り上がりを見せ、とっても楽しかった。
「うわ...最初から最後までメイド服だったな...」
文化祭中はこの服を脱ぐことなく、ずっとこのまま。これだけ着てたら恥ずかしさも少しは無くなった気がする。
スマホを見ると、あの二人からメッセージが届いていた。
なでちゃん『ライブ最っ高だったよ!かっこよかった!私も楽器初めてみよっかなって思っちゃった!また今度私だけに見せて欲しいな!』
少なくともこの2人にはライブは好評だったようだ。こうやって感想言ってくれるって嬉しいな。顔がニヤニヤしちゃう。
「ねえ、青野さん」
「ん...?」
急に話しかけられ、後ろを振り返ると普段話すことの無い男子(陽キャ)がいた。
「な、何?」
「これからクラスの人たちと打ち上げでカラオケ行くんだ。それでさ、青野さんも誘おって女子たちが言っててさ、来ない?」
男子(陽キャ)が指さした方向には今日一緒の時間にシフトだった女子たちと男子数人がいる。
え、私今あの中に誘われてます?え、それでカラオケに行くって?なんの冗談だい?やだよ?当然。というか無理でしょ私があの中に入るの。泣かされるだけじゃない?
「どうかな...?」
「カ、カラオケかぁ....んー、私歌とか下手だから....」
「大丈夫だって!俺だって下手だしさ、カラオケって楽しめればいいんだよ。」
いやいや、みんな絶対カラオケ行き慣れてるし歌うまそうじゃん。....せめて、ななちゃんと一緒ならなぁ....って、こんなこと恥ずかしすぎて言えないし。どうやって断ればいいんだろこれ....断る理由もないっちゃないんだけどな。
「そ、そう...でも...」
「ねえねえ!それ私も行っていい?」
「うわぁ!?」
後ろに何かぶつかってきたと思って振り返るとそこにななちゃんが!
「びっくりした....」
「ごめんごめん。それでいい?」
「ああ、もちろん!間宮さん達にも声かけようとしてたんだよ。」
「ほんと?やったー!楽しみだね?なぎちゃん!」
「うぇ....?う、うん?」
「どこ行くの?」
「ああ、駅前の....」
「よーし、思いっきり歌うぞー!」
結局私はななちゃんに無理やり連れてかれ、なんかめっちゃ盛り上がった。5曲も歌ってしまった....御飯までみんなと一緒に食べることになり、帰ったのは10時頃になってしまった。
めちゃくちゃ疲れた....今日はさっさと寝ることにしよ。配信はなしで。
私はシャワーを浴び、さっさと布団の中に潜り込んだのだった。