『幻想世界ウマネスト』~最強大魔王降臨!?~   作:れいのやつ Lv40

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適性Gの世界

「ど、どうなってるの!?」

「わかりません! いきなり身体が重くなって……!」

「身体が動かないデース!?」

「は、ははは! マジで能力あんのかよ! すげえなウララ!」

 

 勇者パーティは必死にもがくが、まるで鉛を詰め込まれたかのように、手足が重くなり動かせない。笑い声を上げるゴールドシップもまた、動くことができないようだ。

 そんな中、ハルウララだけは平然と仁王立ちしていた。ゴールドシップは納得したように口を開く。

 

「なるほどな! 『適性G』ってのはそういうことか!」

「どういうことですか!?」

 

 未だ理解が及ばないスペシャルウィークに対して、ゴールドシップはその答えを口にする。

 

「一般的に、アタシらウマ娘の素質は『適性』で決まると言われている。だから『適性』が高いウマ娘はレースの成績も良いし、低いウマ娘は成績が悪い。それが常識だ」

「はい、その通りです。それで、今私たちが動けない理由と何の関係が……」

「まあ聞け。お前らも見たことあるだろうが、この適性は一般的にはアルファベットで表記される。最高がS。そして最低が、Gだ。さっきのウララの言葉、覚えてるか?」

「えっと確か……『適性Gの世界』……ってまさか」

 

 スペシャルウィークはゴールドシップの言わんとすることに気付いたようで、冷や汗を流している。

 

「そうだ。……どうやらこの世界では、アタシらの適性は全て最低の『G』に固定されるみたいだな」

「ええええええ!?」

 

 ゴールドシップの言葉を聞いて、スペシャルウィーク達は愕然となる。

 

「そ、それってつまり……」

「そうだ。ウララの能力はおそらく『全員の才能を強制的に最低に落とす』力だろう。まさかこんな面白いことになるとはな!」

 

 楽しげなゴールドシップだが、勇者パーティからすれば笑い事ではない。

 

「そんなバ鹿な能力ありますか!?いくらなんでもウマ娘としての才能を最低にするなんて……!」

「にわかには信じられねーが、実際にこうしてアタシらは動けなくなってる。恐らく、このゲームのアタシらの能力値は大部分が適性に依存してたんじゃねえか? そしてその適性が最低の『G』に落ちた今……」

「能力値がウマ娘として考えうる最低値になってしまったってことですか!?そんなこと有り得るんですか!?」

「アタシが知るかよ! 現実問題としてそうなっちまってんだからしょうがねえだろ! 要するにウララは正真正銘、最悪のラスボスだったってことだ!」

「嘘おおおぉぉ!?」

 

 ゴールドシップは興奮した様子で語るが、三人にとっては堪ったものではない。しかし、ふと疑問が浮かぶ。

 

「あ、あれ? でもおかしくないですか? 全員の能力値が最低値になってるなら、なんでウララちゃんだけ普通に立ってられるんですか?」

「それは簡単だよ〜」

 

 その疑問に、ハルウララは笑顔を浮かべたまま答える。

 

「わたしは元から『適性』がGだからだよ〜」

 

 あっけらかんと言い放つ彼女に、勇者パーティは唖然とした表情を浮かべていた。一方のゴールドシップはその言葉に納得がいったように頷いた。

 

「なるほどな。つまりウララの能力値はウマ娘としての最低値。ここまできたプレイヤーなら瞬殺できちまうが……だったらプレイヤーの方がウララと同レベルにまで落ちればいいってわけだ!」

「うっらら~♪ すごいでしょー!」

 

 嬉しそうな顔をしながらその場でくるりと一回転してみせるハルウララだったが、勇者パーティにとってはまさに悪夢のような状況であった。

 

「ま、待ってください先輩! ウララちゃんは雑魚モンスターより弱いって話でしたけど、今の私たちはこの世界ではウララちゃんよりも更に弱いってことですよね!?」

「いや、そいつは恐らく違う。ウララの能力は全員の能力値を最低に落とすもんであって、自分よりも弱くすることまではできねえはずだ。ウララがレベル1だとしたら、レベル0は存在しねえだろ?」

「そうかつまり、レベル1同士の戦いなんだ! なら数が多い私たち勇者パーティの方がウララちゃんより有利では!?」

「甘いなスペ。そんな簡単な話じゃないぜ」

「え? どういうことですか?」

 

 首を傾げるスペシャルウィークに対して、ゴールドシップは口を開く。

 

「確かにウララの能力は全員を適性『G』……最低の能力にするもんだ。そしてウララは元から能力が最低だから影響を受けない。だがおかしいと思わねーか? ウララは最低の能力でも平然としてられんのに、アタシやお前らは何で地面に這いつくばってんだ?」

「あ……」

 

 言われてみればその通りだ。スペシャルウィークは言葉を失う。

 

「答えは単純だ。ウララにとって、自分の能力が最低値なのは日常なんだ。だから普段と何も変わらない行動を取れる。それに対してお前たちはどうだ。突然最低の能力値になったせいで思うように身体を動かすことができない。つまり──」

 

 ゴールドシップの視線を受けたスペシャルウィークは、彼女の言わんとしていることに気がついた。

 

「……まさか」

「ああ、そのまさかだ。この違いは『慣れ』だ」

 

 ゴールドシップは静かに、しかしはっきりと口を開いた。

 

「アタシらが今まで当たり前のように行ってきた動作。それを今、アタシらにはできない。当然だ。ついさっきまでアタシらは普通の能力だったんだからな。それがいきなり最低値にまで落ちちまったら、いつも通りに動けるわけがねえ」

 

 だが、この場には唯一の例外が存在していた。元から適性『G』であったハルウララである。

 

「経験値の、圧倒的な差……!」

「そうだ。ウララはずっと、最低の能力値と付き合って生きてきた。同じ最低の能力値でも、鍛え方が違う! 精根が違う! 思想が違う! 場数が違う!ウララは最低の能力値を『当然』として動けるだけの歴史を刻んでんだよ!」

「そ、そんな……」

 

 ゴールドシップの言葉に、スペシャルウィーク達は愕然とする。

 

 ハルウララというウマ娘は、生まれた時から最弱だった。それが彼女にとって普通だった。何の疑問も抱かないし、不満も覚えなかった。彼女はそういう運命のもとに生まれてきたのだ。

 そう、彼女は常に『適性Gの世界』で生きてきたのだ。だから、その能力が最低に落ちようと彼女に影響などあるはずがない。彼女にとって、それはただの日常なのだから。

 

「くっ……ですが、それでも私たちは負けません! ここで諦めるわけにはいかないんです! 私は、勇者として……!」

「そうデスネ! 私たちの想いはこの程度じゃないデース!」

「えぇ! まだ立ち向かってもいないのに、膝を折るわけにはいきません……!」

 

 三人の瞳に再び闘志が宿った。その様子を見て、ゴールドシップは満足げな笑みを浮かべる。

 

「ははっ、いい目つきだな! それでこそアタシを倒した勇者様方ってもんだ!」

「お褒めいただき光栄ですね。では、行きましょうか」

「はい! 必ずやウララちゃんを倒して、世界を救って見せますよ!」

「ワタシたちならきっと大丈夫デースッ!!」

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