『幻想世界ウマネスト』~最強大魔王降臨!?~   作:れいのやつ Lv40

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その剣に想いを込めて

(どうすれば、勝てるの? 私たちは、ウララちゃんにどうやって勝てばいいの!?)

 

 考えても、答えは出ない。そんなスペシャルウィークを見て、ハルウララは優しく微笑んだ。

 

「スペちゃーん、こっちに来て遊ぼうよ!」

 

 何の邪気も篭っていない笑顔を浮かべて差し出されたその手が、今の彼女たちには悪魔の誘惑のように感じられた。

 三人がこれまで抱いていたハルウララのイメージが音を立てて崩れていく。当たり前のようにレースで最下位に沈み、しかしそれを苦にすることなく笑顔を浮かべてレースを終えるハルウララ。そんな彼女が、今は自分たちよりも遥かに強い存在に見えて……。

 

(……違う!最初から彼女は強かったんだ……! 私たちよりも、ずっと……!)

 

 そうだ。最初から。三人と出会った時から、ハルウララというウマ娘は強者だったのだ。レースの戦績などでは図れない、天性の資質。誰も持ち得ない無二の力を持つ強者で。自分たちは、今の今までそれに気づかなかっただけで。ただ彼女が自分より『遅い』という、たったそれだけで、無意識に彼女を見下し、弱者だと思って安心していただけなのだ。

 

(ウララちゃんは、強い……! 私なんかとは比べ物にならないくらい……!)

 

「……勝たなきゃ」

 

 スペシャルウィークは思う。ハルウララに走者としての才能は無い。それは事実だ。だから、現実世界では強者であるはずの彼女とまともな勝負は望めなかった。しかし、ここはゲームの世界。現実とは違うルールで動く世界。

 この場ではハルウララとスペシャルウィークたちの勝負は成立する。その結果が、この様だ。スペシャルウィークたちが一方的に敗北して、今もなおこうしてハルウララが余裕を持って笑みを浮かべている。それは、明確な強者と弱者の構図で。一度同じ土俵で戦って思い知る。ハルウララというウマ娘は、自分たちよりも圧倒的に格上だ。

 

 スペシャルウィークはその考えに至った瞬間、自分の心の中に、感情が湧き上がるのを感じた。それは、怒り。ハルウララに対してではない。自分自身に対する、怒り。

 

「……私は」

 

 その気持ちを、そのまま口にする。

 

「ウララちゃんに勝ちたい!」

 

 ハルウララはこんな自分のことも友達だと思ってくれている。だが、このままではダメだ。ハルウララを弱者と勘違いしていた自分に別れを告げて。圧倒的強者である彼女に全身全霊をぶつけて勝つ。そうすることが出来て、ようやく友達として対等になれるはずだから。

 

「負けたくない! 勝ちます! 勝って、ウララちゃんと本当の友達になるんです!」

「……ええ!」

「もちろんデース!」

 

 三人は再び立ち上がり、ハルウララに向かって駆け出した。

 

「わぁ! また遊ぶの?」

 

 嬉しそうな表情を浮かべるハルウララに向けて、グラスワンダーが叫ぶ。

 

「ウララさんにとっては遊びなのかもしれません……でもこれは、私たちがあなたに近づくために……あなたに並ぶために、必要なことなんです!」

 

 三人が無意識にハルウララを見下していたという事実を知ったところで、彼女は気にもしないだろう。だが、それでも、彼女たちはハルウララの強さを認めなければならなかった。認めて、そして並び立つ必要があった。それが自分たちのためであり、同時にハルウララのためでもあると信じて。

 

「……うん! わかった! じゃあみんな、全力で来て!」

 

 その言葉を合図に、三人は一斉に地面を蹴った。一方のハルウララはまだ動かない。対処法を考えているのか。それとも、全員を叩き潰せる自信があるのか。どちらにせよ、今スペシャルウィークたちに出来ることは、ただ己の全てを出し切るのみ。

 

「うおおぉお!!」

 

 最初に動いたのは、エルコンドルパサーだった。ハルウララの背後に回り込むように走り込み、大上段に振りかぶった拳を振り下ろす。しかしその一撃はハルウララの背中に触れる寸前で彼女の手によって止められる。そのまま受け流すようにして投げ飛ばされたエルコンドルパサーはそのまま地面を転がっていく。

 

「くっ!」

 

 次にグラスワンダーが仕掛けた。既に三人の回復に全魔力を費やした彼女に出来るのは杖による打撃だけ。圧倒的強者を相手取るにはあまりに頼りないその攻撃も、今の彼女に出来る全力の一撃だ。

 棒術の要領で振るわれた杖がハルウララに迫る。しかし彼女はそれを手で止めると、空いている方の手でグラスワンダーの腹部を押す。それだけで、グラスワンダーの体は簡単に吹き飛んでいった。

 

「ぐぅ……! でもこれで……!」

 

 二人の攻撃が軽くあしらわれるのは折り込み済みだ。しかし、攻撃に対応したハルウララは、当然体勢を整えるまでの数瞬ながら隙が生じる。そこに迫るのは、本命である勇者。

 スペシャルウィークは加速する思考の中で、自らの能力を発動させた。彼女の勇者の力。友の、仲間の想いを束ねる力。ウマ王ゴールドシップを打ち倒した時と同じように、彼女の剣が黄金色に輝く。

 

(この一撃が通じれば、私たちの勝ち……! 通じなければ、私たちの負け!!)

 

 そして、スペシャルウィークはその手に持つ黄金の輝きを放つ聖剣をハルウララに向かって振りかぶる。

 

(行くよ……! これが私たちの全身全霊!!)

「はああぁあッ!!!」

 

 スペシャルウィークは全力を以て手にした光り輝く刃を思い切り振り下ろした。しかし、そんな彼女の戦意に満ちた表情はすぐに驚愕に染まることとなる。

 

「え……?」

 

 ──ハルウララは、一切の抵抗を見せずにスペシャルウィークの聖剣を受け入れたのだ。

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