『幻想世界ウマネスト』~最強大魔王降臨!?~   作:れいのやつ Lv40

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本当の友達に

 スペシャルウィークの手に伝わる何かを断ち切る感触。それは、彼女が手にしている聖剣を通じて確かに伝わってきた。それはあまりにも呆気なく、それでいて唐突な決着だった。

 

(どうして!?)

 

 確かに自分はこの一撃に全てを賭けた。仲間たちの信頼に応えるために。そして何より、ハルウララという強者に並び立つための覚悟を示すために。しかし、それでも届くかどうかは怪しいと思っていた。自分と彼女の間には、それほどまでに圧倒的な実力差があったはずなのに。

 スペシャルウィークは呆然としたまま、ハルウララの方を見る。するとそこには、いつも通りの笑顔でこちらに向かって微笑む少女の姿があった。

 

「あーあ……負けちゃった。このゲームの中なら、ウララもスペちゃんたちに勝てると思ったのになー」

 

 そう言って笑うハルウララは、この世界のラスボスという立場だからか。倒された影響でその姿がブレ始めていた。だが、スペシャルウィークは納得できなかった。

 

「なんで……? どうしてウララちゃんは避けようとしなかったんですか!? あれだけの差があって、私の攻撃を避けられないわけがないじゃないですか!」

 

 そう。スペシャルウィークがハルウララに斬りかかった時。彼女は既にほとんど体勢を立て直していた。仮に避けることが叶わなくても、その腕で受け止めることくらい出来たはずだ。それなのに、ハルウララはそれをしようとせず、スペシャルウィークの攻撃を受け入れてしまった。

 

「だって、避けたくなかったんだもん」

「え……?」

 

 ハルウララの言葉に、スペシャルウィークは戸惑う。そんな彼女に対して、ハルウララは続ける。

 

「スペちゃんの黄金の剣がね、本気でウララを倒すために色んな気持ちが込められてるのが伝わってきて、でも、すごくあったかそうだったの。だから、その剣を受け止めたいなぁって思ったの。あの剣を避けちゃうのは、嫌だった」

「……!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、スペシャルウィークの目から涙が流れ出した。

 

「ごめんなさい! 私、ウララちゃんのことを、無意識に、自分でも知らないうちに、見下してました! ウララちゃんは、私よりもずっと強いのに! 私は、それに気付くことすら出来なくて……」

 

 泣き崩れるスペシャルウィーク。グラスワンダーとエルコンドルパサーもまた、目に涙を浮かべている。

 

「謝らないといけないのは、私たちも同じです。あなたは、私たちが思っている以上に強かった。いえ、強すぎた。あなたのことをよく知らずに、無意識にあなたを弱いと思い込んでいました。本当に、申し訳ありません」

「ワタシもデス……。アナタはこんなにも強い人でシタ。それに気付こうとしなかったのは、他でもないワタシたちデシタ。どうか、許して欲しいデス」

 

 三人が頭を下げる姿を見て、ハルウララは困ったような顔をする。

 

「もう! みんなやめてよ! それに、ウララは全然悔しくないんだよ。むしろ、嬉しいの。ウララのこと、あんなに思ってくれる人がいるなんて、知らなかった。それが、嬉しくて、それ以上に楽しいの! だから、泣かないで!」

 

 ハルウララがそう言うと、三人とも顔を上げて笑顔を見せる。そして、改めて姿勢を正すと、再び一斉に頭を下げた。

 

「ありがとうございます……! ウララちゃん。どうか、私たちと……」

 

 スペシャルウィークの言葉は最後まで続かなかった。何故なら、いきなり周囲が大きく揺れ始めたからだ。

 

「な、何!?」

「これは一体!?」

 

 それに答えたのはこれまで大人しく彼女たちのやり取りを眺めていたゴールドシップであった。

 

「あー、ウララはラスボスだからなぁ。ラスボスが倒されたってことは、つまりゲームがクリアされたってことだろ? だから、世界が崩れ始めてるんじゃねえのか?」

「そっかー、終わっちゃうんだねー」

 

 それを聞いていたハルウララは特に慌てる様子もなくそう呟いた。

 

「楽しかったよ! また遊ぼうね!」

 

 ハルウララは満面の笑みでそう言い残すと、そのまま光の粒子となって消えていった。同時に、周囲の風景が徐々におぼろげになっていく。それはまるで、この夢の世界の終わりを告げるかのように。

 

「大魔王様も消えちまったし……ウマ王ゴルシちゃんの野望もこれまでだな!まあ、なんだ。面白かったぜ、お前ら。アタシは満足したから、さっさと帰って寝ることにするかな!」

 

 そう言って、ゴールドシップも姿を消すと。三人の視界もゆっくりと暗転していく。やがて、完全に暗闇に包まれると、意識が遠のいていく。気が付くと、そこは鉄の棺のような機械の中。トレセン学園の体育館に設置された『VRウマレーター』の中だった。

 

「あ……れ……? ここは……?」

「……どうやら、戻ってこれたみたいですね」

「……思った以上の、大冒険でシタネ」

 

 まだ少し頭がボーっとするが、とりあえずは無事に戻って来れたようだ。しかし、何やら騒がしい。

 

「ゴールドシップさん? この中にはシンボリルドルフさんがテスターとして入っていたはずなんですが……どういうことか、お話を聞かせていただけますか?」

「い、いやぁ秘書さんよぉ、これには海より深い事情があるというかなんつーか……あっ、おい待てよ、話せばわかる、話し合おうぜ」

「問答無用です」

 

 たづなとゴールドシップの会話を耳にして、現実に戻って来たことを実感したスペシャルウィークたちは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「ふぁ~~……楽しかった~!」

「あっ、ウララちゃん!」

 

 ハルウララの元気な声が聞こえてスペシャルウィークが振り向くと、そこにはいつも通りのハルウララの姿があった。三人は彼女に駆け寄る。

 

「あっ、みんな! ウララと遊んでくれてありがとー!」

「こちらこそデス! 本当に、本当にありがとうございマシタ!」

「ええ、最高の一日でした」

「うん、私も。とても、楽しい思い出になったよ」

 

 四人はお互いに握手を交わしながら笑顔を交わす。そして、三人はあの世界で言いそびれた言葉を口にした。

 

「「「あの、ウララちゃん(さん)」」」「なぁに?」

「「「私たちと、もう一度、友達になってください!」」」

 

 それを聞いて、ハルウララは不思議そうに三人を見つめていたが、やがて花が開くように笑った。

 

「もちろんだよー! これからもよろしくね!」

 

 こうして、スペシャルウィークとグラスワンダーとエルコンドルパサーの三人と、ハルウララという一人のウマ娘は、この日、本当の意味で友人となったのだった。

 

 まぁ、その後……。

 

「やったやった、またいっちゃーく!」

「う、ウララちゃん強すぎます……!」

「こ、これほどまで差があるだなんて……!」

「せ、せめて1勝くらいはしたいデス!」

 

 『VRウマレーター』を用いた『適性Gの世界』での芝レースにおいて、三人はハルウララに113連敗を記録し、あまりの実力差に愕然とすることになるのだが、それはまた、別のお話。

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