僕のヒーローアカデミア WE ARE LETHAL PROTECTOR! 作:のろまな怪獣
会長の元に近づく度にナガンの息が荒くなる
「ナガン、落ち着け。深呼吸しろ」
「で、でも」
「絶対だ。俺達が絶対守るから」
「大船に乗ったつもりでオレ達の後ろにいろ」
俺たちは手を握り、会長の部屋の扉を開けた
会長はいつも通り笑顔で俺たちに話しかけてくる
「2人とも、よく来た」
「オレの時間を無駄にするなよ?今から家に帰って録り溜めてたバラエティ見るんだ。箱買いしたチョコレートを食いながらな」
「……今回の仕事なんだが」
「ナガンを公安直属ヒーローから個人事務所のヒーローにして欲しいです」
会長の話を遮り、江都辺が大きな声で言い放ったその一言で場の空気が一変した
「辞めるということかね?」
「あぁ、ナガンは辞める」
「そうか…だが辞めるということが何を意味するか知っているだろう?」
会長は懐に手を入れ、何かを触るがそれよりも早く江都辺は胸ポケットからUSBメモリを取りだし、ニヤリと笑う
「それをさせない為に俺達がいます」
「これの中には今まで俺達が殺してきた奴らについての情報とそれを俺達に指示したあなたの声が入ってます」
「なっ!?」
会長と共にナガンも驚き、江都辺の肩を掴んだ
「江都辺、お前」
「ナガンは黙ってな。オレ達の要望が飲めないのならこれを今すぐ流出する。さぁどうする?賢いアンタならわかると思うがこれが出回れば…日本は一体どうなるだろうな?」
USBを見せびらかす江都辺に対し、会長は額に青筋を立てて怒鳴った
「1人のために大勢を捨てるのか!!」
しかし、江都辺は表情を変えずに言い放つ
「いずれ崩れる世界ならいつ壊れたって同じだろうよ」
会長の顔は怒りから焦りへと変わり、江都辺を睨みつける
「ナガンが抜けた分、俺達が倍以上に働きます。だからお願いします」
深々と頭を下げるが会長は懐からスイッチを何かの取り出し、押し込む
すると突如として壁が開き、その中から銃が出てくると同時に江都辺の頭と胸を撃ち抜いた
「江都辺ッ!!!」
ナガンはすぐさま個性を発動し腕をライフルのように変形させ、会長目掛けて自分の髪の弾丸をを放とうとするが自分の体に赤いポインターが当たっていることに気がつく
「動かない方がいい。それはタルタロスにある銃と同じものだ。少しでも動けば足や腕、最悪江都辺と同じように頭が吹き飛ぶ」
会長は頭を書きながら机の上に置いてあるものを床に叩きつけて叫び始める
「はぁ…江都辺、君には失望したよ。やはりその正義感が君の価値を落としていたようだ」
「会長…お前!!」
「ナガン、君の様子は漏らさず全て知っているんだよ。家やパトロール中を含めて全て…様子がおかしかったからね。君には…消えてもらおうと思ってたんだよ」
「お前…江都辺を呼んだのは私を殺させるためか」
「あぁ、でも彼も道具にはなりきれてなかったみたいだ。幼い頃から育てたが…やはりダメみたいだな」
「道具だと…!?」
「いいかい?君たちは道具、この世界の均衡を保つための歯車なんだ。自我を持っちゃいけないよ。君たちは私の言う通りにしてればいいんだ」
ナガンは絶句した
自分たちは人ですら思われていなかったと
初めてスカウトされ、自分のこの個性を
コンプレックスだったこの腕を褒めてくれた彼は
ナガンたちをものだと言ったことに
「ふ…ざけるなぁああ!!」
会長に狙いを定めた瞬間、肩と足を撃ち抜かれる
「うぁっ…!」
「…2人もかけてしまった。また新しい部品を用意しなければ…」
「その必要はねぇな」
どこからともなく聞こえる声
「何だ…?」
「頭と胸撃ちやがってこの外道が」
「なんで生きてる?」
会長が振り返るとそこには何事もなかったかのように立つ江都辺の姿があった
「…あんたは言ったよな、この世界を守るために俺が必要だと」
「お前の個性は増強系の個性のはずだ!初めてあった時も、検査でもお前はそのパワーで…」
会長は思い出す
検査中に突如苦しみ出した江都辺が装置を破壊し、その後の検査で増強系の個性と診断されたこと、そして初めてであった時、敵たちが頭や内蔵が原型をとどめないほどの力で吹き飛ばされていることを
「オレは…飢えてる。そして救いたいんだ。この美しく、素晴らしい世界を」
江都辺の体に黒い粘液のようなものがうねりだし、会長の首を掴んで壁に叩きつける
「がはっ!…な、なぜ銃が反応しない!?」
「オレは個性じゃないからな!!!」
今度は会長を床に叩きつけて、顔の近くまで持ってくる
「あんたを信じてた。俺のやってる事には意味があると言い聞かせてた」
次は扉、そして最後に天井にたたきつけたあとに江都辺の顔の前に吊り下げられる
「ぐぅ…がはっ……」
「おいおいどうした?随分苦しそうじゃないか?」
「お前は…なんなんだ……」
「俺…オレは…いや、俺達は」
江都辺の周りから出ていた黒い粘液は江都辺を包み込む
「うぁ、あぁあ…」
江都辺の体はひとまわりふたまわり大きくなった
顔には鋭く大きな牙と大きな目が会長を睨みつけている
筋肉質な漆黒の体には白い筋が走り、手は会長の頭を包めるほどの大きさに
「だ、誰か!!!助けてくれぇ!!」
「会長、貴方には育ててもらった恩がある。でも、そんなもんでカバーできないほどあんたはクズだ」
顔が半分江都辺になるがすぐさま黒い粘液に包まれ、会長の顔を長い舌で舐める
会長は恐怖し、必死に逃げようと抵抗するがその太い腕をどうにかできる訳もなく
「目ん玉に肺、膵臓……ハハハ!ご馳走だらけだ。一気に行こう」
「ま、待て!!待ってく」
口が裂け、会長の頭は包み込まれた
グチャリ、バギバキ
酷い音を立てながら
「江都辺…?」
「…いや、違う。俺達はヴェノムだ」
長い舌で顔の周りを舐め、ナガンを担ぐ
「うわっ、何すんだよ」
「逃走する」
顔が再び半分に割れてヴェノムから江都辺の顔が現れる
「言う通りにしてくれ、ナガン。俺達は会長を殺した、たまたまその場にいたお前を人質にして俺達は公安から逃走」
「待て!それじゃお前だけが悪人に!!」
「気にすんな、オレ達は前の生活に戻るだけだ」
「ダメだ、私も」
ヴェノムはナガンの口を塞ぎ、背中に貼り付けて窓から飛び出す
手で壁を削りながら下に降り、ビルに飛びつきながらヴェノムは逃げ出す
「ナガン、お前は希望になるんだ。公安みたいなクソちっちゃい檻の中にいるべきじゃねぇ。それに俺たちみたいになって欲しくない」
何かを必死に訴えかけているがそのままスルーし話し続ける
「この先曲がったらお前を降ろしてオレ達は下水道に」
次の壁に乗り移ろうとすると赤く燃え上がる炎が横切った
「ぎゃあああああ!?」
「見つけたぞ、敵!!」
「俺たちの天敵…火だるま親父の登場だな」
空からエンデヴァーが派手に着地し、あまりの熱でコンクリートの形が変わっていた
「レディ・ナガンを解放し今すぐ投降しろ」
「嫌だと言ったら?」
「貴様をここで燃やし尽くす」
「ハハ、ヒーローとは思えねぇセリフだ。オレ達には人質がいるんだぜ?」
ヴェノムは悪役に徹するため長い舌で背中に貼り付けていたナガンを前に移動させ、顔を舐める
「貴様ッ…!!」
「そんなにこいつを返して欲しいか?なら…」
オレ達はナガンを粘液で拘束したままエンデヴァーに向けて投げる
「じゃあな、ナガン」
拘束している粘液の一部を口に変え、耳元で囁く
ナガンは見事、エンデヴァーにクリティカルヒットしヴェノムは路地裏へと消えていく
「くっ!待て!!」
エンデヴァーはナガンの拘束をとき、急いで路地裏へ駆け込む
壁が傷つく音は聞こえるがその姿は完全に闇と同化しており、やがて聞こえていた音も闇へと消えていった
エンデヴァー、プレゼントマイクとか天敵しかいないなヒロアカ世界