カワカミプリンセスは高松宮記念を目指す   作:ほいさ

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シリーズ第三弾。パートナーであるトレーナーとの出会いの話です。
AIのべりすとに少し手伝ってもらいました。


そしてパートナーと出会う

「はあ、はあ、はあ……」

 

あてもなく走り続けたカワカミプリンセス。

 

「…こ、ここはどこですの?」

 

まだ通い始めて初日であるためトレセン学園の地理に疎く、現在地すらわからない。

 

「うぅ~、迷子になってしまいましたわ」

 

泣きそうになる。迷子になってしまったこと、そして模擬レースで不甲斐ない結果を出してしまったことで。

 

「ふ、ふぐ、ひっく」

 

嗚咽が漏れる。姫たる者、泣くわけにはいかないのに…

そう考えているカワカミプリンセスの視界に切り株が目に入る。どうやら穴が開いているようだ。

ふらふらと切り株に近づく。穴を覗いてみると、闇が広がっていた。どこまで続くか見当がつかないほどの深い穴。こんな穴に大声を出せばさぞ気持ちいだろう。

 

「……」

 

カワカミプリンセスは穴を覗き込み、ぶちまけた。

 

「私は!私はキングさんのようなウマ娘になりたかったんですの!優雅で!可憐で!それでいて誇り高く!自身に満ち溢れたウマ娘に!」

 

ハァハァハァ…と荒呼吸をした後、思いっきり息を吸い込み、

 

「でも!やっちまいましたわー!調子に乗ってたくせにびりっけつでしたわー!まるで!一話っきり雑魚キャラでしたわー!姫どころか平民以下ですわー!」

 

ぐずひっぐずびびびと涙と鼻水を切り株の穴に流し込む。姫たる者、涙を他の人に見せないためにここで全部流してしまおう。

 

「ふ、ふぃ~少しばかりすっきりしましたわ~戻りませんと」

 

とカワカミプリンセスが振り返ると、1人の男性がいた。中肉中背。身長が低めなカワカミプリンセスにとっては少しだけ見上げるほどの背丈だ。

 

「……!?」

 

その男性は顎に手を当てながらカワカミプリンセスのことを興味深そうに眺めている。主に脚部を。

 

「な、ななななな!何ですの!あなたは!」

 

カワカミプリンセスはズビシィ!と指を男性に差しながら問うた。

 

「ん?ああ、これは失礼」

 

男性は顎から手を離し軽く一礼をし謝罪の言葉を述べた。その後体を起こし、

 

「いやあ、興味深いことを言うウマ娘だなぁと思ってさ」

 

後頭部を掻きながらばつが悪そうな表情で述べてきた。

興味深いこと?私、そんなこと言いました?……まさか、

 

「キングさんみたいになりたかったーって」

 

カワカミプリンセスは少し茫然とした後、頬を火山がごとく急激に真っ赤に染め、

 

「い、いやあああああ!!!!!」

 

男性に背を向け脱兎がごとく逃げ出す。背後の方からは

 

「お、やっぱりいい脚してるな~」

 

などとのんきな声が聞こえてきたが、無視した。

 

 

一週間後、模擬レースが再び行われることとなり、トラックには数名のウマ娘たちが集まっている。

大部分のウマ娘たちはすでにスカウトを受け、直接トレーナーから日が暮れるまでみっちりとトレーニングを受け始めている。

ここにいるの時間を持て余したウマ娘、すなわち未スカウトのウマ娘たちなのだ。

このウマ娘たちは全員焦りと不安の気持ちを隠しきれず、表情ににじみ出ている。

 

「……」

 

カワカミプリンセスもその一人であった。俯き顔を隠しながらぶつぶつとつぶやく。

 

「今度こそ、今度こそ勝てば……夢はまだ叶いますわ!」

 

カワカミプリンセスは己の頬を思いっきり叩き、

 

「っしゃあ!やってやりますわ!」

 

気合を入れ直し、模擬レースに挑む。走る距離はもちろん短距離だ。

その結果は―――

 

「はぁはぁはぁ、また……ダメでしたわ……」

 

先週に引き続き最下位であった。レース展開そして負け方が先週と全く同じであった。

 

「どうして、どうしてですの!」

 

カワカミプリンセスは拳を握りしめ、悔しさで拳を震わせる。

 

「どうして、どうしてぇ……」

 

また涙が出そうになったその時、

 

「姫に涙は似合わないぞ」

 

スッとカワカミプリンセスの眼前にハンカチが差し出される。

 

「あ、ありがとうございまず……」

 

カワカミプリンセスは手のひらとハンカチで顔を隠しながら涙を拭きとる。ついでに鼻もかむ。

ハンカチの持ち主に向き直ると、そこには見覚えのある男性が立っていた。

 

「お、おう気にすんな……」

 

ハンカチをばっちいものであるかのように摘まみながら距離をとっている。この男性は、

 

「あなたは……あの時の!」

 

「よう!先週ぶり!」

 

先週自分の恥ずかしい姿を見られたあの男性だ。

 

「どうしてここに!?」

 

「いや、俺トレーナーだからな。ここにいてもおかしくないだろ?」

 

…トレーナー?

カワカミプリンセスの脳内にあるトレーナー像はキングヘイローのトレーナーである。その姿は紳士的で丁寧な物腰、それでいて胸の奥には熱さが秘められているような姿であった。

 

しかし目の前の男性は馴れ馴れしく、どこかフラフラしていて芯がないように見える。

(不審者ですわ!)

そう決めつけ右拳を後ろに引き腰を深く落とす。

 

「……いい気迫だ。なよなよしてるよりそっちの方が似合ってる」

 

「……」

 

たしかに今の自分には先ほどの落ち込みが消えている。代わりにこの不審者への闘志がみなぎっている。

 

「だからこそ、俺は―――」

 

男性はポケットから紙を取り出し、こちらに差し出す。

 

「君をスカウトしたい」

 

手に取るとその紙はスカウトの申し込み用紙だった。

 

「え?」

 

スカウト?先ほどの模擬レースでドベだった私に?

 

……そんなわけありませんわ。

カワカミプリンセスは攻撃の構えを解き、下を向きながら自問する。

 

「信じられないか?俺のスカウトと、君の走りに」

 

「……」

 

「よし、じゃあ試しに俺の指示を聞いてくれ」

 

男性はカワカミプリンセスの目線までしゃがみこみ、やさしく語りかける。

 

「明後日の模擬レースに出てほしい」

 

「え?でもそのレースは……」

 

「そう、その日のレースはマイルレースだ」

 

「で、でも私が目指しているのは短距――」

 

「自分の走りを信じられなかったら、どんなにトレーニングを積んでも勝つことはできない」

 

急に真剣な雰囲気で男性はカワカミプリンセスに語る。カワカミプリンセスが思わず顔を上げるとその男性と目が合った。

 

「一度だけでいい。信じてくれ。俺の言葉と、君の脚を」

 

そう言い残し男性は去っていった。

残されたカワカミプリンセスは呆然と立ち尽くす。

(……どうすればいいんですの?私は……)

思案して下に視線を落とすとそこには自分の脚があった。

 

『信じてくれ』

 

そしてあの男性の一言が頭の中で何度も再生される。

 

「……そうですわね」

 

カワカミプリンセスは拳を再び構える。しかしそれは先ほどと違い前に突き出すものではなく、

 

「姫たる者!期待に応えるのは当然ですわ!!」

 

拳を上に突き上げ叫んだ。

 

「やーってやりますわ!!!」

 

 

2日後、カワカミプリンセスは模擬レースのスタート地点に立っていた。もちろん距離は

マイルだ。

先日試しに走ってみたが途中で息が切れてしまった。なので正直自信はない。だが、

 

(あの方が信じてくれたのです。大丈夫!)

 

そう鼓舞していると自分の番が来た。

 

「っしゃあ!いっちょやってやりますわ!!」

 

 

スタートラインに立ち、大きく深呼吸をする。そして、

パァン!! 一斉にウマ娘たちは飛び出していく。

序盤、カワカミプリンセスは最後尾。いつものポジションだ。いつもの走りだ。

(大丈夫、まだ距離はありますわ)

中盤に差し掛かり他のウマ娘たちとの距離がグイグイと離れていく。

 

カワカミプリンセスは思い出す。今までの模擬レースでは他のウマ娘にこのままラストスパートをかけられ、

(抜けませんでしたわ……)

それを阻止するため、ラストスパートを今かけるべきか?そう思案し一瞬頭を下げる。

 

すると自分の脚が目に入り、思い出す。

(あの方は言っていましたわ…。私の脚を信じてくれと。走り方を信じてくれと。だから、)

 

決断した。

溜める。最後の直線までスタミナを温存しパワーを溜める。それが、

(姫たる者、私の走りですわ!)

 

最終コーナーを曲がり終えたその瞬間、

 

「だらっしゃあああ!!!!」

 

溜め込んでいたパワーを爆発させ、一気にスパートをかける。

周りの景色がどんどん後ろへ流れていき、前を行くウマ娘たちの背中が近づいてくる。

 

(抜ける!)

 

短距離と比べスタミナが必要なマイルレース。そのためカワカミプリンセスの前を走るウマ娘たちは短距離のラストスパートほどのスピードを出し切れていない。結果、スピードが落ち、スタミナとパワーを温存していたカワカミプリンセスに追い抜かれていく。

 

だが、カワカミプリンセス本人の頭の中にはそんな理屈はなかった。頭にあったのはただ一つ、

 

(勝ちますわああああ!!!!)

 

ゴールが迫りそして―――カワカミプリンセスは地面に倒れ込んだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

荒い息を整えつつ空を見上げる。そこには青空が広がっていた。

 

「お疲れさん」

 

青空を遮り、一つの顔が視界をふさぐ。その顔は自分の走りを信じてくれたあの男性だ。その表情はどこか誇らしげだ。

 

「ほれ」

 

男性が差し出した手を掴み、立ち上がる。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「おう、にしても良い末脚だったな。最後までスタミナを切らすことなく走りきれたじゃないか」

 

「ええまあ、その……順位の方は?」

 

男性はニコリと笑い、

 

「初勝利おめでとう」

 

ポンと肩に手を置かれてそう言われた。

 

「……」

 

「ん?どうした?」

 

「や」

 

「や?」

 

「やりまじだわーーーー!!!!!」

 

滝のような涙を流すカワカミプリンセス。

 

「おう、泣け泣け。嬉し涙なら枯れるまで泣いてしまえ」

 

カワカミプリンセスが泣き止むまでこの男性は見守っていた。

 

 

「えっぐ、えっぐ、ぐす」

 

泣き終わったカワカミプリンセスに男性はティッシュを渡す。

 

「ありがとうございます」

 

涙を拭いた後、チーンと鼻をかむ。

 

「勝ちはしましたが、短距離で勝てなかったのは悔しいですわね~」

 

ティッシュを己の手に収めながら、軽い口調で話しかける。

 

「そうでもないさ。キングヘイローのメイクデビュー距離は今回走った1600mだったんだぞ。…君はなれるさキングヘイローのようなウマ娘に」

 

「……そうですわね」

 

風が吹きカワカミプリンセスの長髪が揺れ、頭を冷やしていく。

 

「短距離ばかりに目が行っていましたわ。キングさんだって色んな距離を走って自分の場所を見つけたんですもの。…私も短距離以外の距離もバリバリ試していきたいですわ」

 

「それがいい」

 

「でも、高松宮記念はあきらめていませんわよ~」

 

腕を組み仁王立ちしながら宣言するカワカミプリンセス。そこには先日までの気弱な姫の姿はなかった。

 

「だから、これからよろしくお願いします。『トレーナーさん』」

 

カワカミプリンセスは手を差し出し、

 

「こちらこそよろしく、『カワカミ』」

 

トレーナーはその手を強く握る。

 

「はい!」

 

カワカミプリンセスはそれに応えるため強く握り返す。結果、

 

バギィ!

 

 

後日、包帯を手に巻き付けたトレーナーに必死で謝るウマ娘を多くの者が見かけたとのことだ。

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