カワカミプリンセスは高松宮記念を目指す   作:ほいさ

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桜花賞でカワカミプリンセスが宣戦布告をした後、カワカミプリンセスのトレーナーはある男性に会いに行く。そこで明かされるトレーナーの素性。
そしてカワカミプリンセスととあるウマ娘は次へと向かう。


姫とキングと弟と兄

カワカミプリンセスが無敗でティアラ路線クラシック期を制覇すると言い残しレース場から立ち去ってしばらく時間が経った。が、いまだに観客たちの興奮は収まり切っていない。

 

本当にそんなことが可能なのか、不可能じゃないか、ただ調子に乗ってるだけだ、あの勢いなら勝てる、などとその場で立ち止まり数々の意見が交わされ人の流れは停滞している。

そのような中、

 

「はいはいゴメンよ~」

 

人込みを軽いステップで捌きながら歩く1人の男がいた。その男の首からぶら下がっている名札には「カワカミプリンセス担当トレーナー」という肩書が印刷されている。

 

このカワカミプリンセスのトレーナーは出入り口から逆方向のレース場が最もよく見える地点、スーツの男性が居座る場所へと向かっていた。

その男性は汚れ1つないスーツと染み1つないシャツを身に着けた清潔感のある紳士然とした人物である。

 

「いやー久しぶりですなー」

 

カワカミプリンセスのトレーナーは紳士に対して砕けた口調で話しかけた。

 

「お久しぶりでございます」

 

紳士の方は丁寧で明るげな口調でカワカミプリンセスのトレーナーへと応対した。

 

「まだそのキャラ作ってんの?」

 

「はて?これが私めの素でございますが」

 

カワカミプリンセスのトレーナーはガックシと肩を落とす。

 

「はあ~わかったよ、そういうことにするよ”兄貴”」

 

「さすがは私の”弟”。聞き分けが大変よろしいですなあ。兄として誇りに思いますよ」

 

カワカミプリンセスのトレーナーの兄でもある紳士は額から流れ出た汗を時々ハンカチで拭いながら後片付けを行う。

三脚に固定していたビデオカメラを慎重に外し、丁寧な手つきでバッグに仕舞っていく。

 

「今日はいい物が撮れた?」

 

「ええ、彼女にいい影響を与えてくれるのは間違いないでしょう」

 

「そっか、良くなるといいな。愛しの”キングヘイロー”が」

 

「良くなるに決まっているでしょう。キングに諦めの言葉はないのですから」

 

「…そっか」

 

紳士ことキングヘイローのトレーナーはカメラなどが入ったバッグを担ぎ上げる。

 

「彼女は素晴らしいレースをしてくれました。カワカミ嬢に感謝の言葉を伝えてください」

 

「ああ伝えとく。でもありがとう。キングヘイローの連絡先を教えてくれて」

 

カワカミプリンセスのトレーナーは顔をほころばせながら、

 

「『桜花賞に勝ったらキングヘイローと話せるぞ』ってカワカミに伝えたら、『マッジですの!?こいつぁ負けらんねえですわ!!』ってやる気満々。結果桜花賞は圧勝。今日の勝利はキングヘイローのおかげだよ」

 

「それはよろしゅうございました。キングにも伝えておきますよ」

 

カワカミプリンセスのトレーナーに背を向けキングヘイローのトレーナーがその場を離れていく。その背に向かってカワカミプリンセスのトレーナーは、

 

「あ!後でその映像を送ってくれよー!キングヘイローが見た後でいいからさー!」

 

口に手を添え大声で叫んだ。そしてさらに一言、

 

「お礼にオークス勝ってみせるから!!」

 

キングヘイローのトレーナーは振り向くことはなく片手を挙げ、了承の意を示しながらその場を離れていった。

 

 

 

 

ライブも無事に終えた翌日、カワカミプリンセスとそのトレーナーはトレーナー室に詰めていた。

目的は今回の桜花賞を分析し次回のレースに生かすことであったが、

 

「それでですね!!キングさんからいーっぱい褒めてもらいましたのよ!!私桜花賞に勝てて本っ当に良かったですわ!!!!」

 

などなど憧れのキングヘイローと電話で話せた喜びをカワカミプリンセスが語りまくり分析どころではなかった。

ちなみに1時間以上もほぼ一方的にカワカミプリンセスが話していたらしく、ライブに呼びに控室を訪れてもまだ通話中であった。

 

(すまんキングヘイローそして兄貴)

 

カワカミプリンセスのトレーナーは心の中で謝罪した。

 

「今からでも待ちきれませんわ!キングさんと走れる日を!」

 

「……」

 

トレーナーはカワカミプリンセスにキングヘイローが入院中であることを口に出さなかった。

それを伝えたら動揺しレースに支障をきたす恐れがあったからだ。

そしてトレーナーも信じているのだ。キングヘイローが復活することを。

 

「よし!次はオークスだ。絶対に勝つぞ!!」

 

「おーーー!!ですわ!!!」

 

 

 

 

ほぼ同時刻、キングヘイローの病室にて

 

「あの子ったら全く電話を切ろうとしなかったのよ。さすがに疲れたわ」

 

「でも切ろうとは思わなかったんだろう?」

 

「当たり前じゃない!キングたる者話は最後まで聞くものよ!!」

 

キングヘイローとそのトレーナーは楽し気に会話をしていた。どちらの口調もかしこまったものではなく気さくなものだ。

 

「さすがキング。ところで準備はできたかい?」

 

キングヘイローはベッドから自分の足でゆっくりと立ち上がる。その服は患者の服ではなく、

 

「ええ!キングの姿を今一度刻み込んであげる!」

 

緑色と黒が品よく配色された勝負服であった。

 

「ただ入院していたわけじゃない。退院後すぐに走れるようリハビリもトレーニングもこなしたわ」

 

「そう、だからしばらくトレーニングを積んで復帰戦だ。目標はもちろん?」

 

「決まってるじゃない!高松宮記念よ!」

 

両腰に手を当て堂々と宣言する。

 

「だから」

 

キングヘイローはトレーナーに手を差し伸べ、

 

「私をそこまで連れていく権利を与えるわ!」

 

トレーナーはその手を取り、

 

「キングの仰せのままに」

 

固く決して破られることはない誓いを立てた。




今回、若干ウマ娘要素が薄くなりました。
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