An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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人工呼吸は‥‥‥

(‥‥‥なの‥‥‥は‥‥‥)

 

少しずつ薄れゆく意識。きっと大丈夫だという僅かな油断があった。それが、今回の事態を招いた。全ては、自分のせい。後悔したところで、もう遅い。

 

(いっ‥‥‥息が‥‥‥くる‥‥‥し‥‥‥)

 

フェイトは、プールに引きずり込まれ、水の底に沈んでいた。バリアジャケットを脱がされまいと押さえて、剥ぎ取ろうとする水に激しく抵抗したために、水がプールの底へと引き摺り込んだのだ。

苦しくなればフェイトの抵抗も止むだろう、との水の考えは間違ってはいなかったのだろう。だが、バルディッシュと腕にバリアジャケットが引っ掛かり、簡単には脱げなくなっていた今のフェイトにとっては文字通り死活問題だった。

 

(な‥‥‥のは‥‥‥)

 

水中へ引き込まれるとまでは思わなかったフェイトに息を吸い込む余裕などあった筈も無く、限界はすぐそこだった。海面上でアルフとユーノが何とか奮戦していたが、フェイトには最早そんな光景も見えてはいなかった。

 

(‥‥‥くる‥‥‥し‥‥‥‥‥‥)

 

限界を迎え、意識を手放す瞬間。フェイトの瞳には、微かに桜色の光が見えた気がした。

 

◆◇◆◇◆

 

「どっ、どうしよう!?アルフさんもユーノ君も押されてる!」

 

『落ち着いて、なのは』

 

「だって!フェイトちゃんが‥‥‥フェイトちゃんが!」

 

魔法戦素人のなのはが見ても分かるくらい、状況は最悪だった。フェイトはプールの底に引き込まれて溺れていて、肝心のアルフとユーノはジュエルシードで出来た二つのシルエットに押され気味。取り乱すのも無理はない。

 

「早く助けないと、フェイトちゃんが死んじゃう!」

 

泣きながら訴えるなのはに、レイジングハートは極めて冷静に、しかし力強く語りかける。

 

『助ける方法はあるよ。でもそれは、貴女も彼方側へ‥‥‥生死を賭けた世界に行くって事なの』

 

「私、やるよ!フェイトちゃんが助かるなら。私に、その力があるなら!」

 

涙を堪えて叫ぶなのは。『後悔、しないね?』というレイジングハートに、なのはは涙に震える声で答えた。

 

「フェイトちゃんを助けられるなら、構わない!」

 

決意の篭った表情のなのはを見て、『なのは』は桜色に数回点滅する。『なのは』は今迄この時代のなのはを見てきたが、フェイトへの依存性等どうにも自分と同一人物とは思えなかった。だが今の表情を見る限り、矢張りなのははなのはのようだ。

 

『新規使用者設定、フルオープン』

 

レイジングハートとなのはを中心に魔法陣が現れる。それは桜色に輝き、なのはを包み込んでいく。

 

(『それでこそ私だよ、なのは。‥‥‥ごめんね、フェイトちゃん』)

 

結局なのはを魔導師にしてしまう事を心の中で謝りながら、『なのは』は儀式を続ける。

なのはの目の前に、文字が浮かび上がる。それはミッド語ではなく、なのはにも読める日本語。

 

「こっ、これは?」

 

『心を研ぎ澄ませて。目を閉じて、その言葉を』

 

なのははその文字を必死に読んで、心の中で繰り返す。レイジングハートを握り締めて、意を決し、瞳を閉じる。

 

「‥‥‥風は、空に。星は、天に。そして不屈の魂(こころ)は、この胸に」

 

なのはのリンカーコアがドクン、ドクンと脈打ち始める。淡い色だった桜色はより強く、より鮮明なものになっていく。

 

「この手に、魔法を‥‥‥‥‥‥レイジングハート、セーット、アーップ!!」

 

なのはが桜色の光に包まれる。バリアジャケットが構築されていき、レイジングハートも杖状に変わっていく。

 

『成功だよ。今は詳しい説明してる暇は無いから、私の言う通りに動いてね?なのは‥‥‥ううん、マスター?』

 

「うっ、うん!」

 

純白のセイクリッドのバリアジャケット。『なのは』の時とは違い、胸にリボンは無く、金属製の装飾。全体的にもエクシードモードに近い、よりバリアジャケットらしいデザイン。

 

『先ずはフェイトちゃんを助けるよ。そうだね‥‥‥あのアルフが相手してるシルエットの砲撃をもっと大きくしたようなイメージで』

 

「はっ、ハイ!」

 

なのはは言われるままに、大きな砲撃のイメージを思い浮かべる。桜色の極光が迸るイメージ。

 

『杖の先に、胸の奥の力を集める感じで。モードチェンジ。cannon mode!』

 

レイジングハートが変形し、羽を広げた砲撃モードに変わる。なのははトリガーに指を掛けて、フェイトを捕らえているプールに向けた。

 

『上手いよ、マスター。ディバイーン』

 

杖の先端に、魔力が集中していく。『なのは』の『バスター!』という声と共にトリガーが引かれ、桜色の極光が放たれた。

 

◆◇◆◇◆

 

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」

 

大きく息を吐き出して、フェイトは目を覚ました。頭がまだボーッとする。漸く焦点が合ってきたフェイトの視界に、なのはの姿が写り込む。

 

「良かった。フェイトちゃん、大丈夫?」

 

心配そうに覗き込むなのはの頬は、真っ赤に染まっている。

 

「なのは‥‥‥?」

 

フェイトは身体を起こそうとしたが、なのはに止められる。段々と意識がハッキリとしてくると、自分が裸でプール用のバスタオルを巻かれ、プールサイドに寝かされている事に気付いた。

 

「なのは、私‥‥‥」

 

「うん。無事で良かった」

 

笑顔を向けるなのはは、バリアジャケット姿。結局魔導師になってしまったなのはに、涙が滲む。

 

「ごめんね、なのは。ごめんね‥‥‥」

 

『大丈夫だよ、フェイトちゃん。後は、任せて』

 

その手に握り締めるレイジングハートが言葉を終えると共に、なのはは飛び立った。

 

暫くその姿を眺めていたフェイトだったが、我に返り、取り敢えず落ちないようにバスタオルを押さえ、身体を起こす。そのままなのはを助ける為に立とうとして、足が動かない事に気付いた。

 

(バインド!?‥‥‥どうして)

 

フェイトの両足には、なのはのレストリクトロック。もう今回の事態にフェイトを参加させる気は無いようだ。そう言えばバルディッシュも見当たらない。

 

《なのは!私も手伝うから!》

 

《駄目だよ。フェイトちゃんは休んでて。バルディッシュさんは、ちゃんと後で返すから》

 

やはりフェイトを参加させる気は無し。だが、今のなのはに小細工ができる訳も無く、ましてや秘策など‥‥‥。

 

(ある‥‥‥!でも)

 

フェイトには覚えがある。魔導師としての経験も殆ど無く、まともな知識も無い、魔法の練度と精度も足りなかった出会ったばかりのなのはが編み出した大威力収束砲撃。

よくよく考えてみれば、今のなのはには、航空武装隊のエースオブエースとまで謳われた若手No,1の戦技教導官が付いているのだ。やって出来ない事は無いのかも知れない。フェイトはなのはの姿を探して空を見上げた。

 

 

レイジングハートがアルフとユーノに指示を出す。

 

『二人共、相手を上手く1ヶ所に誘導して!出来たらでいいからバインドもお願い!』

 

《分かった!》

 

《やればいいんだね?任せときな!》

 

二人の返事が返って来る。なのははジュエルシードで出来たシルエットを睨みつつ、大規模魔法陣を展開する。

 

『そう。さっき言った通りにね。周りに散らばった魔力を、1ヶ所に集めて』

 

「うん!」

 

レイジングハートの先端に、魔力が収束していく。段々と大きくなる桜色の光球。アルフもユーノも驚愕している。

 

「なんだい、ありゃ」

 

「収束砲撃!?あの子、凄い‥‥‥」

 

上手く1ヶ所に誘導し、二人はバインドを施す。激しく抵抗され、今にも拘束を解かれそうな勢いだ。

 

「なのは‥‥‥早く!」

 

「バインドが持たない!早く決めておくれよ!」

 

『準備はいいね?マスター』

 

なのははレイジングハートの言葉にコクンと頷く。その額に汗が流れる。初心者でも分かるくらいの、恐ろしい迄の魔力の塊。

 

『Starlight Breaker!』

 

収束を終え、膨れ上がった魔力の塊。なのははシルエットに向けて、レイジングハートを振りかざした。

 

 

 




なのはちゃんのブレイカー炸裂。優秀な教導官の指導の基の、今後のなのはちゃんの伸びに期待です。

フェイトちゃんは完全に溺れました。その際なのはちゃんが施したのは‥‥‥次回へ続く。
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