An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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募る想いと伝わる思い

 

二つのシルエットが桜色の光に飲まれ、輪郭が消えていく。元の菱形の石に戻った二つのジュエルシードを、レイジングハートに収納する。

 

「シリアルⅨとⅡ、だね」

 

『うん。そう‥‥‥だね』

 

満足気ななのはとは違い、『なのは』は腑に落ちない。それも当然。本来ならかなり先の、クロノ達が来た後に発動するジュエルシードの筈。神社のそれですらないのだから。

 

(『やっぱり、順序が全然違う‥‥‥もし今海の6つが発動したら‥‥‥』)

 

不安材料は多い。前回経験した時は、海の中のもの以外はたまたまバラバラに発動していたから良いようなものの、今回のように複数、更に別々の場所で、なんて事になったら厄介極まりない。

 

(『少し回収を急いだほうがいいかな』)

 

なのはも魔導師になったし、やることは多い。『なのは』が今後の事を考えていると、ユーノが叫んだ。

 

「プールの水を操っていたジュエルシードが見つからない!まだだ、なのは!」

 

『しまった‥‥‥フェイトちゃん!』

 

そう言えばプールの水のジュエルシードは別の場所だった、とユーノの言葉で思い出した『なのは』。慌ててフェイトの方を見ると、当に水に襲われる寸前だった。何時ものフェイトなら何て事は無いのだろうが、まだ身体もふらつき、バルディッシュはなのはが持っている。更に言えば、足にはなのはのバインド。しかも、身に付けているのはバスタオル1枚のみというおまけ付き。

 

『マスター!Flash move!』

 

「フェイトちゃん!」

 

慌てて高速移動でフェイトの前方へと回り込み、シールドを張る。間一髪間に合い、フェイトの目の前で水が割れる。

 

「なっ、なのは‥‥‥」

 

「もう大丈夫!」

 

その場に座ったままのフェイトを庇うように前に立ったなのはは、今度こそジュエルシードが核となっている水の塊にレイジングハートを向ける。

 

「フェイトちゃんを襲うなんて、許さない!ジュエルシードシリアルⅩⅦ、封印!」

 

トリガーが引かれ、水に向かって封印砲が走る。今度は水の中のジュエルシードを捕らえ、それが光を失って石へと戻る。プールの水が元に戻ると同時に、大量の水着が出てきた。無論、そこにはフェイトが気を失いバリアジャケットが解除された時に奪われた水着もあった。

 

 

 

フェイトは水着を着替え直し、なのはと並んでプールサイドに座る。

 

「なのはが、助けてくれたんだよね?」

 

「うん。レイジングハートが人工呼吸の仕方を教えてくれて。助かって良かった」

 

笑顔を向けてくれるなのはに「ありがとう」と答えて笑顔を返す。そんなフェイトに、なのはは自然を装い手を伸ばす。

 

「なのは?」

 

「フェイトちゃん、手‥‥‥繋いでもいいかな?」

 

なのはの様子がおかしい事に気付いて首を傾げたフェイトに、少し恥ずかしそうに尋ねたなのは。「うん、いいよ」という返事に一気にその表情を明るくさせて、真っ紅になりながら手を繋ぐ。

 

「なのは、顔赤いよ?大丈夫?」

 

「大丈夫だよ」

 

結界が解けた後も、少しの間なのははそのまま動かなかった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

『ヴィヴィオ、準備は良い?』

 

「うん!」

 

学院から帰ってきた午後、聖王教会の庭先。レイジングハートを握り絞め、ヴィヴィオは虹色のベルカ式魔法陣を展開した。

 

『新規使用者設定、フルオープン』

 

大きく息を吸い込み、かつてなのはが口にしていた言葉を紡ぐ。

 

「風は空に。星は天に。そして不屈の魂(こころ)はこの胸に。この手に、魔法を!」

 

魔法陣がより一層輝く。ヴィヴィオの虹色の魔力光も相俟って、幻想的な風景。ティアナが見守っている中、ヴィヴィオはレイジングハートを高く掲げて、叫ぶ。

 

「レイジングハート、セーット、アーップ!」

 

瞬間、辺りを照らす虹の光。他のシスターや遠くにいる参拝者の目にも留まったようで、何人かはその光を奇跡と思ったらしく祈りを捧げている。

 

光が収まると、ヴィヴィオの姿は17、8歳くらいの大人モードの姿に変わっていた。

 

「成功だよ、なのはママ、ティアナさん!」

 

『うん。似合うよ、ヴィヴィオ』

 

「へぇ、なのはさんとそっくりね」

 

『なのは』とティアナの言葉に、「エヘヘ」と照れ笑いを浮かべるヴィヴィオ。彼女の姿は、サイドポニーにエクシードモードの純白のセイクリッドのバリアジャケット。あの当時のなのはと同じ姿。

 

「ヴィヴィオは格闘型なのに、なのはさんとバリアジャケット同じでいいんですか?」

 

『うん。ヴィヴィオの希望もあるんだけど、これは動き難いなんて事もないしね』

 

軽く身体を慣らしている目の前のヴィヴィオを見る限り、確かに動き難いという事は無さそうである。

 

『それじゃ、少し動いてみよっか。ティアナ、相手お願い出来るかな?』

 

「ハイ、なのはさん」

 

ティアナは笑顔で答えて、大人モードのヴィヴィオと移動を開始した。

 

ティアナも、『なのは』がレイジングハートに憑依した、という事はつい先程知った。現時点でこそこうして笑顔で応対しているものの、彼女とて思いは同じ。証拠に、その頬には涙の流れた跡がまだうっすらと付いている。

 

ティアナが此処で全員に知らせる事も出来たのだが、『なのは』はそれを断った。『みんな忙しいし、私なんかの為に無理に時間作らせちゃったりしたら悪いし。落ち着いたら、ちゃんと伝えるよ』とは『なのは』の談。

 

(でも、いち早く知りたい人も居ると思うんだけどな‥‥‥八神司令とか)

 

公共の練習施設に向かいながら、ティアナはそんな事を考える。

 

《あれ?何や、ヴィヴィオとティアナやないか。奇遇やね》

 

突然念話が聞こえてきて、二人は辺りを見回す。遠くで手を振るはやての姿が見えた。

 

二人が《八神司令!》と言い終わるよりも早く、再会に逸る気持ちを抑えられず『はやてちゃん!』と思わず声をあげた『なのは』。

 

少し遠かったが、はやての表情が固まったのが分かった。速足で近付いてきたはやては、辺りをキョロキョロと見回し、一度落ち着いてから二人に話し掛けた。

 

「なぁ、ヴィヴィオ、ティアナ。さっきなのはちゃんの声が聞こえた気がしたんやけど‥‥‥」

 

『ここだよ、はやてちゃん』

 

はやてに返事を返し、ヴィヴィオの胸の辺りから出てきて浮遊しているレイジングハート。思わずそれを凝視して、はやては唇を噛み、少し怒気を孕んだ声を出す。

 

「レイジングハート、ふざけるのにも限度があるんやで?選りに選ってなのはちゃんの真似とか‥‥‥!」

 

『冗談で、こんな事しないよ、はやてちゃん。会いたかったよ』

 

その瞳を涙で潤ませ、はやての表情が崩れていく。ヴィヴィオが「本当なんです、八神司令」と言った事が決定打となり、遂に限界を越える。

 

「嘘や‥‥‥ホンマに、ホンマになのはちゃんなんか?」

 

『うん。ごめんね、こんな姿で』

 

二人の、周りの目も憚らず、はやてはポロポロと涙を溢し、嗚咽し始める。危うくその場に崩れ落ちそうになったのをティアナに支えられながら、レイジングハートに向かい声を絞り出す。

 

「会いたかったよ、なのはちゃん‥‥‥ごめん、ごめんな‥‥‥私のせいで」

 

『誰のせいでもないよ、はやてちゃん。それに私、後悔してないよ。こうしてはやてちゃんもティアナも、ヴィヴィオもみんな無事なんだし』

 

「‥‥‥せやけど、なのはちゃん‥‥‥」

 

それ以上は言葉に出来なかったはやては、ティアナにすがり付き声をあげて暫く泣いていた。

 

 

 

 

 

 




再会に号泣のはやてさんと、突っ走るなのはちゃんの回。
フェイトちゃんが二度目に水に襲われるシーンは無し(タグの都合上総カット)でした。
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