An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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闇の先へ

「さっきの試合、みんな凄かったね!」

 

『うん、そうだね‥‥‥』

 

すずか、アリサ、それにフェイトも誘って、先程翠屋FCの試合観戦から戻って来たなのはとレイジングハート。

 

(『今回も、か。困ったな。これじゃあ、前の知識は役に立たないし‥‥‥』)

 

前回のPT事件の時にジュエルシードを持っていた小学生カップルは今回は所持は確認出来なかったし、その魔力反応も無かった。ただ単に見逃してしまっただけかも、とも考えたが、前回発動時間はもうとっくに過ぎている。他の場所に在る、と考えるのが妥当な線。

 

「それじゃ、そろそろ晩御飯だから、レイジングハートは少し此処で待っててね?」

 

なのはがそう言ってユーノを連れて、部屋を出る。一人(?)となった『なのは』に、外から念話が入る。

 

《『なのは』、今回は発動しなかったね》

 

『うん、フェイトちゃん。やっぱり前回の時みたいに地道に探さないといけないみたいだね』

 

すずか達と別れてからも、念の為に密かに外で待機していたフェイト。控えめに「グゥ~」と鳴ったお腹の音に恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

《はっ、発動も無さそうだし、私はそろそろ戻るね。アルフもお腹空かせてるだろうし》

 

『そうだね。今日はもう大丈夫みたいだし、解散にしよっか』

 

空いてきたお腹を控え目に押さえて、フェイトは空へと上がる。外はもうすっかり暗くなっていて、高い所迄上がれば恐らく通行人には見つからないだろう。

 

《うん。それじゃ、『なのは』、また明日》

 

 

周りに人目が無いにも関わらず、相変わらず恥ずかしそうにお腹を押さえて飛ぶフェイト。

 

(昔はこんな事無かった気もするんだけど‥‥‥昔の私、余裕無かったんだな)

 

マンションの屋上に密かに降り立ち、そのまま部屋へと向かう。「今日は肉が食いたいよ」というアルフの一言で、フェイトは近くのファミレスへと足を運ぶ。

 

「アルフ、耳とか出さないように気を付けてね?」

 

「大丈夫だよ。そんなミスしないって」

 

サンドイッチとスープを頼んだフェイト。隣で200gのステーキ3枚(レア)を満面の笑みで食べているアルフに苦笑いし、スープを口にする。

 

《アルフってば。あんまり目立たないように食べてね?》

 

《なんだい?別にこのぐらい普通だろう?》

 

その量と、アルフの豪快な食べっぷりは充分に注目の的となっている。普通、アルフの人間形態のスタイル位の女性ならば、決して食べない量。目立っているのが恥ずかしいフェイトの事など気にも止めず、「これ、あと2つお代わりしてもいい?」と純粋な眼差しで聞いてくるアルフに、「‥‥‥良い、よ」と顔を真っ紅にして小声で答えるフェイト。その日は何事も無く、そんな平和な1日だった。

 

◇◆◇◆◇

 

疲れていたのか、フェイトが目を覚ましたのは昼近く。今日は日曜日だし、なのはと午後からにでも探索に出掛ける予定だった。

 

(良かった、まだ間に合う)

 

時計を確認したフェイトは、まだ眠い目を擦りながらバスルームへと向かう。

 

シャワーを浴びながら、髪を洗う。(昔は頭洗うの苦手だったな)と思い出して、クスッと笑みを漏らす。

 

髪をシャワーで流し、フェイトは身体を洗いながら、先程迄寝ていたアルフに念話を送る。

 

《アルフ、起きた?着替え終わったら、なのはに会いに行くよ?》

 

まだ起きていないのか、アルフからの返事が無い。フェイトがもう一度《アルフ?起きてる?》と呼び掛けてみると、漸く返事が帰って来た。

 

《‥‥‥‥‥‥なあ、フェイト。外、見たかい?》

 

《外?ううん、見てないよ》

 

妙な問い掛けをしてきたアルフを疑問に思い、身体も洗い流してバスルームを出る。バスタオルだけを羽織って、急いでアルフの所へと走ると、窓の外には何とも言えない光景が広がっていた。

 

「何、これ‥‥‥?」

 

思わず声をあげたフェイト。窓の外は、紅い霧が一面に拡がっていた。日の光が届いておらず、薄暗い。全面的に視界が無い訳ではないが、何と言うか、不気味な光景。

 

「何の冗談だい、こりゃあ」とアルフが声をあげたのと同タイミングで、インターホンが鳴る。《フェイトちゃん!》となのはの念話が飛び込んで来て、フェイトは扉へと向かう。

 

「なのは!」

 

扉を開けると、息も絶え絶えななのはの姿。どうやら此処まで走って来たらしい。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、フェイト、ハァ、ハァ、ちゃん。外の霧、ハァ、ハァ、なんだ、ハァ、ハァ、けど」

 

呼吸が乱れていて何を言いたいのか分かりにくいなのはの代わりに、レイジングハートが状況を説明してくれた。

 

『ジュエルシードが発動したみたい。2つ。しかも、すずかちゃんの家の方向だよ』

 

説明しているうちに落ち着いて来たのか、なのはが言葉を続ける。

 

「あのね、お兄ちゃんがね?忍さんと連絡が取れないって!」

 

「じゃあまさか、この紅い霧は月村邸から‥‥‥?」

 

不味い状況。月村家の誰かがジュエルシードに取り込まれたと見て間違い無さそうだ。しかも、複数人、若しくは一人が2つ以上を、という事になる。

 

「どうするんだい?フェイト」

 

「勿論助けに行くよ。アルフ、準備して」

 

とは言ったものの、相手側の力が分からないのに闇雲に交戦するのは危険。現に、フェイトは過去2度やられかけている。これだけ広範囲に渡って影響を及ぼしているくらい。相当な力を取り込んでいると見ていい。‥‥‥だが。

 

(月村家の人に魔導師は居ない筈‥‥‥どうしてこんな‥‥‥?)

 

疑問を抱えながらも、なのは、アルフと共に外へと踏み出したフェイト。霧の中に入ってみて分かったが、やはり魔力で構成されている。それに‥‥‥どこか瘴気というか、何か良くない感じがする。

 

「こんな広範囲になんて」

 

フェイトはなのはの手を引いて、空へと上がる。比較的視界は確保出来るようで、月村邸迄迷う事は無いだろう。

 

『ユーノ君が先に向かったから、結界を張ってくれてる筈だけど。マスター、フェイトちゃん、油断しないでね?』

 

レイジングハートの声に「うん」と頷く二人は一路、月村邸へと向かう。

 

「フェ‥‥‥フェイトちゃん‥‥‥」

 

月村邸に着くなり、なのははフェイトの左腕にしがみつく。魔法云々とは別の恐怖が、なのはの足を竦ませ立ち止まらせる。

 

「なのは、大丈夫?」

 

「うん。その‥‥‥すずかちゃんのお家、お化け屋敷みたいで、ちょっと怖いって言うか‥‥‥」

 

辺りは薄暗く、その中で僅かに光の漏れる洋館。中々にホラーな構図だ。9歳のなのはでは怖がるのも無理はない。

 

「私が付いてるから。大丈夫だよ、なのは」

 

フェイトはなのはの手を確りと握り、抱き付いたまま恐る恐る歩くなのはの足取りに合わせて門へと近付く。

恐怖しながらも(フェイトちゃん、カッコいい)と改めて惚れ直しているなのはの心情迄は気付かずに。

 

月村邸の門を開けると、人が倒れているのが分かった。慌てて近付いてみると、それは月村家のメイドのファリンだった。

 

「ファリンさん!しっかりして!」

 

なのはが呼び掛けるが、返事は返ってこない。息もあるし、外傷も無い所をみると、紅い霧の濃い魔力に当てられて気を失っている、と言った所だろう。

 

「なのは、彼女は一先ず此処に寝かせておこう?中の様子を確認しなきゃ」

 

フェイトはその場にファリンを再び寝かせて、月村邸の入口を睨む。本能的に魔法の脅威とは別の恐怖を感じるが、此処は行って確かめるしかない。何よりも、ジュエルシードをこのままにはしておけない。

 

(すずか、忍さん‥‥‥無事でいて)




前回のフラグを早くも回収。今回のラスボスは勿論あの人。
次回、紅魔かn‥‥‥ゲフンゲフン、もとい月村邸ステージの始まりです。
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