An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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闇に愛された者

 

 

フェイト達は庭を抜け、建物の入口へと向かう。ユーノが張ってくれたであろう、月村邸の敷地をぐるりと囲む結界のお蔭か、動物や人の姿は見られない。

 

「ユーノ君、何処にいるんだろうね?」

 

お化け屋敷で恐怖で彼氏の腕にしがみつく彼女のように、フェイトの左腕にしがみ付きながら恐る恐る歩くなのは。先程からユーノを探してはいるものの、どうやら庭には居ないらしい。

 

「結界も維持されてるんだし、ユーノはきっと無事だよ。だから、大丈夫」

 

不安そうななのはを少しでも落ち着かせようと、フェイトはそう言って彼女を少し自分の方へと抱き寄せる。

前を見据えているフェイトは気が付いていないが、更に身体が密着した事でなのはの顔は紅潮し、嬉しさで彼女の口元は緩んでいる。

 

「けど、何が出て来るか分からないからアルフも気を付けて‥‥‥‥‥‥アルフ?」

 

返事が無かった事に疑問を感じて立ち止まり、フェイトは辺りを見回す。矢張りアルフの姿は見当たらない。

 

《アルフ、何処?アルフ?》

 

念話で語りかけるも、矢張り返事が無い。何処かに一人で行ったのだろうかと思案している所に、先程から喋らなかったレイジングハートが声を出した。

 

『フェイトちゃん‥‥‥この敷地内って結界の中だよね?ファリンさんが居たのっておかしくないかな?』

 

フェイトは「へっ?」と声を出し、直ぐにその言葉の意味を理解し、思わずレイジングハートを見つめる。ユーノが張ってくれたであろうこの結界は、いつもながらの魔導師以外侵入不可の結界。ならば、どうして普通の人間である筈のファリンが居たのか。フェイトはハッとして後ろを振り返る。

 

「まさか‥‥‥アルフ」

 

「まさか、ファリンさんがアルフさんを!?」

 

なのはも理解したようで、驚いて門の方を振り返る。慌てて元来た道を戻ってみると、寝かせて居た筈のファリンの姿が無い。

 

「どっ、どうしよう、フェイトちゃん!アルフさんがファリンさんに!」

 

動揺するなのはの手を握り、フェイトはファリンが居た場所を睨む。普通に考えて、アルフが『只の人間』である筈のファリンに不覚をとるとは思えない。それならば、何か別の何かがあったという事だろう。

 

「此処に居ても始まらない。行こう、なのは」

 

手を握ったままで、険しい表情で再び歩き出す二人。

 

再び扉の前に辿り着き、フェイトは警戒しながらゆっくりと扉を開ける。

 

「これはこれは。なのは様、フェイト様」

 

中に足を踏み入れると、メイド長のノエルが立っていた。予想外の出迎えに驚く二人。

 

「ノエルさん!」

 

結界内にも関わらず、矢張り存在しているノエルに驚き、声をあげるなのは。ノエルはその表情を変える事無く静かに話を続けた。

 

「お引き取り下さい。ここから先へ通す訳には参りません」

 

「でもっ!ノエルさん、私達は‥‥‥」

 

ノエルの言葉になのはが反応し、一歩前へと踏み出す。それを見たノエルの表情が少し険しいものに変わる。

 

何かがなのはの髪のすぐ脇を掠めて、「ドスッ」という音が後ろから聞こえた。驚いて音のした方を見ると、扉にナイフが1本刺さっていた。

 

「‥‥‥え?」

 

「なのは!」

 

フェイトは待機状態だったバルディッシュを展開し、ノエルを睨む。

 

「もう一度言います。お引き取り願います」

 

先程よりも険しい表情で、ノエルが二人を睨む。フェイトはバルディッシュを構えて戦闘体制を取り、叫ぶ。

 

「どいて下さい!私達は、争う為に来たんじゃありません!」

 

「ノエルさん、お願い、通して!」

 

なのはも、フェイトにしがみつきながら叫ぶ。

と、フェイトは左手を前方に出してシールドを展開。飛んできた『何か』を防ぐ。フェイトに阻まれてカランカラン、と乾いた音を立てて床に落ちた10本程のナイフを見て、バルディッシュに魔力刃を展開する。

 

《下がりなさい、ノエル。貴女では無理よ》

 

「ですが、御嬢様‥‥‥‥‥‥畏まりました」

 

何処からか声が聞こえて、ノエルが闇に消える。代わりに闇から現れた声の主、月村忍。笑みを浮かべてはいるが、フェイトとなのはに冷たい眼差しを向けている。

 

「驚いたわ。何処の教会が派遣したの?二人共退魔師か何かかしら?すずかに近付いたのは、私達を監視する為かしら?」

 

言っている意味が理解出来ない二人。だが、どうやらジュエルシードの波動は忍から感じられる。

なのはもレイジングハートを展開し、忍に向ける。

 

「忍さん、それは危険なんです!今すぐ封印しますから、大人しくしていて‥‥‥」

 

ジュエルシードを封印しようと、シーリングモードを展開するなのは。足元に桜色の魔法陣を展開させて、レイジングハートを忍に向ける。

 

「やっぱり‥‥‥『私達』を封印しに来たのね」

 

そう呟いた忍の瞳は赤黒く光る。それと同時に、どす黒い、血のような色の光を発した多数の魔力弾がフェイトとなのはの360度をぐるりと囲む。

 

『不味いよ、マスター!シールドを!』

 

レイジングハートの叫びと同時に、周りの魔力弾が一斉に二人を襲う。

それによって発生した煙幕が晴れて来ると、桜色のシールドに守られた、無事ななのはとフェイトの姿。忍がニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる。

 

「へえ。悪くない反応ね」

 

そう言った忍の姿が消える。驚いて周りを見渡しているフェイトは、後ろに気配を感じて咄嗟になのはを抱えて前方に飛ぶ。

 

「くっ‥‥‥痛っ‥‥‥」

 

忍の振るった右手の爪がフェイトのバリアジャケットの背中部分を引き裂き、その背中に15㎝程の三本の傷が付き、血が滲む。

 

(油断した‥‥‥どうやって後ろに‥‥‥)

 

ジンジンと疼く背中の傷を気にしつつ、体勢を立て直すフェイト。視線の先の忍は、左手でフェイトのマントを拾いつつ、右手の爪に付いたフェイトの血をペロリ、と舐める。

 

「少し若いかしら。でもまあ、悪くない『味』ね、フェイトちゃん?」

 

ニヤリ、とフェイトを睨む忍。フェイトはゾクリと背筋に寒気を感じて、1本後ずさる。

 

「装甲も薄いみたいだし。そんなで何時まで持つのかしら?」

 

クスリと軽く笑みを溢し、忍は黒翼を拡げて飛び上がる。それが蝙蝠のような翼だった事で、漸く事態を理解する。

 

(まさか、吸血鬼‥‥‥なの?)

 

フェイトは魔法陣を展開、フォトンランサーを数発打ち出す。忍も同数の魔法弾を撃ち出し、それを迎撃。

 

「『バスター!!』」

 

ランサーを陽動に、後ろからなのはの砲撃が忍を襲う。翼をはためかせ、それを軽い動きで避けた忍が、冷たい眼差しでなのはを睨む。

 

「すずかを騙してたのね、なのはちゃん‥‥‥許せない‥‥‥!」

 

右手に圧縮された魔力の塊を出現させ、なのはに向けて放つ忍。なのはも再度魔法陣を展開し、ディバインバスターでそれを相殺した。

 

《『なのは』、おかしいよ》

 

この事態に少し疑問を持ったフェイトは、念話を『なのは』に飛ばす。

 

『うん。ジュエルシードに乗っ取られてる筈の忍さんの意識が、ハッキリし過ぎてる』

 

なのはの桜色のシューターを展開させながら、『なのは』もフェイトに念話で答えた。フェイトは汗を一筋流しながら、バルディッシュを構え直す。

 

(まさか‥‥‥これは忍さんの本来の力?ジュエルシードがトリガーになって、力に目覚めたの‥‥‥?)

 

降り注いできた数多の魔法弾を高速で避けながら、忍に近付くフェイト。金色の魔力刃を降り下ろしたが、素手の筈の忍に受け止められる。

 

「嘘っ‥‥‥素手で!?」

 

「漆黒に金色の大鎌‥‥‥差し詰め死神って所かしら。けど」

 

驚くフェイトの腹部に、忍の左手が伸びる。今度も辛うじて反応し、大きく後ろへと下がったフェイト。

 

先程よりも多く血が付着している指を舐めている忍。フェイトはジャケットの破れた、痛むお腹を押さえながら床に降りる。

 

(動揺しちゃ駄目だ‥‥‥確りしなきゃ)

 

押さえているお腹の傷から、血が滲んで来る。改めて魔法陣を展開し、クスクスと笑う忍にバルディッシュを向ける。

 

「やっぱり悪くない‥‥‥ねえフェイトちゃん。もう少し血を分けてもらえないかしら?」

 

「忍さん、ごめんなさい‥‥‥貴女を、止めます!」




意識のハッキリしている忍と激突開始。
なのはちゃんが言葉足らずだったせいで、忍に敵認定されました。

フェイトちゃんの装甲が減っていってるのは仕様です。

因みにですが、ノエルさんに時間を操る程度の能力はありません。

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