An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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弾む心は

 

 

すずかとフェイト達がちょうど激突していた頃。所変わって海鳴市の、とある住宅街の一角にある一軒家。

 

「ちょっ‥‥‥地震や!大きいよ!シャマル、ガス消してくれへんか?」

 

「はーい!」

 

車椅子の少女に頼まれて、シャマルと呼ばれた女性がパタパタとキッチンに走る。

 

地震が怖いのか、ソファに座っていた赤い髪の小さな少女が車椅子の少女に抱き付いて小さくなっている。

 

「守護騎士ともあろう者が、こんな地震に怯えるなど情けない」

 

長身の、髪の長い女性にそう言われて、赤い髪の小さな少女は涙目で「うるせえ!」とだけ返すが、髪留めの少女から手を離そうとしない。

 

「少しくらい大きいとは言え、地震程度で‥‥‥」と言いかけて、言葉を止める長身の女性。

 

《只の地震ではないな。この次元が揺れている‥‥‥?》

 

主である車椅子の少女に悟られないよう、念話に切り替えて狼と話す長身の女性。

 

《次元震か。何かあったか‥‥‥だが、我らは主を御守りするのみだ》

 

狼がそう答えて程なく。大きな地震が止む。「ほら、もう大丈夫や」と赤い髪の少女の頭を撫でる車椅子の少女と、「フゥ」と息を付く長身の女性。

 

「大きかったですね」と言って、シャマルと呼ばれた女性が窓を開けて外を眺める。

 

◆◇◆◇◆

 

その、車椅子の少女の家をずっと遠くから見ていた2匹の猫。どうやら魔法が使えるようで、念話で会話をしている。

 

《今度は次元震‥‥‥あのロストロギアには捜索依頼が出てた筈だろう?スクライアの坊やと現地の人間が体張ってるってのに、担当局員は何ノンビリやってんのさ!》

 

話している途中で次元震が止まって、胸を撫で下ろす2匹。

 

《治まったみたいだね。やれやれだ全く。担当は誰だよ‥‥‥サボってやがるなら父様に言い付けてやる!》

 

ジャミングを展開し、ファイルを開いていく一方の猫。

 

《ロッテ、こんな所でファイル開くんじゃないよ‥‥‥で、誰なんだい?》

 

ロッテと呼ばれた猫がまるで獲物を見付けたかのような、嬉々とした表情に変わる。聞いた方の猫もそれで察しがついたようだ。

 

《担当、クロスケじゃないか‥‥‥今度会った時はお仕置きしなきゃだな♪》

 

そんなロッテを見ながら《やれやれ‥‥‥ま、傍観してるのは私達もだけどね》と、もう一方の猫‥‥‥リーゼアリアは肩を竦めた。

 

◆◇◆◇◆

 

あれから。なのはの心は弾んでいた。今日から高町家では毎年恒例(去年は父である士郎の怪我で行けなかったが)の、一泊二日の温泉。今年は月村家の人達やアリサも一緒で、今は車で移動中。

弾んでいるとは言っても、なのはが温泉マニア、とかではない。アリサやすずかが一緒というのも理由の一つではあるのだが、一番の理由は‥‥‥‥‥‥察しの通り。

 

(えへへへ‥‥‥フェイトちゃんとお泊まり‥‥‥フェイトちゃんとお泊まり‥‥‥)

 

朝から怖いくらいの機嫌の良さを見せている、だらしない笑顔のなのは。

 

「あれは駄目ね。呆れてツッコミ入れる気にもならないわ」

 

盛大に溜め息をつくアリサ。そのアリサに「良いと思うよ?好きになるって、大切な事だよ」と笑みを溢して話す、マイペースなすずか。

 

「イヤイヤ。駄目よ、すずか。なのはを何とかしないと、このままじゃ絶対にフェイトに迷惑掛かっちゃうわよ」

 

アリサは意を決し、なのはの耳元で「なのは、戻って来なさい!」と叫ぶ。

 

妄想の世界から漸く現実に戻ってきたなのはが、耳を押さえながら答えた。

 

「ビックリしたぁ。アリサちゃん、そんな大声出さなくても聞こえるよ」

 

「どの口が言うのよ、どの口が!さっきから何回呼んだと思ってるのよっ!」

 

アリサがなのはの口を、指で横に引っ張る。口を「い」の形に引っ張られたまま、なのはが無理矢理喋りながら抵抗する。

 

「いひゃい、いひゃいから、おくひひっはらないれ」

 

「折角みんなで来てるんだから、ちゃんとみんなで遊びなさい!反省するまでこのままよ!」

 

そんななのはとアリサの様子をルームミラーで見て微笑ましく見ている高町士郎。それに‥‥‥心無しか、アリサに絡まれているなのはのポジションを羨ましそうに見ているすずか。

 

「ん?すずか、どうしたの?」

 

すずかの視線に気が付いて、アリサが振り向く。ほんの少し紅くなったすずかは「何でもないよ、アリサちゃん」と笑顔を見せた。

 

そんななのは達を乗せて走る車の後ろのもう一台。忍が運転する、すずかを除いた月村家一行の乗る車。

 

「ふーん。レイジングハートとフェイトちゃんが教えてるのね」

 

「はい。なのはは魔法のセンスがあるので、飲み込みも早いんです」

 

助手席に座るフェイトは、忍の矢継ぎ早の質問に言葉を選びながら答えていた。忍は前回聞けなかったから興味本意で聞いてくるのか、或いは何かを探っているのか。いずれにしても慎重になるに越した事は無い。

 

「所で、フェイトちゃん。レイジングハートって妙に人間っぽいけど、デバイスってみんなあんな感じなのかしら?」

 

「‥‥‥レイジングハートは、特別だと思います。普通のインテリジェントデバイスは、あそこまで人間ぽくは話しません。マスターである人間との信頼関係はどちらも変わらないと思いますけど。ね?バルディッシュ?」

 

《Yes,Sir》

 

何かを言いたげに点滅するが、マスターであるフェイトの意を汲み黙るバルディッシュ。

此処で、いつもフェイトと『なのは』の会話を聞いているバルディッシュに真実を暴露されれば面倒な事になるのだろうが、流石はフェイトのデバイス。その辺は確り弁えている。

 

「ふーん。バルディッシュみたいなのが普通なのね」と若干怪しみながらチラチラとフェイトを見る忍。

やはり何かを探っているのだろうか。一瞬ドキッとしたフェイトは、話題を誤魔化す為に話題を変える。

 

「忍さん。あの時の魔法陣、ユーノやアルフも構成するの手伝ったって聞きましたけど」

 

「ああ、アレね。あれだけ大規模だし、組むのにはどうしても時間が掛かるのよね。アルフとユーノ君が居てくれて助かったわ。正直、ファリンだけじゃ心許なかったし。それにしても、もしもあの時ジュエルシードが暴走しなかったら、って思うとゾッとするわ」

 

思い出しながら語る忍。

 

「ジュエルシードはフェイトちゃんが封印してくれたんでしょ?あの状態で封印するなんて凄いわね」

 

思いも寄らない忍の言葉。フェイトは思わず「えっ?」と声を洩らした。確かにバルディッシュの中に封印済みのジュエルシードが入ってはいたが、あの時フェイト自身は気を失ってとてもそんな事が出来る状態では無かった。忍達では無いとすれば、一体誰が封印したと言うのか。

 

「でも、私はあの時気を失ってて、封印なんてとても‥‥‥」

 

「じゃあ、誰がご親切に封印をしたのかしら。フェイトちゃん達の他には魔導師は居ないんでしょう?」

 

「はい」と言いかけて、フェイトはハッとして口籠った。魔導師が居るには居る。シグナム達ヴォルケンリッターや、リーゼ姉妹。なのはの事ばかりで忘れていたが、今後彼女達の対策も考えていかねばならない。

 

「誰か思い当たる魔導師でも居たの?」と聞いてきた忍に、今は「いえ‥‥‥」と答えたフェイト。「そう‥‥‥」と返した忍が、「私もデバイス作ってみようかしら。物理と機械工学は得意なのよ?」とこれまた思いもしない言葉を発したのを、苦笑いで聞きながら車は進んで行く。

 

‥‥‥月村忍がストライクカノンやライオットブレードⅡを製作する事になるのは、まだまだ先の話。




八神家一堂初登場。
本作の設定上、既に6月を過ぎているのでシグナムさん達が一緒に暮らしています。

今後は忍さんも話に絡んでくる模様です。
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