An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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覚悟

 

 

「いってきまーす!」

 

「行ってらっしゃい。気を付けてね、ヴィヴィオ」

 

「はーい!」

 

St.ヒルデ魔法学院へ向かうヴィヴィオに、フェイトは笑顔で手を振る。

いつもは早朝ランニングを行っているヴィヴィオだが、フェイトが休みの日は、少しでも長く一緒に居られるようにランニングには行かずにフェイトの分まで朝食を作り、ゆっくりと食事してから出掛ける。

最初の頃こそ『わたしも休んでママと過ごす~』と駄々を捏ねていたヴィヴィオだが、今はこうして聞き分けよく学院へ通っている。

 

(ごめんね、ヴィヴィオ。本当は一緒に居てあげたいけど)

 

本来なら甘えたい盛りの筈のヴィヴィオに心の中で謝るフェイト。最近では、執務官を辞めてヴィヴィオと一緒に暮らそうか、と割と本気で悩んだりしている。

 

(‥‥‥そうだ!)

 

何やら思い付いたフェイトは、出掛ける支度を始めた。何の事はない、学院に自分が行けば良い。そうすれば、ヴィヴィオと過ごす時間も増える。休憩時間とか、昼食とか。

 

(あっ‥‥‥これも)

 

思い出したようにフェイトが手に取ったそれは、いつかなのはに貰ったカメラ。見た目に似合わずカメラ好きななのはが、新しい物を買うからとくれた物。とは言っても、結局なのはは新しい物を買う前に『ゆりかご』と運命を共にし、彼女がフェイトに遺した形見となってしまった。

 

身支度を終えたフェイトは、車をゆっくりと走らせる。よくよく考えてみれば、昼食時以外の時間にお邪魔してはヴィヴィオに恥をかかせてしまうかも知れない。そう思ったフェイトは、少し無限書庫へと寄る事にした。

 

「やぁ、フェイト。調子はどうだい?」

 

書庫へと着くと、司書長であるユーノが出迎えてくれた。元々クロノの依頼品とフェイト自身の依頼品を取りに出向く予定だったし、この後車を飛ばせば学院には正午前には着く。

 

「うん。問題ないよ。例の依頼だけど‥‥‥」

 

「ああ、それなら丁度さっき出来た所だよ。フェイトはこの後ヴィヴィオの所へ行くの?」

 

「どうして分かったの?」

 

「何となく、かな?」

 

フェイトはユーノに笑みを浮かべる。それは満面の笑顔ではなく、少し憂いを帯びた笑み。もしも、もしもあの時なのはが助かっていたら、もしかしたらヴィヴィオの父親になっていたかも知れない。そう思いつつユーノを見ている。

 

「なのはの事、考えてたね?」

 

思いもよらず言い当てられたフェイトは、「‥‥‥うん」と一言答え、少し躊躇して口を開いた。

 

「あの時‥‥‥もしかしたらなのはを助けてあげられたんじゃないかなって。もっと、違うやり方が、あったんじゃない‥‥‥か‥‥‥なっ‥‥‥て‥‥‥」

 

そこまで口にして、フェイトは我慢出来ずに涙を溢す。幼少期、自分を闇から救ってくれた、初めての友達で、無二の親友。彼女の最期の時に、自分は何も出来なかった、いや、もしかしたら、見殺しにしただけだったのかも知れない。後悔。

 

「簡単に『仕方無い』とは言わないけど、それは少なくともフェイトのせいじゃない。クロノだっていつか言っていただろう?『こんな筈じゃなかった事ばっかりだ』って」

 

「そう‥‥‥だよね。ごめんね、ユーノだって辛いのに」

 

それから黙りこんでしまったフェイト。ユーノも察して、依頼品を取りに書庫内へと戻って行く。

 

◇◆◇◆◇

 

「もうっ!ママ、恥ずかしいよ」

 

「ごめんね、でもヴィヴィオが勉強してる所見たかったし」

 

頬を膨らませ、口調は怒ってはいるが、ヴィヴィオは怒っている訳ではなかった。どちらかと言えば、恥ずかしい、というのが正直な所。

 

「でもっ!写真まで撮らなくてもいいのに!」

 

「でも、ヴィヴィオの思い出、沢山残しておきたいし」

 

苦笑いを浮かべ、そんな言い訳をしているフェイト。‥‥‥反省はしていないようだ。

 

「もーっ。ママは有名人なんだから、もっと自分の行動は気にしてよ」

 

「はーい」と口では言っているものの、テヘッと舌を出しておどけてみせるフェイト。矢張り反省はしていない。

 

 

ヴィヴィオを車に乗せて自宅へと帰り、夕食を共にし、同じベッドで眠る二人。ぐっすりと眠るヴィヴィオの隣で、フェイトは昼間の事を思い出していた。

 

(今なら、少し気持ちが分かるよ、母さん)

 

久し振りにクロノの言葉を思い出し、当時の事を振り返る。

 

(私だってなのはを生き返らせる事が出来るなら、同じ事をするかも知れない。もしヴィヴィオがアリシアと同じ事になったら、私もきっと‥‥‥)

 

と、そこまで考えて、フェイトはふとある事を思った。

プレシア程の魔導師が、長い間研究した結果、ジュエルシードを探すという実行に移したのだ。もしかしたら、プレシアは本当にアルハザードを、時間移動の手段を見付けたのかも知れない。それに、『ゆりかご』が実在していた位だ。或いは‥‥‥。

 

(止めよう。悲しくなるだけ)

 

仮の事を考えても仕方無い。フェイトは気持ちを切り替え、ヴィヴィオの頬をプニプニと突きながら、明日は二人で何処へ遊びに行こうか考えるのだった。

 

◆◇◆◇◆

 

それから、2週間後。

 

「シャーリー、あと30分位でそっちに着くから。受け取りは慎重にね?」

 

《分かりました、フェイトさん》

 

フェイトは、輸送の護衛に付いていた。品物は奇しくも、ロストロギア『ジュエルシード』。急遽別の予定が入ってしまったはやてに頼まれ、地上本部までの道程に同行していた。

 

(懐かしいな‥‥‥初めてなのはに会ったのは、すずかの家の庭だったっけ)

 

ケースに入れられた、封印処理済みのジュエルシード。誤って起動させないよう、フェイトも側で魔力を使わないように慎重に行動している。

 

(もし‥‥‥もしこれが本当に願望器として機能するなら、なのはを生き返らせる事も‥‥‥)

 

フルフルと横に首を振り、考えを必死に打ち消す。

 

(駄目駄目。私は執務官なんだ。そんな事しちゃ、駄目。それに、母さんなら兎も角、私なんかには、無理)

 

フェイトはまじまじとそれを見つめる。もし、この世界にほんの僅かでも可能性が有るのだとしたら、恐らくこれしかない。だが。

 

(母さんなら、出来たかも知れない。私じゃ無理だけど、母さんがもし生きてたら‥‥‥)

 

そんな事を考えながらフェイトがボーッと見つめていると、ジュエルシードの1つが不意に輝き出す。

 

(嘘っ!?封印が甘かったの!?)

 

「バルディッ‥‥‥キャアぁぁ!」

 

起動しようとしたバルディッシュはフェイトの手から離れ、数メートル先に吹き飛ばされる。フェイトもかなり遠く迄吹き飛ばされながらも、何とか起動した1つだけを握り、他のジュエルシードが共鳴するのだけは防いだ。

 

(うっ‥‥‥)

 

飛ばされた時に挫いたのか折れたのか、右足が動いてくれない。その場に仰向けに倒れたままのフェイトは、右手の中の菱形のそれを握り締める。

 

(分かってる。こんなの、間違ってるって。でも、私は‥‥‥)

 

「もう一度会いたい‥‥‥助けたい‥‥‥なのはを!!」

 

フェイトの叫びに呼応して、手の内のジュエルシードが力強く輝き、フェイトとその周りを光が飲み込んでいく。

 

◆◇◆◇◆

 

その日、次元震が観測された。大きな被害にはならなかったが、行方不明者が、一人‥‥‥‥‥‥。

 

 

 

 




三話までサクッと行きます。
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