An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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pain

 

色々あった温泉からの帰りのワゴン車の中。ゲンナリしているユーノを抱えている美由希の後ろの席に座るなのはの機嫌は、頂点にあった。

 

「はい、これ。フェイトちゃんの分のジュースだよ」

 

「ありがとう、なのは」

 

帰りは兄の恭也を月村家の車へと追いやって、見事フェイトの隣の席をゲットした。もしかしなくてもフェイトにピッタリとくっ付いて、一人満面の笑みを浮かべている。

 

(フェイトちゃん大好き‥‥‥フェイトちゃん‥‥‥私の‥‥‥フェイトちゃん)

 

フェイトの左手を、乗り込んだ時から握ったまま離さないその右手。お互いに利き手とは反対の手なのでそこまで困る事はないが、少々動き難い。勿論、今のなのはにはそんな事はどうでも良い小さな事で、密着して手を繋いでいる現状は至福の時間そのものだった。

 

ご機嫌でジュースを飲んでいたなのはが、漸くある事に気が付く。フェイトは先程から何かを考え込んでいる。自分が何か機嫌を損ねるような事をしてしまったのかと思い、心配になって声を掛けた。

 

「フェイトちゃんどうしたの?私、何か迷惑かけちゃうような事しちゃった?」

 

「なのはのせいじゃないから、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから」

 

そう答えて笑顔を向けてきたフェイトの姿に、再びなのはは笑顔になる。

自身の持っているオレンジジュースを見て何か思い付いた暴走するなのはは、それをフェイトの顔の前に持っていく。

 

「ねえ、フェイトちゃん。フェイトちゃんのメロンソーダも飲んでみたいな。私のオレンジジュース飲んでも良いから、メロンソーダ一口貰ってもいいかな?」

 

小学3年生の考えそうな事。(フェイトちゃんと間接キス‥‥‥フェイトちゃんと間接キス)とその邪一色のなのはの思考など考えもつかないフェイトは、「うん、良いよ」と笑顔でメロンソーダを差し出す。

 

少しだけ息を飲んでそれを一口飲むなのはの頬は紅い。「ありがとうフェイトちゃん!私のも飲んで良いよ!」とフェイトにも飲ませ、満足して再びべったりとフェイトにくっ付く。

 

一方のフェイトはと言えば、なのはの好意など露知らず。今後の事を考えていた。

 

(やっぱり‥‥‥1度母さんに会わないと)

 

それが何を意味しているのかは、フェイト自身充分に分かっている。しかし、ジュエルシードももう10個。これ以上会うのを引き延ばせば、もっとキツい監視となるかも知れない。そうなれば、なのはやその周りの人達に危険が及ぶかも知れない。あれこれと悩んだが、やはり1度プレシアに会っておき、従っている素振りを見せておくのが得策か。今後の事もあるし、一先ず『なのは』には言っておこうと、なのはに気付かれないよう念話で語りかける。

 

《ねえ、なのは》

 

『なっ、何?フェイトちゃん』

 

現マスターである昔の自分の、フェイトへの好意について聞かれると思った『なのは』が、焦りつつも念話で答える。それに全く気が付いていないフェイトが続ける。

 

《やっぱり、母さんに会っておこうと思うんだ。これ以上引き延ばすのは、危険だと思う》

 

『確かに従っている素振りを見せるのも悪くは無いとは思うけど‥‥‥プレシアさんに会うって事は、フェイトちゃん‥‥‥』

 

《分かってる。私が、少しだけ我慢すれば良いんだし。平気だよ》

 

『そんな事‥‥‥やめて、フェイトちゃん!』

 

念話ながら、声を荒げる『なのは』。親友を、はいそうですか、と態々虐待の現場に送り出す者など居ない。それに《‥‥‥分かった。母さんに会うのは、また今度にするから》と答えたフェイトだが、その言葉が嘘である事は『なのは』には充分過ぎる程分かる。

 

『行っちゃ駄目だよ』

 

《分かってるから、大丈夫だよ、『なのは』》

 

そう返したフェイトは、なのはとレイジングハートに笑みを向ける。つられて笑顔になるなのはと、黙ってしまったレイジングハート。二人の様子を更に後ろの席でゲンナリしながら見ていたアリサと共に、翠屋へと車は向かって行った。

 

◆◇◆◇◆

 

翌日、時の庭園。玉座の間からは、フェイトの悲鳴と、鞭を打つ音。

 

「あ゛あっ!‥‥‥‥‥‥あ゛あっ!‥‥‥」

 

息も絶え絶え、バリアジャケットもボロボロ。定期的に放たれるプレシアの鞭。ご丁寧に魔力が籠ったその鞭が当たる度に、激痛がフェイトを襲う。

 

「あれだけ待ったのに、ジュエルシードたったの四つ‥‥‥。がっかりだわ。『全部集めて来て』と言った筈でしょう!」

 

話しながらも、鞭を打つ手は休めないプレシア。バシンッという痛々しい音はまだ終わる気配は無い。

 

「あ゛あっ!‥‥‥あ゛あっ!‥‥‥‥‥‥ごめん‥‥‥なさい‥‥‥」

 

悲鳴を上げ涙を流し、弱々しいか細い声で謝りながらも、フェイトは必死に耐える。

 

(痛い‥‥‥痛い‥‥‥でも、あの時の、ゆりかごと消えた時の『なのは』はもっと痛くて辛かったんだ‥‥‥このくらい、我慢しなきゃ)

 

フェイトにとって、永遠とも思えた時間が漸く終わる。拘束を解かれて床に倒れ込んで動けないフェイトは、「ジュエルシード‥‥‥全部集めて来るのよ?あの子が持っている分も、全部」と囁いたプレシアの後ろ姿を虚ろな瞳でボーッと眺めながら、意識を手放した。

 

◆◇◆◇◆

 

フェイトが気が付いたのは、その日の夕方。まだ痛む身体を漸く起こして、ヨロヨロと庭園の自室へと歩く。

 

(大丈夫‥‥‥このくらい)

 

久し振りのそのベッドにやっとの事で横になり、瞳を閉じる。

 

(少しだけ‥‥‥少しだけ休んだら、海鳴に戻ろう。アルフには、この傷の事どう言い訳しようかな‥‥‥)

 

今回は、アルフは置いて一人で来た。前回のPT事件の際、激昂したアルフはプレシアに殴りかかって大怪我を負っている。出来る事なら、アルフにもそんな怪我は負わせたくなかった。

 

(『なのは』。きっと私が‥‥‥貴女の事を‥‥‥‥‥‥)

 

そのまま眠りに落ちたフェイトが目覚めたのは、結局その日の夜中。身体に残る鞭で打たれた傷の数々を悲しそうな笑みで見つめた後、思い出したように転移魔法陣を展開する。

 

「きっとアルフも心配してるだろうし、早く戻ろうか、バルディッシュ」

 

《‥‥‥‥‥‥Yes,Sir》

 

何か言いたげだが一言で黙り込んだバルディッシュと共に、アルフの待つ海鳴へと戻ったフェイト。そーっと扉を開けると、アルフが駆け寄ってくる。

 

「遅かったじゃないか。心配したんだよ、フェイト‥‥‥‥‥‥その傷!どうしたんだい!?まさか、プレシアに‥‥‥?あの鬼ババァ!」

 

「落ち着いて。私は、大丈夫だから」

 

何があったかを察して、やはり激昂しているアルフを宥める。(今は、これで良いんだ。今は)と自分に言い聞かせながら部屋へと入ると、予想外の人物が待っていた。

 

「やっと帰ってきたのね、フェイトちゃん。夕方迄なのはちゃんも待ってたのに」

 

「忍さん、どうして‥‥‥!」

 

驚き固まるフェイト。フェイトはその身体の傷を見付けた忍に抱え上げられ、ベッドに横に寝かされる。

 

「フェイトちゃん、こんなに傷だらけになって‥‥‥。少しなら治癒できるから、じっとしてて」

 

その、フェイトを治癒中の忍の横に座っていたアルフが、心配そうに口を開く。

 

「なあ、フェイト。アタシらに黙ってる事、あるのかい?」

 

「‥‥‥え?」

 

動揺しているフェイトの頭を撫でながら、今度は忍が話し出す。

 

「ごめんね、フェイトちゃん。聞いちゃったのよ。貴女の事と、レイジングハートの事」

 

◆◇◆◇◆

 

所変わって。97管理外世界へと急ぐ、時空管理局の戦艦アースラ。

 

「まだ着かないんでしょうか?艦長」

 

「そうねぇ。あともう少しはかかるでしょうね」

 

眉をヒクつかせて苛立つクロノと、ノホホンと構えるリンディ。その様子に苦笑いしながら、エイミィが口を挟む。

 

「グレアム提督に『次元震まで起きているんだから、早く解決してこい』って発破かけられちゃったもんね、クロノ君」

 

「提督の仰る事は尤もだけどな。問題は、あの姉妹なんだ‥‥‥」

 

任務を終えて帰った後のリーゼ姉妹を想像してゲンナリとしているクロノ。「冗談じゃないよ、全く」と愚痴っている所に、再びエイミィが口を挟む。

 

「アハハハ。良いじゃない。あんな可愛い姉妹に構ってもらえるんだしさ」

 

「良くなんてないっ!全く、あの二人は‥‥‥」

 

 

 

溜め息ばかりのクロノ執務官を乗せたアースラが海鳴に着くまで、あと数日。

 

 




クロノ、リンディ、エイミィが初登場。アースラ到着までもうすぐ。

フェイトちゃんは果たして前回のPT事件のエンディングを回避出来るのでしょうか?(棒読み)
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