An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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歴史は繰り返す

 

「行くよ、なのはママ!!」

 

『了解、ヴィヴィオ!!』

 

相手はミウラ・リナルディ。試合も終盤。ミウラの強打を浴びたその左腕には、既に力が入らない。

 

抜剣で魔力を纏ったミウラの蹴りが迫る。ヴィヴィオは極めて冷静に、直撃する直前でそれを避けて、空振りして身体が流れ無防備となったミウラを見据えて、両足を踏ん張り魔法陣を展開する。

 

(今だ‥‥‥!)

 

「一閃必中ッ‥‥‥」

 

瞬間、左腕に痛みが走る。魔力を込めたヴィヴィオの拳は力無くミウラの顔面を捉えるが、やはりダメージを与える程には至らない。そのまま身体が流れ、ミウラのボディブローをもらってその足が止まる。

 

「がはっ‥‥‥」

 

体勢の崩れたヴィヴィオに、ミウラの止めの一撃が迫る。

 

「一閃必墜ッ!『天衝星煌刃!』」

 

その蹴りが、棒立ちだったヴィヴィオを捉える瞬間。突然ミウラの視界からヴィヴィオが消える。

 

「なっ‥‥‥!!」

 

「『セイクリッド‥‥‥ブレイザー!!』」

 

ヴィヴィオの右拳から走る、虹色の魔力の奔流。ミウラの真下から放たれたそれは彼女の腹部から顔面をまともに捉えて、ミウラの意識を完全に刈り取った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 

仰向けにその場に倒れたままブレイザーを撃ち込んだヴィヴィオが震えながらも何とか立ち上がる。殆ど魔力を使い果たし、大人モードが解けてしまったヴィヴィオ。カウント中も動かないミウラを、祈るような思いで見つめる。

 

(これで‥‥‥決まって‥‥‥!)

 

『大丈夫。確り入ったよ!』

 

『なのは』は既に勝利を確信しているようで、声のトーンも高い。

 

カウントが終わっても立てないミウラ。《ヴィヴィオ選手の勝利です!》とアナウンスが流れ、ヴィヴィオの表情に笑みが溢れる。

 

「勝った‥‥‥!やったよ、なのはママ!」

 

『うん!おめでとう、ヴィヴィオ!』

 

少女の姿で『なのは』とハイタッチを交わすヴィヴィオ。

漸く立ち上がったミウラが、二人の元へと近寄ってくる。

 

「負けてしまいました‥‥‥ボクの完敗です」

 

「そんな事無いですよ、ミウラさん!」

 

『そうだよ、ミウラちゃん。際どい勝負だったよ』

 

笑顔で控え室に戻って行く3人。まだ痛みの残るヴィヴィオに、ミウラが不思議そうに訊ねる。

 

「ヴィヴィオさん。最後の、星煌刃を避けた時ですけど、瞬間移動したように見えたんですけど」

 

「フェイク・シルエットですよ。なのはママと密かに練習してたんです」

 

今回の大会の試合中に、『なのは』が指示を出した事は1度も無い。『なのは』がしたことは、ヴィヴィオの意を汲んでサポートに徹した事だけ。(その代わり、みっちりと練習に付き合った。)

 

‥‥‥大会が始まっても、フェイトの消息は不明のまま。局内でもその生存を絶望視する者も多い。只、生きている事を信じている者も少なくなく、ヴィヴィオにフェイク・シルエットを授けたティアナ執務官を筆頭に、今も尚懸命な捜索が行われていた。

 

(ママ、私、もっと強くなるよ。だからママも、早く出てきて。‥‥‥会いたいよ、ママ)

 

勝利の余韻に浸りながらも、ヴィヴィオはフェイトを想い、空を見上げた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「『リリカル、マジカル!ジュエルシード・シリアルⅩⅣ、封印!』」

 

海鳴に戻って数日後。フェイトは、海鳴の街中にあったジュエルシードを、なのは、アルフと共に封印している最中。周りに影響が出ないよう、ユーノが張った結界の中である。

 

「フェイトちゃん、封印してきたよ!」

 

「うん。これで、11個目だね」

 

やっとの事で半分を集めた。今回は次元震を起こさぬように慎重に封印した。まるで甘える子犬のような、妙にフェイトにくっ付きたがるなのはに疑問を感じながら、時の庭園から戻った時の事を思い出す。

 

忍に温泉での、フェイトと『なのは』の会話を聞かれてしまった。更には、フェイトが母親に会いに行っていたのをアルフが喋ってしまっていて、怪我の事を追及されてプレシアからの虐待の事もバレてしまっている。なのはには一切話していない様なのがせめてもの救い。10年後、ヴィヴィオ達を救う為に自らの命を犠牲にする事など、今のなのはにはとてもではないが言えない。それに。独断で無茶をする嫌いがあるなのはに、フェイトが母親に受けている仕打ちなど話せない。前回の時よりも好感度が高いであろう今のなのはでは、一人で暴走してプレシアと対峙してしまう危険もある。

 

(まだ言えない。ごめんね、なのは。隠し事ばっかりで)

 

表情に出てしまったらしく、悲しそうな笑みを浮かべているフェイトに「どうしたの?何か気になる事とか、あるの?」と心配してくれているなのは。

 

「何でもないよ」

 

フェイトが静かに答えて、バリアジャケットを解除しようとしたその瞬間。一際大きな魔力を感じる。フェイトも良く知る、義兄の魔力。

 

(どうして!?早すぎる!)

 

今クロノに‥‥‥管理局に接触するのは不味い。まさか今日現れるとは思ってもいなかったフェイトは、何の準備も出来ていない。今のフェイトは、只でさえ違法渡航者。仮にクロノ達が事情を知ってフェイトを保護しても、時の庭園にいるプレシアの元へと突入したら結末は前回と同じになってしまう。

 

(それじゃあ、母さんを助けられない‥‥‥どうにかして切り抜けないと)

 

フェイトが良い案を考え付く前に、クロノは姿を現した。事件が事件だけに、その表情は険しい。

 

「君達、ちょっと良いか?僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。そのジュエルシードの件で詳しく話を聞きたい」

 

フェイトはどう返事をしたものか悩む。だが、そうして言葉を探している間に、なのはが話し出してしまう。

 

「えっと、私、高町なのはって言います。こっちがユーノ君で、この子が、フェイト・テスタロッサちゃんで、この人がアルフさん」

 

それを聞いたクロノの眉が一瞬、ピクリと動く。咄嗟に顔を反らしてしまったフェイトは、クロノの視線を感じて戸惑い、必死に言い訳を探す。

 

《フェイト、今は管理局は不味いんじゃないか?》

 

アルフからの念話。事情を知り尚、フェイトを受け入れてくれたアルフも概ね同意見のようで、悟られないようにクロノの隙を伺っている。

 

《何か、何か考えないと‥‥‥》

 

とは言っても、さっきの今で良いアイデアは浮かんで来ない。思い悩むフェイトを見兼ねたのか、それとも我慢の限界だったのか。アルフが不意にフェイトを抱えて、クロノに魔力弾を浴びせる。

 

「あー、もう面倒だよ!逃げるよ、フェイト!」

 

「え!?ア、アルフ!?」

 

フェイトは離脱しようと飛び上がったアルフに抱きかかえられて焦るが、時既に遅し。逃げようとアルフが向けたその背中を狙い、クロノのS2Uから魔法弾が放たれる。逆向きに抱えられていたフェイトは咄嗟にシールドを展開。それを防ぐ。

 

再び魔法を放とうとしたクロノの前に、なのはが両手を広げて立ちはだかる。「やめて!撃たないで!」と叫んで動かないなのはの背中が、フェイトの視界から遠くなっていく。

 

「‥‥‥不味いよ、アルフ。此れから、どうしよう」

 

「ごめんよ、フェイト。頑張って考えたんだけど、これしか思い付かなくてさぁ‥‥‥」

 

直ぐに多重転移したアルフ達を、クロノが追ってくる気配はない。けれど、これで前回以上に状況は難しくなった。

 

(クロノやエイミィが調べれば、きっとすぐに母さんに辿り着く。なのはに‥‥‥嫌われるかも知れない)

 

特殊な理由があったとしても、なのはを騙していたのに違いは無いし、分かって貰う為に真実を話す訳にもいかない。

場所を知られている以上、今のマンションにも居られない。かと言って、時の庭園には‥‥‥。

自分の主人が思い悩み落胆しているのを感じ取って「ごめんよ、フェイト」と謝ってくるアルフに、フェイトは「ううん、仕方無いよ。私も、なのはに色々隠してるんだし」と無理矢理笑みを作って答える。

今頃なのはがどんな思いでいるのか考えると、胸が締め付けられる思い。せめて、事情を知っている忍と連絡が取れればと、探査妨害を展開しながら注意深く月村邸を目指す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




あーあ、アルフさん、やっちゃいました。の回。フェイトは忍を頼り月村邸へ。

ヴィヴィオは原作の流れを無視して、ミウラに勝っちゃいました。流石はなのはさん。
『奥の手』フェイク・シルエットは、別小説でコロナがアインハルトに使う予定だったのをこちらで使用。
さて、あっちのSSのコロナ×アインハルト戦ラストはどうしようかな‥‥‥。

次回はお盆明け以降になります。
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