An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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憤怒

 

 

《行くよ、フェイトちゃん、忍さん!》

 

モニターに映るなのはが海上の竜巻に向かって、桜色の砲撃を繰り出す。それに合わせて、フェイトも金色の封印砲を放ち、忍は自身の魔力を練り上げて槍型に形成、それを竜巻に向かい放つ。

 

竜巻が収まって、封印されたジュエルシードが6個現れる。

 

「オッケイ、なのはちゃん。ちゃちゃっと回収しちゃって!」

 

アースラの管制から、エイミィが軽~い感じで指示を飛ばし、なのはがレイジングハートを翳す。

 

「プレシアは、どう出るでしょうか、艦長」

 

「これが最後のジュエルシードですもの。必ず何処かで仕掛けてくる筈。気を抜かないでね、クロノ」

 

クロノとリンディはモニターの3人を見守りつつ、有事に備えていた。

 

 

最初の会談の後、プレシアを調べ尽くしたクロノ達。彼女の娘であるアリシア・テスタロッサの死やプロジェクトFateについても既に掴んでいる。それでも尚此処までフェイトを泳がせていたのは、プレシアがフェイトにジュエルシードを集めさせている、という確たる証拠が無かった為。時の庭園の場所はフェイトを尋問すれば分かるのだろうが、今のまま庭園に踏み込んでも「フェイトが勝手にやった」と言い逃れされたらそれまで。フェイトの違法渡航だけが罪となってしまう。

 

此処までのフェイトの振る舞いや応対を見る限り悪い人間には見えない。それに、忍が「親戚」だと嘘をついてまで庇う理由や、本来ジュエルシードを狙うライバルである筈のなのはを命懸けで助けたりと、フェイトには未だ見えていない部分も多い。それに、フェイトの身体に鞭で打たれた痕があるのも、リンディは気付いていた。

 

「いずれにしても、プレシアが動けば何かしら掴めます。僕はそれに備えて、外へ」

 

「お願いね、クロノ執務官」

 

クロノは海上へと出ようと転送ポートへと入る。

 

 

 

 

 

一方のなのは、フェイト、忍の3人。無事6つのジュエルシードを封印し、あとは回収するだけとなっていた。安心しきって気を抜いているなのはは兎も角、忍、フェイト、『なのは』は緊張を隠さず、警戒を怠らない。

 

「ふぇっ?忍さんもフェイトちゃんも、どうしたの?」

 

もう危険は無いと思っているなのはが、少し様子の違う二人に話しかける。フェイトはいつでも回避行動を取れるよう、なのはと忍を巻き込まないよう慎重に一定の距離を取っていた。

 

「何でもないよ、なのは。速く回収してアースラに戻って」

 

「うん!」となのはが笑顔で返事をした当にその時、その一瞬。3人の頭上から、巨大な紫の雷が降ってくる。

回避行動を取る予定だったフェイトが、その雷の一撃が狙っていたのが自分で無いのを理解したのは次の瞬間。

 

「忍さん!!」

 

叫ぶフェイトの目の前で、その直撃を受けた忍が、意識を失い海へと墜ちていく。

 

「どうして!どうして私を狙わなかったの!?」

 

フェイトは思わず狼狽して、落下していった忍の方を見つめる。そうして完全に警戒を解いてしまったフェイトに、プレシアの二度目の雷撃。

 

言葉を発する事も出来ず海へと墜ちていくフェイト。だが、彼女の姿はその途中でプレシアの転移魔法陣に捕らえられて、消える。

 

「フェイトちゃん‥‥‥!フェイトちゃん!!」

 

一人残されたなのはが叫ぶが、どうなるものでもない。フェイトが連れ去られたであろう位置を唯々眺めている事しか出来ない。

 

「なのは!大丈夫か!」

 

遅れて漸くクロノが現れる。空中で立ち尽くしているなのはが無事なのを確認すると、一直線に忍の救助に向かう。

 

プレシアが放った次元跳躍攻撃、サンダーレイジO.D.J.は計5発。リンディを除けば一番頭の回る忍、封印したジュエルシードを持ったままのフェイトに其々1発ずつと、アースラに3発。なのはが回収直前だった6つのジュエルシードも、プレシアに霞め盗られていた。

 

「プレシアに半分以上持って行かれた‥‥‥クソッ」

 

なのはのレイジングハートに収納されているジュエルシードは9つ。計12個をプレシアに奪われた事になる。悔しさを滲ませているクロノに、事態を理解出来ていないなのはが訊ねる。

 

「クロノ君、何が、どうなってるの!?プレシアさんって誰?どうしてフェイトちゃんを連れ去ったの?」

 

「詳しくはアースラで説明する。なのは、一先ず戻るぞ」

 

気を失っているままの忍を抱え上げ、転移魔法陣を展開するクロノは慌てふためいているなのはを連れて、アースラへと帰還。忍をユーノに預けて医務室へ送り、ブリッジへと向かう。

 

「クロノ君、プレシアさんって誰なの?」

 

「君だけ何も聞かされていないみたいだな。忍さんやユーノは知っているみたいだったのに。いいか、なのは。フェイトは君達の世界の人間じゃない。僕達と同じ世界の人間だ」

 

クロノの言葉に思わずなのはが「えっ?」と声をあげる。忍の親戚だと信じて疑わなかったなのはは、「嘘‥‥‥だったの?」と声を絞り出す。

 

「いいか?プレシア・テスタロッサはフェイトの母親だ。いや、正しく言えば、生みの親‥‥‥か?」

 

それから、アースラブリッジへと向かい歩きながら、クロノがなのはに真実を話した。プレシアの娘のアリシアの事、プロジェクトFateの事、それに、プレシアのフェイトに対する虐待の疑いの事も。

 

「だから僕達は、フェイトがプレシアに無理矢理ジュエルシードを集めさせられていたんじゃないか、と推測している。それが理由なら、フェイトだけなら恐らく最低でも情状酌量で執行猶予は勝ち取れる。だから、なのは。フェイトの救出に手を貸してくれないか?」

 

「そんな‥‥‥じゃあ、フェイトちゃんはお母さんのプレシアさんにあんな酷い事されてたの‥‥‥?」

 

なのはの全身が震える。クロノの話は途中からは聞こえていなかったかも知れない。周りが見えなくなる程に、なのはは怒りに震えていた。

 

(お母さんにあんな事されてたなんて‥‥‥許せない‥‥‥許せない‥‥‥プレシアさん、許さない!!)

 

なのはは闘志を露にし、冷静さをすっかり失っていた。

 

◆◇◆◇◆

 

クロノがブリッジに戻りアースラの被害状況を確認しつつ今後の作戦を練り直し始めた頃、なのはは一人部屋で考え込んでいた。

 

「ねえ、レイジングハート。フェイトちゃんのお家の場所、知らないよね?」

 

『どうして?』

 

「助けに行かなきゃ。きっと、フェイトちゃんまた痛い思いしてる」

 

実は『なのは』はフェイトが強制転移させられてからずっと考え、決めかねていた。

 

(『ジュエルシードを回収し終えた今、フェイトちゃんはプレシアさんにとって用済みの筈。フェイトちゃんの身が危険なのは間違い無い。一刻を争うかも知れない。でも‥‥‥』)

 

時の庭園なら、座標は覚えている。だが、この時代のなのはではプレシアには到底勝てない。それにプレシアは庭園の魔導炉と魔力リンクしている為、その魔力もほぼ無尽蔵。やはりクロノ達に同行し、慎重に攻めるのが常策。

 

(『でも、フェイトちゃん‥‥‥』)

 

もしかしたら今この瞬間にも、フェイトの命は危機に瀕しているかも知れない。『なのは』は、悩んでいた。

 

◆◇◆◇◆

 

「‥‥‥‥‥‥う‥‥‥」

 

フェイトが目を覚ますと、時の庭園の玉座の間に居た。前回プレシアに鞭で打たれた時と同様に、両手を拘束されて上から吊るされている。

 

「‥‥‥母さん」

 

目の前には、プレシア。その手の中のデバイスは、やはり鞭に変形している。フェイトの事を、まるで要らない物を、嫌いな物を見下すような表情で見ている。

 

「使えない子ね。言った筈よ。ジュエルシードを全て集めて、と。なのに、貴女は‥‥‥!」

 

プレシアがフェイトに向かって鞭を振り上げる。しなった鞭がバチンッ、と音を立ててフェイトの足に当たる。

 

「ぅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 

余りの激痛に悲鳴をあげて、フェイトはその場で痛みに苦しみ悶える。更にフェイトの足、腕、お腹、と鞭が放たれ、その度フェイトが意識が飛びそうになるくらいの痛みに襲われる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」

 

フェイトの服は鞭を受ける度に破れ、痛々しいアザがその身体に増えていく。前回と違ってフェイトのバリアジャケットは展開されておらず、如何ともし難い苦痛がフェイトの身体を巡る。

まるで路傍の石でも見るような視線で、そのフェイトを見下すプレシア。手を休める事無く、フェイトに鞭を打ち付ける。

 

「あと9個‥‥‥あと9個でアリシアに会えるの。だから、貴女はもう要らない‥‥‥!」

 

悲鳴をあげながらも、フェイトはプレシアに向かって弱々しく、微かに言葉を発する。

 

「アリシア‥‥‥は‥‥‥こんな‥‥‥事‥‥‥望んで‥‥‥ない」

 

プレシアが怒りを露にした表情へと変わり、その鞭にも一層力が入ってフェイトを打ち付ける。

 

「貴女に‥‥‥お前なんかに、アリシアの何が分かるっていうの!」

 

先程迄よりも速く強烈な、激痛。悲鳴をあげる事も出来ずに、フェイトはその意識を失って力無くだらりとぶら下がる。

 

それでもプレシアは打つのを止めない。フェイトをこのまま打ち殺す勢いで鞭を打ち続ける。

 

「‥‥‥ん?」

 

と、プレシアが何かに気付いて、気配のする方を睨む。直後、壁が破壊されて桜色の砲撃がプレシアに向かって走る。

 

「お前は‥‥‥」

 

「許さない‥‥‥プレシアさん!」

 

なのはの視界には、意識を失いぐったりしている、その服もボロボロのフェイトの姿が映る。

 

「酷い‥‥‥許さない。貴女だけは、絶対に許さない!!」

 

冷静さの欠片も無い、怒り心頭のなのははレイジングハートをプレシアに向けて、バスターを放つ。それをプレシアが少し下がって避けた隙に、フェイトの元へと飛んで、その拘束から解放して抱き締める。

 

「フェイトちゃん!しっかりして、フェイトちゃん!」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥なの‥‥‥は‥‥‥?」

 

「フェイトちゃん、少しだけ、待っててね」

 

意識がまだ朦朧としているフェイトを壁に寄り掛からせて座らせて、その周りに桜色のシールドを施す。改めてプレシアを睨んだなのはは、足元に魔法陣を展開しながら、叫ぶ。

 

「絶対、絶対許さない!」

 

プレシアはそんななのはを極めて冷静に見て、口を開く。

 

「好都合よ。貴女も殺して、ジュエルシードを手に入れれば良いだけ」

 

 

 




無印編もあと僅か。怒りのあまり先走ったなのはが無事フラグ回収。瀕死のフェイトを助け出しつつ、対プレシア戦開戦です。
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