An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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願いを、翼に

 

 

『左!』

 

プレシアの放った雷撃を、なのははすんでの所で避ける。プレシアがある程度なのはの移動先を読みつつ、10発の雷撃。

 

『右上!』

 

左に流れていたなのはが瞬間、右上に移動。直後、なのはの左下と右側に流れていく雷撃。「チッ」と舌打ちするプレシア。

 

『いいよ、マスター、その調子!』

 

「うん!」

 

肩で息をしてはいるが、なのははまだ被弾は無く、プレシアを睨んでいる。

 

『マスター、いい?どうにかプレシアさんの隙を作って』

 

「分かってる!」

 

『なのは』となのはの考えている事は、少し違う。だが、今はそれに拘っている余裕は無い。少しでも反応が遅ければプレシアの攻撃を食らってゲームオーバー。

 

『なのは』がプレシアの攻撃を感知して最良の回避先を予測。なのはに一言で伝え、なのはが避ける、という事の繰り返し。連携はバッチリ。何せ、二人は同一人物。

問題点があるとすれば、『なのは』が回避先を伝えてからなのはが行動する迄のタイムラグ。1秒程のその時間が命取りとなるのは間違い無い。よって、なのははある程度余裕を持って避けられるように常に一定の距離を取っていた。

 

『右下!』

 

なのはが右下へと避けると、すぐ左を雷撃が掠める。と、次の瞬間、なのはの正面から雷撃。

 

『シールド!』

 

なのははラウンドシールドを展開。間一髪でそれを防いだ。

 

「ちょこまかと‥‥‥この小娘‥‥‥!」

 

プレシアの機嫌は良くないようだ。それはそうだ。本来なら、なのはは魔導師になりたての見習い。もっと簡単に倒れると思っていたのだろう。まさか、エースオブエースとまで言われた戦技教導官がついているとは思ってもいないだろう。

 

『なのは』の取った選択は間違ってはいなかった。もしも庭園への突入が遅れていたら、フェイトは無事助けられるか分からない状態だった。

これから『なのは』の取るべき選択肢は3つ。1つ目はプレシアを打ち倒す。2つ目は隙を見てフェイトを連れて離脱。3つ目は時間を稼いで、クロノ達アースラ勢が到着するのを待つ事。

 

3つ目は魔力が無尽蔵のプレシア相手には分が悪い。恐らくまだまだ到着しないであろうアースラ勢を当てには出来ない。普通に考えれば、隙を見てフェイトと離脱するのが現実的。だが、今の、この時代のなのはがそうは思っていない。

 

(このままなら、いける!勝つんだ!勝ってフェイトちゃんを助けるんだ!)

 

完全に冷静さを失っているなのはは、プレシアに勝つ気でいる。今はまだ『なのは』の言う事を聞いているが、いつ暴走するか分からない。

 

そんな状況の、プレシアの攻撃が降り注ぐ中、『なのは』は必死に脱出の隙を探していた。

 

『右!バスター!』

 

なのはが右に高速移動し、バスターを放つ。プレシアはシールドを展開し、それを防ぐ。

 

『今だよ、マスター!』

 

「『ディバイーン‥‥‥バスター!』」

 

プレシアの展開したシールドの上から、ディバインバスターを浴びせる。シールドに防がれはしただろうが、爆発で煙が上がり、視界が曇る。

 

『マスター、今のうちにフェイトちゃんを連れて離脱するよ!』

 

『なのは』が語りかけるが、なのははそれを聞かない。「うああああ!!」と叫び、プレシアに突っ込んでいく。

 

『マスター、駄目だよ!戻って!!』

 

ガキン、とレイジングハートがシールドにぶつかり、煙が晴れて怒りの表情のプレシアが現れる。

 

「小娘が‥‥‥!」

 

なのははその場で雷撃に撃ち抜かれる。その身体に衝撃が走り、床に倒れ込む。

 

「‥‥‥はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」

 

なのははレイジングハートを支えにヨロヨロと立ち上がり、プレシアを睨む。次の瞬間、プレシアに杖で殴り飛ばされ、大きく扉の方に飛ばされる。

 

『マスター!』

 

「大丈夫。まだ‥‥‥やれるから!」

 

直後、なのはを再び雷が捉える。今度は膝から崩れ落ちて、その場に倒れる。

 

「なのは!」というフェイトの心配する微かな声が聞こえる。やっとの思いで立ち上がったなのはに見えたのは、フェイトの声に反応してそちらに杖を向けるプレシアの姿。

 

『フェイトちゃん!!』

 

プレシアはフェイトに向かって、隙間が無いくらい多数の雷撃を放つ。青ざめて固まっているフェイトを助けようと、なのはが痛む身体に鞭を打ってflash moveで走る。

 

被弾直前にどうにかフェイトの前に潜り込み、身体で雷撃を防ぐなのは。張っていたシールドは意味をなさず破壊され、なのはも直撃を受けてそのバリアジャケットが大破。床に両膝を着く。

 

「なのは‥‥‥!なのは!」

 

弱々しく叫ぶフェイトの無事な姿を見て、「良かった‥‥‥」と一言呟き、なのはは意識を失いうつ伏せに倒れる。まだ動かない身体で這ってなのはに近付くフェイト。

 

「なのは、確りして、なのは!」

 

『駄目だよ。完全に意識を失ってる‥‥‥不味いよ‥‥‥何か、何か策を‥‥‥』

 

『なのは』は必死に思考を巡らすが、策は思い浮かばない。このままでは、不味い。現にプレシアは、フェイトとなのはを殺すつもりのようで、杖の先端に魔力を収縮させ始めている。

 

(『せめて‥‥‥あの頃の力があれば‥‥‥せめて、この子とフェイトちゃんだけは‥‥‥』)

 

なのはとフェイトの絶体絶命の刻は、刻一刻と迫っていた。

 

やがて、プレシアが魔力の収縮を終える。「終わりよ」と一言呟き、その魔法、フォトンバーストを放つ。

着弾してしまえば、文字通りゲームオーバー。今のフェイト達の状態では、助かる見込みは無い。

 

フェイトは覚悟したのか、倒れたままのなのはの手を握って瞳を閉じて震えている。その様子を、眺める事しか出来ない『なのは』。

 

(『こんな所でなんて‥‥‥せめて‥‥‥』)

 

◆◇◆◇◆

 

その頃。アースラ艦内は慌ただしかった。

 

「エイミィ!修復はまだか!」

 

「無茶言わないでよクロノ君!そんな簡単に直らないって!」

 

武装隊の準備は出来ている。しかし、肝心の転送ポートは先のプレシアの攻撃で大破。数人送り込むのがやっとの状態。

 

「サーチャーは送れたから何とかモニターは出来ると思うけど‥‥‥」

 

エイミィは心配そうにモニターを見つめる。その後ろで、クロノが怒鳴る。

 

「どうしてなのはに庭園の座標を教えたりしたんだ!」

 

「そんな事言われてもさぁ、あたしゃ教えた覚えなんて無いんだけど‥‥‥」

 

困ったようにアルフが答える。勿論、アルフは教えていない。『なのは』が覚えている以上、教わる必要もなかったのだから。

 

「それよりさぁ、早くしておくれよ。嫌な感じがするんだよ」

 

アルフのその言葉で、少しだが、アルフがフェイトと感情リンクしているのを思い出したクロノ。これ以上は危険と判断し、少数での突入を決意する。

 

「やむを得ない。ユーノ、アルフ、一緒に来てくれ。これから時の庭園へ突入する!」

 

クロノが転移魔法陣を展開しようとしたその時。サーチャーからの情報をキャッチしたエイミィが叫ぶ。

 

「待って、クロノ君!玉座の間に生命反応が3つ!魔力パターンから言ってなのはちゃん達とプレシアだよ!‥‥‥これ‥‥‥不味いんじゃ‥‥‥」

 

捉えられた反応は3つ。なのは、フェイト、プレシアのもの。だが、なのは、フェイトの生命反応は弱々しく、観測出来る魔力も微かなもの。一方のプレシアはと言えば、呆れる程の大きさの魔力量。

 

「クソッ‥‥‥急ぐぞ!」

 

歯軋りをして、再度魔法陣を展開するクロノ。だが、再びエイミィの声が響いてその手を止める。

 

「クロノ君、待った!」

 

「エイミィ、今度は何だ!もう一刻の猶予も無いんだ!」

 

「玉座の間にもうひとつ魔力反応!オーバーSクラスだよ!大きい‥‥‥‥‥‥あれ?でも、この魔力パターンって‥‥‥?」

 

エイミィは理解しかねる事態に、首を傾げる。「何だ!何があった!」というクロノの声に言葉を返さず、モニターを睨んだまま「ウーン」と唸り悩む。

 

「この魔力パターンって‥‥‥なのはちゃんのだよね?なのはちゃんが二人‥‥‥?」

 

◆◇◆◇◆

 

フェイトは襲ってくるで有ろう衝撃と痛みに怯え、思わず瞳を閉じる。

 

(ごめんね、なのは。せめて、死ぬ時は一緒に‥‥‥)

 

気を失い倒れているなのはと手を握り、震える。

‥‥‥と、その直後。「バシュン、バシュン」という懐かしい音が響いてきた。

 

(え?‥‥‥カートリッジ‥‥‥?)

 

聞き間違いでないなら、確かにカートリッジが炸裂する音だった。その直後に、フォトンバーストの炸裂する轟音。

 

震えるフェイトの肩に、誰かの手がポンッ、と置かれる。

 

「大丈夫だよ、フェイトちゃん」

 

聞こえて来た、その少し大人びた声。まさか、と思い瞳を開けて、手を握っているなのはを見ると、やはりこの時代のなのはは気絶したまま。‥‥‥が、ある事に気付いて、辺りを伺う。

 

「レイジングハート‥‥‥?『なのは』は何処?」

 

なのはが手にしていたレイジングハートが無い。ハッとして顔を上げ、漸く前を向いたフェイト。その瞳が涙に滲んでいく。

 

「嘘‥‥‥うそ‥‥‥」

 

純白の、エクシードモードのバリアジャケット。その左手の中には、レイジングハートエクセリオン。その周りを飛行しているブラスタービットが一つ。

 

「あ‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥」

 

上手く言葉に出来ずに詰まり、そのままポロポロと泣き出すフェイト。そんなフェイトの方を向いて、桜色のシールドを展開している人物が口を開いた。

 

「フェイトちゃん、無事で良かった」

 

「‥‥‥‥‥‥『なのは』!!」

 

重い身体を引き摺り、フェイトは目の前の『なのは』に抱き着く。紛れもない、あの当時‥‥‥機動六課当時のなのはの姿。

 

「うん、フェイトちゃん。少しだけ、此処で待ってて。この時代の私を守ってて」

 

「うん‥‥‥うん、『なのは』」

 

止まらない涙を拭いながら、フェイトはこの時代の、意識の無いなのはを抱き抱えて座る。

『なのは』はプレシアの方を向き、レイジングハートを構える。

 

「先ずは、お話聞いてもらわないと。プレシアさんを止めるよ、レイジングハート!」

 

《All right,master!》

 

 




これが最後の奇跡。不屈の魂と共に、エースオブエース降臨。
無印編いよいよクライマックス。
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