An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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不屈の魂(こころ)は、その胸に

 

「『シュート!』」

 

迫る多数の魔力弾を、『なのは』のシューターが正確に撃ち落とす。直後、背後に周り込んだプレシアがスマッシャーを放つが、『なのは』は振り向く事無く桜色のシールドを展開、それを防ぐ。

『なのは』は振り向き様にクロススマッシャーを放つが、プレシアはそれを避ける。避けた位置へとブラスタービットから砲撃。仕方無くシールドを展開したプレシアの後ろへ回った『なのは』が、すかさず砲撃。

 

「『ストライクスターズ!!』」

 

桜色の大きな砲撃はプレシアを飲み込むが、シールドで防いだらしく、無傷。「チッ」と舌打ちするプレシア。

 

「お願いです、プレシアさん!話を聞いて!貴女の娘‥‥‥フェイトちゃんの話を!」

 

「話す事など無いわ。あれは‥‥‥人形よ」

 

そう吐き捨てたプレシアが再び杖を構えて、『なのは』に向けて数多のランサーを放つ。

 

「レイジングハート!」

 

『なのは』の声に呼応して、バシュン、とカートリッジを炸裂、シールドが張られる。直後、全弾が『なのは』に降り注ぐ。

 

煙が晴れると、やはり『なのは』は無事。

 

「あの子はアリシアじゃ無い‥‥‥私の娘はアリシアだけ‥‥‥!」

 

そう言い放って杖に魔力を集中しはじめたプレシア。『なのは』もレイジングハートの先端に魔力を滾らせながら、叫ぶ。

 

「確かにフェイトちゃんはアリシアちゃんとは違う。産まれ方も普通とは違うかも知れない。でも!フェイトちゃんは確かに貴女の娘です!血の繋がった、遺伝子を受け継いだ!」

 

「お前に‥‥‥何が分かるというの!!」

 

プレシアは『なのは』に向けて魔力を解き放つ。先程よりも一層大きなフォトンバースト。それは『なのは』の足元に着弾。大爆発を起こす。

 

尚もなのはは無事。今度は無傷とはいかず、そのバリアジャケットは所々破損している。

 

「‥‥‥分かります!私も‥‥‥私だって、大切な娘が居る!少しの間しか愛情を注いであげられなくて、きっともう会えない娘が!」

 

プレシアの眉が、微かに動く。『なのは』は魔力を集中しならが、尚も叫ぶ。

 

「だから、別れる辛さも、喪失感も分かるつもりです。でも!!こんな事したって、アリシアちゃんは喜んだりしない!それに‥‥‥貴女にはフェイトちゃんが居る!形は違っても、アリシアちゃんの妹として貴女に生んで貰ったフェイトちゃんが!」

 

◆◇◆◇◆

 

なのはの言葉は、フェイトにも確かに聞こえていた。まるで、自分に言われているような、そんな重い言葉。

 

(そうだ。私には、ヴィヴィオが居たのに‥‥‥独りにしないって、約束したのに‥‥‥なのに、私‥‥‥)

 

泣き止んでいた瞳からは、再び自然と涙が流れてくる。

 

(ごめんね、ヴィヴィオ‥‥‥私、駄目なママで。ごめんね‥‥‥)

 

フェイトは心の中で何度も謝罪を繰り返す。自分の我が儘で、結局独りにしてしまった愛娘を想いながら。

 

◆◇◆◇◆

 

『なのは』の言葉に、プレシアの表情が苦痛に歪む。「黙れっ!!」と叫びサンダーレイジを放つが、『なのは』はそれを防ぎ、レイジングハートを向ける。

 

「向き合って、プレシアさん!貴女とアリシアちゃん、フェイトちゃんの運命と!‥‥‥‥‥‥レイジングハート、ブラスター2!」

 

《All right,master!》

 

ブラスタービットがもう一つ現れて、『なのは』の魔力が膨れ上がる。ビットとレイジングハートに魔力が集まる。

 

「『エクセリオンバスター!ブラスト・シュート!!』」

 

放たれた3つの桜色の極光が、プレシアを飲み込む。シールドで防ぎ切れずに、プレシアもダメージを受ける。

 

「黙れ‥‥‥黙れ!」

 

プレシアは後方へと下がりながら、なのはの360度をその魔法陣でぐるりと囲む。その全てが、フォトンバースト。庭園の魔導炉から魔力供給を受けているプレシアならではではあるが、『なのは』にとっては歓迎出来ない状況。

 

「ブラスター3!!」

 

更にブラスタービットが2つ現れ、なのはの周囲を固める。直後、一斉にバーストが炸裂。辺りには轟音が響き渡る。

 

「『なのは』!」

 

なのはが全力で張ったシールドは破壊されるも何とか無事だったフェイトは、この時代のなのはを抱き締めながら、必死に叫ぶ。

 

目の前の『なのは』は、ジャケットが大破しているものの、何とか無事。一層表情が険しくなるプレシアを見据え、ビットに魔力を集める。

 

「きっと‥‥‥きっと貴女にも分かります!『エクセリオンーーバスター!』」

 

5つの砲撃がプレシアに向かって走る。4つを避けて、5つ目をシールドで防いだ処で、目の前に現れた『なのは』がそのシールドを魔力刃で切り裂く。

 

「『シュート!』」

 

ショートバスターをまともに浴びて、大きく後方へと飛ばれされるプレシア。『なのは』は深追いはせず、足元に魔法陣を展開する。

 

『なのは』が砲撃準備に入った所で、プレシアがフェイトに向けてスマッシャーを放つ。「えっ‥‥‥?」と一言発しただけで、全く反応出来ないフェイト。

 

「不味い!フェイトちゃん!!」

 

フェイトと砲撃の間に間一髪で潜り込んだ『なのは』。だが、プレシアの仕込んで居た設置型のバインドに捕まり自由を奪われる。

 

(まただ‥‥‥また私のせいで‥‥‥)

 

もはや止まらない涙で視界が滲むフェイトは、悲痛な表情で『なのは』に抱き着いて叫ぶ。

 

「もう‥‥‥もう止めて!もういいから!もう私の事なんていいから!」

 

直後、プレシアから雷が放たれるが、ブラスタービットが二人を守るように被う。バインドを少しずつ解きながら、『なのは』は静かに口を開いた。

 

「駄目だよ、フェイトちゃん。諦めないで。私が、きっと説得してみせる。‥‥‥‥‥‥これが最後だから」

 

「『なのは』‥‥‥?」

 

またもや防がれ怒りの表情を浮かべるプレシアが、『なのは』のバインドに捕まる。いつもなら破壊出来る筈だったのだろうが、魔力が湧いてこない。

 

「魔力が‥‥‥まさか魔導炉が‥‥‥」

 

そう呟いたプレシアを視界に捉えた『なのは』のレイジングハートとビットに、魔力が収束し始める。バシュン、バシュン、とカートリッジが2度炸裂して、一気に魔力が集まる。

 

「ちゃんと向き合って、プレシアさん!ブラスター3、全力全開!『スターライト・ブレイカー!!』」

 

桜色の5つの太陽から、巨大な魔力が放たれる。動けないプレシアは飲み込まれて、辺りは光に包まれた。

 

◆◇◆◇◆

 

『なのは』は倒れて動けないプレシアを抱き上げ、玉座に座らせる。玉座の間は二人の戦闘ですっかり破壊されて、その原形を微かに留めるのみ。寧ろ、完全に破壊されなかったのが奇跡に近い。

 

「無様だわ。アリシアに会えなかったばかりか、貴女にも負けるなんて。これで、全て終わりね‥‥‥」

 

遠くを見ながら呟くように話すプレシア。『なのは』はそれに「いいえ」と答える。

 

「違いますよ、プレシアさん。これからです。これから、フェイトちゃんと歩いて行けばいいんです。貴女には、幾らでもやり直せる時間がある。‥‥‥私と違って」

 

それを聞き届けて、プレシアは瞳を閉じる。「母さん!」と心配して叫んだフェイトに、『なのは』が頭を撫でながら語りかける。

 

「大丈夫。疲れて眠ってるだけだよ。それから‥‥‥よく聞いて、フェイトちゃん」

 

フェイトが握った『なのは』の右手の像が揺らぎ、微かに透けて向こうが見える。

 

「『なのは』‥‥‥?」

 

一度瞳を閉じ、深呼吸してその瞳を開いた『なのは』は、努めて笑顔を作ってフェイトに語りかけた。

 

「聞いて、フェイトちゃん。今度こそ、お別れだよ」

 

「えっ‥‥‥?」

 

一瞬の事で、固まり反応出来ないフェイト。『なのは』はその温もりを惜しむようにフェイトを強く抱き締めて続ける。

 

「もう、私が存在出来るのは此処までみたい。ごめんね、フェイトちゃん。もっと一緒に居たかった‥‥‥」

 

「『なのは』‥‥‥嘘‥‥‥嘘だよね?‥‥‥嘘って言って!」

 

フェイトの涙は止まらない。言葉の意味を理解して、抱き着いて号泣する。

 

「泣かないで。もっとやりたかった事もあったけど、後悔はしてないよ。こうやってフェイトちゃんを助ける事が出来たしね。きっと私、この為に此処に来たんだと思うんだ」

 

「やだ‥‥‥やだよ‥‥‥『なのは』」

 

涙が溢れて止まらないフェイトを優しく撫で、『なのは』は子供をあやすように語る。

 

「フェイトちゃん。最後だから、笑ってお別れしよう?前回は直接言えなかったけど、今回はちゃんと言える。フェイトちゃん、『今まで、ありがとう』」

 

そう言って『なのは』は笑顔を向ける。フェイトは顔を上げて『なのは』を見つめるが、涙のせいで視界が揺らぐ。

 

「やだよ‥‥‥嫌だよ‥‥‥」

 

「大丈夫。私は消えちゃうけど、いつでもフェイトちゃんの心の中に居るから。だから‥‥‥」

 

「『なのは』‥‥‥やだよ‥‥‥行かないで」

 

嗚咽を漏らして泣くフェイトを宥め、微かにその瞳は濡れてはいるが、それでも『なのは』は笑顔を向ける。

 

「不屈の魂(こころ)は‥‥‥高町なのはは、いつでも一緒だから。負けないで、フェイトちゃん」

 

言い終わると、『なのは』の身体は段々と透けていき、やがて消えてフェイトの掌にレイジングハートが収まる。『なのは』の身体を顕現、維持させていた9つのジュエルシードが光を失って、その場に転がる。

 

「『なのは』‥‥‥『なのは』!」

 

フェイトは泣き叫び、レイジングハートに向かってその名を呼ぶ。

 

《She is not here any longer.She set out on the Journey,Fate.》(彼女はもう居ません。旅立ちましたよ、フェイト)

 

だが、返ってきたのは昔から聞き慣れた、レイジングハートそのものの電子音声。フェイトは受け入れ難い事実を‥‥‥もうフェイトの知っている無二の親友は居ないのだという事を理解して、その場に泣き崩れる。

 

「どうして‥‥‥どうして‥‥‥『なのは』‥‥‥」

 

《Fate.An indomitable spirit in ''your'' heart.》(フェイト。『不屈の魂(高町なのは)』は、貴女の胸に)

 

レイジングハートの言葉に、声を出すことも出来ずに唯々弱々しく頷く事しか出来ないフェイト。悲しみに暮れる彼女の元に、クロノ達が到着したのはその直後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 




『なのは』回。存在を賭してフェイトちゃんを守った『なのは』。悲しみを胸に抱き、フェイトちゃんが行き着く先は‥‥‥。次回に続く。
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