An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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日常は、終わりを告げる

 

 

聖王教会の一室、ヴィヴィオ・T・ハラオウンの部屋。

 

「どうして‥‥‥なの?ねえ、ティアナさん」

 

ヴィヴィオの言葉に、ティアナは掛ける言葉が見付からず、俯いて黙ったまま。

 

「どうして‥‥‥どうしてみんな、私を置いて行っちゃうの?なのはママも、フェイトママも‥‥‥。ずっと、ずっと一緒に居るって約束したのに!どうして‥‥‥う゛っ‥‥‥う゛っ‥‥‥」

 

ヴィヴィオは声をあげて泣き始めた。ティアナはヴィヴィオを抱き寄せて自分に言い聞かせるように囁く。

 

「大丈夫。フェイトさんは、きっと私が見つけてみせるから。だから、大丈夫よ、ヴィヴィオ」

 

ヴィヴィオの手の中には、バルディッシュ。先日の次元震でコアがやられていて、もう元には戻らない。

 

(とは言っても、バルディッシュがこの状態じゃ‥‥‥きっと、フェイトさんだって無事じゃ済まない)

 

ティアナは唇を噛む。ヴィヴィオの事を思うと胸が痛い。僅かな望みに賭けて、フェイトが無事な事を信じて捜索には参加するが、恐らくフェイトは次元震の震源に居た。望みは‥‥‥。

 

(ほぼ絶望的、か)

 

そんな二人の元に、ある人物が訪ねてきて、コンコン、とドアを叩く。

 

「ヴィヴィオ、入ってもええかな?」

 

「八神司令‥‥‥」

 

「ティアナもおったんやな」

 

部屋へと入ったはやて。小さな箱をその手に持っている。

 

「実はな、これ、フェイトちゃんから預かっとったんや。『ヴィヴィオ用に調整して』ってな。時が来たら、渡す予定だったんやけど」

 

開けられた箱の中身を見て、ティアナが驚く。

 

「八神司令、これって、まさか‥‥‥!」

 

箱の中にあったのは、赤く丸い宝石型の、あのデバイス。

 

「そうや。レイジングハートや。あの時、私らを脱出させる直前に、なのはちゃんが渡してくれた物や。『いつか、ヴィヴィオに』ってな」

 

ヴィヴィオはヒック、ヒックと肩を揺らしながら、それを手に取る。なのはの‥‥‥なのはとフェイトの想いの詰まったデバイス。

 

「私‥‥‥信じる。フェイトママは、絶対帰ってくるって」

 

レイジングハートを握り締めて、涙を拭うヴィヴィオ。壊れたバルディッシュとの二つを見つめ、彼女は溢れる涙を堪えながら思う。

 

(だから、フェイトママ。きっと帰って来て)

 

◆◇◆◇◆

 

レイジングハートを渡して、一人部屋を出たはやて。彼女は真っ直ぐトイレへと歩く。用を足しに行くわけではない。歩くはやてのその肩は小さく震えていた。

 

トイレに着いたはやて。周りに誰も居ないのを確認して、個室へと入る。

 

「ごめんな、フェイトちゃん‥‥‥私が、私が代わってって言わんかったら‥‥‥‥‥‥。私のせいや。なのはちゃんも、フェイトちゃんも。全部‥‥‥ごめんな‥‥‥‥‥‥」

 

声を押し殺し、その場で泣き崩れるはやて。彼女の瞳からは止めどなく涙が溢れ、暫く止むことは無かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「‥‥‥イト‥‥‥起きておくれよ‥‥‥フェイト!」

 

アルフに揺すられて、フェイトは眠りから覚めた。何故かは分からないが、廊下に倒れていたようだ。

 

「良かった。急に倒れるからさ、アタシ心配したんだよ?」

 

「ごめんね、ありがとう、アルフ‥‥‥‥‥‥?」

 

その光景に、フェイトは違和感を覚えた。いや、そんな曖昧なものではない。

 

「アルフ‥‥‥いつからそんなに大きくなったの?」

 

「何言ってるんだい。もう随分前からアタシのほうが大きいじゃないか」

 

フェイトの身長はシグナム程の高さは無いにしても、163㎝と低くはない。にも拘らず、今フェイトはアルフの顔を見上げるようにして見ている。アルフが子供のフォームではなく大人フォームになっているのを差し引いても、大き過ぎる。

 

「だって、見上げないと顔が見えないなんて‥‥‥‥‥‥えっ!?」

 

フェイトは視界に入った自身の両の掌を見た。いつもよりかなり小さくなっている、ような気がする。そうして視線を下に落とした所で、ある事に気が付いた。

 

「‥‥‥‥‥‥ねえ、アルフ。私の胸って、こんなに小さかったっけ?」

 

そう。何時もなら見えない部分まで良く見える。胸が、無い。

 

「フェイト、本当に大丈夫かい?まぁでも、ニンゲンの9歳にしちゃあ有る方なんじゃないか?」

 

そのアルフの言葉で、フェイトは固まる。今、アルフは9歳と言ったのか?一先ず確かめようと鏡を探して走り出したフェイトは、別のある事に気が付いた。

 

(まさか‥‥‥時の庭園‥‥‥‥‥‥!!)

 

少し庭園内を歩いたフェイト。間違いなく時の庭園。夢じゃないかとも思って、アルフにつねってもらったり、バルディッシュで確認したり。どうやら現実のようだ。暫く混乱していたフェイトだったが、何かを思い付いたのか、ハッとした後、口を開いた。

 

「ねえ、アルフ。母さんは、何処?」

 

「また何時もみたいに研究室じゃないのかい?邪魔したらまた怒られるし、今は放っておこうよ」

 

プレシアはまだ研究室に。という事は、PT事件の前か或いは直前か。急ぎ足で自室に戻ったフェイトは、カレンダーを確認した。

 

「新暦65年4月‥‥‥!」

 

PT事件直前である事を確信したフェイト。

 

「アルフ、出掛ける用意、しておいて。長期滞在の準備を」

 

そうアルフに告げて、自身はプレシアの研究室へと走る。

‥‥‥97管理外世界への無許可の違法渡航。これでも執務官だ。悪いのは、分かっている。今のフェイトを突き動かしているのは、唯一つ。

 

(待ってて、なのは。貴女との出会いがやり直せるなら‥‥‥貴女をあの運命から救ってみせる。絶対に!)

 

フェイトは1度躊躇したあと、意を決して扉を開けた。

 

◇◆◇◆◇

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

なのはは走っていた。声のする方へ。そう。昼間に怪我したフェレットを預けた、動物病院の方へ。病院の側まで来たところで、キィィィンという音がなのはの耳をつんざく。

 

(何、この音)

 

耳を塞いでも響く音。それが止んだと思ったら、周りの景色が少し変わっている。空気とか、気配とか。

 

「何!?なんなの!?何が起きてるの!?」

 

混乱しているなのはの前に、昼間のフェレットが姿を現した。

 

「来てくれたんですね!」

 

「ふぇぇぇ!?喋った!!」

 

フェレットが日本語を話して驚いているなのは。そのフェレットを抱き上げた所で、大きな黒い塊が、二人(?)の所へと突進してくる。なのはは辛うじてそれを避け、フェレットを抱いて走り逃げる。

 

「僕に少しだけ力を貸して下さい!お礼は必ずしますから!」

 

「お礼とか、そんな場合じゃないでしょ!?」

 

見た目に似合わず律儀なフェレットにツッコミを入れつつ、塊が瓦礫に埋もれて動けないうちに、なのはは出来る限りの距離を取るべく、走る。

 

「今の僕の魔力じゃ、あれを止められない。けど、貴女なら!」

 

フェレットの首元に掛かっている宝石が、キラリと光る。

 

「これを持って!早く!」

 

「はっ、はい!」

 

なのはは言われるままに宝石を持つ。

そうしている間にも、黒い塊は瓦礫から這い出て、なのは達に向かっていた。

 

 

 

「大丈夫。必要ないよ、なのは」

 

《Defensor》

 

突然声が聞こえて、なのは達を守るように金色のシールドが展開される。突然の事で驚くなのは。それと、「魔導師!?そんなまさか」となのはとは別の意味で驚いているフェレット。

 

「そこから、出ないで。じっとしてて。直ぐに、終わるから」

 

現れたのは、黒衣を纏った、戦斧を持った少女。

 

黒衣の少女‥‥‥フェイトはバルディッシュを黒い塊に向け、魔法陣を展開。雷を伴った魔力を解き放つ。

 

「『サンダースマッシャー!』」

 

金色の砲撃が直撃し、黒い塊は菱形の石へと姿を変える。フェイトはそれに封印を施して、バルディッシュに収納した。

 

なのはの傍で「凄い、魔力だ‥‥‥」とフェレットが感嘆しているその場所へ、フェイトはゆっくりと歩いて近付く。驚いたまま動けないなのはを、フェイトは涙を浮かべながら、確りと抱き締めた。

 

「良かった‥‥‥やっと、会えた。会いたかったよ、なのは」

 

「ふっ‥‥‥ふぇっ!?」

 

抱き締められた方のなのはは、今にも泣き崩れそうな目の前のフェイトの行動は良くは理解出来ないが、これだけは理解出来た。

 

(助けてくれたんだ‥‥‥この子が)

 

 

 

 

 




なのはのレイジングハート初起動に介入。ジュエルシードもシレっと回収。
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