An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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エルトリアの空を見上げて

 

 

「‥‥‥‥‥‥それで私もなのはも守護騎士に襲われて、夜天の書にリンカーコアを奪われちゃって‥‥‥」

 

「成る程、それで魔力を殆んど感じなかったのですね。理解できました」

 

なのはと共にグランツ研究所へと案内され、落ち着きを取り戻したフェイト。取りあえずシュテルとディアーチェが敵では無い事を理解して、今の状況を説明している。なのはは未だに気絶したままで、奥のソファに寝かされている。

表情を変えずに冷静にその話を聞いているシュテル。

 

壁に寄り掛かって、何やら怪訝そうな表情で聞いていたディアーチェが、徐ろに口を開いた。

 

「それで、お主らはどうやって此処に来た?その時代に時間と空間を移動する術などない筈だが?」

 

「えっと、私も良くは分からないんだけど、突然目の前が真っ白になって、気が付いたらこの世界の空の上に居て‥‥‥」

 

フェイト自身も何かに巻き込まれたらしい、という事以外は分からない。紅茶に口をつけながらシュテルは「そうですか‥‥‥」と思案し始める。

 

「元の世界に帰す事自体は出来ますが、原因が分からない事には。再び此処に戻って来てしまう可能性もありますし」

 

3人が悩んでいる所へ、皿に山になったクッキーを運んでくる金髪の少女が一人入ってくる。

 

「皆さん、クッキーが焼けましたよ」

 

「ユーリ、上手く焼けておるのか?」

 

「はい、ディアーチェ。教わった通りに作りましたから」

 

そう答えたユーリと呼ばれた少女がディアーチェに笑顔を向ける。ディアーチェは皿のクッキーを1つ摘まんで食べると、笑みを浮かべてユーリの頭を撫でる。

 

「なかなか上手く出来ておる。悪くないぞ」

 

「ありがとうございます」

 

その笑みが満面の笑顔に変わったユーリ。そんな二人を見て、フェイトも思わず笑顔になる。

 

「二人は、仲が良いんだね」

 

「ハイ、フェイトさん。フェイトさんとすずかさんみたいにあんなに、って程では有りませんけど」

 

「え?すずかと?」

 

ユーリの言葉に首を傾げるフェイト。確かにすずかとは親友だし、仲が悪い、という事はない。だが、フェイトの場合のそれで言うなら、この場合『なのは』である。

 

「これ、ユーリ。そこのフェイトはそうではない。違う並行世界のフェイトだ」

 

「そうなんですか?私、てっきり‥‥‥」

 

何やら自分達だけで納得しているユーリとディアーチェ。ますます疑問のフェイトに、シュテルが補足をする。

 

「我々の世界線は少し特殊なのですよ、フェイト。貴女達の世界線とは大きく違うようです」

 

「そうなんだ。色んな私達が居るんだね」

 

並行世界の事は良くは分からない。だが、フェイトはふと気が付く。他の並行世界があるのなら、なのはが死なない世界もある筈。もし、その生存方法を知ることが出来たなら‥‥‥。

 

「ねえ、シュテル。シュテル達の世界では、なのはは元気なの?その‥‥‥未来でも」

 

「余り未来を知ることは言いとは言えませんが‥‥‥まあ、その位は良いでしょう。元気なようです」

 

と、シュテルがそう答えた所で、なのはが目を覚ます。

 

「‥‥‥あれ?此処どこ?」

 

「漸く目が覚めましたか。大丈夫ですか?ナノハ」

 

シュテルがなのはの手を引き、その身体を起こしてやる。フェイトから見れば双子の姉妹に見えるのだが、なのはは「貴女‥‥‥私に少しだけ似てるね?」とその程度の反応。

 

「私達の世界線のナノハにも同じような事を言われました。『そっくりと言う程は似ていない』、と」

 

「ふぇっ?」と疑問にその首を傾げるなのははディアーチェ達に説明を受けて、朧気ながら状況を理解したらしい。

 

「そっかぁ。ディアーチェちゃんは、私とフェイトちゃんがこれから出会う友達にそっくりなんだね」

 

そんななのはに「そういう事よ」と答えたディアーチェが、再び怪訝そうな表情になる。彼女はフェイトの方をチラリと見た後、シュテルに「なのはに施設内を案内してやれ」と声を掛けた。

 

「分かりました、ディアーチェ。それではナノハ、参りましょうか」

 

なのはの手を引いて、シュテルが部屋を後にする。その二人の姿が見えなくなると、ディアーチェが表情を真剣なものに変える。

 

「これでなのはは居らぬぞ。フェイト、お主、何を隠しておる?」

 

「えっ?かっ、隠してるって?」

 

ギクリとして、フェイトは激しく狼狽する。『未来は知らない方が良い』とシュテルも話していただけに、真実を知られてしまったら何をされるか分からない。(まさか‥‥‥未来から来たのがバレた?でも、違うかも知れないし、何とか誤魔化さなきゃ)と必死に違う言い訳を考えるフェイト。

 

「お主、どうして子鴉を‥‥‥八神はやてを知っておるのだ?」

 

「えっ‥‥‥ディアーチェ、なっ、何言ってるの?はやてなんて知らないよ?」

 

口では何とかそう答えたものの、あからさまに動揺してしまっているフェイト。額には汗。その目は游いでいて、『知っている』と言っているようなもの。

 

「惚けるのもその辺にしておけ。我を初めて見た時に「はやて」と口走っておったであろうが」

 

「言ってないよ?きっと気のせい‥‥‥」

 

どうにか知らない振りを貫こうとするフェイトに、ディアーチェが鋭い眼差しを向ける。

 

「大概にしろ。第一、お主らの世界の時間では、まだ闇の書が夜天の書と言うのは知らぬだろうが」

 

(‥‥‥しまった‥‥‥でも‥‥‥)

 

墓穴を掘っていた事に気付き後悔するものの、真実を言えないフェイト。もし真実を話して、未来を変えようとしている事を危険視されたら、と思うとやはり言い出せない。

 

「捕まえてどうこうしようという訳では無い。その‥‥‥ユーリが『力になってやれ』と言うので仕方無く、な」

 

そのユーリの方を見ると、苦笑いを浮かべている。どうやらユーリが、というのはディアーチェの照れ隠しで、力になると言うのは本当のようだ。心無しか、ディアーチェの頬が紅い。それで漸く決心のついたフェイトは、自身の真実を語り始めた。

 

「えっと、実は‥‥‥‥‥‥」

 

◆◇◆◇◆

 

「そうか。そういう事であったのか」

 

未来から戻ってきた、と聞いても思いの外驚いていないディアーチェ。それどころか、「うむ。道理で、な」と何やら納得している。

 

「フェイトさん。実は、貴女方の来た時空は直ぐに見つかったそうです。けど」

 

ユーリのその何やら引っ掛かる言い方に、「けど‥‥‥何?」と疑問のフェイト。それに答え、ユーリは言葉を続ける。

 

「はい、フェイトさん。フェイトさん達の来た時間の少し先が、ものすごく不安定らしいんです」

 

「不安定って、どういう事?」

 

尚も理解できないフェイト。「やれやれ」と肩を竦めて、ディアーチェが口を挟む。

 

「良いか、フェイト。未来と言うのは1つではない。本来は、その切欠となる出来事を分岐点として、幾つにも枝分かれしているものなのだ。だがな、フェイトよ。うぬらの未来は、その枝分かれが無いのだ。‥‥‥いや、本来分かれる筈のものが今は1つになってしまっている、と言えば良いか?」

 

「それって‥‥‥未来は変えられる、って事?」

 

「そうだ。恐らく原因は、お主の時間遡行。つまり、今後の未来はこれからのお主の行動次第という事よ」

 

フェイトの表情が変わる。つまり、これからのフェイト次第で、なのはが死ななくても済む未来に出来るかも知れないのだ。その瞳に涙が溢れてきて、フェイトは泣き始める。

 

「なのはは‥‥‥なのはは助けられるんだね‥‥‥う゛っ‥‥‥う゛っ‥‥‥」

 

「あー、もう、泣くな!確りせい!全く、どうして世界線が変わってもこ奴はこうも泣き虫なのだっ」

 

ディアーチェが、盛大に泣くフェイトに困っていた所へ新たに部屋に3人入ってくる。フローリアン姉妹のアミタ、キリエ、それにもう一人。

 

「ほら、レヴィ、フェイトさんにもちゃんと謝って下さい!」

 

アミタに催促されるが、レヴィと呼ばれた少女は「ボクのせいじゃない!庭に置いておいたダンジョンの戦利品に、誰かが水をかけたからだよ!」と、その身の潔白を訴えている。

 

「ダメよ~。あんな所に置いておくレヴィが悪いのよ。ホラ、さっさと謝る謝る」

 

その表情が『上手く責任転嫁出来た』と雄弁に語っている、そのダンジョンの戦利品の機械に水をかけた犯人のキリエが、ニヤニヤしながら話している。レヴィも流石にそれに気付き、「キリエだ‥‥‥絶対キリエだ‥‥‥」と呟いている。

 

「ホラっ、レヴィ。フェイトさんにちゃんと謝って下さい!」

 

アミタに再度催促され、レヴィは『仕方無く』フェイトに近付き口を開く。

 

「ボクの見つけてきた機械が暴走したせいみたいなんだけど‥‥‥暴走はボクのせいじゃない!絶対キリエのせいだ!」

 

そのやり取りに雰囲気を壊され泣き止んだフェイト。ポカン、と口を開け暫く呆けていたが、やがて「フフっ」と吹き出す。

 

「何だよ!へいと、笑うなっ!‥‥‥‥‥‥ねえ、へいと。君の世界の、ボクのオリジナルは元気?」

 

「え?‥‥‥レヴィのオリジナルって‥‥‥すずか?元気だよ」

 

シュテルがなのは、ディアーチェがはやての姿だった為に、(もしも、もう一人居たらきっと私の姿かな?)と思っていただけに、少しだけ戸惑って答えたフェイト。レヴィはプロフェッサータイプのバリアジャケットの、髪の青いすずかの姿だった。

 

「そっか。それならいいや。オリジナルに宜しく言っといて!」

 

そんなレヴィに「分かった」と笑顔で答えたフェイト。暫くして戻ってきたなのはと共に、元の世界に戻る事となった。

 

◆◇◆◇◆

 

「起きて、フェイトちゃん。起きて‥‥‥」

 

「‥‥‥う‥‥‥‥‥‥なの‥‥‥は?」

 

気が付くと、フェイトとなのはは海鳴公園のベンチで眠っていた。何故かは思い出せないが、下校の途中で眠ってしまったようだ。

 

「あれ‥‥‥?ねえ、なのは。私達、どうして海鳴公園に居るんだっけ?」

 

「なんでだっけ?‥‥‥帰ろう、フェイトちゃん」

 

フェイトは笑顔を向けてくれたなのはに、笑顔を返してその手を繋ぐ。

 

(どうしてかは分からない。分からないけど‥‥‥何だか希望が湧いてくる‥‥‥)

 

記憶封鎖が働いている為に、ディアーチェ達の事を覚えていないフェイト。『なのはを救う未来』に出来るかも知れないという希望だけがフェイトの頭に残っていて、新たな力が湧いてくる。

 

(なのは。必ず‥‥‥必ず貴女を救ってみせるから)

 

 




希望を取り戻したフェイトちゃんの回でした。

以上、エルトリアからお送りしました。スペシャルゲストは、『レヴィがすずかの姿をしている、とある並行世界の』紫天一家の皆様と、フローリアン姉妹でした。

今回のお話にニヤリとした読者様、重ね重ねありがとうございます
m(__)m
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