An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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切欠

「じゃあね、フェイトちゃん。また明日」

 

「うん、みんな。また明日ね」

 

なのは、アリサ、すずかは塾の為に、一人家へと帰るフェイト。そう言えばはやては今はどうしてるとか、早くリンカーコアが回復しないかなとかあれこれ考えながら歩く。

 

(リンカーコアが回復するまでは普通に生活しててって言われたけど、やっぱりはやてが心配だし‥‥‥)

 

少し、ほんの少しだけ。はやての様子を見たい。今守護騎士に見つかれば何をされるか分からない。下手をすれば闇の書事件の間中ずっと監禁とか、それ以上とか。だが‥‥‥。

 

その足は、少しずつ八神家へと向かっていた。はやての家まで、あと数百メートルといった所。

 

突然、背中をトンっ、と何かに押される。「へっ?」と声をあげたフェイトは、バランスを崩して前のめりになり、うつ伏せに道路に倒れる。

 

けたたましいクラクションが聞こえて、顔をあげたフェイトの方へとキキキキッ、というブレーキ音と共に車が近付いてくる。呆気に取られ動けないフェイトの方に勢い良く突っ込んでくる車。思わず目を瞑って震えるフェイトは、耳に聞こえていたブレーキ音がしなくなり、車が急停止した音がして恐る恐る瞳を開く。

 

「危ねえだろ!気を付けろ!」

 

運転手の男が怒鳴る。倒れたままで「ごっ、ごめんなさいっ」と慌てて謝るフェイトを避けて、車は走り去っていく。

 

(後ろから押された‥‥‥『これ以上近付くな』って事?)

 

恐らく、犯人はリーゼ姉妹のどちらかだろう。近付く事すら許されないのか、それとも守護騎士かはやてが家の外に居るのか。一先ずフェイトはその場で立ち上がる。戻ろうと来た道の方を向こうとした所で、突然睡魔に襲われる。

 

(あれ?何だか‥‥‥眠く‥‥‥なって‥‥‥)

 

立ったままで、深い睡眠に落ちていくフェイト。倒れそうになったその身体を、近くから現れた女性が受け止める。

 

「やれやれ。世話がやけるよ」

 

フェイトを抱えた女性は、そう愚痴を溢す。と、もう一人の監視者から、女性に念話。

 

《この子の行動も怪しかったけど、まあ、いいさ。ロッテ、適当な所で開放してやりな》

 

「はいよ、アリア」

 

スヤスヤと眠るフェイトを抱えて、リーゼロッテは「はぁ」と溜め息をつきながらその場を離れた。

 

◆◇◆◇◆

 

フェイトが目を覚ますと、海鳴公園のベンチに居た。

 

(‥‥‥あれ?私、どうして此処に?)

 

外はもう日も落ちていて、すっかり暗くなっている。あのとき突然睡魔が襲い、眠くなって、そのあとの記憶は無い。恐らくリーゼ姉妹に眠らされて運ばれたのだろうと思いながら公園に設置されている時計を見ると、もうすぐ19時になろうかという時間。

 

(もうこんな時間‥‥‥みんな心配してるかな)

 

まさかはやての様子を見に行っていたなどとは言える筈も無い。どう言い訳しようかと悩んでいると、遠くから人が近付いてくる。

 

「フェイトちゃーん!良かった、やっと見付けたよ」

 

息を切らせて目の前まで走って来たのはエイミィ。フェイトは言い訳を思いつかないまま、下を向いて「ごめんなさい」と謝る。

 

「良いって良いって。フェイトちゃんが無事で良かったよ。魔法も使えないし、誘拐されたんじゃ、とか、守護騎士に襲われたんじゃないか、とか心配したんだよ?」

 

「ほら、帰ろう?」とエイミィに手を引かれ家へと戻る。リンディとクロノには「海鳴公園に行きたくなっちゃって、座ってたら眠くなって‥‥‥」とかなり無理矢理な言い訳をして、申し訳なさそうに謝る。

 

「心配かけて、ごめんなさい」

 

「フェイトさんが無事だったんですし、いいですよ」

 

優しい笑みで答えるリンディ。「寒かったろう?風呂でも入って暖まってくればいいさ」とこちらも微かに笑みを浮かべるクロノ。

 

「そんな事言って、覗いちゃ駄目だよ、クロノ君」

 

「だっ、誰が覗くかっ!」

 

エイミィの余計な一言に、クロノが顔を赤くして怒鳴る。「あはははっ」と笑うエイミィにつられ、フェイトもクスクスと笑う。

 

「全く、エイミィは僕を何だと思ってるんだ。‥‥‥そうだ、フェイト。なのはが心配していたから、後で連絡してやるといい」

 

「うん、分かった」

 

答えてフェイトはバスルームへ。シャワーを浴びながら(早く魔力を回復させなきゃ。次は、気を付けないと)と決意を新たにしている(また様子を見に行く気)。湯船に浸かり、「ふぅ」と息を吐くと、突然バスルームの扉が開く。

 

「フェイトちゃん!心配したよ?」

 

「なっ‥‥‥なのは!?」

 

どうやらフェイトが戻ってきた事を聞いたなのはが、バスルームまで押しかけてきたようだ。確かに家も目と鼻の先。心配していたのは分からなくも無いが‥‥‥風呂まで押し掛けて、明らかに別の意図が感じられる。その証拠に、なのはの頬は紅い。

 

なのはは身体を洗って流し、浴槽へと入る。フェイトにさも自然に抱き付きながら、「無事で良かった」と静かに囁くなのは。

 

「うん、心配かけてごめんね、なのは」

 

「フェイトちゃんに何かあったら、私が守ってあげるね」

 

自信たっぷりの笑顔で話すなのはに、(それじゃ本末転倒だな)と苦笑いを浮かべるフェイト。

 

そうして、その日の夜は静かに更けていく。

 

◆◇◆◇◆

 

翌日。フェイトは目を覚ます。隣では、なのはがスヤスヤと眠っている。

 

(なんだか、機動六課の時の事を思い出すな‥‥‥あのときは、1つのベッドで私と、なのはとヴィヴィオが寝てて‥‥‥)

 

思い出して、気持ちが沈む。なのはを助ける為とは言え、ヴィヴィオを一人残して来てしまった。正直、未来がどうなっているのかは分からない。もしかしたら、そんな未来は無くなっていて、なのはが生きている未来になっていて、ヴィヴィオは一人では無いのかも知れない。

 

(でも‥‥‥もしも未来が、私が此処に戻った後も続いていたら‥‥‥)

 

「フェイトちゃん?」

 

いつの間にかなのはが起きていて、心配そうにフェイトの顔を覗き込んでいる。暗い表情をしてしまっていたフェイトは努めて笑顔を作りなのはに向ける。

 

「どうしたの?なのは」

 

「ううん。なんだか、フェイトちゃんが悲しそうな顔してたから」

 

「そんな事、ないよ。大丈夫」

 

フェイトは改めてニコリ、となのはに笑いかける。

 

(そうだ。悩んでも仕方無い。今は、前に進むしか無いんだ)

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

惑星エルトリア。フェイトとなのはを無事送り届けた後。

 

「どうした、ユーリ。フェイト達が気になるか?」

 

ユーリは窓の外をボーッと眺めていた。端から見ても分かる。フェイトとなのはの事が気になっているのは明白だった。

 

「はい、ディアーチェ。なのはさんが亡くなってしまう未来なんて、有るんですね‥‥‥」

 

悲しそうな表情を浮かべ、視線は窓の外に向けたままのユーリ。ディアーチェも窓の方に視線を向け、静かに語る。

 

「未来は幾つも可能性がある。なのはは何時も無理をしおる傾向が有るからな。そういう未来もある、という事であろう。お主の心配も分からんでもないが、他の並行世界に干渉するのは良い事では無い」

 

「分かっています。けど‥‥‥」

 

言いかけて、ユーリは口を閉ざす。ユーリ程の、全開で動けば星の生命活動にすら影響を及ぼす魔力の持ち主が助けに行けば、きっとなのはだって助かる筈。けれど、それをする訳には行かない。ユーリはもどかしさを感じて、溜め息をつく。

 

「お主がフェイトの力になりたいと言うのは分からなくも無い。だがな、ユーリよ‥‥‥」

 

と、ディアーチェの話している途中で、大きな揺れを感じる。一瞬地震かとも思ったが、どうやら違うらしい。アミタが慌てて駆け込んでくる。

 

「ユーリ、王様!次元震です!」

 

「落ち着け、アミタ!震源は何処だ」

 

叫んだディアーチェに答えるように、モニターが開き、キリエが口を開く。

 

《今の次元震の震源、特定したわよ。さっきのフェイトちゃんがジュエルシードの力で未来から過去に向かった時に発生したものみたい》

 

「何だとっ!こんなに大きなものなのか!?他の世界に影響は有るのか?」

 

次元震の余りの大きさに焦るディアーチェ。遠く離れた未来の異世界であるエルトリアですら、これ程の揺れ。他の世界が影響を受けていない保証はない。ユーリも心配そうに外を見つめる。

 

「これ程なんて‥‥‥だからさっきのフェイトさんの世界はあんなに変わってしまっていたんですね」

 

漸く揺れが収まる。アミタもキリエの元へと走り、二人はその影響を調査している。

 

「やれやれ。フェイトの奴め、こんな無理をしおって‥‥‥」

 

ユーリを撫でながら呟いたディアーチェ。再びモニターが開いて、アミタが話し始めた。

 

《王様、さっきの次元震の影響、他の世界には殆んど無いみたいです》

 

「そうか。それならば問題は無かろう‥‥‥ん?他の世界には?」

 

何かに気付き、顔を顰めるディアーチェ。その疑問に答えるかのように、話を続けるアミタ。

 

《はい。具体的には、私達の世界線と、さっきのフェイトさんの世界線が影響を受けてます。それから、次元漂流者が何人か‥‥‥》

 

「何だと‥‥‥つまり、我々の世界線の異常も、フェイトのせいか‥‥‥」

 

ディアーチェは「ハァ」、と溜め息をつく。やれやれと天井を仰ぎ、呆れる。

 

「全く、あ奴等は何処までも人騒がせよ‥‥‥アミタ、次元漂流者の回収を頼む」

 

《分かりました!》

 

モニターが切られて、アミタが行動を開始する。「大丈夫でしょうか?」と心配そうなユーリに、ディアーチェは「まあ、大丈夫であろう」と返事を返してその頭を撫でた。

 




前回に続き王様達登場。そして、フラグ建築。

一緒にお風呂→一緒のベッドに寝る、というなのはちゃんの願望が叶いました。これで、暴走が更に加速する!?
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