An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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想いは、刻を越えて

 

「いったーい!」

 

『ヴィヴィオ、大丈夫?』

 

明日の試合に備えて、早めに就寝した筈のヴィヴィオ。何故かは分からないが、突然1メートルくらいの高さから芝生の上に落下。眠っていた為に魔法でのフォローも、反射的に受け身を取ることも出来ずに尻餅をつき、痛めたお尻を擦っている。

 

「痛いけど、大丈夫‥‥‥」

 

『ごめんね、私も休眠モードだったから、対応出来なくて‥‥‥』

 

『なのは』もその機能を休眠して休んでいただけに、現状を理解できない。ヴィヴィオが眠る迄は、確かに聖王教会の自室に居た筈。それが、何故か何処かの公園の芝生の上。

不思議に思い辺りを見回す二人。海辺の、見覚えのある公園。夜で周りは暗くとも、二人には直ぐに理解できた。

 

「ねえ、なのはママ。ここってまさか‥‥‥」

 

『そうだね。海鳴公園だね。でも、どうして急に?』

 

確かに海鳴公園。しかし、ならば尚更分からない。一応すずかの家にはミッドと直通のゲートもあるし、誰かの悪戯の可能性もあるが、こんな陰湿な悪戯をする人物は思い当たらない。

 

「もしかして、私が寝たまま転移魔法を使ったとか」

 

『聖王教会から海鳴まで?凄い距離だよ?』

 

もしヴィヴィオが寝たままそんな事が出来たのだとしたら、ヴィヴィオはもの凄い大魔導師、という事になる。それは流石に無理がある。

 

「うーん、それじゃやっぱり悪戯?またセインが‥‥‥でも、幾らセインでもこんな事しないよね」

 

結局原因は分からない。悪戯にしても、仕掛けた犯人が出てくる気配も無い。夜中ではあるが、二人は一先ずミッドに戻ろうと月村家を目指す事にした。

 

『夜も遅いし迷惑かけちゃうけど、事情を話せば分かってもらえるよね』

 

「そうだね、なのはママ。それじゃ、行こっか」

 

見た目はぬいぐるみの『なのは』を抱えて歩き出したヴィヴィオ。と、そこに知っている魔力が近付いて来るのを感じた。

 

「あれ?この感じって、ヴィータさん?」

 

『もうっ、ヴィータちゃんが犯人なの!?ちょっと悪戯が過ぎるよって怒らないとね』

 

怒り心頭の『なのは』が、ヴィヴィオの懐から出る。二人の前に降り立ったヴィータに向かって、『なのは』が怒気を孕み話す。

 

『もうっ。こんな事して。ちょっとやり過ぎだよ?』

 

ヴィータは二人を睨む。「うるせぇ!」と怒鳴り、アイゼンを握る手に力が籠り、殺気を向けてくる。

 

「ヴィータさん?どうしちゃったんですか?」

 

ヴィヴィオが戸惑いながら言葉を掛ける。ヴィータは「どうしてアタシの名前を知ってんだ‥‥‥管理局か?」と訳の分からない事を口走っている。

 

「どっちでもいいか。お前の魔力‥‥‥貰うぞ!アイゼン!」

 

バシュン、とカートリッジが炸裂。アイゼンが火を吹きながら回転し、勢いそのままにヴィヴィオに向かってくる。

 

『ヴィヴィオ!』

 

「『セーット、アーップ!』」

 

ヴィータが襲ってくる理由は分からないが、兎に角危険と判断し、ヴィヴィオは瞬時に大人モードへと変わりバリアジャケットを纏う。

 

『不味いよ、ヴィヴィオ!セイクリッドディフェンダー、全開!』

 

「ラケーテン‥‥‥ハンマーぁぁ!!」

 

叫びをあげて向かってくるヴィータのアイゼンがヴィヴィオにぶつかる瞬間。全開で展開したセイクリッドディフェンダーが一瞬早くハンマーの一撃を防ぐ。

 

「ヴィータさん、どうして!」

 

「うるせぇ!おとなしく魔力を寄越せ!」

 

ヴィヴィオの声には全く耳を傾けないヴィータ。だが、『なのは』はヴィータのある点に気付いた。

 

(『ヴィータちゃん‥‥‥魔導書を持ってる‥‥‥まさか‥‥‥』)

 

『なのは』中で、ある可能性が膨らんでいく。アイゼンを止めたままで、「ヴィータさん、やめてください!」と叫んだヴィヴィオが、「八神司令」と言おうとしたのを、最初の「八‥‥‥」の所で遮る。

 

『駄目!ヴィヴィオ!』

 

『なのは』が叫んだ事に驚いて、ヴィヴィオは思わず言葉を止めて『なのは』の方を見る。それを見逃さず、ヴィータは力任せにハンマーを振り抜く。

セイクリッドディフェンダーは破られなかったが、ヴィヴィオはその勢いに大きく吹き飛ばされる。

 

「がはっ‥‥‥なのはママ‥‥‥」

 

『嫌な予感がする。今は何とかヴィータちゃんから逃げないと』

 

立ち上がり、体勢を整えながら話す二人。幾ら『なのは』が付いていると言っても、相手はあのヴィータ。今のヴィヴィオが何処まで通用するかは分からない。

 

しかし、ヴィヴィオが再びヴィータと拳を交える事は無かった。ミッド式の転移魔法陣が、ヴィヴィオとヴィータの間に現れる。

 

「闇の書の守護騎士、そこまでだ!」

 

ヴィータは「チッ‥‥‥」と舌打ちし、突然ベルカ式魔法陣を展開して多重転移を始める。「逃がすか!」と叫び、ミッド式の転移魔法陣から現れたクロノと武装局員がその後を直ぐ様追う。

 

呆気にとられていたヴィヴィオに、ある人物が近付いて来て、声を掛ける。

 

「魔導師の方、大丈夫ですか?」

 

「‥‥‥ユーノ司書長!?ちっちゃくなっちゃって、どうしたんですか!?」

 

目の前のユーノの姿は、ヴィヴィオと同じか少し小さいくらい。先程のクロノも小さい頃の姿だった。混乱しているヴィヴィオを他所に、『なのは』の表情が変わっていく。

 

『不味いよ、ヴィヴィオ。ここは逃げよう?そーっとね』

 

言われるままに、ヴィヴィオは密かに転移魔法の準備を始める。「司書長」と呼ばれ困惑気味のユーノからゆっくり少しずつ後退り、転移魔法陣を展開。その場から離脱する。

 

「ごめんなさい、ユーノ司書長!」

 

「えっ!?あ、ちょっと!」

 

そうしてヴィヴィオは何とか海鳴公園から離脱。転移した先は、小高い丘の、なのはの墓前‥‥‥の筈だった。

 

「あれ?なのはママのお墓が無いよ?確かに此処にある筈なのに‥‥‥」

 

共同墓地には確かに転移した。だが、ある筈のなのはの墓が何処にも見当たらない。

 

『ヴィヴィオ、落ち着いて聞いて。まだ可能性の段階だけと』

 

そんな、今起こっている出来事が全く理解不能のヴィヴィオに、『なのは』が考えうる可能性を答える。

 

「可能性?」

 

『うん。まだ確証は持てないけど、私達‥‥‥過去に来ちゃったかも知れない。それも、闇の書事件の最中に』

 

「えっ‥‥‥‥‥‥えぇぇぇぇえ!?」

 

◇◆◇◆◇

 

「あーっ、くっそー、また逃げられた!」

 

思わず、悔しそうに声をあげるエイミィ。

 

「悔しいのは分かりますけど、フェイトさんは寝ているんですし、もう少し声は抑えてくださいね」というリンディに、「はい、すみません」と素直に謝る。

 

「折角あの赤い騎士が一人だけで出てきたのに‥‥‥」

 

そうとう悔しかったのか、まだ呟いているエイミィ。リンディが「仕方ありませんよ」と窘めている所に、フェイトが目を擦りながら起きてくる。

 

「提督、エイミィ、何かあったの?」

 

「起こしてしまいましたね。ごめんなさい、フェイトさん」

 

リンディが謝っているその脇で、エイミィも「ごめんね、フェイトちゃん」と謝る。

 

「ううん、平気です、提督。また守護騎士が現れたんですか?」

 

「そうだよ、また海鳴で。なんと今回は魔導師が襲われてさぁ」

 

そのエイミィの言葉に、フェイトは疑問を覚えた。今の海鳴に、守護騎士達に襲われる魔導師など居ただろうか?

 

「その人って、どんな人だったの?」

 

またしても自分のせいで過去が変わっていく。巻き込まれた魔導師の人に申し訳ない、と思いながらもその正体は気になる。そう思って聞いたフェイトに、エイミィが答える。

 

「ユーノ君が保護しようとしたら逃げちゃってさぁ。変わった子だったかなぁ。魔法で大人の姿に変身する子だったんだけどさ、魔力光が虹色で、ブロンドの髪に紅と碧の虹彩異色の綺麗な瞳の子で。そうだ、バリアジャケットがなのはちゃんに似てたよ。見てみる?」

 

そう言ってエイミィはモニターを開き始める。フェイトは動揺し、目を游がせ、慌ててモニターに焦点を合わせる。

 

(嘘だ‥‥‥そんな筈無い。他人のそら似に決まってる。ヴィヴィオが此処に、居る筈無い‥‥‥)

 

エイミィの話した特徴は、全てヴィヴィオと合致する。所謂『大人モード』の練習もしていただけに、フェイトは信じられない思いでモニターが展開されるのを待つ。

 

(‥‥‥‥‥‥‥‥‥うそ)

 

だが。そこに映った姿に呆然とする。変身前から写っていたその少女は、確かにヴィヴィオ。大人モードの姿だって、『ゆりかご』の時の聖王モードの時の大人のヴィヴィオと同じ顔。間違いようがない。

 

「どうして‥‥‥どうして‥‥‥ヴィヴィオ‥‥‥」

 

微かにそう呟きながら、瞳から大粒の涙を流すフェイト。

 

エイミィとリンディはそれに気付いて、慌ててタオルを渡し、落ち着かせようと奔走していた。

 




遂に過去のフェイトちゃんの所にヴィヴィオが登場。娘の想いは、母に届くのでしょうか。
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