An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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『私の、王子様』

 

 

「あっ、あの。助けてくれて、ありがとう」

 

なのははお礼を口にする。抱き締められているせいか、顔が少し赤い。漸く我に返ったフェイトは、なのはの背中に回していた手を離し、再度向き合う。

 

「お礼なんて、いいよ。なのはが無事なら」

 

「あのっ‥‥‥どうして私の名前、知ってるの?」

 

フェイトはうっかりしていて気が付かなかったが、本来この時点ではなのはとフェイトは面識が無い。しまった、と一瞬狼狽したあと、「わっ、私は魔法使いだから」とかなりあやふやな答えで誤魔化す。

 

「じゃあ、改めて。私、なのは。高町なのは」

 

「私は、フェイト。フェイト・テスタロッサ‥‥‥だよ」

 

あんないい加減な出任せで信じてくれたらしく、なのはは笑顔で自己紹介をしてくれた。やはり心なしか、なのはの顔は赤い。

フェイトは危うく『ハラオウン』と言いそうになりながらも何とか踏み留まり、昔(前回のPT事件)と違って、今度はすんなりと挨拶できた。

 

会話に入りそびれたフェレットが、「助けて頂いて、ありがとうございました」と口を開き、フェイトとなのははそちらを振り返る。

フェレットが何か話し始めようとしたタイミングで、警察のサイレンの音が聞こえ始める。この場に留まるのは不味いと感じたなのはとフェイトは、1度別れてその場を後にする。

 

「それじゃ、なのは。気を付けて」

 

「うん。ありがとう、フェイトちゃん」

 

笑顔で手を振る二人。別れ際、フェイトは飛行して離れながら念話を送った。

 

《なのはは、何も心配しないで。ジュエルシードは、私が集めるから。何かあったら、私が、貴女を守るから》

 

◇◆◇◆◇

 

隠れ家として借りたマンションの一室に戻ったフェイト。部屋でドッグフードを食べながら待っていたアルフと再会。

 

「ただいま、アルフ」

 

「おかえり、フェイト。何か良いことでもあったのかい?」

 

フェイトの顔は、それと分かるくらいの笑顔だった。ベッドに腰掛け、先程の出来事を語るフェイト。

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥それでね、ジュエルシードからなのはを守ってね?お互いに名前を呼んだんだ。だから、なのはとはもう、友達だよ」

 

「そっか、友達か。良かったじゃないか。あの鬼婆の言うこと聞くのも、悪い事ばっかりって訳じゃないんだね」

 

友達ができたと聞いて、アルフも笑顔になる。今迄、関わりがあった人間と言えば、プレシアの他はリニスくらいで、友達らしい友達も居なかったフェイトにも。「良かった良かった」と、ウンウンと首を縦に振るアルフは、「私にも後で紹介しておくれよ」と話してドッグフードを再び食べ始めた。

 

(‥‥‥そうだ。このまま。なのはが魔導師にさえならなければ。将来管理局に入りさえしなければ。大怪我して入院する事もないし、『ゆりかご』に突入しなくて済む。そうすれば‥‥‥)

 

フェイトは窓の外に映る夜景を見ながら、決意を新たにしていた。

 

◆◇◆◇◆

 

「ねえ、なのは。あのフェイトって子の事、信用するのはまだ早いんじゃないかな」

 

「えー?フェイトちゃん、いい子だと思うけどなぁ。それに‥‥‥」

 

あれから高町家へとそーっと帰ってきて、自分の部屋に戻ったなのはと、ユーノ。まあ、帰った所を兄の恭也にバッチリ見つかり、怒られたりユーノを飼う(暫く預かる)という事になったりと一騒動あったりはしたが。

部屋へと帰ってきてから、ユーノから一通りの事を聞いた。ユーノは別の世界の人間である事や、考古学者で、ジュエルシードを発掘したことや、魔導師の事、魔法の事など。

 

ここは管理外世界で本来魔導師は居ない筈で、ジュエルシードの事を知っているフェイトを完全には信用していないユーノ。その忠告は分からなくもないが、なのはにはフェイトが悪い人間にはどうしても見えない。それに。

 

(それに‥‥‥あんなタイミングで現れて助けてくれたし、『貴女を守る』って言われたし‥‥‥まるで私の運命の王子様みたいなんだもん)

 

顔を真っ赤に染めて、ベッドの上でイヤンイヤンと身悶えるなのは。半ば呆れ気味のユーノは、今日はもう一先ず休もうと、眠る体勢に入る。

 

「それじゃあ、なのは。詳しい事は明日また話そう」

 

「うん、ユーノ君。お休みなさい」

 

電気を消して、二人は瞳を閉じる。疲れで直ぐに眠りに落ちたユーノとは違い、なのははフェイトの事を考えていた。

 

(きっとまたあんな怪物が現れて、私が襲われそうになって、フェイトちゃんが助けに来てくれて‥‥‥それから、それから‥‥‥‥‥‥えへへ‥‥‥)

 

なのははその夜は、明け方まで眠れなかった。

 

◆◇◆◇◆

 

「なのは、おはようーって、何よ、その隈!」

 

「おはよう、アリサちゃん。エヘヘ、昨日あんまり眠れなかったんだ」

 

朝、何時ものように通学路を歩く、アリサとなのはは、すずかとの待ち合わせ地点へと進む。

 

「何かあったの?さっきからニヤニヤして」

 

「あっ、ちょっと昨日ね、良い事があったの」

 

「‥‥‥は?」

 

なのはの言葉に呆れるアリサ。大方何時ものように新しいカメラでも見つけたのだろうと思い、それ以上は聞かない事にした。‥‥‥なのはがそれについて話し出すと長くなる事を知っているからである。

 

「ふーん、良かったわね、なのは」

 

「ふぇっ!?聞いてくれないの!?」

 

「聞かないわよ、全く」

 

興味を全く抱かないアリサに不満気味のなのは。フェイトの事を言いたくて仕方がないのだが、よくよく考えてみたら、怪物に魔法に魔導師。いくらなのは達が小学3年生とは言え、そんな話普通は信じてもらえない。どうしようか悩んでいた所へ、すずかが合流。

 

「おはよう、なのはちゃん、アリサちゃん。大変なの!昨日の夜に、動物病院の壁が壊れちゃったらしくて。昨日のフェレットが心配で‥‥‥」

 

流石に警察まで動いただけの事はあって、もう情報が回っている。「大変じゃない!」と驚き心配そうなアリサとは違い、緩んだ顔のままのなのはが話し出した。

 

「そのフェレットさんなら、今家にいるよ!暫く預かる事になってね?ユーノ君って言うんだけど」

 

そこまで聞いたすずかとアリサが「そうなんだ、無事で良かった」と安堵している所へ、なのははここぞとばかりに言葉を続ける。

 

「それでね、フェイトちゃんがユーノ君と私を助けてくれたんだよ」

 

「は?どういう事、それ‥‥‥というかさ、フェイトって誰よ」

 

疑問だらけのアリサに、顔を紅く染めながらなのはは答える。

 

「お友達だよ、大切な」

 

なのはは、紅い顔を更に真っ赤に染めて答えた。それを見たアリサとすずかはその意味を何となく理解して、少しの間その場にフリーズしていた。

 

◆◇◆◇◆

 

「んー、フェイト、今度はこっちみたいだよ」

 

アルフがジュエルシードの反応を見付けた。その位置を見たフェイトは、驚き焦る。

 

「嘘‥‥‥ここってまさか、聖祥小!?‥‥‥‥‥‥なのはが、危ない!急ごう、アルフ!」

 

そう言ってフェイトは慌てて飛び立った。アルフはイマイチ理解出来ないようで、「フェイト、ちょっと待っておくれよ!聖祥小って何なのさ!」と叫びながらその後を追って飛び立った。

 

 

 




なのはを魔導師にしない、という根本的解決に走るフェイトちゃん。
ただ、そう上手く行かないのが、世の常ですが‥‥‥
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