An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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動き出す事態

 

 

『ゆりかご』内。はやてが涙を流しながら叫ぶ。その足元には、小さな桜色の魔法陣。

 

『なのはちゃん!』

 

なのはの瞳は涙で潤んではいるものの、はやてに笑顔を向ける。

 

『はやてちゃん。今まで、ありがとう。はやてちゃんと会えて、良かった。‥‥‥フェイトちゃんにも、『ありがとう』って伝えて欲しいな』

 

聖王の反応が消え、濃いAMFで充たされた船内。最後の力と残りのカートリッジで残った魔力を何とか収束させ掻き集めたなのはが作ったのは、3人がやっとの大きさの小さな小さな転移魔法陣。

 

はやての直ぐ隣には、ティアナ。その腕に抱かれるヴィヴィオも状況を理解しているようで、泣きながらなのはに手を伸ばす。

 

『なのはママぁ』

 

『ごめんね、ヴィヴィオ。一緒にいてあげられなくて。みんなの言うこと、ちゃんと聞いて真っ直ぐ育つんだよ?』

 

なのははヴィヴィオに近付いて、その頭を撫でる。抱き締めたいのを必死に我慢したのか、伸ばそうとした左手を戻す。

 

『なのはさん‥‥‥』

 

ヴィヴィオを抱いているティアナは言葉を絞りだそうとするものの、涙が溢れて来てそれ以上言葉にできない。そんなティアナの頭を撫で、なのはは声を震わせながらも語る。

 

『ごめんね、ティアナ。これしか、思い付かなくって。後は、頼んだよ?』

 

『駄目や!なのはちゃん、なのはちゃん‥‥‥‥‥‥』

 

はやてが叫び、なのはの方へと手を伸ばしたが、笑顔のなのはは最後の力で魔法陣を起動。はやて達の視界が桜色に染まる。

 

3人が気が付くと、『ゆりかご』の出口へと続く通路に居た。まだ出口迄は距離がある。なのはをもってしても、此処まで転移させるのが精一杯だったようだ。もう時間が無い。はやてはなのはから預かったレイジングハートから、ティアナが乗ってきたバイクを出す。

 

『行くよ、ティアナ、ヴィヴィオ。なのはちゃんの意志を、無駄にしたらあかんよ』

 

真っ直ぐ出口を見据えるはやて。ティアナは大粒の涙を流しながらも、バイクにまたがりエンジンをかけて、片手でヴィヴィオを抱き締める。

 

『行きましょう、部隊長。ヴィヴィオも、良いわね?』

 

 

 

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥もう夕方の月村家。うたた寝をしていたヴィヴィオが目を覚ます。

 

(‥‥‥‥‥‥あれ?夢?)

 

瞳には、涙。ソファに座る『なのは』が、心配そうに見ている。

 

『ヴィヴィオ、大丈夫?』

 

「夢、見てたの。‥‥‥『ゆりかご』の」

 

『そっか。あのときは‥‥‥ごめんね、ヴィヴィオ』

 

『ゆりかご』だけでどんな夢か分かったようで、申し訳なさそうに話す『なのは』。ヴィヴィオはフルフルと首を横に振る。

 

「大丈夫だよ。それに、今はこうやってなのはママと一緒だし。ただ‥‥‥」

 

切なそうな表情を見せるヴィヴィオ。やはりフェイトが一緒に居ないのは辛い。滲む涙を誤魔化すように窓の方を眺めるヴィヴィオに、『なのは』は今朝から燻っていた疑問をぶつける。

 

『あのね、ヴィヴィオ。そのフェイトちゃんの事なんだけど。私、今朝の事記憶にあるんだ』

 

「今朝のって‥‥‥なのはママ達とアコース査察官とのやり取り?」

 

突然振られた話にキョトンとしながらも、朝の出来事を思い出す。ヴィヴィオの記憶ではこの時代の時点でアコース査察官が関わっていた筈は無く、『なのは』からもそんな事は聞いてはいなかった。完全に並行世界だと判断した出来事。だが、『なのは』が今言うには、記憶にあるという。

 

「それってまさか‥‥‥此処が私達の過去って意味?」

 

『まだ、確信は無いよ。でも‥‥‥何か忘れてる気がするんだ。大事な、何かを。もう一人、居た気がするんだ。忘れちゃいけない、誰かが』

 

記憶に靄がかかったように、思い出せない『なのは』。もし、それさえ思い出せれば‥‥‥。

 

『あれ?待ってヴィヴィオ』

 

何かを思い出した『なのは』が、不意に声をあげる。重大な事を思い出したその様子に、ヴィヴィオが真剣な眼差しで訊ねる。

 

「どうしたの?なのはママ。何か思い出した?」

 

『ヴィヴィオ、大変だよ!急いでフェイトちゃんの所へ行かないと!もし私の記憶と同じなら‥‥‥フェイトちゃんが危ない!』

 

◆◇◆◇◆

 

その頃、フェイトはなのはと共に下校路を歩いていた。

 

「今日も帰ったら訓練しようね、フェイトちゃん」

 

「そうだね。少しは魔力も戻ってきたし」

 

少しは、と言っても本当に少し。フェイトの場合で言えば、掌に少し帯電出来るくらい。スタンガンよりも弱い位だが、これでも一周目の闇の書事件の時よりは早い。

 

「あと数日したらかなり回復するだろうし、そうしたら魔法の訓練もしよう。今度こそ、守護騎士に負けないように」

 

「うん、フェイトちゃん!」

 

決意を秘めた表情で頷くフェイトとなのは。「それじゃ、早く帰ろっか」となのはに笑顔を向けて歩き出したフェイトの後ろを、なのはが赤い顔で着いていく。

 

(はやてを‥‥‥助けなくちゃ)

 

密かにそう思いながら歩くフェイトの横に、一台の車が停まり、突然扉が開く。

 

(こんなところに急に停まるなんて、危ないな)

 

フェイトがそう思いながら一歩を踏み出そうとした瞬間。扉から手が伸びてきて、フェイトの腕を掴む。突然過ぎて反応出来ないフェイトの口に、布が当てられる。

 

(へっ!?‥‥‥‥‥‥に、逃げなきゃ!)

 

驚いて抵抗し、両掌を帯電させようとする前に、布に染み込んだクロロホルムがフェイトの意識を奪う。グッタリとして気を失ったフェイトは車に引きずり込まれ、車は走り去っていく。

 

余りに突然過ぎてポカン、としていたなのはは、《Master!》というレイジングハートの声で我に返り、慌てて車の走って行った方を見る。

 

「フェ、フェイトちゃん!」

 

フェイトの名を呼ぶも、時既に遅し。反応は、勿論無い。

 

「どっ、どっ、どうしよう!?フェイトちゃんが、フェイトちゃんが、誘拐されちゃった!」

 

涙目で叫ぶなのはは腰が抜けてその場で座り込んでしまう。遠くからヴィヴィオが走ってくるのが見えて来る。

 

「なのはマ‥‥‥なのはさん、フェイトさんは!?」

 

「ヴィヴィオちゃん‥‥‥フェイトちゃんが‥‥‥う゛っ、う゛っ‥‥‥」

 

遂に泣き出してしまったなのはの手を握りながら、ヴィヴィオは唇を噛む。

 

《なのはママ‥‥‥遅かったみたい》

 

『行き先は分かってる。けどヴィヴィオ、此処からは慎重にね』

 

真剣な眼差しで走り去った車の方角を見据えるヴィヴィオは、曖昧だった自分達の考えが少しずつ確信に近付いて行くのを感じていた。

 

(やっぱり‥‥‥此処は私達の過去の世界なんじゃ)

 

◆◇◆◇◆

 

フェイトが目を覚ますと、真っ暗。エンジン音が聞こえていて、時々右や左に振られる。どうやら、トランクの中のようだ。

 

(これって、もしかして誘拐‥‥‥?『前回』はこんな事無かったのに)

 

両手、両足には手錠をされた上から、何かで縛られている。口には猿轡。後ろ手で縛られている為、自由は全く効かない。

 

(けど、どうして私?すずかやアリサなら兎も角‥‥‥)

 

フェイトの考えている通り、どうせ誘拐するなら令嬢であるすずかやアリサの方が現実的。そうでないとするなら、ハラオウン家を金持ちと踏んだか、或いはリンディやクロノに恨みを持つ者の犯行か。

 

(だとしたら、今の私じゃ‥‥‥困ったな。どうにかして逃げないと)

 

真っ暗なトランク内にも目が慣れてきた。何か役に立つ物は無いかと見回すが、それらしき物は無い。

 

(何とかトランクから出て、それから身を隠さなきゃ。もし魔導師が相手だったら、今は勝てない‥‥‥)

 

トランク内で揺られながら、逃げる方法を考えるフェイト。悪い事に、バルディッシュはバッグの中。誘拐される時に手放し、落としてしまった。今頃は、なのはが持っているだろう。

 

(そうだ‥‥‥扉の鍵に電気を当てたら、トランクが開くかも知れない。信号とかで停まった時に出られれば)

 

フェイトは身体の向きを変えて、トランクの鍵が有るであろう辺りに後ろ向きのまま手を当てて、電気を浴びせる。だが、扉はビクともしない。

 

(駄目だ‥‥‥やっぱり隙を見て逃げるしか無い)

 

まだ万全には程遠い魔力を温存する為、他に何か役に立つ情報は無いかと聞き耳を立てる。そうして車に揺られながら、フェイトは何とか隙を伺っていた。

 

 




なんと、フェイトちゃん誘拐事件発生。予め断っておきますが、R-18な展開にはなりませんので、あしからず、

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