An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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母から娘へ

 

 

数日後。月村邸の、ヴィヴィオの部屋。

 

『特訓をします』

 

「うん?」

 

『だから、特訓をします』

 

『なのは』の突然の特訓宣言。ヴィヴィオは思わず聞き返す。確かに、『なのは』は生前は優秀な教導官。戦闘訓練を、というのも分からなくはない。だが、競技選手としての今のヴィヴィオに悪戯に戦闘の指導すれば、これ迄積み上げて来た物を壊しかねない。

 

「なのはママ、それってストライクアーツの?」

 

『そうじゃない。良い?戦闘においてヴィヴィオに足りないものは?』

 

以前ノーヴェにも聞かれた質問。ただ、『なのは』が聞いてきているだけに他にも足りないものが有るのか、と戸惑う。

 

「‥‥‥パワー不足、とか?」

 

『そうだね。‥‥‥でも、ヴィヴィオが駄目とか、ノーヴェのやり方が間違ってるとかでは無いの。寧ろ、本来ならこのまま育っていって欲しい。けど、それでは駄目なの』

 

かなり引っ掛かる言い回しに、ヴィヴィオもイマイチピンと来ない。その表情に疑問が浮かぶ。

 

「どういう事?」

 

『今、ヴィヴィオは闇の書事件の最中に居るんだよ?守護騎士のシグナムさんやヴィータちゃん達と命懸けでやらなきゃいけない。それに、ナハトヴァールとも。だから、もっと強力な力が必要なの』

 

確かに、ヴィヴィオにはセイクリッドディフェンダーがあるので防御は固い。だが、なのはやフェイト程の魔力は無いし、出力だって限界がある。これ以上の強打はなかなか見込めない。

 

「でっ、でも、なのはママ。私の魔力量じゃこれ以上は‥‥‥」

 

『だから、特訓するんだよ。あと20日も無いけど、ヴィヴィオは魔力制御も上手いしナハト戦迄には何とか間に合うと思うから』

 

やはり、ヴィヴィオには意図が掴めない。「でも‥‥‥」と話を遮ろうとした所で、本題を切り出す『なのは』。

 

『右手だけなら、充分間に合う。だから、ヴィヴィオ』

 

ヴィヴィオは『右手だけ』という言葉で漸く真意に気付く。自分に出来るか不安ではあるが‥‥‥。

 

「まさか‥‥‥『抜剣』!?」

 

『そうだよ、ヴィヴィオ。『ブレイカー』。ヴィヴィオなら、必ず出来るよ。だから、明日から‥‥‥ううん、今日から特訓。フェイトちゃんにも付き合ってもらうから』

 

漸く魔力が回復してきたフェイトにも手伝ってもらう。ヴィヴィオ版の抜剣を習得しても、当たらなければ意味がない。フェイトは仮想シグナム、ヴィータといった所だ。

 

新たな決意を秘めて部屋を出る。ハラオウン家へ行こうと廊下を歩いていると、曲がり角の向こうから話声が聞こえてきた。忍とフェイトの声。確か、忍は「急用がある」と言ってルーマニアに出掛けていた筈。やけに早い帰国。ヴィヴィオは思わず隠れ、密かに話を伺う。

 

「‥‥‥じゃあ、忍さん。その魔導師には会えなかったんですか?」

 

「ええ。ごめんね、フェイトちゃん。『大図書館』には会えなかったわ。キレイにお屋敷ごと消えてしまっていてね。彼女なら何か方法も分かりそう、って思ったんだけど‥‥‥」

 

何の話かは分からないが、相談したかった魔導師に会えなかったらしい。ヴィヴィオがもう少し詳しく探ろうと聞き耳を立てていると、会話と足音が止まる。

 

「‥‥‥ヴィヴィオちゃん?」

 

どうやら気付かれたらしい。「え、えへへ‥‥‥」と笑って誤魔化しながら出てきたヴィヴィオに、少しだけ鋭い視線を向ける忍。

 

「ただいま、ヴィヴィオちゃん。‥‥‥さっきの話だけど‥‥‥」

 

『なのは』は忍の言いたい事を察して、ヴィヴィオに気付かれないよう念話を送る。『フェイトちゃんの事は、何も聞こえませんでしたよ』というその念話で、忍が表情を崩す。

 

「尋ね人に会えなくてね、予定切り上げて来たのよ。ヴィヴィオちゃん、私達に何か用?」

 

「はい。ちょっと特訓に付き合って頂けないかな、って」

 

◆◇◆◇◆

 

‥‥‥‥‥‥そうして海鳴公園での特訓が始まった。

 

『そうだよ、ヴィヴィオ。周りの魔力を集める‥‥‥ユックリでいいからね』

 

初めてにしては、飲み込みが早い。ヴィヴィオのかなり近場の魔力しか集められていないが、最初だし、それでも充分。

 

『フェイトちゃん、どう思う?』

 

《いい感じだね。これなら、きっと間に合う》

 

ヴィヴィオには聞こえないよう念話で話す二人。フェイトがヴィヴィオに真実を話す時迄、なるべく悟られないように気を使いながらになる。

 

『フェイトちゃん‥‥‥ヴィヴィオには、本当に?』

 

《私は‥‥‥ごめん、『なのは』》

 

ヴィヴィオと話す機会が増えれば、きっとフェイトも、と思って特訓に引き込んだ『なのは』。フェイトも何となく意図は理解している。そうでなければ、ブレイカーの使えるこの時代のなのはを差し置いて、態々フェイトが呼ばれる理由が無い。

 

(ごめんね、ヴィヴィオ。私には‥‥‥)

 

集中し必死に魔力をかき集めるヴィヴィオを悲しげな瞳で見つめるフェイト。

そんなフェイトを心配そうに、辛そうに見る『なのは』。各々悲しい思いを秘めながら、ブレイカーの特訓は続いていく。

 

◆◇◆◇◆

 

「どうやらまだバレてはいないみたいだけど。本当に良いのかしら?」

 

《フェイトとヴィヴィオの、親子の問題でしょうし、僕達外野がどうこう言うべきではありませんよ》

 

「それは、そうでしょうけど‥‥‥」

 

忍の部屋。展開しているモニターには、ヴェロッサ。

 

《兎に角、フェイトを一人にしないようにしてください。またリーゼ姉妹が監禁しないとも限りません。僕の見たフェイトの記憶とはかなりズレて来ている様ですし、油断はしないように》

 

「分かってるわ。その『はやてちゃん』を救うのが優先でしょ?‥‥‥ヴィヴィオちゃんの事は、今後も?」

 

周りを気にして周囲を慎重に見渡して、ヴェロッサは笑みを浮かべ答える。

 

《ええ。監視は慎重に。此方も、カリム達に気付かれないよう気を付けます》

 

忍も、表情を真剣なものに変える。

 

「此方もよ。ユーノ君とリンディ提督には充分気を付けるわ」

 

通信を終えて、「ふぅっ」と一息して紅茶に口を付ける忍。ソファに凭れ、天井を見上げる。

 

(聖王、ねぇ‥‥‥)

 

◆◇◆◇◆

 

所変わって、再び海鳴公園。

 

『うん。いいよ、ヴィヴィオ。その状態を保って』

 

ヴィヴィオの右拳には、少ないながらも収束させた魔力の塊。その拳を握り締めて集中するヴィヴィオに、フェイトが対峙する。

 

「『バルディッシュ・アサルト、セーット、アーップ』!」

 

金色の魔力光に包まれて、バリアジャケットを纏うフェイト。光が晴れてその姿が確認出来るようになり、ヴィヴィオは思わず息を飲む。

 

「マ‥‥‥フェイトさん、そのジャケット‥‥‥」

 

フェイトの纏っていたジャケットは、嘗ての闇の書事件当時のものとは違っていた。ヴィヴィオの良く知っている、執務官時代のそれだった。

 

「うん。ロッサがね?『此方の方が良い』って」

 

確かに、水着の様な嘗てのバリアジャケットよりは良いのかも知れないが、問題はそこではない。重要なのはヴェロッサがこのデザインを知っている、という事実である。

 

「ヴェロッサさんが?」

 

「そうだよ。それじゃ、ヴィヴィオ、構えて。始めるよ?」

 

バルディッシュを構えて戦闘モードに変わるフェイト。ヴィヴィオは戸惑いつつも構え直し、フェイトに向かっていく。

 

(ママ‥‥‥本当に、本当にママじゃないの?ねえ、ママ‥‥‥)

 

 




これから始まる死闘に向けて、ブレイカーの習得に励むヴィヴィオ。懐かしい姿のフェイトと共に、特訓の日々に突入です。

え?動かない大図書館?レミ様?何の事か分かりません(棒読み)。
‥‥‥登場しませんよ?
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