An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
「うそ‥‥‥だろ‥‥‥」
ヴィータは驚きを隠せない。シグナムも同じで、「一体、何が有った?」と驚愕している。
「ヴィータちゃん、ひどーい!」
「そうやで。シャマルかていつも頑張っとるんやし。上手く作れたんやし喜ぶ所やんか?」
はやてのフォローにも、ヴィータには信じられないらしい。「いや、はやて。でもさぁ‥‥‥」と納得いっていない不満顔。
「どうしたのだ、シャマル。お前が料理を普通に作れるなど‥‥‥熱でも有るのか?」
「シグナムまで、もうっ。私だって、その気になればこのくらい‥‥‥」
膨れて拗ねるシャマル。未だに唖然としているままのヴィータが、「分かった!はやてが手伝ったんだろ?そうだろ?」としつこく食い下がっている。
「残念、外れやヴィータ。私は今回は手伝うてへんよ。見とっただけや」
シャマルが居たのは本来この時代から14年も先。初めは壊滅的な腕でも、14年もやっていれば流石に料理くらい上手くなっている。シャマルは単にみんなに褒めて欲しかっただけだったのだが、他の者からしたら当然異常な状況に見えた。
そんな、ほんの少し(?)いつもとは違う夕食を済ませた八神家の面々。はやてが眠ったのを確認して、今日も魔力の収集へと向かう。
‥‥‥だが。
《シグナム、今日は少し早めに切り上げない?》
《‥‥‥シャマル、最近何か有ったのか?》
今日は、シャマルの記憶通りならば管理局の結界に捕まり、フェイトやなのはと交戦し、リーゼ姉妹の手を借りてどうにか離脱‥‥‥だった筈。だが、今回は忍が魔導師として存在していて、ヴィヴィオも居る。前回同様上手く離脱出来るとは限らない。
《いえ‥‥‥何も‥‥‥》
《ならば、予定通りだ。主はやての為、一刻の猶予も許されない》
当然、シグナムには話せない。これ以上、不安要素を増やす訳にはいかなかった。はやての命が掛かっている為、迂闊な行動は控えなければならない。はやてを救う方法が他に無い以上、今は兎に角魔力を集めるしかない。
(はやてちゃんの肩にはミッドチルダの未来も掛かってる訳だし、慎重に行動しなきゃ。どうするのが正解なのかしら‥‥‥)
◆◇◆◇◆
その帰り。やはり歴史は同じらしく、不意に管理局の結界魔導師達の結界に襲われる。だが、前回と違った点が1つ。
《ヴィータ!》
《おうよ、シグナム!!》
バシュン、バシュン、とヴィータの持つグラーフアイゼンのカートリッジが炸裂。アイゼンが巨大化していく。
「『轟天爆砕!ギガント・シュラーク!!』」
轟音をあげて、結界に『外側』から降り下ろされるアイゼン。局員達の張った結界は呆気なく砕かれて、辺りに破裂音が響く。
《よくやった、ヴィータ》
ヴィータとシグナム、ザフィーラ、シャマルは散開。無事な武装局員の数はみるみる減っていく。
実は、四人はシャマルの提案で二手に別れて距離を取って行動していた。シグナムとザフィーラが先行して行動。かなり後方にヴィータとシャマル。お陰で、管理局の不意の結界に捕まったのはシグナムとザフィーラのみで、ヴィータの一撃で簡単に離脱する事が出来た。
《しかしよ、今日はシャマルの予感が当たったな》
《そうね、ヴィータちゃん。管理局も動いてるし、慎重に行動するに越した事は無いもの》
予感と言ってしまえば其れまで。だが実際は、起こる筈の事に予防線を張っただけ。苦虫を噛み潰してデバイスを構えている執務官と対峙しているシグナムを眺めつつ、シャマルは『この後』を警戒している。
やがて、シャマルの記憶通りに魔法陣が現れる。光と共に姿を見せたのは、なのはとフェイト、それに忍。
(ヴィヴィオちゃんは居ない、か。仕方無いわね)
シャマルはクラールヴィントを構え直す。セットアップしたフェイトとなのはのデバイスにはやはり、カートリッジが搭載されている。
「おい、シグナム。アイツらのデバイス‥‥‥」
「ああ、ヴィータ。油断するな‥‥‥シャマル、どうした?」
ヴィータ達とは違う理由で驚くシャマル。なのはのジャケットは先日見ていたので分かっていたが、フェイトの方が問題だった。
(フェイトちゃんのあれって、未来の‥‥‥インパルスフォーム?どうして‥‥‥?)
◆◇◆◇◆
なのははヴィータと、フェイトはザフィーラと其々対峙。忍はシグナムと対峙していた。
「吸血鬼‥‥‥だったか」
「負けっぱなしっていうのも気分悪いじゃない?」
表情を変えないシグナムに、ニヤリと笑みを浮かべて黒翼を拡げる。
「私は貴女達やフェイトちゃん達みたいに才能に恵まれて無いから。精一杯抵抗してみたの」
そう言って忍が取り出したのは、前回も使用したストレージデバイス。シグナムがある点に気付く。
「お前もデバイスを改良してきたか。ならば、手加減は要らぬな」
レヴァンティンを構えたシグナムに、忍も魔力刃を展開。前回よりも大きな槍を出現させる。
「行くわよ、烈火の将」
「‥‥‥シグナムだ」
フェイトに聞いているので知ってはいる。が、律儀にも名乗ったシグナムに忍も「月村、忍よ」と不敵な笑みで答える。
「では、行くぞ、月村」
シグナムは馬鹿正直にも真っ直ぐ突っ込んで来る。忍は真っ赤な魔力の槍でレヴァンティンを受け、ガキン、と音が響く。
「‥‥‥固いな」
「お陰様で」
剣と槍が交錯している刹那、忍の背後から数多の魔力弾が放たれる。1度シグナムが距離を取り、レヴァンティンを収める。バシュン、とカートリッジが炸裂し、レヴァンティンの刃が連結刃に変わる。
「『飛龍一閃』」
刃に乗せたシグナムの魔力が炸裂。忍の打ち出した魔力弾が全て落とされる。舞い上がったその煙に視界を遮られたシグナムに向かい、忍は槍を収めてデバイスの先端を向ける。
(今だ‥‥‥!)
デバイスの先端に付けられていたのは、掌で覆える位の大きさの、白と黒の陰陽玉の書かれた八角形の魔道具。魔法陣が展開され、その魔道具の周りが開いて、まるでディバインバスターかと思うような紅い極光が放たれる。
寸での所でシグナムが其れを避け、夜空に消えていく光。互いに笑みを向ける二人。
「成る程、悪くないな」
「ありがとう。ちょっと反則気味だけどね」
忍とて、相手が守護騎士だからこそ使用している。レイジングハートやバルディッシュとは違い、忍の使っている物は持ち主を選ばない。故に、相手に奪われれば厄介な代物なのだが、そこは守護騎士。フェイトの話を聞く限り、そんな真似はしないだろうと踏んでの使用である。
因みにだが、この魔道具こそが後に忍の作るストライクカノンの核となるのは先の話。
◆◇◆◇◆
その頃、ヴィヴィオは大人モードで地上を走っていた。
『急いで、ヴィヴィオ!』
「みんな置いてくなんて酷い!‥‥‥あっ、なのはママ、あそこ!」
どうやら間に合ったらしく、守護騎士達とフェイト達が衝突している。今の所、一進一退といった所か。
「それじゃ、行くよ、なのはママ!」
ヴィヴィオが現場へと飛び立とうとしたその瞬間の事だった。突然《後ろ!》というシャマルの念話。咄嗟だったが魔法陣を展開し、セイクリッドディフェンダーを展開。真後ろの空間から伸びてきた手を弾く。
「何だと‥‥‥?」
ヴィヴィオが距離を取る。空間から現れた手の人物、仮面の男は防がれた事に驚いているようだ。咄嗟に反応した事に、『なのは』も驚いている。
『ヴィヴィオ、危なかったね。危うくリンカーコアを奪われる所だった。よく気が付いたね‥‥‥ヴィヴィオ?』
「うん、なのはママ‥‥‥それが、シャマル先生が‥‥‥」
ミニ八○炉を伴った忍のリベンジマッチ開戦。
と同時にシャマル先生がヴィヴィオと接触の回。