An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
「は!?過去‥‥‥?ちょっ、ちょう待って」
ティアナの言葉が信じられず、思わず言葉を洩らずはやて。想定外の言葉を理解しようと暫し無言で考えている。
「そうです、八神司令。フェイトさんとヴィヴィオは過去に居る。ですから、信じて待ちましょう」
「せっ、せやけど、ちゃんと返って来れるんやろか?」
尤もな心配をしている。ティアナはそれを安心させるべく、思い出させるように名を出す。
「大丈夫です。覚えていませんか?‥‥‥アミティエ・フローリアンを」
「アミティエ‥‥‥フローリアン‥‥‥やて?」
「そうです、アミタさんです」
はやては暫し悩み、記憶を辿る。やがて霞が掛かって思い起こせなかった記憶の封鎖が解けて、合点がいって声をあげる。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥アミタさんか!思い出したわ。そうか、そういう事やったんか‥‥‥やっと繋がったわ」
漸く状況を理解できたはやて。闇の書事件当時のフェイトやヴィヴィオの行動、シャマルの変化。全てを思い出してみれば、成る程と頷ける事ばかり。
「‥‥‥ん?せやけど、それやとフェイトちゃんは結局なのはちゃんの事は助けられへんかったって事か?」
「いえ、その事なんですけど、まだ分かりません」
「‥‥‥は?ティアナ、どういう事や?」
JS事件はもう四年前。通常なら、なのはの死はどうあってもひっくり返せない。にも関わらず、ティアナは『まだ分からない』と答えている。はやてが疑問に思うのも無理もない。
「忍さんが言うには、過去の歴史が変化していってるらしいんです。それを認識出来てるのはヴィヴィオだけみたいなんですけど」
「‥‥‥それ、ホンマか?」
訝しげなはやて。ティアナにも自信は無い。何せ、その変化は彼女達には確かめる事が出来ない。あくまでも、ヴィヴィオだけの言葉と忍の推論でしかない。それに。
「それに‥‥‥。アミタさんは結局約束果たしてへんっちゅー事やんか。確かにあの時約束したんや。『必ず戻る』って約束し‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
そこまで言い掛けて、はやては止まる。何かが頭の中で弾けるのが分かり、何処かへと通信を繋ぎ始める。
「八神司令?誰に通信を?」
「いや、ティアナ。今のは私にも分かったわ。ちょっとした確認や。それから、ちょう聞いてもエエか?」
はやての言動の意図が掴めないティアナ。「何をですか?」と聞き返すと、はやては瞳を濡らしながら答える。
「あの時‥‥‥『ゆりかご』で何があったか、もう一度話してみてくれへんか?」
「はい?良いですけど‥‥‥」
ティアナが答えようとすると丁度通信が繋がり、モニターが開いて向こう側の相手の声が響く。
《‥‥‥はやてちゃん!ヴィヴィオは?見つかったの!?》
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「やあ、はやて。また会ったね」
「ロッサ!こんにちは」
図書館で車椅子を漕ぎながら目当ての本を探していたはやて。態とか偶然かは分からないが、ヴェロッサと再会。
「探し物かい?」
「シャマルが‥‥‥家族が料理上達してきてな?新しいのに挑戦させよう思うたんよ」
最近急に料理が上達しているシャマルの為に、新しいレシピをと料理本を探して回っていた。
「そうかい‥‥‥嬉しそうだね?」
微かに笑みを浮かべているロッサ。はやても満面の笑みで「勿論や!上手くなってくれて、私も嬉しくてな」と返す。
暫く話しながら、ロッサに車椅子を押してもらいつつ、図書館の中を見て回る。
「‥‥‥せやから、『明日は私が作りますから、はやてちゃんは休んでてください』って言われてしもうてな?今日は主婦業はお休みなんよ」
「それで、一人で此処まで来たのかい?」
「ううん。今日はそのシャマルと来たんよ」
ロッサの頬が少しだけ動く。はやては気付いていないが、その眼光が鋭いものに変わる。
「ごめんなさ~い、はやてちゃん。お待たせしました」
トイレに行っていたシャマルが、慌てて戻ってくる。車椅子を押すヴェロッサの姿を確認し、その表情が引き攣る。
(この魔力‥‥‥この子、まさかアコース査察官?‥‥‥どうして‥‥‥不味いわ)
ロッサはシャマルに笑みを向けている。動揺を見せてしまっているシャマルに、はやては都合良く勘違いして話しかける。
「シャマル、この人がこの前話した‥‥‥何や?全く。ナンパされたっちゅーのは冗談やって言うたやんか」
「えっ?はっ、はい、はやてちゃん。‥‥‥こんにちは、えっと」
動揺はしているが、こんな所でミスは出来ない。どうも歴史がシャマルの知っているものと変わってしまっているようだが、兎も角この時代の管理局の関係者に悟られるのは危険である。
「はじめまして、シャマルさん。ヴェロッサ・アコースと言います」
自己紹介してきたのと同時に、ロッサが念話を送ってきた。‥‥‥一言だけ。
《‥‥‥機動六課》
努めて態度には出さないようにはしたつもりだが、狼狽したのは間違いないだろう。この時代の人間が、機動六課の事を知る筈は無い。何せ六課は、あの一年間限定で存在した課であって、通常は管理局には存在しない。そのシャマルの動揺を見抜いたようで、ロッサから更に念話。
《やっぱり。ヴィヴィオの事で話しておきたい事があります、元六課のシャマル先生》
《何処で、それを‥‥‥》
恐る恐る念話を返したシャマルに《詳しくは後で。今はこのくらいで》と答え、ロッサは笑顔を向けてくる。
表ではマルチタスクで、当たり障りの無い世間話をしていたロッサとシャマル。「それじゃ、僕はこのくらいで」と手を振り去っていくヴェロッサを見送りながら手を振り返すはやてと、(どういう事なのかしら‥‥‥)と悩むシャマル。
◇◆◇◆◇
一方、その頃のハラオウン家。
「みんなも来るから。ね?フェイトちゃん、一緒に行こう?」
「‥‥‥分かった」
「やったぁ!」
フェイトの答えに、なのはのテンションは急上昇。頬を真っ赤に染めて、満面の笑みを浮かべる。
「じゃあ、じゃあ一緒に準備しよう?楽しみだね!」
これからみんなでスーパー銭湯へと向かう。なのははもう嬉しくて仕方が無い。‥‥‥無論、その思考は煩悩まみれである。
(えへへ‥‥‥フェイトちゃんとお風呂‥‥‥フェイトちゃんと一緒に‥‥‥えへへ)
「ねっ、ねえフェイトちゃん。いっ、一緒にお風呂回ろうね!」
なのはは全く気付いていないが、その言動は挙動不審極まりない。フェイトはなのはの行動を疑問に思いつつも「うん」と答える。
「ヴィヴィオも来るんだよね?」
「えっ?‥‥‥もっ、勿論だよ!みんなだもん」
「そうだね。一緒に回ろうね」というフェイトの言葉を期待していたなのはだが、現実は上手くはいかない。フェイトの口から出てきたのはまたしてもヴィヴィオ。動揺して思わず口籠ってしまった。
(また、ヴィヴィオちゃん‥‥‥渡さない。ヴィヴィオちゃんには渡さない!)
今のなのはには理解できる筈もない。ヴィヴィオが未来から来ている事など。
(フェイトちゃんは‥‥‥私のものなんだから!)
なのははフェイトの手を握ってから抱き付いて、悦に入った表情を見せる。
そのフェイト。強く拒否する訳にもいかず、どうしたら良いのか困った表情をして悩む。
(なのはを傷付ける訳にもいかないし、どうしたら良いのかな‥‥‥)
久々に未来編から入りました。未来編はこれでラスト。後はエンディングまで触れません。
過去編はシャマルとロッサ。二人の出会いが、今後を大きく変えていく!?
次回は安定のお風呂回ですかね。なのはちゃんの暴走回です。