An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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交わる点と線

 

 

「フェイトちゃん!次はあっち!あのお風呂に入ろう?」

 

「なっ、なのは、走ったら危ないから!引っ張らなくても一緒に行くから!」

 

スパラクーアの浴室内。フェイトの腕をガッチリとホールドし、なのははあちこち引っ張り回す。

 

「あっ、危ない、危ないから、なのは!」

 

「平気平気!ほら、早く‥‥‥きゃあ!」

 

案の定足を滑らせ、後頭部から床に目掛けて倒れ込むなのは。フェイトが一瞬早く反応して、なのはの頭と床の間に身体を滑り込ませる。間一髪、なのははフェイトをクッションにして、後頭部への直撃を免れた。

 

「ふぇぇ、あっ、ありがとう、フェイトちゃん」

 

「駄目だよ、なのは。危ないから走らないで」

 

「はーい」と答えたなのはの頬は真っ赤。実に幸せそうな、良い笑顔である。笑みを浮かべ差し伸べるフェイトの手を握り立ち上がり、嬉しそうに腕にひっ付いて歩く。

 

「えへ、えへへ‥‥‥フェイトちゃん‥‥‥」

 

「何?どうしたの、なのは。どこか痛めたの?大丈夫?」

 

「ううん、大丈夫だよ!」

 

そんな二人の様子を溜め息混じりに眺めるアリサと微笑ましく見ているすずか。それと‥‥‥。

 

(あんなにフェイトママにくっ付いて‥‥‥なのはママは仕方無いなぁ、もう‥‥‥)

 

諦めと、呆れと。もうなのはの暴走にも慣れてきたヴィヴィオ。二人の姿に昔の事を思い出して、切なそうな笑みを洩らす。

 

(ほんの‥‥‥ほんの1年前まで‥‥‥ママ‥‥‥フェイトママと私も、あんな風に‥‥‥)

 

 

 

『ほら、ヴィヴィオ、あっちに行こう!』『待って、待ってママ!危ないから引っ張らないで!』

 

過去にフェイトとヴィヴィオ、母娘で出掛けた旅行先で、楽しそうにヴィヴィオを引っ張り走るフェイトと、引っ張られ苦笑いながらこれまた楽しそうなヴィヴィオ。そんな過去の出来事を思い出し、胸が熱くなって自然と涙がこぼれ落ちる。

 

「‥‥‥ヴィヴィオちゃん?」

 

そんなヴィヴィオの様子に気が付いたすずかが、心配そうに声を掛ける。

 

「何でも‥‥‥何でもないです」

 

目を擦り涙を拭って、ヴィヴィオは努めて笑顔を作り、笑いかける。すずかが「辛い事があるなら、何でも言ってね?」とその手を取る。

 

「大丈夫です。ありがとう、ございます」

 

「前から思ってたんだけど、ヴィヴィオちゃんって私達より歳上だよね?どうして敬語で話すの?」

 

ドキッとして、目が泳ぐ。まさか自分の時代ではみんな歳上だから、とは言える筈もなく、動揺してしどろもどろになる。

 

「えっと、それは、あの‥‥‥」

 

ヴィヴィオが返答に困っているタイミングで、隣の浴槽から声が聞こえて来た。

 

「こらぁ~、なのは、フェイト!もっと落ち着いてお風呂入りなさいよ!」

 

「だって!だってアリサちゃん!」

 

「うるさいうるさいうるさいっ!問答無用よ!」

 

アリサに引き摺られて同じ浴槽に入れられるなのはとフェイト。その様子に「フフフッ」と思わず吹き出したすずかと、それに釣られて吹き出すヴィヴィオ。

 

「仲良いよね、あの二人」

 

「そうですね、なのはさんもフェイトさんも仲良いですね」

 

◆◇◆◇◆

 

「ごめんね、アリサ」

 

「良いのよ、フェイト。悪いのは全部なのはなんだから」

 

申し訳無さそうに謝るフェイトと、腕組みをしてなのはを睨みつつ話すアリサ。なのははなのはで「私悪くないもん!」と不服そうに叫んでいる。

 

「何言ってるのよ、どう見てもアンタが悪いに決まってるじゃない!」

 

「悪くないもん!フェイトちゃんと一緒に回りたかっただけだもん!」

 

驚きフェイトが止めに入るが、二人は退かない。あーだのこーだのと口喧嘩を始めてしまう。

 

「あっ、あの、二人とも落ち着いて、ね?」

 

「フェイトは黙ってなさい!」

 

「フェイトちゃんは黙ってて!」

 

どうにか二人を止めようとしていたフェイトに、突然念話が入る。

 

《やぁ、フェイト》

 

驚き思わず身震いし、アリサとなのはに「どうしたの?」と心配される。「なっ、何でもないよ」と無理矢理誤魔化して、その念話の主に答えるフェイトの頬は、恥ずかしさで真っ赤。

 

《ロッサ!?エッ、エッチ!》

 

《覗いたりはしてないから、大丈夫だよ》

 

《そっ、そういう問題じゃなくて!》

 

少し頬を膨らませながら話すフェイトに、《ごめんよ》と形式だけ謝り、ロッサは本題を切り出した。

 

《今日はリーゼ姉妹の監視は無いよ。彼女達にはカリムと三提督の極秘会談の警備を『頼んだ』からね。内容は君も良く知ってる、『ゆりかご』の預言についてだ》

 

《それって‥‥‥》

 

フェイトが訊ね切る前に、新たに念話が聞こえてくる。それは、あの人物から。

 

《‥‥‥フェイトちゃん?フェイトちゃんなの?》

 

《シャマル先生‥‥‥?どうして此処に!?》

 

《‥‥‥付き添いでね。それより先に、確認だけさせて。未来の、22歳当時のフェイトちゃんの役職と、19歳の時の所属、それから、未来の娘の通ってる学校名、それと‥‥‥なのはちゃんのお墓の場所は?》

 

《‥‥‥役職は、執務官。19歳当時の所属は、機動六課、ライトニング分隊隊長。娘の‥‥‥ヴィヴィオ・テスタロッサ・ハラオウンの通ってる学校は、St.ヒルデ魔法学院、なのはのお墓は‥‥‥‥‥‥海鳴の丘の上の共同墓地‥‥‥》

 

当然ながら、スラスラと答えるフェイト。だが当時の事を思い出して、その瞳に涙が浮かぶ。周りに気付かれないように涙を拭って、シャマルの言葉に耳を傾ける。

 

《やっぱりフェイトちゃんなのね。今ははやてちゃんと一緒なの。今日の夜、何とか会えないかしら?》

 

◇◆◇◆◇

 

そうして、二人が密かに会う事になった、その日の夜の事。

月村邸の庭で星空の下に並んで座る、ヴィヴィオとすずかの姿。

 

「ねえ、ヴィヴィオちゃん。ヴィヴィオちゃんのお母さんって、どんな人なの?」

 

「‥‥‥とっても優しくて、とっても強くて、でもとっても泣き虫で。とっても心配性な、そんな人」

 

空を見上げたままのヴィヴィオの表情は、やはり切なそう。「そっか」とだけ口にしたすずかも、一緒に空を見上げる。

 

「だから‥‥‥早くママを見付けて‥‥‥早く会いたい。早く‥‥‥」

 

と、空を見上げていたヴィヴィオが、何かに気付く。 その只事ではない様子に「どうしたの?」と声を掛けるすずか。

 

(こんな時に‥‥‥今日は忍さんもノエルさんも居ないのに!)

 

慌ててすずかの手を引いて走り出すヴィヴィオ。訳が分からずに引っ張られるすずかは「ヴィヴィオちゃん?ねえ、ヴィヴィオちゃん?」と何度も呼び掛けるのみ。

 

月村邸を出て、すずかを連れて公園へと走るヴィヴィオ。覚悟を決めたのか、真剣な眼差しに変わる。

 

《なのはママ‥‥‥!》

 

『仕方無いよ。後の事は後で考えようか。ヴィヴィオ、来るよ!』

 

公園のど真ん中で立ち止まり、胸元から『なのは』が出てくる。ヴィヴィオの身体が虹色に輝き出して、足元にエンシェントベルカの魔法陣が現れる。

 

「えっ?えっ?えっ!?」

 

少し離れて、唯々驚くすずかの前で、『なのは』を掲げてヴィヴィオが叫ぶ。

 

「『風は空に。星は天に。そして不屈の魂(こころ)はこの胸に。この手に、魔法を!レイジングハート、セーット、アーップ!!』」

 

虹色の眩い光に包まれて、ヴィヴィオの姿が変わる。特徴的なエクシードモードの、純白のバリアジャケットに身を包んだ大人モードのヴィヴィオが現れて、すずかがその場にへたり込む。

 

「ヴィ、ヴィ、ヴィヴィオちゃん!?」

 

「すずかさん、そこから動かないで下さい!」

 

ヴィヴィオはすずかを守るように魔法陣を展開させる。すずかが虹色のシールドに包まれたところで、上空から赤い光が降ってくる。

 

「この前の、虹色!今度こそ魔力を貰うぞ!」

 

「ヴィータさん‥‥‥負けません、絶対に!」

 

冷や汗を流しつつも、ヴィータに向かい合い構えるヴィヴィオ。チラリとすずかを見たあと、真っ直ぐに走り出す。

 

『一撃と突進力はミウラちゃんの比じゃないよ、気を付けて、ヴィヴィオ!』

 

「うん、なのはママ!行くよ!」




安定の暴走なのはちゃん。周りを振り回しながらのお風呂回。

ヴィータとヴィヴィオのリベンジマッチ開戦。密会しているであろうシャマルとフェイトの様子も含めて、次回に続く。
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