An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
「屋上に行くわよ、二人共!」
「なのはちゃん、行こう?」
「ふぇぇ、アリサちゃんもすずかちゃんも、待ってよ~」
昼休み。聖祥小の、三年生の教室。なのは、アリサ、すずかの3人は、お昼の弁当を食べに、屋上へと向かう。
フェンスの側の何時もの場所に陣取り、食べ始める。
「で?朝の話の続きなんだけど、フェイトって誰よ?何時、何処で出会ったの?答えなさい、なのは!」
「アリサちゃん、そんなに一編に聞いたら、なのはちゃんだって答えられないよ。ね?なのはちゃん」
弁当を摘まみながら、朝の話の詳細を要求するアリサ。窘めてはいるものの、すずかも知りたいのは同じ。何せ人からの好意にはめっぽう疎い朴念仁の筈のなのはが、頬を染めながら語るような相手だ。二人には非常に興味があった。
「だからね、昨日の夜に、動物病院の近くで‥‥‥」
「へ?なのは、アンタあの場所に居たの?じゃあ、何があったか、見たのね?」
「あ‥‥‥えっと‥‥‥」
アリサの突っ込みに、なのはは口籠る。登校時はついつい口にしてしまったが、『なるべく他の人達を巻き込まないように』とユーノから言われている。本当の事を言っても信じてもらえるかどうか怪しいが、ここは上手く誤魔化さなくてはならない。
「何よ、どうしたの?‥‥‥‥‥‥まさか、なのはが事故の原因とかじゃないでしょうね!?」
「ちっ、違うよ、アリサちゃん!えっと‥‥‥」
何か言い訳を、と必死に考えるなのはだが、9歳の頭で考えても上手い理由が浮かぶ訳がない。苦し紛れに辺りを見回すと、隅の方にキラリと光る物を見付けた。
「あっ、あそこで何か光ってるよ?あれって、何かな?」
アリサとすずかは、なのはの指さした方を見る。確かに光る物がある。近付いてよくよく見てみれば、菱形の青い宝石のような物が落ちていた。
「何よ、これ?」
「でも、綺麗‥‥‥」
アリサとすずかが不思議そうに見ている後ろで、なのはは既視感を覚えていた。
(あれ?この石って何処かで見たような‥‥‥)
そう思ってなのはは菱形の石に触れようとしたが、何かを感じて手を止める。
「ねえ、アリサちゃん、すずかちゃん。今何か言わなかった?」
「え?何も言わなかったわよ?ねえ、すずか」
「私も。なのはちゃん、どうかしたの?」
なのはは誰かに呼び止められた気がしたのだが、アリサもすずかも言葉を発していない。府に落ちないが、どうやら気のせいだと結論づけて、なのはは再び石に触れようと手を伸ばす。
『駄目だよ、触れちゃ』
今度はハッキリと聞こえて、なのはは思わず「えっ?」と声を出す。それは昨日の夜の念話とも違う、何かこう、心の奥底から発せられたような声。
(何?今の)
つい先程の出来事を疑問に感じているなのはに、アリサが菱形の石を掴んで手渡す。
「変わった石よね?それ」
「うん。そうだね、アリサちゃん‥‥‥‥‥‥え?」
なのはの掌の上の石が光を放ち始める。呆気にとられている3人。その光は、なのはを包み込んでいく。
「え?え?」
驚いているなのはと、それを見て腰を抜かして尻もちを突く二人。「なのは!」「なのはちゃん!」と同時に声をあげたアリサとすずかのそれに重なり、再びなのはに声が聞こえた。
『其れから、離れて!』
混乱して動けないなのはは、そのまま光に飲まれた。
◆◇◆◇◆
(駄目だ、間に合わなかった‥‥‥。兎に角、今は)
目の前迄来てはいたが間に合わず、ジュエルシードがなのはを取り込んで暴走。ユーノはやむ無く結界を展開する。
丁度展開し終えると、遠くに二つの影。やがて二人がユーノの傍に降り立つ。
「君は、昨日の!」
「ユーノ、なのはは!?」
屋上から感じられる魔力に最悪の展開を予想しながら、フェイトはユーノに現状を確認する。
「駄目だ、ジュエルシードに取り込まれてる!」
ユーノが言葉を発して、フェイトとアルフは屋上を睨む。感じられるのは、フェイトには懐かしい、しかし今の彼女に太刀打ち出来るかどうか分からない、膨大な大きさの魔力。
「いくらジュエルシードの力が有るって言っても、この魔力は‥‥‥!」
ユーノも驚きを隠せない。こんな管理外世界で、これだけの才能を持っている人間はそうそうお目に掛かれない。
「何て事‥‥‥私のせいだ‥‥‥なのはを助けないと!」
フェイトはバルディッシュを構える。リンカーコアに魔力を滾らせて、屋上に向かって飛び出す。
「なのは!!」
フェイトが叫びながら屋上に降り立つと、制服姿のなのはが居た。姿こそ何時もと変わらないが、ジュエルシードの青白い光と、なのはの桜色の魔力光の混ざった光に包まれている。
「今、助けるから‥‥‥バルディッシュ!」
《Sealing Mode》
バルディッシュをなのはに向ける。足元に魔法陣を展開し、封印準備に入るフェイト。
『避けて!』
突然聞こえてきた声に咄嗟に反応し、フェイトは展開していた魔法陣を閉じて上空へと上がる。そのすぐ後に、先程迄フェイトが居た場所を桜色の極光が走る。
(危なかった。今の声は‥‥‥なのは?)
確かに先程聞こえたのは、なのはの声。だがそれは直接心に響いて来たもので、声に出されたものではない。
(でも、なのはは今‥‥‥?)
なのははジュエルシードに取り込まれて、意識は無い筈。疑問に思ったフェイトは改めてなのはの方を見て、驚く。
「!!」
桜色の極光を撃ったなのはの左手には、ミッド式の魔法陣が展開していた。今も更に魔力が充填されていく。
(じゃあ、今のは、まさかディバインバスター!?どうして)
◆◇◆◇◆
「あれってアンタのご主人様だろう?ボケッとしてないで止める方法考えなよ」
「僕は使い魔じゃない!人間だよ!」
アルフとユーノは、交戦するフェイト達を少し遠くから見ていた。
「だって、あの子も魔導師なんだろう?」
「才能はあると思うけど、なのはは魔導師じゃないよ」
「は?だって、あんなに魔法使いこなしてるじゃないか」
アルフの疑問も尤もだった。なのはは確りとミッド式の魔法陣を展開しつつ、フェイトと互角に渡り合っている。ユーノにも信じがたい光景だ。
「いくらジュエルシードに乗っ取られてるからって、魔導師でも無いのに魔法陣が使える‥‥‥?」
「フェイトには『手を出すな』って言われたけどさぁ、不味いよね、あれは」
アルフ達の視線の先で、少しずつ押されて動きの鈍るフェイトと、ジリジリと追い詰めていくなのは。
◇◆◇◆◇
《Sonic move》
フェイトはなのはの懐に飛び込む。万が一の無いように非殺傷設定にはしてある。これ以上迷ってはいられない。
(ごめん、なのは。痛いかも知れないけど)
フェイトはバルディッシュを振り上げる。金色の魔力刃がなのはに迫るが、強固な桜色のシールドに阻まれる。
『駄目!逃げて!』
再び聞こえた、なのはの声。フェイトの動きが、一瞬止まる。
「キャアァァァ!!」
次の瞬間、なのはのシールドが爆発。フェイトは吹き飛ばされるが、その途中でブレーキをかけたように留まる。
「バインド!?」
フェイトの四肢はなのはのバインドで縛られ、その場に固定される。
次の瞬間、桜色の砲撃がフェイトを撃ち抜いた。
「がっ‥‥‥‥‥‥がはっ」
何とか意識はある。シールドを張る事も出来ず、バリアジャケットも大破。四肢を縛られたまま、フェイトは弱々しく顔を上げる。
《フェイト!》
アルフからの念話が聞こえ、飛んで来るのが見える。声を出そうとするが、「‥‥‥だ‥‥‥め」と微かに出せただけ。視線をなのはの方に移すと、目に入ったのは桜色の大規模魔法陣。
(ごめん‥‥‥なのは)
アルフのあの距離では間に合わない。今にも放たれるであろう止めの一撃。フェイトの瞳から涙が一筋流れる。なのはは左手を前方のフェイトに向ける。しかし。
『ごめんね、フェイトちゃん。でもこれでやっと、この子を止められる。だから、後はお願い』
再び聞こえた、なのはの声。見れば展開されていた魔法陣は消えて、なのはは止まったまま苦しそうにもがいている。
《今しかない!お願い、アルフ、ユーノ!》
力の入らない自身の代わりにと、フェイトはアルフとユーノに全てを託した。
ジュエルシード2個目にして大苦戦のフェイトちゃん。
相手がなのはですから。
声の主は次回登場。願望器にかけたフェイトの願いを考えると‥‥‥。