An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
「フェイトちゃん、駄目だよ。大人しくしてくれなきゃ」
ニヤリとして牙を覗かせるすずか。対するフェイトは距離を取り、既に肩で息をしている。
「ハァ、ハァ、ハァ‥‥‥すずか‥‥‥」
カートリッジがあり、真・ソニックフォームとなってもすずかの猛攻を凌ぐのがやっと。いや、寧ろ今の状態だからこそ此処まで凌げていると言った方が良いだろう。すずかが前回如何に手を抜いていたかが良く分かる。ナハトヴァールの方が思考力が無い分、余程やり易い。
(もう少し‥‥‥もう少しなんだ)
ファリンがシャマルと共に結界を組み上げる迄、何とか囮となって時間を稼がなくてはならない。すずかに悟られないよう視線は向けずに、念話でシャマルに確認を取る。
《シャマル先生‥‥‥》
《もう少しだから!フェイトちゃん、あとちょっとだけ何とか堪えて!》
バルディッシュを握る手に力を込めて、改めてすずかを見据える。息一つ乱さず、変わらず狂喜を孕んだ表情のすずかが、魔法陣を展開し始める。
「そろそろ‥‥‥血をちょうだい?フェイトちゃん」
ヴィータの時と同じように、その足元の魔法陣からすずかと同じ姿の者が3体現れる。「クッ‥‥‥」と声を漏らし、フェイトはバルディッシュの刀身に魔力を込め直す。
(シルバーカーテンみたいなもの‥‥‥?いや、違う‥‥‥!)
クアットロのIS、シルバーカーテンのような幻覚ではない。それは一体一体が魔力を持った実体、言わばすずかの分身である。
「幾ら速くっても、もう逃がさないから。‥‥‥血‥‥‥早く飲ませて、ね?」
4人となったすずかが、各々バラバラに四方からフェイトに向かってくる。「バルディッシュ!」と叫びカートリッジを炸裂させて、フェイトは高速で移動しながらザンバーを振るう。
数多の魔力の弾幕と巨大な柱のような4本の魔力刃がフェイトを襲うが、そこはやはりフェイト。『管理局最速』と呼ばれたそのスピードで、時にザンバーで防ぎながらそれらを避けつつ、すずかに刃を降り下ろす。
「撃ち抜け、雷神!」
《Jet Zamber!》
振るったザンバーから金色の光が走り、すずかの分身を一人を飲み込む。赤黒い光をうっすらと放ちながらその分身が消えて、すずか本人の表情が微かに歪み、フェイトを捉えている瞳が鋭くなる。
「駄目だよ、フェイトちゃん。大人しくしてて、ね?」
言葉と共に、フェイトの周りを漂っていた魔力弾の全てが、一斉にフェイトに向かって収束するように襲ってくる。それを避けようと上方へと上がったフェイトだが、何かに左足首を掴まれる感覚に襲われてその場で止まる。
ハッとして左足に視線を向けると、前回同様のすずかの光球に足首を覆われていた。
「バインド!?しまった‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
何とか抜け出そうと藻掻くフェイトが気配に気付いた時は既に遅く、その視界いっぱいに拡がった、3本の赤黒い魔力の柱がフェイト目掛けて降り下ろされるところだった。「えっ‥‥‥‥‥‥?」という言葉を残し、フェイトはそのまま魔力刃に飲み込まれた。
◆◇◆◇◆
「赤い子のお友達?‥‥‥だめですよ?私とフェイトちゃんの仲を邪魔しちゃ」
フェイトがやられたのに気付き、ファリン一人に結界を任せ足止めに出たシャマルだったが、彼女にも止める事は出来ず。すずかにやられ、地面にうつ伏せに倒れていた。
「うそ‥‥‥でしょ‥‥‥すずか‥‥‥ちゃん‥‥‥」
ファリンの方にチラリと視線を向けるシャマル。だがそのファリンは、未だに結界を組み上げてはいない。積層型の巨大な立体魔法陣を組み上げるのには、時間が全く足りていない。
「ファリン‥‥‥ちゃん‥‥‥」と呟き、シャマルは意識を手離す。すずかはシャマルを分身の一体に任せ、自身は気を失っているフェイトを抱きかかえたまま、もう一体の分身と共にファリンの元へと向かう。
ファリンのすぐ目の前まで来たすずか。口元に牙を覗かせながら、そのファリンに鋭い視線を向ける。
「ねえ、ファリン。従者は主に従うものだよね?反逆したらどうなるか‥‥‥分かるよね?」
「お嬢様‥‥‥‥‥‥」
諦めたのか、ファリンはその場に膝を着いて瞳を閉じる。その全身は今から起こるであろう事の恐怖で、ガタガタと震えが止まらない。
すずかがフェイトから片手を離して、ファリン目掛けて魔力刃を降り下ろした瞬間の事だった。
「アクセラレイタぁぁぁ!!」
遠くから微かに声が聞こえて、何かがすずかを掠めて通りすぎる。すずかが気が付くと手の中に居た筈のフェイトの姿が無く、降り下ろした魔力刃が誰かに受け止められていた。
「すずかさん‥‥‥止めて下さい!」
柱のような魔力刃を当然のように受け止めて居たのは、すずかと同じか少し幼い位の少女。金髪のロングヘアーに金色の瞳。白と紫の特徴的なバリアジャケットを羽織り、背中には燃えるような赤い魔力の翼。
少女はすずかの魔力刃を造作もなく押し返し、ファリンを抱え空へと上がる。
◆◇◆◇◆
「情けない。確りせい、シャマル」
「‥‥‥‥‥‥はやて‥‥‥ちゃん‥‥‥?」
「違うわっ!」
シャマルが気が付くと、誰かの腕の中。目の前のすずかの分身は、今当にその人物によって消されている真っ最中だった。髪の色や雰囲気は少し違うものの、それ以外がはやてと瓜二つの少女。朦朧としているシャマルが見間違うのも無理はない。
「子鴉なんぞと一緒にするでないっ、たわけがっ!」
「‥‥‥から‥‥‥す?」
状況を全く飲み込めていないシャマルを抱いたまま「やれやれ」と溜め息をついた少女。
すずかの分身が消えたのを確認して、上空へと上がった。
◆◇◆◇◆
「フェイトさんっ、大丈夫ですか?フェイトさんっ!」
一方のフェイトは、すずか達から遥かに離れた所にいた。すずかからフェイトを超高速で掠め取った人物の腕の中で。
「‥‥‥う‥‥‥‥‥‥ア‥‥‥ミタ‥‥‥さ‥‥‥?」
「良かった!確りしてください、フェイトさん!」
その人物‥‥‥アミタが思わずフェイトを抱き締める。安心したのか再びそのまま意識を手離したフェイトに「大丈夫ですかっ?フェイトさんっ」と叫び語りかける。
「アミタ。怪我人に無理をさせるでない」
「でも、王様!」
意識朦朧としているシャマルを抱え、ディアーチェが隣に降り立つ。
「全く不甲斐ない奴らよ。結局関わってしまったではないか。これで、我等もシュテルの事は言えぬな」
「やむを得ませんよ。それよりも今は、すずかさんの封印を!」
「ウム。ユーリが止めている間に結界を完成させるのが先か」
寝かせられたフェイトとシャマルを守るように、エンシェントベルカのシールドを張るディアーチェ。「やれやれ」と再び溜め息をつきながら、ユーリとファリンの元へと飛び立つ。
「二人を頼むぞ、アミタよ」
「任せて下さい!」
さてさて、遂にアミタさんが登場。今回は状況が状況なだけに、ユーリたんが出動してます。
来月に続く。