An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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夫婦漫才と揺れる臨時本部

 

「おかしい‥‥‥いくらなんでも‥‥‥」

 

クロノは悩んでいた。ここの処、毎回のように守護騎士に逃げられる。それも、此方が彼女達を発見し、追跡しようとした直後。地球でのものもそうだが、別次元でも同じように逃げられる。

 

「ん?クロノ君、お菓子が良かった?お茶だから御煎餅がいいかなって思って用意したんだけど」

 

そんなすっ惚けた事を口にしているエイミィに呆れつつ「違う。妙だ、と言ったんだ」と言いながら溜め息を漏らす。

 

「この世界には『ミョウダ』なんて食べ物有るの?どんなお菓子?」

 

「エイミィ、態とやってるのか?‥‥‥最近守護騎士に逃げられてばかりで変だ、と言ったんだ」

 

先程よりも一層大きい溜め息をつき、お茶を啜るクロノ。やっと理解したエイミィが「ああ、成る程!」とポンッと手を叩く。

 

「そうだね~、最近いつもタイミング良く逃げられちゃうもんね。ついてないよねぇ」

 

やれやれ、と両手を広げるエイミィ。クロノはエイミィが自分で食べる用に持ってきた饅頭を横取りしようと手を伸ばしつつ、言葉を返す。

 

「本当に、そうなのか?」

 

クロノが饅頭を掴む直前でそれを手に取り持ち上げたエイミィは、死守した饅頭の包装を剥きながら答える。

 

「それってどういう事?」

 

「内通者が居るんじゃないか、と。若しくは此方の動きが筒抜けになるような‥‥‥そうだな、例えば此処が彼方に監視されてる、とかだ」

 

饅頭を食べ始めたエイミィを横目に、仕方無く冷蔵庫に向かいながら続けるクロノ。

 

「どちらにしても、早急に手を打たないといけない。‥‥‥内通者を探すのは少し気が重いな」

 

クロノはプリンを見つけ、炬燵に戻ってくる。エイミィはそのプリンをチラリ、と見て、饅頭をお茶で流し込んで答える。

 

「此処が監視されてるっていうのは可能性高いかもね。フェイトちゃんがリンカーコア奪われたのってココだし。その時に何か仕掛けたとか?」

 

「いや、しかしだな、その時はまだフェイトと母さんが一般人として生活していただけだからな。管理局の本拠地になるっていうのを見越した、というのは考え難いんだが‥‥‥」

 

そう口にして悩みながら、クロノは飲み終えてしまっていたお茶の代わりを探しに、再び冷蔵庫へと向かう。一瞬だが、エイミィの瞳が獲物を狙うそれに変わる。

 

「そうだね~‥‥‥」とだけ聞こえたエイミィの声は、暫く聞こえない。考えを巡らせているのだろうと思いつつ水のペットボトルを持ってクロノが戻ると、エイミィの口が何やらムグムグと動いている。

 

「‥‥‥‥‥‥おい、エイミィ」

 

「んん?」

 

クロノはエイミィを睨む。つい先程炬燵の上に置いた、プリンが空になっている。

 

「口、開けてみろ」

 

あからさまに「ゴクン」と口の中の物を飲み込んでから口を開けたエイミィ。「はひ、はへはほ?ほうひはほ?ふほほふん?」(※注、訳:はい、開けたよ?どうしたの?クロノ君?)と、したり顔で答えるエイミィ。

 

「君って奴は‥‥‥はぁ‥‥‥」

 

「プリンくらいで溜め息つかないつかない。御煎餅は顎鍛えられて良いじゃない?」

 

「なら、君が食べれば良いだろ」

 

エイミィはペロッ、と舌を出して、「クロノ君、分かってないなぁ。女の子は甘い物が無いと生きて行けないんだよ~?」と開き直る。

 

「自分で『女の子』って言うのはどうなんだ、エイミィ?」

 

「もう。デリカシー無いなぁ、クロノ君は。そんなんじゃ女の子にモテないよ?」

 

エイミィは徐に立ち上がる。「別にモテたくて執務官をしている訳じゃない‥‥‥」と言い掛けたクロノの鳩尾に、エイミィの右肘が綺麗に入る。

 

「グハッ!?」

 

「全く‥‥‥鈍感は罪だよねぇ。ね?クロノ君?」

 

意味深な言葉を残し、部屋を立ち去るエイミィ。クロノは暫く踞った後、漸く立ち上がり再び溜め息をつく。

 

(僕は‥‥‥何か悪い事でもしたのか?)

 

◆◇◆◇◆

 

「それは、クロノが悪いわね」

 

「うん。私も、ちょっとクロノの事は擁護出来ないかも」

 

クロノの話を聞いたリンディもフェイトも、擁護したのはエイミィ。クロノはどうにも納得出来ない様子。

 

「僕が悪いのか!?どの辺が!?」

 

「自分で考えなさい、ね?」と返すだけのリンディと、「エイミィが可哀想だよ、クロノ」と非難の目を向けるフェイト。リンディは兎も角、フェイトには将来クロノとエイミィが結婚するのが分かっているだけに、エイミィを女の子扱いしなかったクロノの肩は持てない。

 

「駄目だよ、クロノ。エイミィだって女の子なんだよ?」

 

「分かった、分かった。後で謝っておく」

 

クロノはばつが悪そうな表情で、ソファに座る。そんな様子を見て、「こんな息子でごめんなさいね、フェイトさん」と苦笑いのリンディ。

 

「それより母さ‥‥‥艦長、先程の件なのですが」

 

「そうね‥‥‥ココが監視されてるって可能性は有るわね。ちょっと探してみましょうか」

 

そうして、エイミィを含めた四人で家の中を隈無く探し回る。当然ながら、それらしき物は見当たらない。

 

「これだけ探しても見付からないとなると‥‥‥やっぱり内通者かしら?」

 

「ですが、艦長。闇の書の危険性は誰もが知っている訳ですし、いくらなんでも‥‥‥」

 

顔を見合わせているリンディとエイミィを横目に、フェイトは座ってお茶を飲んでいる。必死に動揺を隠しながら。

 

(きっと‥‥‥忍さんだ。忍さんがシャマル先生に知らせてるんだ)

 

フェイトは、万が一の可能性を考慮されて、忍にシャマルとの接触を止められている。『代わりに私が交渉するから』と言われてから、暫く何の報告も無い。無論何かあったとしても、今のフェイトでは足手まといにも為り兼ねない。まだすずかに受けたダメージが回復していない。

 

(見てる事しか出来ないなんて‥‥‥はやて‥‥‥)

 

もうすぐ親友となるはやての事を思いながら、フェイトはなるべくポーカーフェイスを装う。

 

そんな事をしていたハラオウン家のインターホンが鳴る。やって来たのは忍となのはだった。

 

「フェイトちゃん~!!」

 

真っ直ぐフェイトに向かい走ってきて抱き付くなのは。勢いのままになのはに抱き付かれたままソファに押し倒されるフェイト。

 

「フェイトちゃん、フェイトちゃん‥‥‥」

 

「くっ、苦しいよ、なのは」

 

頬擦りしてくるなのはを強引に引き離すのも悪いと思ってしまい、されるがままのフェイト。忍が「駄目よ、なのはちゃん。フェイトちゃんまだ怪我治ってないのよ?」とたしなめてくれて、やっと解放された。

 

「はーい。ごめんね、フェイトちゃん」

 

「ううん、大丈夫。それより、今日はどうしたの?」

 

フェイトの素朴な疑問に、「だって、フェイトちゃんに会いたかったんだもん!」と満面の笑みで答えるなのはは、今度は優しく抱き付いてきて、悦に入った表情を見せている。

 

「そっか。ありがとう、なのは」

 

フェイトが笑みを見せると、なのはは頬を真っ赤に染めて、「うんっ!」と答える。どうも、今日もスイッチを入れてしまったようだ。

 

「あの‥‥‥なのは?苦しいよ」

 

「もう少し、もう少しだけ‥‥‥」

 

周りの目も憚らず暴走しているなのはを尻目に、アラートが鳴り響く。モニターが開き、守護騎士の姿が写る。

 

「クロノ、エイミィ」

 

「「はい、艦長!」」

 

瞬時に3人は局員の表情へと変わり、エイミィがコンソールを叩き始める。‥‥‥その後方、リンディ、エイミィ、クロノの視界の外。忍が携帯を取り出して何かを打ち込んでいるのを、フェイトは見ているのを気付かれないよう観察する。

 

(忍さん‥‥‥)

 

その直ぐ後。「ちょっと、またなの!?」というエイミィの声と共に守護騎士は多重転移で逃げ始めた。ホッとした表情をしている忍を、フェイトは複雑な思いで見つめる。

 

(やっぱり。私、忍さんに危険な事を‥‥‥。ごめんなさい)

 

◆◇◆◇◆

 

その頃の、八神家。

 

(ふぅ。これでよし、っと。ありがとう、忍さん)

 

メールを確認し、見付かった旨を他の3人に伝えて。シャマルは胸を撫で下ろしていた。

 

「なんや?シャマル。お友達か?」

 

「えっ?はい。そうです」

 

メールのやり取りに気付いたはやてが、おたまを持ったまま振り向く。今日の夕飯ははやての担当。ここの所、日替わりでシャマルと交替で作っている。

 

「そうかぁ。エエ事やね。今度紹介してな?」

 

「はい。きっと」

 

笑顔を向けたシャマルに笑顔を返すはやて。クリスマスはもう少し先。他の3人が無事収集を終えて戻ってくる事を祈りながら、シャマルは食器を用意し始めた。

 




クロノのエイミィの掛け合いの回です。クロノはエイミィに負けっぱなし。

シャマルから出撃連絡→忍がハラオウン家へ→忍から情報横流し→シャマルが他のメンバーに連絡、という一連の流れ。これで暫くは安泰です。
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