An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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無力さを噛み締め

 

発生していた煙が晴れてくると、不自然な影が見えてくる。明らかにフェイトだけのものではない。高さも、大人のそれくらいは有る。

 

完全に煙が晴れ、そこに立っていた忍の姿がハッキリと現れた。忍の腕の中には、お姫様抱っこで抱かれたボロボロのフェイトの姿。

 

「‥‥‥ぅ‥‥‥忍‥‥‥さん‥‥‥」

 

「無茶しちゃって。フェイトちゃんは少し休んでなさい」

 

どうやらデートは切り上げて来たらしい。「ごめん‥‥‥なさい‥‥‥」と弱々しく口にしているフェイトに、忍はなるべく優しい笑みを向ける。

 

「終わった事は気にしても仕方無いわ。それに、今は‥‥‥」

 

忍がシグナムの方を睨む。「月村か‥‥‥」と一言呟いて口元を緩めたシグナムが、レヴァンティンの刀身を元に戻して、構え直す。

 

「デバイスはどうした?そんな得物ではレヴァンティンの錆になるだけだ」

 

「それは、どうかしらね。この『妖怪が鍛えし楼観剣』、貴女が思ってる程脆くはなくてよ?」

 

忍はフェイトを近くの岩場に寄り掛からせて座らせる。ニヤリ、と不敵な笑みをシグナムに向け、その長刀『楼観剣』を構える。

 

刹那、二人は間合いを一気に詰める。互いの刀が交錯し、ガキンッという金属音が響く。

 

「成る程、簡単には行かなそうだな」

 

「悪くないでしょう?ま、借り物だけどね」

 

ニヤリ、と笑みを見せる二人。交えている互いの刃が離れ、1度距離を取って再度構える。

 

「行くぞ、月村」

 

「望むところよ」

 

シグナムは空へと上がりカートリッジを炸裂。刀身に炎を纏わせる。忍も魔法陣を展開。楼観剣を中空で八芒星型に振るう。その八芒星の剣閃から数多の魔法弾が放たれて、シグナムを襲う。

 

シグナムはその魔法弾の海を時に切り落としながら避けつつ向かってくる。全てを避けきったシグナムに向けて、忍は今度は楼観剣を横一文字に凪ぎ払う。その剣閃が煌めき、放射状の魔力となってシグナムにぶつかる。

 

「フッ‥‥‥『紫電一閃』!」

 

それを一撃で相殺。不敵な笑みを見せるシグナムに「いとも簡単にやってくれるわね」と、此方も再びニヤリとしている忍。

 

 

 

そんな二人を、少し遠くから眺めていたフェイト。

 

(やっぱり‥‥‥私がしようとしてる事って‥‥‥いけない事なのかな‥‥‥)

 

自身の体験してきた過去から、大幅に変わっていく現状。それでも変えられていない現実。身体が弱り切っているのもあってか、フェイトの思考はマイナス方向にしか転がらない。

 

(私が‥‥‥私なんかが‥‥‥望んじゃいけなかったのかな‥‥‥私は‥‥‥)

 

涙が溢れ、ポロポロとその雫が落ちる。視界はぼやけ、眺める先で撃ち合う忍とシグナムの像がみるみるぼやける。

 

(私はただ‥‥‥平凡な幸せが欲しかった。なのはが居て、ヴィヴィオが居て、一緒に笑ったり泣いたりできる、平凡な幸せが‥‥‥)

 

悲しみに暮れ、泣いたままで瞳を閉じる。無理をした身体は限界だったようで、フェイトはそのまま眠りに落ちていく。

 

◆◇◆◇◆

 

次にフェイトが目を覚ましたのは、ハラオウン家のベッドの上。着ているのは下着のみで、身体には包帯があちこち巻かれている。

 

(戻って‥‥‥来てたんだ‥‥‥)

 

まだ身体は痛い。けれど、このまま寝ている訳にもいかない。闇の書のリミットは、こうしている間にも刻一刻と迫っている。

 

「う‥‥‥‥‥‥くっ‥‥‥」

 

何とか上体を起こす。忍やなのはは無事なのか、ヴィヴィオは?3人の無事が確認できるまでは、安心出来ない。

 

フェイトが起きた事に気付いたのか、扉が開きエイミィが入ってくる。手には薬箱とタオルを持っているようだ。

 

「ちょっと、フェイトちゃん。まだ動いちゃ駄目だよ。ほら、寝てなきゃ」

 

「エイミィ‥‥‥ヴィヴィオ達は?」

 

真っ先にヴィヴィオの名が出たフェイトに疑問を感じつつも、エイミィは「ヴィヴィオちゃんなら、忍さんと帰ったよ。なのはちゃんも」と答えて時計を指す。

 

「ほら、もう夜だしね。包帯換えてあげるから、大人しくしてて」

 

「ごめんなさい、エイミィ」

 

時計は、21時を指していた。フェイトが思っていた以上に眠っていたらしい。エイミィの優しい手つきに身体を預けて、フェイトは再び瞳を閉じる。

 

「そうだよ、フェイトちゃん。今は眠ってゆっくり休んで。良くなったら手伝ってくれれば良いから。ね?」

 

やはり身体は相当堪えているようだ。1度瞳を瞑ると、重くてとても開けない。猛烈な睡魔に襲われて、フェイトは再び眠りに落ちる。

 

◆◇◆◇◆

 

丁度その頃の月村家。ヴィヴィオをどうにか寝かしつけた忍は、悩んでいた。

 

「ねえ、ノエル」

 

「はい、お嬢様」

 

何時もながら表情を変えないノエル。忍は溜め息をつき、頬杖をついて話す。

 

「はやてちゃんの事‥‥‥こんな状態で本当に救えるのかしら?それに、フェイトちゃんとなのはちゃんの事も」

 

「分かりません。分かりませんが‥‥‥ヴィヴィオ様がこうして無事存在している以上、方法は有るのだと思います」

 

天井を見上げ、「そう‥‥‥よね」と自信無さげに呟く忍。チラリ、と真ん中辺りに刃毀れのある楼観剣に視線を向けて、再び溜め息。

 

「この剣が刃毀れする程の相手よ?ナハトヴァールはもっとなんでしょう?例の『ゆりかご』も‥‥‥流石に自信無いわよ‥‥‥」

 

「‥‥‥すずかお嬢様のお力を借りられては?」

 

一瞬迷ったが、忍はフルフルと首を横に振る。すずかをこれ以上巻き込めない。只でさえ、すずかは自分の力に恐怖し、自身の存在すら否定的になっている。現時点では、すずかに悪影響を与える以外の結果は見えない。

 

「駄目よ。それは絶対駄目。他に方法を見つけなきゃ。‥‥‥物理兵器ではない、魔力に依らない方法を見つけなきゃ駄目ね」

 

忍はウンと首を縦に振り、立ち上がる。「お嬢様、どちらへ?」というノエルに、「もう寝るわ」とだけ答えて寝室へと向かう。

 

(ごめんね恭也。管理局‥‥‥入らないといけないみたい)

 

◆◇◆◇◆

 

場所は変わり、八神家。

 

「お風呂沸いたよ。みんな疲れとるやろ?先に入ってエエよ?」

 

「‥‥‥私は、後で入ります。主はやて、貴女が先に」

 

「ん?エエの?」と、珍しげに見るはやてに、ニコリと笑みを向けるシグナム。

 

「そんなら、先にお風呂いただきます。みんなもゆっくり入ってな?」

 

「はい、主はやて」

 

シャマルに抱かれてお風呂に向かったはやてを見送ったシグナムに、ザフィーラが念話を送ってきた。

 

《昼間の戦闘か?》

 

《‥‥‥聡いな。一撃を貰ってな》

 

シグナムが腹部の服を捲ると、忍に付けられた横一文字の刀の痕。

 

《お前の鎧を撃ち抜いたか》

 

《ああ。良い一撃だった。だが‥‥‥》

 

微かに笑みを見せるシグナム。こんな状況でも、相手の忍に血が騒ぐものを感じているようだ。

 

《決して負けない、か?》

 

《そうだ。主はやての為。私は、決して負けん。もう闇の書のページも、とっくに半分を切っている。もうすぐ‥‥‥もうすぐ我らの手で、主はやてを救う事が出来る》

 

◆◇◆◇◆

 

時間は、22時。今度の場所は、高町家。

 

被告人席、テーブルの端に座らされて小さくなっているのは、なのは。テーブルを挟み、賛成派の士郎と桃子、反対派の恭也と美由希に別れ、先程から舌戦中。

 

「なのはが自分で決意したんだ。とことんやらせてあげる巾じゃないか?」

 

「お父さんはまたそうやって!危険な事なんだよ?なのはだって怪我だけじゃ済まないかも知れないんだよ?」

 

自身の事なのだが、熱くなっているのは目の前の家族一同(特に美由希)。喧嘩腰の反対派の二人の様子にオロオロするしかないなのはは、恐る恐る口を挟む。

 

「あの‥‥‥お父さんもお姉ちゃんも、落ち着いて‥‥‥ね?」

 

「なのはもなのはよ!どうしてちゃんと事前に相談しないのよ!」

 

「ふぇぇ‥‥‥お姉ちゃん‥‥‥ごめん‥‥‥なさい‥‥‥でも‥‥‥」

 

理由は簡単。忍がデートを放り出す際に恭也に説明を求められた為。今まで黙っていたなのはも悪いと言えば悪いのだが‥‥‥。

結論から言えば、なのはは魔法少女としての活動を認めてもらえる事となる。母である桃子の後押しとリンディによる必死の説得のお陰だが、今後は何処で何をするのか、逐一事前報告する、という案で妥協する事になった。

 




「斬れぬ物など‥‥‥あんまり無い!」
白●楼の庭師さん涙目です。まさか貸したら刃毀れして戻ってくるとか‥‥‥。

なのはは親バレ。フェイトは重傷化。さてさて、今回の闇の書事件、無事乗り切れますでしょうか?

‥‥‥因みに、借りた時の会話はこんな感じでしょうかね?

白●楼の主「あら、吸血鬼のお嬢さん、お久し振り。こんな処(冥界)まで何の用かしら?」
忍「お久し振りです。実は‥‥‥貸して頂きたいものが」チラッ
庭師「ミョン!?」ビクッ
忍「楼観剣を、1日程」
庭師「だっ、だっ、だっ、駄目に決まっているでしょう!」
白●楼の主「そうよ。それは流石にちょっとね‥‥‥
忍「‥‥‥ケーキ1ヶ月分」
白●楼の主「‥‥‥乗ったわ!」
庭師「ちょっとぉぉぉぉ!!」
忍「出来たら、その白楼剣も」チラッ
庭師「」
白●楼の主「それは、流石にねぇ‥‥‥」
忍「‥‥‥ケーキ2ヶ月分で」
白●楼の主「乗ったわ!」
庭師「こっ、これは私の一族でないと使えませんからっ!」
忍「そう‥‥‥」
白●楼の主「あら、残念。折角美味しいケーキが2ヶ月も食べられると思ったのに」
庭師「幽●子様ぁぁぁぁ!?」

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