An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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進行する

 

 

それは、夢。明晰夢。驚くほど呆気なく認識出来た。何もない真っ暗な空間に佇み、辺りを眺め、はやては歩く。

 

(夢の中なら歩けるんやなぁ。これから何しよう‥‥‥いざとなると、何も考えつかへんなぁ)

 

特にこれがしたい、という事は思い付かない。現実では守護騎士達と暮らせて幸せだし、夢の中ではこうして自分の足で歩いている。他に欲しいものなんて、すぐには考えつかない。

 

テクテクと、ただ何となく歩いているはやての前に、突然見知らぬ女性が現れた。初めて守護騎士達に会った時に彼女達が着ていたようなシンプルな黒衣を纏う、ロングの銀髪の女性。

 

『はじめまして‥‥‥でよろしいでしょうか?』

 

『ん~、どちら様?って言うところなんやろうけど‥‥‥もしかして闇の書さんか?』

 

女性は驚く。勿論名乗っては居ないし、その姿ではやての前に現れた事など無いに決まっている。にも拘らず、当てられた。

 

『はい、我が主。ですが、どうして分かったのですか?』

 

『シャマルがな?言うとったんよ。闇の書には美人で優しい管制人格が居るって』

 

 

 

 

闇の書の管制人格は、少し戸惑っている様子。確かに、守護騎士は管制人格の存在を知らない訳ではない。が、シャマルの最近の行動はやはりおかしいし、本来なら思い出せない事になっている筈の事を全て知っているような節がある。事実、この間も闇の書の事を『夜天の書』と本来の名前で呼んでいた。(シャマルに、一体何が‥‥‥)と暫し黙りこんだ管制人格に、はやてがゆっくり近付く。

 

『貴女は、守護騎士のみんなの家族なんよね?なら、貴女も私の家族や。早く、現実でも会えたら嬉しいよ』

 

『ですがっ‥‥‥闇の書の忌まわしい呪いは、貴女を少しずつ蝕んでいます。貴女の身体は、私のせいで‥‥‥我が主‥‥‥』

 

言葉に詰まった管制人格に、はやては笑みを向ける。

 

『‥‥‥‥‥‥分かってる。私はみんなのマスターや。大丈夫。きっと私が何とかするよ』

 

『ですが‥‥‥』

 

今にも泣きそうな表情を見せる管制人格をはやてはそっと抱き締め、あやすように話す。

 

『大丈夫や、約束するよ。それから‥‥‥闇の書っていう名前はあかんね。良い名前考えてあげるわ。えっと‥‥‥』

 

はやてが名前を考え始める。うーん、うーんと唸りながら悩んでいると、管制人格の姿は薄くなり始める。

 

『待って!まだ名前決まってないよ!』

 

『大丈夫です、我が主。私は何時でも御側に居ます。貴女のこの夢が、覚めようとしているだけです』

 

暗かった周りも徐々に明るく、真っ白になっていく。『なら、今度会う時までに必ず、決めておくよ!‥‥‥楽しみにしといてな?』と伝えきったところで、意識が真っ白に塗り潰されて、夢は覚めた。

 

◆◇◆◇◆

 

「身体の具合、どうですか?」

 

「ん~、変わりないよ。それが、どうかしたんか?」

 

場所は、海鳴公園。シャマルははやての車椅子を押して歩く。前回(一周目)と同じなら、闇の書の侵食が進んでそろそろはやてが入院する頃。シャマルの心配も無理はない。

 

「いえ‥‥‥」

 

「そんな顔せんといて。守護騎士のみんなも居るし、私は充分幸せや。それに‥‥‥夢の中やけど、会ったよ」

 

「えっ」と驚き顔をあげたシャマル。はやてはニコリ、と微笑む。

 

「ほら、この前言うとったやろ?闇の書の管制人格さんや。シャマルの言うた通り、美人さんやったよ。それに、ちょっと泣き虫さんや」

 

「嘘‥‥‥はやてちゃん、どうして覚えてるんですか?」

 

前回は、はやては現時点でそれを覚 えていなかった。だが、今回は覚えている。少しずつではあるが、やはりはやてにも干渉の影響が出つつあるようだ。

 

「ん~、どうして、って言われてもなぁ。あ、そうそう。その子の名前考えるって約束したんよ?幾ら何でも『闇の書』じゃ可哀想やし」

 

夢の中と同じようにうーん、うーん、と腕を組んで悩むはやて。そのはやてに気をとられていたシャマルは、正面から歩いてくる人物に全く気付けなかった。

 

「‥‥‥‥‥‥あの」

 

突然声を掛けられてビクッとして顔をあげたシャマル。正面に立っていたのは、紫のロングヘアーに映える白いカチューシャをした少女。

 

「あの時は‥‥‥すみませんでした」

 

すずかは本当に申し訳なさそうな表情で、深々を頭を下げている。ちらりとしか見えなかったが、その瞳には涙を溜めていたように見えた。

 

「えっと‥‥‥」とどうしたものか悩むシャマルを見て、はやてが「知り合いの子?」と不思議そうに聞いてくる。

 

「あの‥‥‥えっと‥‥‥」

 

果たして、どこまで話す巾か。今はやてに魔力収集の事を言う訳には行かない。かといって、すずかと口裏を合わせる余裕は無い。何せはやてが側に居る。はやてを置いてすずかと二人でコソコソと話すのは明らかに怪しい。

 

そんな様子を見ていたはやては何かを察したのか、すずかに向き合うと深々と頭を下げた。

 

「なんや分からんけど、ウチの家族がお世話になりました」

 

「あっ‥‥‥ううん、私がご迷惑かけちゃって‥‥‥ごめんなさい」

 

すずかも驚き慌てて、再び頭を下げる。「私が、シャマルさんに‥‥‥」と真実を口にしようとしたすずかを、シャマルが急ぎ遮る。

 

「あっ、えっとですね、私が買い物から帰ってる時に不注意ですずかちゃんにぶつかっちゃって、それで卵を落として割っちゃったんです。私が悪かったんですけど、すずかちゃん、それでも『私のせいでごめんなさい』って謝ってくれてですね‥‥‥」

 

「え?」という表情をしたすずかだが、すぐに「そっ、そうなの」と話を合わせてきた。すずかも冷静に考えたのだろう。自らが吸血鬼、という事が他の人間に知られたらどうなるか位は想像がつく。

 

「そうなんやね。ごめんな、えっと‥‥‥すずかちゃん。あ、私、八神はやてって言います」

 

「うん、よろしくね、はやてちゃん」

 

漸くすずかも笑みを見せる。ホッと一息ついたシャマルだったが、車椅子に座るはやての様子がおかしい事に気付く。

 

「はやてちゃん‥‥‥?はやてちゃん!」

 

はやては胸を押さえ、尋常ではない痛みに踞り苦しんでいた。すずかも駆け寄って「大丈夫?はやてちゃん」と心配そうに背中を擦っている。

 

(‥‥‥来てしまった)

 

シャマルは唇を噛む。やはりと言えばやはりなのだが、遂にこの時が来た。これで、はやては前回と同様もってクリスマスまで。急ぎ魔力を集め切らねばならない。

 

「今は急いで病院へ!」

 

辛そうな表情ではやてを見ていたシャマルは、後方から声が聞こえた事に驚き、後ろを振り返る。

 

「忍さん‥‥‥!」

 

「お姉ちゃん‥‥‥」

 

忍はチラリ、とすずかを見たあと、直ぐに119番通報。

 

《忍さん‥‥‥》

 

《他の守護騎士には、私が上手く説明しますから。シャマルさんは心配しないでください。それに、リーゼ姉妹も今日は不在です》

 

 

 

 




はやての病状、もとい闇の書の侵食が進行。そして、遂に忍達と守護騎士達が交わる事に。
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