An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
「ねえ、ママ」
『ん?どうしたの?』
ヴィヴィオが寝起きのフェイトの髪を梳かす。その表情は嬉しそう。
「今回はいつまでお休みなの?」
『ん~、大きな事件が解決したから、暫くはお休みだよ』
ヴィヴィオが満面の笑みに変わる。「本当!?やったあ!」と手を止めて後ろからフェイトに抱き着く。
『なのはも冬休みだし、今日から3人でゆっくり過ごそうね、ヴィヴィオ?』
ニコリ、と穏やかな表情で首を傾げて見せるフェイト。ヴィヴィオは「うんっ!」と頷き、再び髪を梳かし始める。
『二人とも~、朝御飯にしよう?』となのはの声が聞こえてきて、二人は手を繋いでリビングへと歩く。
『ヴィヴィオもフェイトちゃんも仲が良いのは分かるけど、早くしないとご飯冷めちゃうよ?』
頬を膨らませながらも終始笑顔を見せているなのは。なのはもフェイトが長い休みを貰えたのが嬉しいらしい。
『なのはったら。私がヴィヴィオと仲良いからって嫉妬しちゃって』
『そんなじゃ無いも~ん。久し振りの休みなのにフェイトちゃんが構ってくれないからだも~ん』
そんな和やかなやり取りをしているフェイトとなのはの手を握り「ママ達もそこまで~!」と間に入ったヴィヴィオ。二人に抱き上げられて、椅子に座らさせる。
「二人とも、そんなにくっついたら暑いよ~」
なのはとフェイトに抱き着かれたままのヴィヴィオ。実に嬉しそうである。ヴィヴィオにとって、これこそが欲しかった幸せ。なのはが居て、フェイトが居て‥‥‥。
『良いんだもん。今日はヴィヴィオを甘やかすって決めたんだもん。ね?フェイトちゃん?』
『そうそう。なのはの言う通りだよ。だからヴィヴィオ、今日は一杯くっつこうね?』
「も~う。なのはママもフェイトママも子供なんだから。でも‥‥‥仕方ないから付き合ってあげる!」
そうして、ヴィヴィオの両隣に座り、態々狭いスペースで朝食を採る3人。勿論ヴィヴィオは少しキツいが、それも今は苦にはならない。
朝食を終えて、ヴィヴィオは歯を磨きに洗面台へと歩く。歯ブラシを手に取って、歯磨き粉を付けた所で、ある事に気が付いた。
「ねえ、ママ。学校って今日無いんだっけ?」
隣で歯を磨いているフェイトは『ん?』と首を傾げ、なのはが念話で《何言ってるの?今日から冬休みでしょ?》と答えた。
「‥‥‥あれ?そうだっけ?でも‥‥‥」
イマイチ納得いかない。確かに海鳴は冬ではあったが、ヴィヴィオの居たミッドではまだまだ冬は先の話。そうしてもう一つの違和感を思い出す。
「私‥‥‥どうしてミッドに居るの?さっきまで海鳴に居た筈じゃ‥‥‥」
『なーに?夢でも見てたんじゃない?』
『そうだよヴィヴィオ。昨日なのはと『明日からお休みだね』って話してたでしょ?』
ヴィヴィオは「うーん」と悩み(そんな話したかなぁ?)と納得いかない。しかし、(後でゆっくり考えよう)と結論は先伸ばしにして、なのはとフェイトにニコリ、と笑いかける。
「冬休み‥‥‥なんだよね。じゃあ、じゃあ、今日は3人でいっぱいお話しよう!」
それから時が経つのも忘れ、他愛もない話に夢中になった。気が付けば、もう昼を過ぎていた。
『もうこんな時間だね。お昼作らなきゃ。それじゃ、フェイトちゃん、ヴィヴィオ、少し待っててね?』
「はーい」『うん』と答えるヴィヴィオとフェイト。ヴィヴィオは立ち上がって、「ちょっと待ってて!」とトイレに向かう。
用を済ませ、リビングに戻ったヴィヴィオ。なのはの鼻唄がキッチンから聞こえてくる中、フェイトの様子が先程と少し違う事に気が付く。
「ママ、どうしたの?」
「なんでも‥‥‥ないよ」
フェイトの目にはうっすらと涙が滲んでいる。表情も、先程迄とはうって変わって、辛そうなもの。
「‥‥‥ママ?」
泣きそうなのを必死に我慢しているように見えるフェイトが、意を決したように話し始める。ヴィヴィオはそれを静かに聞き入る。
「あのね、ヴィヴィオ。これは‥‥‥全部ヴィヴィオが見ている夢なんだよ。闇の書が見せている夢」
「‥‥‥え?」
なのはが居るのも、フェイトが居るのも、夢。突然現実に引き戻されて、ヴィヴィオの心が重くなっていく。
「だから、目を覚まして。私もなのはも、ちゃんとヴィヴィオの事見守ってるから」
「‥‥‥やだよ!フェイトママも、なのはママも!ずっと一緒に居たいよ!」
ヴィヴィオはポロポロと涙を流し始める。これが夢ならば、目覚めてしまえばまた独りぼっち。それならいっそのこと‥‥‥。そう思って泣きじゃくるヴィヴィオを、フェイトは静かに抱き締める。
「約束破ってごめんね、ヴィヴィオ。一緒にいようって約束したのに‥‥‥守れなくて。駄目なママで、ごめんね」
「そんな‥‥‥事‥‥‥ない。大好きだよ‥‥‥ママ」
抱き着き返してきたヴィヴィオに、フェイトも堪え切れなくなって涙を流す。
「私も‥‥‥大好きだよ、ヴィヴィオ。だから‥‥‥ここに居ちゃ駄目。目を覚まして、はやてを助けて、ちゃんと未来に戻って。なのはは私がきっと助けてみせるから」
「なのはママだってきっと未来で待ってる!だからママ、一緒に帰ろうよ!私‥‥‥ママと一緒に居たいの!」
それ以上言葉に出来ず、嗚咽を漏らし泣くヴィヴィオ。フェイトも涙は流れたままだが、手を離して立ち上がる。
「道は私が作るから。ここから脱出して、ヴィヴィオ。みんなが待ってるから」
足元に魔法陣を展開し、金色の魔力光に包まれながらバルディッシュを構えるフェイト。顔をあげたヴィヴィオの元へと、なのはが近付いてくる。
『ヴィヴィオ、運命に負けちゃ駄目。フェイトちゃんを信じて。ね?』
なのはが、クリスを手渡す。泣き顔のまま「なのは‥‥‥ママ」と答えヴィヴィオに、なのははコクン、と頷く。
『さあ、二人とも。行って。私‥‥‥信じてるから』
なのはが少し離れ立つ。フェイトの魔力が膨れ上がる。
「『疾風・迅雷!!』」
《Sprite Zamber!!》
直後、バルディッシュの魔力刃から光が伸びて、空間が崩壊していく。『頑張るんだよ、二人とも!』というなのはの言葉と共に、ヴィヴィオの意識は再び途切れる。
◆◇◆◇◆
ヴィヴィオが目を覚ますと、海鳴の星空が見えた。結界の中。
「ヴィヴィオちゃん、確りして!」
「シャマル‥‥‥先生?」
シャマルに抱かれいたヴィヴィオは身体をゆっくりと起こす。少し遠くに、闇の書の管制人格と戦っているなのはと忍が見える。
(そっか。夢、見てたんだ)
なのはと、フェイトと。二人が無事に揃っている日常の夢。現実とのギャップに悲しくなり涙が零れそうになる。
(今は‥‥‥八神司令を助けなきゃ)
思い直して立ち上がる。その視界に、フェイトの姿が映る。
「フェイトマ‥‥‥フェイトさん?」
「‥‥‥おかえり、ヴィヴィオ。行こう、はやてを助けに」
フェイトの頬には、泣いたような跡。夢の内容を思い出し、ヴィヴィオの中である思いが強くなっていく。
(あれ?夢‥‥‥だったんだよね?それとも‥‥‥。ねえ、貴女は本当は‥‥‥ママ、なの?)
闇の書の見せる夢から脱出したヴィヴィオ。フェイトが自身の母親である事に気が付いていきます。
察しの良い皆様はお気付きだと思いますが、途中から夢の中のフェイトちゃんは現実のフェイトちゃんと入れ替わってます。ヴィヴィオを助けに行った訳です。娘を思う母としてのせめてもの行動でした。