An indomitable spirit in my heart   作:アイリスさん

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そして

 

「フェイトちゃん!」

 

「うん、なのは」

 

フェイトがなのはと忍に漸く合流。後ろを少し遅れて飛ぶヴィヴィオが三人の元に着く。

 

「良かったあ。フェイトちゃん、心配したんだよ?」

 

フェイトの無事な姿に少し安堵したのか、なのはの表情が緩む。フェイトの隣に並び、右手をフェイトの左手と繋ぐ。

 

「なのは‥‥‥ごめんね、なのはだってこんなに頑張ってたのに」

 

なのはも無事ではないようで、バリアジャケットもかなり破損している。上半身のインナーが所々見えていて、肩で息をしている。

 

「そんな事ないよ。フェイトちゃんなら無事にヴィヴィオちゃんを助けて戻って来るって信じてたもん!」

 

「うん」と答え、フェイトは微かに首を動かして後ろのヴィヴィオを気にする。先程のなのはの言葉が聞こえたヴィヴィオは、驚きの表情を見せる。

 

(私を‥‥‥助けてくれたの?じゃあ、あの時のママは‥‥‥?)

 

闇の書に囚われていた時の夢の中でのフェイトの姿、言葉を思い出す。此方に戻ってくる直前の、フェイトの言葉を。まるで、全て知っているような‥‥‥ヴィヴィオの大好きな母親であるフェイトが話しているようだった、その時の言葉を。

 

(ママ‥‥‥やっぱりママ、なの?)

 

ヴィヴィオはフェイトを見つめる。懐かしさや切なさ、辛さ、そして今にも抱き締めたい愛しさの入り雑じった、複雑な視線で。

 

「ヴィヴィオも無事に戻って来れたんだし、今はあの子を‥‥‥はやてを助けなきゃ」

 

フェイトはそれを誤魔化すようにそう口にしてバルディッシュを握り直し、足元に金色の魔法陣を展開、魔力を集中させていく。

 

「行くよ、なのは」

 

「うん、フェイトちゃん!」

 

フェイトとなのはは管制人格に向かい飛んで行き、空中戦を再開。その二人を少し離れて見守る、忍とヴィヴィオ。

 

「忍さん、聞いても良いですか?」

 

真剣な眼差しで聞くヴィヴィオに、忍が複雑そうな表情で「ええ」と頷く。

 

「フェイトマ‥‥‥フェイトさんが私を助けてくれたって、どういう事ですか?」

 

「ヴィヴィオちゃん、貴女はね、闇の書に囚われていたの。フェイトちゃんは貴女を助ける為に、ヴィヴィオちゃんを捕らえている闇の書が構成してる空間に干渉して‥‥‥」

 

昔、フェイトとはやてから聞いた事がある。かつて闇の書の管制人格、リインフォースと対峙していたフェイトは闇の書に捕らえられ、夢を見せられていた‥‥‥アリシアやプレシア、リニスと生活している、一見すると幸せに見える夢を。その時はフェイト自らそれを破って戦線に復帰したらしい。今回はヴィヴィオがその拘束を受けたようだ。だが‥‥‥フェイトが初見の筈の闇の書の封印空間に外側から干渉する事など可能なのだろうか?それに、フェイトがヴィヴィオの夢の中に干渉したのだとしたら‥‥‥。

 

(それじゃあ、あの言葉は‥‥‥フェイトママ本人の言葉なのかな‥‥‥ママ‥‥‥ママなの?私の大好きな、ママなの?)

 

「ママ‥‥‥」

 

小さな声で呟き、切なそうにフェイト達の方に視線を向けるヴィヴィオ。その様子に居た堪れなくなった忍が、両肩にポンッ、と手を置いてくる。

 

「忍さん、あの‥‥‥」

 

「ヴィヴィオちゃん、二人を手伝いに行きましょう‥‥‥『今は』」

 

コクン、と小さく頷いて、ヴィヴィオは再び空へと上がる。その小さな胸に想いを秘めて。

 

◆◇◆◇◆

 

(そろそろの筈‥‥‥はやて)

 

自身に向かい飛んできた魔力弾をザンバーで叩き落としたタイミングで、フェイトが思っていた通り管制人格の動きが止まる。

 

《外で戦っている方、すいません!この子の腕に憑いているのを外すの、手伝うてください!》

 

聞こえてきたのは、確かにはやての声。前回は確か、はやてが自力でナハトヴァールを分離したと記憶しているし、はやてがここで助けを求めた事も無かった。(はやてが語りかけてきた‥‥‥まさか)と、前回と違う展開に戸惑いながらも、フェイトはバルディッシュを握る手に力を込める。

 

苦しそうに藻掻く管制人格を見ながら「でっ、でも、どうやって!」と焦るなのはの手を握ったフェイトに、シャマルから念話。

 

《フェイトちゃん、なのはちゃん!あの暗黒の塊‥‥‥ナハトヴァールを吹き飛ばして!何でもいいから!大魔力で!》

 

フェイトは手は繋いだまま、なのはと見つめ合って小さく頷く。二人の足元に魔法陣が展開されて、魔力が膨れ上がっていく。

 

「いくよ、なのは」

 

「うん、フェイトちゃん!」

 

各々バルディッシュ、レイジングハートを構える。もう一度頷き合った二人は、どちらが合わせるでもなく全くの同時に魔力を全力で解放、管制人格に向けて放つ。

 

「中距離殲滅コンビネーション『ブラスト・カラミティ』!!」

 

桜色と金色の混ざった魔力の奔流が管制人格を飲み込み、辺りは光に包まれる。

 

◆◇◆◇◆

 

「凄い‥‥‥」

 

間近で初めて見た本気の二人の砲撃に、ヴィヴィオは思わず息を飲む。正確に言えば、なのはの本気は嘗ての『ゆりかご』内で見てはいるのだが、その当時は魔法の知識は録に無かったし、何よりうっすらとしか覚えていない。故に、コンビで全力で砲撃を放つ二人に圧倒され、言葉を失っている。

 

(やっぱりママは凄い‥‥‥ママ)

 

と、後ろに気配を感じて、ヴィヴィオは思わず振り返る。忍でもシャマルでもない。見たことのない魔法陣が現れ、その光に一瞬目が眩む。

 

(えっ!?なっ、何!?)

 

魔法陣‥‥‥もとい、フォーミュラプレートから現れたのは、ヴィヴィオが知らない女性。赤い髪を後ろで一つに束ね、青いバリアジャケットのような衣装を身に纏い、両手に銃剣型のデバイスを持った女性。

 

「ヴィヴィオさん、お迎えに来ました」

 

「‥‥‥へっ?」

 

全く事態を理解出来ない。ヴィヴィオが呆気に取られポカン、と口を開けて停止していると、女性はウッカリしていたとばかりに苦笑い。

 

「そうでしたそうでした。前回会った時は眠ってらしたんでしたっけ。初めましてヴィヴィオさん。私はアミティエ・フローリアンと申します。貴女を未来に返す為に来ました」

 

「え?‥‥‥かっ、帰れるんですか!?」

 

やっと意味を理解したヴィヴィオ。思わず叫ぶ。アミタは優しく笑いかけながら、「勿論です」と頷く。

 

「それじゃあ、未来に帰っ‥‥‥あ、でも‥‥‥」

 

言い掛けて、ヴィヴィオは俯く。(未来に帰れたとしても‥‥‥フェイトママもなのはママも居ないんじゃ‥‥‥)と、哀しそうな表情で。

 

「ヴィヴィオさん、お気持ちは分かりますが、これ以上過去に関わるのは良い事ではありません。お二人からもお願いします」

 

アミタが不意に忍とシャマルの方を向いて話を振る。突然言われて焦る二人と、その意味を理解出来ないヴィヴィオ。

 

(‥‥‥え?どうして忍さんとシャマル先生に?)

 

シャマルは余程焦ったのか、ついつい余計な事を口にしてしまう。「ほっ、ほら、後は私達に任せて。なのはちゃんはきっと救ってみせるから。ね、ヴィヴィオちゃん」と。

 

「えっ?シャマル先生、今のって‥‥‥」

 

忍が隣で天を仰ぎ、頭を抱えている。シャマルはシャマルで自分の言った事の重大さに漸く気付いて、「あっ、いえ、えっと」としどろもどろになって、更に口を滑らせる。

 

「ちっ、違うわ!違うのよ、ヴィヴィオちゃん!今のは決して未来の事とかじゃないから!フェイトちゃんとは何の関係も無いのよ!」

 

‥‥‥もう盛大なる自爆である。これではもう、『なのはの命を助ける為にフェイトが未来から戻ってきた』と自白しているようなものだ。

 

「シャマル‥‥‥先生?」

 

ヴィヴィオは瞳に涙を溜めて、シャマルの方へとゆらゆらと覚束無い足取りで近付く。アミタが直後に「‥‥‥まさか、まだだったのですか?『事件の終了がリミット』だと王様と約束した筈ですよ?」と言ったのも駄目押しとなって、ヴィヴィオはシャマルに掴み掛かる。

 

「‥‥‥ママ‥‥‥なんですよね?あの人は!私のママなんですよね!」

 

 

 

 

 

 

 




さてさて、シャマルの自爆のせいでクライマックスが近付いて参りました。いよいよ次回はプロローグの話へ戻ります。
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