An indomitable spirit in my heart 作:アイリスさん
『なのは、起きて。なのは』
「う‥‥‥ん‥‥‥誰?」
自身を呼ぶ声に、なのはは目を覚ました。何処かで聞いたような声の主を探して、辺りを見回す。
「‥‥‥まだ1時だよ?誰?何処にいるの?」
まだ眠い目を擦りながらベッドから起きると、暗い室内でレイジングハートが桜色に点滅している。
「えっと‥‥‥」
『レイジングハートだよ、なのは』
呼んでいたのはレイジングハート。自身とそっくりなその声に驚きつつ、なのはは口を開く。
「えっと、レイジングハートさん?どうしたの?」
『うん、なのは。ちょっと出掛けようか?』
外は、まだ暗い。こんな夜中に外出は、となのはは「でも、こんな時間だし‥‥‥」と躊躇している。
『大丈夫。いざとなったら、私が助けてあげるから。それに、フェイトちゃんとお話したいでしょ?』
「‥‥‥何処に居るか、知ってるの?」
『知ってるよ。だから、行こう?』
フェイトに会える、という言葉の誘惑に負けて、まだ眠い目を擦りながら、なのははそーっと家を抜け出した。『ユーノ君は、起こさないようにね』というレイジングハートの言葉通りに、彼は起こさずに。
◇◆◇◆◇
「‥‥‥ん‥‥‥」
フェイトは誰かに呼ばれたような気がして、目を覚ました。隣を見ると、寝息をたてて眠るアルフの姿。気のせいかと思い再び瞳を閉じる。
《フェイトちゃん、起きてる?お部屋に入れてくれないかな?》
確かに聞こえてきた念話に、フェイトの意識は覚醒した。こんな時間にどうして、と疑問を抱きながらベッドから起きて、玄関の扉を開ける。
「なのは!こんな時間にどうして‥‥‥じゃなくって、どうして此処が分かったの!?」
なのはの姿を見て、フェイトは驚き慌てふためく。こんな深夜になのはが出歩いているのもそうだが、何より今の時点でこの部屋の場所を知っている筈がない。仮にユーノが探していたのだとしても、探査妨害を張っている。そんな簡単に見つかる訳がない。
(どうして‥‥‥まさか、歴史が変わりつつある‥‥‥?)
こんな深夜に玄関にいつまでも立たせている訳にもいかない。一先ずなのはを部屋の中へと通す。その間、なのはが頬を染め、ずっと手を繋いでいた事に弱冠の疑問を抱きつつ。
「フェイトちゃんのお部屋って広いんだね!」
「ねえ、なのはは今日はどうして此処へ来たの?」
ベッドに座り、部屋を見回すなのはに語りかける。此処に来たからには、それなりの理由がある筈。魔導師になりたいとか、ジュエルシードを一緒に探そうとか、学校に一緒に行きたいとか、そんな所か。と彼是考えていたフェイトに、なのはは予想外の答えを返した。
「うん。この子がね、フェイトちゃんが何処に居るか知ってるって言うから。その‥‥‥お話したいなって思って」
そう言ってなのはは笑顔を向ける。部屋が暗いせいであまり変化は分からないが、なのはの顔は真っ紅に染まっていた。
「この子‥‥‥レイジングハートが?」
なのはの変化には気が付かず、彼女の首元で揺れるレイジングハートを覗き込むフェイト。それはまるで何かを伝えたいかのように仄かに桜色に点滅する。
「フェイトちゃんは、何時から此処に住んでるの?何処の学校に行ってるの?もし、もしね?聖祥小だったら、その‥‥‥明日から一緒に登校したいな‥‥‥なんて」
手を繋いだままフェイトに寄り掛かり、眠気を堪えながら話すなのは。フェイトは彼女の身体を抱き寄せて胸の位置に寄り掛からせ、その頭を撫でながら答えた。
「この事件が終わったら、ちゃんと話すよ。だから、なのは。今は」
と、そこまで言いかけたフェイトだったが、なのはが眠っている事に気づいて膝枕で寝かせる。起こさないようにその頭を静かに撫でながら、心に誓う。
(守るんだ。私が‥‥‥)
『フェイトちゃん、そろそろいいかな?』
不意に聞こえたなのはの声。起こしてしまったかと思いなのはを覗き込むが、スヤスヤと眠ったらまま。
『そっちじゃないよ、こっちだよ』
「レイジングハート?」
驚いて声の主を見る。何故なのはの声や話し方をしているのかとか、どうしてこの場所を知っているのかとか、聞きたい事は多々浮かんでくるのだが、先に口を開いたのはレイジングハート。
『幾つか質問に答えてくれるかな?』
戸惑いながらも「えっ!?う、うん‥‥‥」と答えるフェイト。その声のトーンや話し方が今のなのはよりも大人びている事に「まさか」と思いつつ、レイジングハートを見つめる。
『じゃあ、取り敢えず。フェイトちゃん、此処に来た目的は?ジュエルシードじゃないよね?』
「ちっ、違う!私は、母さんに言われて、ジュエルシードを集めに‥‥‥‥‥‥あ‥‥‥」
思わず言ってしまってから気付き、しまったと動揺する。本来であれば(前回PT事件時)それが目的の筈だったのだが、今回は違う。それに、此処で其れを言うのは非常に不味い。
『でも、さっきのジュエルシードはユーノ君が持ってるままで、奪おうともしなかったよね?矛盾してるよ?それに‥‥‥どうしてなのはやユーノ君、私の名前を知っているの?』
「それは‥‥‥」
『それに、『今の』フェイトちゃんにしては術式が精密過ぎるよ?』
口ごもり、しどろもどろしていたフェイトだが、レイジングハートのその言葉にハッとする。
「ねえ、貴女は‥‥‥もしかして貴女も未来から来たの?」
『やっぱり。それなら納得出来る。フェイトちゃんの目的はきっと、私を‥‥‥ううん、高町なのはを死なせない為、だよね?』
フェイトは目の奥が熱くなるのが分かった。涙が溢れてきて、ポタポタとその太股に落ちる。此処に来る前にジュエルシードに願った言葉を思い返す。
「嘘‥‥‥だよね?確かに願った。『もう一度会いたい』って。だけど、こんな‥‥‥‥‥‥なのは!」
もはや涙でグチャグチャの顔で、レイジングハートを見つめるフェイト。ホログラムで19歳当時の自分の姿を写し出し、レイジングハート‥‥‥『なのは』は答えた。
『うん。フェイトちゃん。こんな形でも、また会えて嬉しいよ』
◇◆◇◆◇
『そっか。ジュエルシードか‥‥‥』
「ごめんね、なのは」
『フェイトちゃんが謝るのはおかしいよ。本当なら私はもう存在していない筈なんだし。助けてくれようとしてるんだし』
申し訳無さそうに謝るフェイトを、『なのは』は窘める。とは言っても、今の二人の存在はイレギュラー。色々と問題はあるが、未来がある程度分かっている分、対策を立てながら進むしかない。
『フェイトちゃん、今のままだと、不味いと思う。プレシアさんが今後どう出て来るか分からないし。暫くはプレシアさんに従ってる振りをしておいた方がいいと思うよ。対策はもう少しゆっくり練ろう?』
「そうだね。もう少し色々考えてみるよ」
二人は、『なのは』によって出現場所の埋まった地図を見ながら、今後の対策を考えてる。
どうあっても、最後にはプレシアと激突する事になるだろう。それまでは、なるべくこの関係を知られないのが得策。どう説得するかは改めて案を持ち寄る事にした。
フェイトに、転移魔法で寝ているなのはと共に部屋まで送ってもらい、ユーノの首に掛かる『なのは』。
『またね、フェイトちゃん』「うん、なのは」と別れの挨拶を交わし、フェイトを見送った後で、一人思いを巡らせる。
(『今後の事を考えるとやっぱり、この時代の私も魔導師になってもらわないと‥‥‥』)
レイハなのはさんに見破られたフェイトちゃん。
それと、既にフェイトちゃんLoveらしいなのはちゃん。3人は今後、どう物語を織り成して行くでしょうか。